僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

空 水城

文字の大きさ
66 / 98
第6章 肝試し大会編

第百四話 「新たな問題」

しおりを挟む
 
 何もかもが上手く行っていた。
 他の人から見たらそうは見えないのかもしれないけど。
 自分としてはそう思えるくらい、最近は順調だと感じていた。
 ロメの救出、モンスタークライムとの再戦、テイマーとしての成長の兆し。
 因縁の相手を一度退けたくらいで、少しお調子に乗っているのも自覚はしている。
 それでも今までの自分から考えると、最近はなんとも都合のいいように事が進んでいた。
 だからこそ、新たな難題に対して頭を抱えてしまう。
 これは、最近順調な僕にとっても、解決までは相当な苦労を強いられることになるだろう。
 いや、そもそも解決に至るかどうかも定かではない。
 僕――スライムテイマーのルゥ・シオンは、頭の中をたくさんの”数字”で埋め尽くしながら、陰鬱な嘆きを漏らした。
 
 「……お金がない」
 
 ここに来て、少々毛色の異なる問題に、ぶち当たってしまったのだ。
 
 
 
△△△
 
 
 
 空は大いに晴れ渡っていた。
 澄んだ青空の下では活気溢れた街並みが広がり、賑やかな喧騒が耳に入ってくる。
 人と従魔の仲睦まじい景色を眺めながら、僕たちは街の石畳に足を付けた。
 テイマーズストリートの魔車乗り場。
 従魔たちが引く荷台から軽やかに降りて、僕たちは一同に背中を伸ばした。
 
 「やっと帰ってきましたね、テイマーズストリート」
 
 「うん」
 
 同じく街の様子を見たクロリアが、日の光に目を細めながら言う。
 大きく背中を伸ばしていた僕は同意の声を上げると、頭上のライムが落ちそうになっているのに気付いて慌てて体勢を戻した。
 安堵の息を吐くライムに、「ごめんね」と小さく謝る。
 グロッソの街から魔車に乗って三日。
 ようやく僕たちは拠点となる街――テイマーズストリートに到着した。
 拠点って言っても、まだ身を置ける場所を確保したわけじゃないけど。
 だからこそ僕たちは、この街に拠点を移すべく、はるばるグロッソの街からやってきたのだ。
 
 「何事もなく到着してよかったですね」
 
 「ホントにね。どこか行く度に厄介ごとに巻き込まれるから、街を行き来するだけでも気が気じゃないよ」
 
 ほっと一息つくクロリアに、僕は苦笑まじりで同意を返す。
 魔車での旅は恐ろしいくらい穏やかなものだった。
 最近は何かとトラブルに巻き込まれていただけあって、乗車中もよからぬ事件に遭遇するかと思っていたが。
 連日麗らかな日和、快適な車内、影を潜めた野生モンスターたち。
 トラブルどころか何もない日々に、少しの退屈を覚えてしまうくらい、旅は順調に進んだ。
 きっとこれは、女神様が僕たちに与えてくださった小休止なんだ。そう呑気に思っていると、不意にクロリアが呆れたため息を漏らした。
 
 「前にも言いましたけど、厄介ごとに巻き込まれるのはひとえに、事件に首を突っ込むルゥ君がいけないのであってですね……」
 
 「うっ……」
 
 ……またそれか。
 もうすでに何十回、何百回と聞いて飽きた説教が、また始まる。
 そう危惧した僕は、すぐさま投げやりに応えた。
 
 「あぁ、はいはい。それはもう充分……痛いほどわかってますよ。だから全然大丈夫」
 
 「……大丈夫じゃないから言ってるんですけど」
 
 ジトッとしたクロリアの視線を感じる。
 反射的に彼女から目を逸らすと、ますますジトッとした空気が強まった。
 やがてたたたと足音が鳴り、ミュウを抱えたクロリアが正面に回ってくる。
 僕の目を食い入るように睨みつけると、釘を刺すように言った。
 
 「”くれぐれも”このテイマーズストリートでは、”絶対に”下手な真似はしないでくださいね」
 
 「そ、そこまで念押ししなくても……」
 
 「特に前回は、この街の冒険者ギルドで大喧嘩を売ってしまいましたからね。ただでさえこれからは、テイマーズストリートに身を置くんですから。あの事件がすでに下火になっている今、大人しくしておくのが吉ですよ」
 
 「人を犯罪者みたいに言わないでよ。てゆーかあれは、喧嘩を”売った”んじゃなく”買った”んだよ」
 
 ぼんやりと前の記憶を掘り起こしながら、微妙な言い回しの違いを指摘する。
 《正当なる覇王フェアリーロード》という名の、金級ゴルドの冒険者たちとの喧嘩。
 クロリアと共に初めてテイマーズストリートを訪れたとき、程なくして起きた一つのトラブルだ。
 最有力のパーティーだの、英雄候補だの、周りからたくさんの賞賛をもらっておきながら、奴らはモンスターを無下に扱った。
 それがどうしても許せなかった。僕が憧れた英雄があんな奴らのはずがない。テイマーズストリートは人とモンスターの笑顔が両方溢れている場所なんだ。
 だから僕は喧嘩を”買った”。
 買ったかどうかはまあ怪しいけれど、”売った”覚えは微塵もない。
 それに喧嘩は買うより売る方が悪い印象がある。そこは訂正しておきたいと思った。
 しかしクロリアは……
 
 「いいえ。超大安売り、特売で売ってました」
 
 「そ、そうかな?」
 
 「はい。割引きセール、出血大サービス。なんなら無料配布までしていたくらいです」
 
 「そんなに挑発的なことはしてないよ」
 
 なんだよ無料配布って。
 ちょっとあいつらのテーブルを叩いただけじゃないか。
 心中で不満を漏らす一方、しかしやはりあれはやりすぎだったかなと改めて反省する。
 そんな中、正面のクロリアがさらに詰め寄ってきて、今一度念押しをしてきた。
 
 「まあ、あの状況を前にしたルゥ君なら、仕方がなかったんでしょうけど。それでも、来たばかりの街で喧嘩を起こすのは褒められたことではありません。それはわかりますよね?」
 
 「……はい」
 
 「その上相手は金級ゴルドの冒険者。仮にも冒険者として先輩の相手に喧嘩を売るのは、失礼と言いますか、あまりにも無謀だと思います」
 
 「…………はい」
 
 「勇気ある行動と正しい行動は必ずしも一致しません。それをよく覚えておいてください」
 
 「………………はいはい」
 
 「あっ、なんですかその態度は!」
 
 だってガミガミうるさいから。
 そんなに言わなくてももうわかっている。
 それにあのときに比べれば、僕はだいぶ大人らしくというか大人しくはなったと思う。
 釘を刺してもらわなくても、危ない真似は絶対にしない。
 けれどクロリアが説教したくなる気持ちもわからなくはない。
 彼女の言うとおり今日からこの街で暮らすことになるのだし、悪目立ちするのは得策ではないだろう。
 それにこれからは、ロメも傍にいることになる。
 彼女に迷惑を掛けないためにも、”くれぐれも絶対に”。クロリアはそう言いたいようだ。
 
 それは理解できたのだけど、いまだクロリアは正面から説教してくる。
 そういえば、今頃ロメはどうしているかな?
 冒険者試験はまだ始まっていないと思うけど、その間シャルムさんや他の人と仲良くできているだろうか?
 まあ、ロメはああ見えて、周りの環境に馴染むのが上手な子だ。きっと大丈夫だろう。
 お姉さんぶったクロリアのお説教を、右から左に流しつつ、僕はテイマーズストリートの大通りを歩き始めた。
 
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。