僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

空 水城

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第6章 肝試し大会編

第百九話 「肝試し大会」

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 「銅級ブロンズの依頼がないって、それは本当なんですか?」
 
 呆けた面で固まっていたクロリアが、恐る恐るといった感じで訊ねる。
 ペルシャさんの言葉を疑っているわけではないだろう。
 あまりに無慈悲な現実を、素直に受け入れることができていないだけだ。
 彼女の問いに対し、やがてペルシャさんがこくりと頷く。
 
 「うん、ホントだよ」
 
 「……」
 
 「ちょいとギルドに用事があったときにね、たまたま依頼の掲示板を見たのさ。レベル変動事件の影響が出てるのもそのときに知ったんだよ」
 
 直接肉眼で確認したのとなれば事実は揺るがないだろう。
 クロリアはまた一層しょぼんと肩を落とす。
 元々、テイマーズストリートに銅級の依頼が少ないっていうのは話に聞いていた。
 だから相応の覚悟を持って拠点移動を決断したのだけれど。
 まさかあの事件の影響がこんなところにまで及び、すべての銅級依頼が銀級に変わっているなんて考えもしていなかった。
 
 「確か君たちって、まだ銅級の冒険者だったでしょ?」
 
 『は、はい』
 
 「それならこの街に着いた時点で、死に物狂いになって銅級依頼を探さないと、一日一件も受けられないって話だよ」
 
 「じ、自分で探さないといけないんですか?」
 
 「それくらい銅級の冒険者は、この街で切羽詰まってるってこと」
 
 依頼は本来、ギルドに送られてくるものではないのだろうか?
 それを冒険者が自ら探さなくてはならない状況というのは、よほどのことである。
 本当に見習いの冒険者は、この街で生きていくのが大変なんだ。
 今一度その現実に肩を重くしていると、隣のクロリアが勘定書を見つめて呟いた。
 
 「そんな状況で借金を返すなんて、絶対に無理ですよね」
 
 ため息まじりの呟きに、ペルシャさんが難しい顔をする。
 
 「うぅ~ん、まあ難しいだろうねぇ。ただでさえ今日食べていくのが大変って人が多いから。それに大体の銅級冒険者は、もうこの街を離れて別の場所に拠点を移動してるよ。……てゆか、別に借金じゃないから心配しなくても大丈夫だよ」
 
 「……」
 
 ペルシャさんはそう言ってくれるも、クロリアはそれを良しとしない。
 今すぐに魔石加工の代金を支払ってしまいたいと考えているのだろう。
 そうでもしなければ、きっと片手に持っているメイスを、これから思う存分使えないと思っている。
 思い詰めた表情で顔を伏せるクロリアに、僕はなんて声を掛けたらいいかわからなかった。
 やがてぼんやりとした思考が脳裏をよぎる。
 
 提案その一――テイマーズストリートを離れる。
 ペルシャさんが言ったように、銅級冒険者である僕たちもこの街を離れれば、他の場所で銅級依頼を受けることができる。
 例えばグロッソの街ならば、まだフローラフォレストのエリア探索だってできるだろうし。
 しかしそれはクロリアが反対するだろうなぁ。
 自分の失態が原因で、パーティー全員で決めた拠点移動を急遽取りやめることになるのは、何としても避けたいところだろう。
 後から遅れてやってくるロメにも、それは知られたくないだろうし。
 
 提案その二――今すぐにペルシア・スタジオを飛び出して依頼を探す。
 これはあまり現実的ではないだろう。
 すでに出遅れている今、ろくに依頼があるはずもなく、選べるわけでもないので報酬も期待できまい。
 それならば近くのエリアに入ってアイテムを採取してくる方がよっぽど現実的だ。
 こちらも報酬はそれほどではないだろうが、一番手軽なので最有力候補になる。
 
 提案その三――メイスを返却する。
 すでに一度戦闘で使用しているので、それでなかったことにはできないだろうが。
 少しお詫び金を乗せて返せばチャラになるのではないだろうか?
 なんてずるい手を考えるけれど、これが一番ないな。
 僕が取り上げようとしても手放さなかったメイスを、クロリアがそう簡単に諦めるはずもない。
 というか返却してなかったことにするのはペルシャさんに対して失礼だ。
 
 以上の思考の末、やはり堅実にエリア探索でちょこちょこと稼いでいくのが無難かな、という結論に至る。
 ――その時。
 
 「と、そんな君たちにちょっと良い話があるんだけどさぁ」
 
 『……?』
 
 「これ、出てみる気ない?」
 
 突如ペルシャさんが、一枚の紙を差し出してくる。
 一瞬首を傾げて固まってしまうが、すぐに手を伸ばしてそれを受け取った。
 僕の頭上と椅子の上でうたた寝をするライムとミュウを除き、クロリアと共に紙面に目を落とす。
 
 「肝試し大会ホーンテッドパーティー? なんですかこれ?」
 
 紙にでかでかと書かれたタイトルを読み上げ、同時に疑問の声も漏らす。
 するとペルシャさんが、すでに冷めきってしまったお茶を啜りながら肩をすくめた。
 
 「ま、簡単に言っちゃうと、エリア探索をする大会だよ。指定されたエリア内でアイテムを拾って、その採取量を競うっていう。新エリアが発見されたら開催される、恒例行事なんだけどね」
 
 「へ、へぇ」
 
 さすがはテイマーズストリート。
 そんなイベントが恒例行事になっているとは知らなかった。
 密かに感心する中、隣のクロリアが、心なしか声を震わせてペルシャさんに訊ねる。
 
 「そ、それにしても、どうして”肝試し大会”なんて名前が付いてるんですか? 普通に探索大会とかで、良くないですか?」
 
 「ん~? あたしも詳しく聞いたわけじゃないんだけどねぇ。普段だったらもっと別の名前が付いてるはずなんだけど、なんかその新しく発見されたエリア…………出るらしいよ」
 
 「で、出るって……何がですか?」
 
 いつの間にか僕の服の袖をぎゅっと摘んでいたクロリア。
 その姿を見て、ペルシャさんはきらんと目を光らせた。
 彼女は猫耳をせわしなく動かし、やがて椅子から立ち上がる。
 怯えながら不思議そうにするクロリアの前で、「にゃは!」と不気味に笑うと、耳元に顔を寄せてぼそっと呟いた。
 
 「オ・バ・ケ」
 
 「えっ……えぇぇぇぇ!」
 
 「……系の野生モンスターが」
 
 「……へっ?」
 
 ぽか~んとするクロリアを見て、ペルシャさんは「にゃははは!」と盛大に笑う。
 どかっと椅子に座りなおすと、呆然とするクロリアを置いて話を始めた。
 
 「君たちも知ってると思うけど、この街の北西側に昆虫種が多く出没する森があるでしょ? ほらあの、《虫群の翅音インセクターズ》が隠れ家にしてた場所」
 
 「あぁ、あそこですか」
 
 「普段は人が立ち入らないエリアってことで、探索はあんまりされてなかったんだけど、君たちが奴らを見つけたこともあって、改めて入念な探索がされるようになったんだ。で、あるとき森の一角に奇妙な館が建っているのが発見された。人が住んでいるはずもないのにランプがチカチカと灯ったり、真夜中に正体不明の呻き声が轟いたり、窓に人影が映ったり……」
 
 「へぇ、そんな所があったんですか……って、ちょっとクロリア、痛い痛い!」
 
 「ま、その正体は館に出没する悪魔種や死霊種の野生モンスターってことで片が付いたんだけどね」
 
 「は、はぁ……」
 
 力強く右腕にしがみついてくる少女を押し退けながら、僕は鈍い反応を返す。
 あまり良い思い出がないあの森に、まさかそんなエリアがあったとは。
 それに今まで立ち入ったエリアとは少々毛色が異なるようだし、ちょっと気になるな。
 ていうか、なんでクロリアはこんなに怯えてるの?
 すがりつく少女に疑問の目を向けていると、ペルシャさんが話を再開させた。
 
 「んで、その館エリアの名前は《ホーンテッドホーム》って言って、エリアの雰囲気や出没する野生モンスターがあまりにも”あれっぽい”ってことで……」
 
 「肝試し大会、になったわけですか」
 
 「そうそう。今は完全封鎖されてて探索ができないようになってるけど、イベントが始まり次第開放されるからさ。そんでイベント期間中にアイテムを一番多く取ってきた人に賞金が贈られて、場合によっては冒険者ランクの格上げも約束されるから、君たちにとってはなんともおあつらえ向きだと思わない?」
 
 「た、確かに……」
 
 まるで僕たちのために用意されたようなイベントだ。
 紙に書かれた要約を見ると、どうやら開催は三日後らしい。
 現在グロッソの街にいるロメの冒険者試験もちょうどそれくらいに執り行われるので、僕たちも彼女に倣って袖をまくり上げて頑張ってみようかなと思う。
 静かな闘志を燃やしながら肝試しイベントの紙に目を落としていると、不意にペルシャさんが焼き菓子を頬張りながら呟いた。
 
 「ちなみに賞金は……なんと30万ゴルド」
 
 『えっ!?』
 
 これにはさすがに、腕にしがみついて固まっていたクロリアも驚きの反応を見せた。
 それも無理はない。何せ30万という大金だ。
 銅級依頼、いや銀級依頼を何十個も達成しなければ到底集められまい。
 今一度紙面に目を移すと、確かに最下部にそう明記されている。
 これはもういよいよ、この大会への期待が最高潮に増してくる。
 競争率は高いだろうけど、それなりに成長した僕らなら可能性は充分あると思うのだ。
 控えめに燃やしていた闘志を猛火の如く点火させ…………僕はふと、右腕にくっついている少女に目を落とした。
 ……ていうか、そろそろ離れてくれませんか?
 
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