僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

空 水城

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第6章 肝試し大会編

第百十話 「お泊り会」

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 いまだに引っ付くクロリアは置いておき、僕は30万という賞金額を聞いて、嬉々として彼女に提案した。
 
 「参加しようよクロリア! それだけあれば借金返しても充分おつりが来るし、ランクも上がれば銀級の依頼も受けられるようになって、問題がまるっと解決するよ!」
 
 これほど美味しい話に食いつかない手はない。
 夢のテイマーズストリートでの生活はすぐそこなのだ。
 しかし彼女は、なんとも言い難い顔を上げる。
 
 「……そ、そうですね」
 
 「……?」
 
 あれ? あんまり乗り気じゃない?
 どういうわけかクロリアは、引き攣った笑みを浮かべながら鈍い反応を返す。
 まだしがみついていることに疑問を呈したいところではあったが、僕はずっと気掛かりだったことを聞いてみた。
 
 「もしかしてクロリア……怖いの?」
 
 「えっ!? べ、別に怖くなんかないですよ! ただちょっと死霊種のモンスターが苦手というだけで……」
 
 「ふぅ~ん」
 
 死霊種のモンスターって、それはもうオバケと同義なのではないだろうか。
 とりあえずクロリアが肝試し大会を怖がっているのは理解できた。
 今までそんな素振りを見せたことはなかったのだが。
 意外な弱点、発見。
 心中で頬を緩めていると、不意にペルシャさんがお茶を啜りながら呟いた。
 
 「女の子してるねぇ、おさげちゃん」
 
 「か、からかわないでください!」
 
 恥ずかしそうに身をよじる彼女に、ペルシャさんは明るい顔を上げて続けた。
 
 「ま、開催まであと三日あるし、出るか出ないかはゆっくり決めるといいよ。さっきも言ったけど、あたしは別に支払いの催促とかはしないから」
 
 「は、はい」
 
 「んまあ、これがおさげちゃんやルゥ君じゃなかったら、わからなかったけどね」
 
 ぞくりと背筋が凍えるような台詞を言い、ペルシャさんは「にゃはは」と愉快そうに笑った。
 しかしクロリアはそれを真に受けてしまい、目を見張って固まる。
 しまいにはカタカタと震えながら懐から軽い財布を取り出そうとしていたので、僕が片手を伸ばしてそれを制した。
 かなり心に来てるみたいだなぁ。
 勘定書を見てから気持ちが不安定になっていたみたいだけど、さらに肝試し大会の話が持ち上がって揺さぶられているらしい。
 オバケは苦手だが、大会に出て賞金を獲得しなければ魔石加工の支払いができない。
 その葛藤が目に見えるようだった。
 一度落ち着かせなければいけないだろうと思い、僕は小窓を窺いながらペルシャさんに言った。
 
 「そ、それじゃあ、そろそろいい時間なので、僕たちはこれで……」
 
 お茶とお菓子のお礼も兼ねて、ぺこりと会釈をすると、彼女は少し残念そうに頷いた。
 
 「あっ、うん。長い話しちゃってごめんね」
 
 「い、いえ」
 
 それから僕たちは帰り支度を始める。
 小窓から差す日の色は軽く赤みがかって見えるので、来てからそれなりの時間が経っているようだ。
 しかし体感としては、ペルシャさんと同じく喋り足りない。
 名残惜しい気持ちがあって、帰る準備もあまり捗らなかった。
 もたもたとする僕たちを見ながら、不意にペルシャさんが問いかけてきた。
 
 「ところで二人は、どこの宿をとってるの?」
 
 『えっ?』
 
 床に下ろしていたカバンを肩に背負いながら、僕は返す。
 
 「い、いえ、これから探すつもりですけ……」
 
 と言いかけた直後、はっとなって気が付く。
 今から宿を探すとなると、果たして望み通りの場所が見つかるだろうか?
 なるべく安く、それでいて長期間利用できる二部屋余った宿。
 銅級の依頼が数少ない現状、当然それは安い宿屋も取り合いになることを意味する。
 すでにテイマーズストリートの各所にある”穴場”は、収入が乏しい冒険者たちによって押さえられているに違いない。
 遅まきながらそうと悟った僕は、口を開けて固まる。
 その考えが正しいと言うように、ペルシャさんが哀れんだ様子で苦笑した。
 
 「今から宿を探すとなると、お財布にかなりのダメージを覚悟しておいた方がいいよ」
 
 「うっ……」
 
 苦い顔をする僕を見て、クロリアも事情を察したようだった。
 ……どうしよう。
 
 「なんだったら、うち使う?」
 
 「えっ?」
 
 ティーセットを片付けながら、不意にペルシャさんがなんでもないように言った。
 うち使う? 直訳して『うちのペルシア・スタジオを宿として使う?』と聞いているのだろうか?
 もしそうだとしたら、すごい助かる。しかし反面、気になることも出てくる。
 だから僕は鈍い反応を返した。
 
 「さ、さすがにそれは……」
 
 ……恥ずかしいと言うか、申し訳ないと言うか。
 それが最善だというのは重々承知しているが、ここは紳士としてお断りせざるを得ない。
 泣く泣く彼女の提案にかぶりを振ろうとした――その時。
 ガシッと、再び右腕にクロリアが飛びついてきた。
 
 「い、いえ! ここは1ゴルドでも節約するために、お言葉に甘えておきましょう!」
 
 「え、えぇ……」
 
 切羽詰まっているとはいえ、あまりに露骨すぎるその主張に、さすがに困惑する。
 1ゴルドでも節約って。
 いや、女の子のクロリアなら、ちょっとしたお泊り会気分で別に構わないのかもしれないけど。
 僕としては年上のお姉さんの家に泊めてもらうことになるのだから、それなりに抵抗があったりするのだ。
 どうしようかなぁ、と難しい顔をする一方、遠慮なく腕にしがみつくクロリアを見て、ふと思った。
 
 「もしかしてクロリア、オバケの話聞いたから、一人で寝るのが怖くなっただけじゃないの?」
 
 「ぜ、全然違いますよ! 私が苦手なのはオバケではなくて死霊種のモンスターですし、ていうか一人じゃないですし、ミュウもいますし」
 
 「ほんとぉ?」
 
 にやけながら聞いてみると、彼女は僕の腕から離れて悔しそうな表情を浮かべた。
 まあ、ここに泊まりたいって言ったのは、節約したいからというのが本音なんだろうけど。
 クロリアの弱点を知った今、つい意地悪したくなってしまうのだ。
 なんてやり取りを傍らで見守っていたペルシャさんが、少し驚いた様子で言った。
 
 「ま、まさかおさげちゃんが乗ってくるとは思わなかったけど、あたしは全然構わないよ。賑やかなのは大歓迎だし、シロも喜ぶと思うし、何よりあたしも君たちに協力したいからさ。是非うちを使ってよ」
 
 「は、はぁ。じゃあその、お言葉に甘えて……」
 
 渋々といった感じで答えると、魔石鑑定士のお姉さんはにこにこ笑って「うんうん」と頷いた。
 少々予想外の展開となったけれど、これでとりあえず宿の問題は解決したかな。
 あとは大会で優勝できるかどうかだが。
 《ホーンテッドホーム》というエリアの情報が乏しい今、本番に賭けてみるしかない。
 でもうちのパーティーメンバー、めちゃめちゃ怖がってるしなぁ。
 ……不安だ。
 
 それに宿の件も、完全に解決したわけではなく人頼みの結果となっている。
 ペルシャさんは嬉しそうにしてくれているけど、いい年頃の少年少女二人がお邪魔していることに違いはない。
 早々にここを立つ算段を付けなくては。
 もし大会で賞金を獲得したら、宿探しをするのは当然だけど、まず真っ先にペルシャさんに高価な品をプレゼントしよう。
 精一杯のお礼の気持ちを籠めて。
 そう心に決めた僕は、最後にクロリアと一緒に『お願いします』と声を合わせて頭を下げた。
 ペルシャさんは「はいはいよろしくねぇ」と大雑把な返事で、この場を和ませてくれる。
 
 ついでに彼女は、最後に悪戯チックな笑みを浮かべた。
 
 「どうせなら、今晩はお姉さんと一緒に寝るかい? ルゥ君」
 
 「は、はは……じゃあ一緒に寝ますか」
 
 と冗談混じりに返すと、悪戯を仕掛けた本人が目を丸くして頬を染め、クロリアに至っては『ちょっと何言ってんだお前』と言わんばかりの眼光で僕を睨みつけた。
 あくまで冗談のつもりで返したんだけど。
 それぞれ予想とは違った反応を見せ、さすがに当惑する。
 ていうか、クロリアがここで睨むのは理不尽じゃないですか?
 泊まろうって言ったのはそっちなんだし。
 
 せっかくペルシャさんが和ませてくれた空気が微妙になり、その一方で三者の従魔が盛大に欠伸を漏らす中、僕は『そういえば何か忘れているような?』と思いながら、深く嘆息した。
 
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