行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

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第1章

第5話 調査

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タクシーに乗ってからしばらくして、コータが自分の荷物の中に、買い出しに行った店の袋があることを思い出した。袋には「水谷商店」と書かれており店の所在地と電話番号も書かれていたため、ひとまずそこを目指すことになった。

タクシーに乗ること40分ほど、ようやく目的の店に辿り着いた。コータの話によれば、この店から現場までは歩いて20分くらいかかるらしい。とりあえずはタクシーに待っていてもらい、店の人に昨日・今日この周辺で保護された遭難者等がいなかったか、女の幽霊の噂などがないかと情報収集を行うことにした。

「いらっしゃいませ~。あら、昨日の学生さん?合宿は昨日で終わりだったんじゃないのかい?」

自動ドアを入っていくと、明るくハキハキとした雰囲気のおばさんが店の奥から出てきて声をかけてくる。どうやらコータのことを覚えていたようだ。まあ、普段は地元の人しか来ないだろうし、客商売だからな。

「おばちゃん、こんちは~。合宿は終わったんすけど、ちょっと…。」

コータが言いにくそうにしてこちらをチラッと見てくる。まぁ多少騒ぎにはなるだろうが、別にありのまま言っても不都合はないだろう。むしろ、情報を集めるなら言った方がいい。

「実は昨日、彼と一緒にここに来た学生が、合宿所までの帰り道でいなくなってしまって、探しに来たんです。」

「え~!いなくなった?!一緒に来た子って、あの二枚目の子だろう?なんでまた…。」

俺がコータを指しながら言うと、おばさんはかなり驚いたようだ。ま、それはそうだろうな。

「帰り道で先輩が急に、『女の人の声が聞こえる』って獣道に入ってっちゃって。自分は先に帰るように言われたんっすけど、先輩は結局帰ってこなかったんすよ。」

「私の兄なんです!なにか心当たりありませんか?」

コータが簡単に経緯を説明すると、すかさずミーコも続けて言う。

「お兄ちゃんかい、それは心配だねぇ。でも心当たりと言われても、あたしは昨日会っただけだしねぇ。」

おばさんは眉根に皺を寄せ、気の毒そうに言う。まあ、漠然と心当たりと言われても困るよな。

「昨日今日で遭難者が保護されたとか、何か目撃情報とか噂とかなんでもいいんですが。」

「う~ん、そういう話は聞いたおぼえがないねぇ。…ちょっと待っててくれるかい。」

俺の問いにも心当たりはないと言いながらも、おばさんは待つように言い残して奥に入っていった。
しばらく待っていると、旦那さんらしき男の人と俺達より少し年上の女性を伴って戻ってきた。

「ウチの旦那と娘だよ。山の上の合宿所に来てたこの子のお兄さんが、いなくなったんだって。昨日こっちの子と一緒にウチへ買い物に来てた子らしいんだけど、何か知らないかい?」

おばさんは俺達に二人を紹介した後、二人に向き直って説明をしていく。

「えっ!昨日来てた合宿所の子って、あのイケメンくんが!?うっそ、マジで?それこの子だよね?」

そう言うと、娘さんはスマホの画面を見せてくる。出ているSNSの画面には春樹と撮ったツーショット写真とともに、「イケメン来店!」と書かれていた。

「そうです!この人です!」
「先輩、いつの間にこんな写真…。」

ミーコとコータがかぶりつきで画面を見て答える。

「う~ん、ここの山はそう大きくもないし、めったに遭難者なんて出ないんだがなぁ。」

「だよね。あたし、地元の友達多いけど、このつぶやきにもこの辺でこの人見たってリプないし。」

おじさんと娘さんからも収穫なしか。まあ、いくら小さい町でSNSでも呟いてたからって、昨日今日でそうそう噂は広がらないだろうしな。
それにしても、大学が別になってからあまり外で春樹と会うことはなかったから、二枚目だのイケメンだの続けざまに聞くのは久しぶりだ。なんというか、あまり気分は良くない。まぁ、そのおかげで聞き込みははかどるが。

「それじゃあ、ここの山で女の幽霊が出るとかって噂はありませんか?彼がいなくなったとき、彼にだけ女性の声が聞こえて、それで獣道に入って行ったらしいんですが…。」

「幽霊?そんな話は聞かないねぇ。」
「うん、そんなホラー系の話は聞いたことないよ。」

おばさんと娘さんの二人は幽霊の噂にも心当たりはないらしい。まぁ、『お酢ください』とかふざけた内容だから幽霊じゃないとは思うが。

「幽霊なぁ。…お、そうだ!確か20年くらい前だったか、一時そういう話があったな。えーと、山で女の子が泣いてる声が聞こえるとかって。ほれ、おまえ覚えてないか?総合病院の前にあった薬局の息子の話!」

ん?おじさんは思い当たることがあるのか?でも20年も前の話なら関係なさそうだが…。

「ああ!あったあった!そうだよ、確か家族で山菜採りに行って、その息子だけ声を聞いたって言ってたね。それで2~3日してその子いなくなったんじゃなかったかねぇ?」

おじさんの話で思い出したようで、おばさんが詳しく話してくれる。

「いなくなった?それってハル兄の話とすごく似てるんじゃ…。」

ミーコが顔を青褪めさせる。古い話だが確かに類似点があるのは気になるな。

「そうそう、それから2~3日しても戻ってこないってんで、地元の消防やら猟友会やらが山を大捜索したんだったな。結局見つからなかったんだよなぁ。」

「そんな!」

ミーコはかなり心配を募らせてきているようで、俺の腕をぎゅっと両手で握ってくる。

「そういえば、ずいぶん前、俺がまだガキの頃に神隠し騒ぎがあったな。」

「「「「「神隠し!?」」」」」

おじさんの神隠し発言に、皆一様に聞き返す。おばさんも娘さんも聞き返しているから、初めて聞くものなんだろう。

「ああ、詳しくは覚えてないけど山で子どもが何人か消えたって。まあ神隠し騒ぎはそん時一回きりだったからすっかり忘れてたけどな。」

神隠しか。まさかそんなことが実際にあるわけないとは思うが、この状況では気味が悪い。そういった話は苦手なミーコは、顔色がさっきまでより悪くなっている。コータも同じように青くなっているので、コイツもその手の話は苦手なのかもしれない。
対照的にサーヤは涼しい顔、というより若干興味を惹かれているように見える。そういえば昔から、意外とホラー系とか好きだったな。

「これから山に探しに行くの?」

「あ、はい。そのつもりで来ました。」

娘さんに聞かれたので素直に答える。

「それじゃ、君の連絡先教えてよ。なんか情報あったら送るから。友達とかにも聞いてみるよ。」

「ありがとうございます。助かります。」

ありがたい申し出だったので、連絡先を交換させてもらった。

「帰りに迎えが必要だったら言ってね。お父さんが迎えに行くから!」

「おう、遠慮なく言えよ!って俺かい!そりゃ行くけどさ。そこはお前、自分が行くっていうとこだろ~。」

「あたしの運転下手くそだから人乗せんなって言ったの、お父さんでしょ~。」

「そうだな。って、それもう3年前の話だろうが。だいたいお前は……」

仲イイ父娘おやこだな。っつーか、もう俺たちのことは眼中になさそうだ。まぁなんだかんだで、こっちの暗い雰囲気も少し和らいだ。

俺達そっちのけで仲良し父娘おやこの言い合い(漫才?)はしばし続いた。

「ごめんねぇ、この二人はいつもこんなだから、相手にしなくていいからね。それより、これ、持って行きなさい!」

いつの間にかどこかへ消えていたおばさんが戻ってきて、背後から声をかけてきた。そして、振り向きざまに持っていた布袋を二つ渡してくる。見ると、お店の商品なのだろう、ペットボトルのお茶やジュース、おにぎりやパンなどが入っている。

「そういえば、昼メシどうするか考えてなかったです。これ、おいくらですか?」

今の時刻は11時過ぎ。おにぎりやパンなら歩きながらでも食べられるから、そういう意図で選んでくれたんだろう。袋もナップサックというんだったか、背負うことができるタイプだから山歩きにも邪魔にならない。おばさんの気遣いが素直に嬉しい。

「何言ってんの!そんなのいいから持っていきなさい。」

袋は帰りにでも返すとしても、二つの袋にはたっぷりの食料が入っている。厚意を断るのは申し訳ないが、さすがにこれは気が引ける。

「いえ、そういう訳には…。それにこんなにたくさ「若者が遠慮なんかしないの!」」

「ですが「ほら、あの二枚目くんもお腹すかせてるかもしれないだろ?早く行った行った!」」

おばさんが俺の背後に回って背中を押しながら言う。

「おう、持ってけ持ってけ。早く見つかるといいな!アシが必要になったら遠慮なく呼べよ!!」

おじさんまで加わって、コータの背中をバンっと叩きながら言う。押しの強さにどうしたものかと皆を見ると、皆も少し困ったような、戸惑いの顔を浮かべている。ふと娘さんを見ると、自分のスマホを指差している。その瞬間、手に持っていた俺のスマホが震えたので見ると、娘さんからのメッセージを受信したところのようだ。

『お代はイケメン君を紹介してくれたらいいよ!無理だったら君とデートでも可。』

…。『』ですか。ソーデスカ。
なんか一気に脱力したな。よし、ここはおじさんとおばさんの厚意に甘えて、お代はきっちりに払ってもらおう。
俺達は三人に礼を述べて出発した。
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