行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

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第1章

第9話 探索

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俺はミーコと組んで探索を開始した。主に俺が調査を、ミーコが周辺警戒を担当する。効率は悪いが、モンスターや野生の動物に襲われる可能性もあるため、警戒を怠るわけにはいかないからな。サーヤとコータのペアも同じように、コータが警戒担当で探索を始めた。
まずは今いる草原と、その周りの森林の浅いところから順に見ていく。周囲の様子の確認はもちろんだが、地球に帰る手掛りや寝床ねどこになりそうな場所、もしくは人里に続くような道を早く見つけなければ。さすがにこの草原で野宿はしたくないからな。

しかし、俺とミーコはまず、草原の草をかき分けて探し物をした。ミーコがスマホをなくしたと言うからだ。こちらでは持っていても通信機能を使うことはできないし、いずれ充電も切れてただの四角い物体になってしまうが、落としたままというのも気になる。
それにしても、この草原の草は膝くらいの高さまで生い茂っているため、パッと見ただけでは小さなスマホなど見つからない。探すのは一苦労だな。

「見つからないな。」

ため息をつきながらそうらすと、ミーコが謝ってくる。

「う、ゴメンね。電話できれば着信音ですぐ見つかるのにね。」

「まぁ、それは言っても仕方ないだろ。っつーか、もしかしてに落としてきたんじゃないのか?春樹のみたいに…。」

「「あっっ!!!」」

自分でぼやいておきながら、今更ながら、ある一つの可能性に気付き、ミーコと同時に声を上げて顔を見合わせる。

「ハル兄も、もしかしてに来てるかも?」

「だな。アイツのスマホはほこらのすぐそばにあったし、周りに姿はなかった。その可能性は充分あるだろう。」

なぜ今までその可能性に思い至らなかったのか。自分では冷静に状況判断していたつもりだったが、思っている以上に冷静ではなかったってことか。俺もまだまだだな。

「だよね!だよね!?だからきっと、ハル兄帰ってこなかったんだよね!」

ミーコが涙目で嬉しそうに言う。
もちろん、まだと決まったわけではないし、こっちに来ていたとしても無事かどうかわからない。知らない土地、知らない世界で探せるのかどうか、いや、自分達が生き残れるかどうかさえ怪しい。
だが、先ほどまでは「もう帰れないかも。もう会えないかも。」と思っていたのだろうから、会える可能性が少し見えただけでも喜ばしいことだろう。
こんな状況だ。コータのように楽しめるならいいが、「ただ生きていく」というのは精神的に辛いものがある。人間、何かしら目標や目的がある方が生きる気力が得られるというもの。俺もとりあえずは「春樹を見つけ出してボコボコにする」のを目標にするかな。

そう思いながらスマホ探しを再開したところ、数分で見つけることができた。これでようやく本格的に探索ができる、そう思ったところでサーヤの声が耳に届いた。

「優介さん!ちょっとこっちに来てください!」

何か発見したのだろうか?俺とミーコは頷き合いサーヤ達のもとへ駆けつけた。

「どうした?何かあったか?」

「こっちです。この木の裏、見てください。」

サーヤが示したのは、草原のきわにある一本の木だった。俺一人では腕が回らないくらいの太さがある木だ。言われたとおりに裏側にまわって見ると、その根元に石造りの祠があった。俺たちがここに来るキッカケとなった、あの山にあった祠とほぼ同じもののようだ。

「これは…!」「これって!」

俺とミーコが同時に声をあげた。

「これは、あそこにあった祠か?よく似ている。」

思わず独り言のようにつぶやくと、ミーコが返事する。

「うん、すごく似てるね。でもあの祠そのものじゃないみたいだよ。あの山にあったやつは、この辺りが欠けてたもん。」

そういって祠の屋根の端を指差す。そんな細かいとこ、よく見てたな。

「そうか。ここは俺たちが倒れていた場所から数メートルしか離れてない。この祠同士が地球とこの場所を繋いでいるのかもな。」

「ですよね。それなら、この祠から地球に帰れるかもしれないですよね。」

サーヤが少し期待を込めた表情で言う。

「でも、あん時の青い光はないみたいっすよ。自分たちは祠というよりは、あの光に吸い込まれたんっすよね?」

確かにそうだ。俺は恐る恐る祠の中心あたりに手をかざしてみるが、何も起こらないし光も発生しない。

「何も起こらないな。この祠が世界を繋いでいるのだとしても、転移とやらが発生するにはもっと何か条件があるのかもしれないな。あるいは、あの山からこちらへの一方通行というのも考えられる。」

「他の条件…。なにか呪文とか、魔力とかっすかね?『転移』なんて魔法っぽいし!」

俺が思ったことを口にすると、コータが若干興奮気味に言う。ほんとにファンタジー系好きだな。

「でも、あの時は特に呪文とか関係なく、勝手に吸い込まれたと思いますけど…。」

すかさずサーヤが反論する。

「確かにそうだな。ただ落ちただけで何もしていない。他の要素があるとすれば、俺たち以外の何か、もしくは何者かがそれをおぎなったということか。」

俺が『何者か』と言った瞬間、皆に少しだけ緊張が走る。仮に誰かが何かの目的でそれを行ったのだとしたら、その誰かが近くにいるかもしれない。しばらく周囲をうかがうように皆が無言でいたが…

「俺たち以外に人の気配はないな。そもそも、そういう人物がいるのなら、もう既に向こうから接触してきているだろう。それに、悪意があってのことなら、さっき気を失っていた間にどうにでもできたはずだ。」

「そうっすよね。勇者として召喚されたのかと思ってちょっとドキドキしちゃったっすよ…。」

「「……」」

コータが少し残念そうに言うので、俺もサーヤも脱力し、呆れ顔で見るしかできない。相変わらず能天気なヤツだ。そう思っていると、ミーコはコータの言葉に反応して考え込み、何かブツブツ言っている。

「勇者…召喚…。」

「ミーコ、どうしたの?」

サーヤもミーコの様子に気が付いてたずねる。

「うん、あのね、さっきあっちでユウ兄とスマホ探してる時、ハル兄もこっちに来てるんじゃないかって話になったの。ほら、のそばにハル兄のスマホだけあったでしょ?」

「あ、そっか!そうね、その可能性はあるわね。」

サーヤも言われて気付いたという感じだ。横でコータも盛大に頷いている。

「でね、コータ君が言ってたけど、ハル兄は「女の人の声がする」って山に入ってったんだよね?だったら、その女の人が祠に何かして、ここにハル兄をんだんじゃないかなって思って…。」

「なるほど!先輩が召喚されたってことっすか。うん、あり得るっすね!」

コータが納得顔で肯定すると、今度はサーヤが反論する。

「でも、聞こえた声って確か「お酢ください」でしたよね?お酢が欲しくて異世界から召喚って。方法はわからないけど、そんな気軽なものじゃないと思いますけど…。」

「確かにな。そんな理由でいちいち召喚されてたら、地球に人がいなくなる。まあ、召喚ってことを除いても「お酢ください」っていうのはおかしいから、聞き間違いだろ。」

サーヤの発言でお酢のことを思い出し、笑いそうになるのを堪えながら言うと、ミーコも微妙な表情になりながら言う。

「ま、まあ理由はともかく、ハル兄もこの世界にいるかもしれないよね?ね?」

皆もその意見に反対はないようで、頷いている。

「春樹がこっちに来ている可能性は確かにある。だが、この祠と向こうの祠が繋がっているなら、ここから帰れる可能性もあるかもしれない。どうする?」

俺は今後の方針を決めるべく、皆それぞれどうしたいかを聞いていった。
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