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第1章
第21話 学習
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宿の女将のアヤメさんに、一郎さんの話と彼の遺言について聞いたあと、俺たちもここに至る経緯を簡単に説明した。
「やはり、あの迷いの森を抜けてこられたんですね。ここまで無事に辿り着かれて本当に良かったですわ。今の時期はジャイアントピーコックの繁殖期で、あの辺りは本当に危険なのですよ」
「ファントム・フォレスト……。やはり、と言うことは一郎さんも?」
「ええ。そう聞いています。あの森は、外から見るとそれほど大きくはないのです。ですが、一度中に入ると何時間も彷徨った挙句に元の場所に戻ってくると言われていて、誰も近寄りません。それでファントム・フォレストと呼ばれています」
そこでアヤメさんは一旦言葉を切り、少し考えてから言葉を続ける。
「この国にある古い言い伝えなのですが、『切なる願いが天に届いた時、神によって道が拓かれる』という『導きの森』が国のどこかにあると言われています。先ほど、森の中で急に道ができたと仰いましたよね。ただの想像ですが、もしかしたら……」
「ファントム・フォレストがその『導きの森』だと?」
「はい。あくまで言い伝えなので、本当にあるのかどうかも怪しいのですが……」
「そういえばあの道ができた時『早くハル兄を探しに行きたい!』って心から願ってたよ!」
「あー、そんなこと言ってたな。そう言われると確かに、あの道は本当に森に導かれたって感じでしたね」
「あっ! それじゃあさ、あの山の守り神っていうクジャクも、本当はあの森を守ってるんじゃない?」
「なるほど! ありえるっすね」
「私達が襲われたのは、森から出てしばらくそのまま留まっていた時でしたね。ちょうど、優介さんが森の方に向き直るようにして話し合いを始めたときに向かってきて……」
「アイツは終始俺を攻撃してきたな。森に入ろうとしていると見做されて、阻止するために攻撃されたってことか?」
「森から出てきた後は襲ってこなかったっすよね」
「入ろうとする者は攻撃、出てきた者は素通り、か……」
本当にあれが『導きの森』だとしたら、仮にあの祠から地球に戻る術を見つけたとしても、その願いが天に届かなければ辿り着けないということか…。そして、あの鳥に襲われると。……命がけだな。
しかし、今考えたところでどうなるものでもない。この件は保留だな。
「まぁ、これは仮説にすぎないし、とりあえずこれからの話をしよう」
皆それぞれにあの森や鳥について考えているようだったが、強制的に打ち切った。
「そうですね。それで皆さんは、これからどうされるおつもりなんですか?」
「先ほど簡単に話しましたが、行方不明の友人もこちらに来ている可能性が高いので、捜したいと思っています」
「そう、ですか……。
ですが話しました通り、その、あなた方より前にここへ来た日本人に心当たりはありませんし、捜すのはかなり難しいのでは? それに、旅はとても危険ですよ?」
俺たちと春樹の関係性も話してあるので、アヤメさんはチラリとミーコを見て、言いにくそうに言葉を選びながらも忠告してくれる。
「はい、もちろん難しいことも危険なことも承知してます。なので、この世界の常識と魔法やモンスターについてなど、教えていただけませんか?」
そう言うと、アヤメさんはゆっくりと俺たちの顔を順に見て、一つ息を吐いてから口を開いた。
「皆さん同じ考えのようですね。……分かりました。何でもお尋ねください。私達に分かることならお答えします。それと、魔法も使えるようにお教えしますね」
「「ありがとうございます」」
「「よろしくお願いします!」」
ーーーーーーーーーー
それから途中昼食をはさみつつ、この世界の常識を中心に色々なことを教えてもらった。
それによると、この世界はアリアと呼ばれており、確認されている大陸は1つしかないらしい。大陸の周辺にはいくつか大きめの島があるそうで、無人島もあれば島が丸ごと1つの国というところもあるそうだ。そして今俺たちがいるエステバンという国は、大陸の南東の方にある王国とのことだ。
このアリアでも1日は24時間とされているらしいが、1週間は6日間、5週間で1ヶ月、12ヶ月で1年となるらしい。このあたりのことは、おおむね地球と似通っているので分かりやすいな。
しかし、このエステバン王国は、気候については日本とかなり違いがあるようだ。
飛ばされる前、日本は7月の終わりだった。山に行くので長袖を用意していたので今はそれを着ているのだが、特に寒いとも思わないくらいの気温だ。だというのに、今は11月に入ったばかりなんだそうだ。
11月といえば、日本では少し厚着を始める季節。夜ともなれば結構冷えて、こんな薄い長袖シャツで過ごせる時期ではない。いや、沖縄あたりならそうでもないか? しかし、ここフォンド村は山の中腹にあるのだ。違和感が半端ない。
聞けば、エステバン王国は1年を通して温暖な気候なんだそうだ。一番寒い1月頃でも、今の格好に薄手のマントを羽織る程度で過ごせるらしい。そのため、農業や牧畜が盛んに行われており、食糧事情は昔から安定しているそうだ。まぁ過ごしやすいのはありがたい。
その他にも、周辺諸国の話や近くの村や町のこと、身分制度や貨幣価値などについても教えてもらった。
ーーーーーーーーーー
アリアやエステバン王国での暮らしなど、いわゆる「常識」について聞きたい事はおおむね聞き終わった。後はモンスターや魔法について聞かなければ。
そう思いつつ、なんとはなしに懐中時計を取り出して見る。
「14時前か…」
ボソっと呟いた俺の声に、ノバラの耳がピクっと反応する。
「何ですかソレ? 時間がわかるんですか? 魔道具!?」
「いや、懐中時計といって時間が分かるものだ。それより、魔道具というのは?」
懐中時計よりそっちの方が余程気になるのだが、ノバラは興味津々で身を乗り出してくるので、時計を渡してやった。
「そういえば、魔道具についてはまだ話していませんでしたね。魔道具は魔力を使って動く道具なんです。時間も『時計の魔道具』で知ることができますが、村には教会に1つあるだけで、定時に鐘が鳴るようになっています」
「魔力を使ってということは、魔力を供給する必要があるんですか?」
「ええ。魔石と呼ばれる石をセットして使います」
「へぇ~、オモシロそう!」
「時計の他にはどんな魔道具があるんですか?」
ミーコとサーヤも興味を惹かれているようだな。もちろん俺もだが。
「うちでは厨房に、調理用のコンロとかお肉などを入れておく保冷庫なんかがありますね。
今はちょうど、夕方の仕込みが始まるまでの休憩時間ですから、どうぞ」
アヤメさんはそのまま立って厨房へ案内してくれた。
厨房の奥の床下に収納スペースがあり、アヤメさんがそこを開けるとヒヤッとした空気が流れてきた。
「これが保冷庫です。ここに魔石が入っていて、温度を一定に保ってくれます」
「なるほど。地下に埋めて効率を良くしているんですね」
見ると、拳大ほどの黒光りする石が庫内に設置されていた。これが魔石なのだろう。
「はい。それで、こちらがコンロの魔道具です。ここのツマミで温度の調節ができるんですよ」
コンロは二口タイプで、ガスコンロやIHではなく電気コンロのような感じだ。仕組みや素材なんかは全く分からんが、火が出るのではなく、上部の蚊取り線香のような螺旋状の部分が熱を発するらしい。
「こういう魔道具って普通の一般家庭なんかにもあるんすか?」
「この村ではほとんどないですね。魔道具も魔石もちょっと高価なものですから。うちでもコンロの魔道具は極力使わないようにしていますしね。大きな街や王都に行けば、もう少し一般的に使われているようですけど」
魔道具も魔石も高いとうのは異世界もののラノベでもよくあるな。とすると、魔石の出所は定番のモンスターか? ホーンラビットの解体の時には特にそういう話題は出なかったが……。
「アヤメさん、魔石というのはどこから採れるんですか?」
「魔石はモンスターや動物、人など魔力を持っている生物の身体の中心にあります。いわば魔力の源のようなものですね。魔力の多いモンスターほど、大きく質の良い魔石を持っているらしいですよ」
「人にもあるんですか!?」
「はい。ごくごく小さいものですが」
「えーと、地球生まれの私達にもあるんでしょうか?」
「……さすがにそこまではわかりませんが、皆さんはステータスの確認はされたんですよね? MPがあるなら、魔石もあると思いますよ」
……マジか。そんなもんがあるようには全く感じないが……。
なんとなく気になって自分の腹に手を当てていたが、他の3人も同様に手を当てたり押したりしているようだ。そんな俺たちの様子を見ながら、アヤメさんはクスリと笑って教えてくれる。笑われてしまったが、嫌味な感じはしない。
「魔石はおへその上辺りにあるらしいですよ。魔法を使う時はそこを意識するんです。そろそろ魔法についてお教えしましょうか」
そう言って、アヤメさんは宿の裏手の方へ俺達を案内していった。
「やはり、あの迷いの森を抜けてこられたんですね。ここまで無事に辿り着かれて本当に良かったですわ。今の時期はジャイアントピーコックの繁殖期で、あの辺りは本当に危険なのですよ」
「ファントム・フォレスト……。やはり、と言うことは一郎さんも?」
「ええ。そう聞いています。あの森は、外から見るとそれほど大きくはないのです。ですが、一度中に入ると何時間も彷徨った挙句に元の場所に戻ってくると言われていて、誰も近寄りません。それでファントム・フォレストと呼ばれています」
そこでアヤメさんは一旦言葉を切り、少し考えてから言葉を続ける。
「この国にある古い言い伝えなのですが、『切なる願いが天に届いた時、神によって道が拓かれる』という『導きの森』が国のどこかにあると言われています。先ほど、森の中で急に道ができたと仰いましたよね。ただの想像ですが、もしかしたら……」
「ファントム・フォレストがその『導きの森』だと?」
「はい。あくまで言い伝えなので、本当にあるのかどうかも怪しいのですが……」
「そういえばあの道ができた時『早くハル兄を探しに行きたい!』って心から願ってたよ!」
「あー、そんなこと言ってたな。そう言われると確かに、あの道は本当に森に導かれたって感じでしたね」
「あっ! それじゃあさ、あの山の守り神っていうクジャクも、本当はあの森を守ってるんじゃない?」
「なるほど! ありえるっすね」
「私達が襲われたのは、森から出てしばらくそのまま留まっていた時でしたね。ちょうど、優介さんが森の方に向き直るようにして話し合いを始めたときに向かってきて……」
「アイツは終始俺を攻撃してきたな。森に入ろうとしていると見做されて、阻止するために攻撃されたってことか?」
「森から出てきた後は襲ってこなかったっすよね」
「入ろうとする者は攻撃、出てきた者は素通り、か……」
本当にあれが『導きの森』だとしたら、仮にあの祠から地球に戻る術を見つけたとしても、その願いが天に届かなければ辿り着けないということか…。そして、あの鳥に襲われると。……命がけだな。
しかし、今考えたところでどうなるものでもない。この件は保留だな。
「まぁ、これは仮説にすぎないし、とりあえずこれからの話をしよう」
皆それぞれにあの森や鳥について考えているようだったが、強制的に打ち切った。
「そうですね。それで皆さんは、これからどうされるおつもりなんですか?」
「先ほど簡単に話しましたが、行方不明の友人もこちらに来ている可能性が高いので、捜したいと思っています」
「そう、ですか……。
ですが話しました通り、その、あなた方より前にここへ来た日本人に心当たりはありませんし、捜すのはかなり難しいのでは? それに、旅はとても危険ですよ?」
俺たちと春樹の関係性も話してあるので、アヤメさんはチラリとミーコを見て、言いにくそうに言葉を選びながらも忠告してくれる。
「はい、もちろん難しいことも危険なことも承知してます。なので、この世界の常識と魔法やモンスターについてなど、教えていただけませんか?」
そう言うと、アヤメさんはゆっくりと俺たちの顔を順に見て、一つ息を吐いてから口を開いた。
「皆さん同じ考えのようですね。……分かりました。何でもお尋ねください。私達に分かることならお答えします。それと、魔法も使えるようにお教えしますね」
「「ありがとうございます」」
「「よろしくお願いします!」」
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それから途中昼食をはさみつつ、この世界の常識を中心に色々なことを教えてもらった。
それによると、この世界はアリアと呼ばれており、確認されている大陸は1つしかないらしい。大陸の周辺にはいくつか大きめの島があるそうで、無人島もあれば島が丸ごと1つの国というところもあるそうだ。そして今俺たちがいるエステバンという国は、大陸の南東の方にある王国とのことだ。
このアリアでも1日は24時間とされているらしいが、1週間は6日間、5週間で1ヶ月、12ヶ月で1年となるらしい。このあたりのことは、おおむね地球と似通っているので分かりやすいな。
しかし、このエステバン王国は、気候については日本とかなり違いがあるようだ。
飛ばされる前、日本は7月の終わりだった。山に行くので長袖を用意していたので今はそれを着ているのだが、特に寒いとも思わないくらいの気温だ。だというのに、今は11月に入ったばかりなんだそうだ。
11月といえば、日本では少し厚着を始める季節。夜ともなれば結構冷えて、こんな薄い長袖シャツで過ごせる時期ではない。いや、沖縄あたりならそうでもないか? しかし、ここフォンド村は山の中腹にあるのだ。違和感が半端ない。
聞けば、エステバン王国は1年を通して温暖な気候なんだそうだ。一番寒い1月頃でも、今の格好に薄手のマントを羽織る程度で過ごせるらしい。そのため、農業や牧畜が盛んに行われており、食糧事情は昔から安定しているそうだ。まぁ過ごしやすいのはありがたい。
その他にも、周辺諸国の話や近くの村や町のこと、身分制度や貨幣価値などについても教えてもらった。
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アリアやエステバン王国での暮らしなど、いわゆる「常識」について聞きたい事はおおむね聞き終わった。後はモンスターや魔法について聞かなければ。
そう思いつつ、なんとはなしに懐中時計を取り出して見る。
「14時前か…」
ボソっと呟いた俺の声に、ノバラの耳がピクっと反応する。
「何ですかソレ? 時間がわかるんですか? 魔道具!?」
「いや、懐中時計といって時間が分かるものだ。それより、魔道具というのは?」
懐中時計よりそっちの方が余程気になるのだが、ノバラは興味津々で身を乗り出してくるので、時計を渡してやった。
「そういえば、魔道具についてはまだ話していませんでしたね。魔道具は魔力を使って動く道具なんです。時間も『時計の魔道具』で知ることができますが、村には教会に1つあるだけで、定時に鐘が鳴るようになっています」
「魔力を使ってということは、魔力を供給する必要があるんですか?」
「ええ。魔石と呼ばれる石をセットして使います」
「へぇ~、オモシロそう!」
「時計の他にはどんな魔道具があるんですか?」
ミーコとサーヤも興味を惹かれているようだな。もちろん俺もだが。
「うちでは厨房に、調理用のコンロとかお肉などを入れておく保冷庫なんかがありますね。
今はちょうど、夕方の仕込みが始まるまでの休憩時間ですから、どうぞ」
アヤメさんはそのまま立って厨房へ案内してくれた。
厨房の奥の床下に収納スペースがあり、アヤメさんがそこを開けるとヒヤッとした空気が流れてきた。
「これが保冷庫です。ここに魔石が入っていて、温度を一定に保ってくれます」
「なるほど。地下に埋めて効率を良くしているんですね」
見ると、拳大ほどの黒光りする石が庫内に設置されていた。これが魔石なのだろう。
「はい。それで、こちらがコンロの魔道具です。ここのツマミで温度の調節ができるんですよ」
コンロは二口タイプで、ガスコンロやIHではなく電気コンロのような感じだ。仕組みや素材なんかは全く分からんが、火が出るのではなく、上部の蚊取り線香のような螺旋状の部分が熱を発するらしい。
「こういう魔道具って普通の一般家庭なんかにもあるんすか?」
「この村ではほとんどないですね。魔道具も魔石もちょっと高価なものですから。うちでもコンロの魔道具は極力使わないようにしていますしね。大きな街や王都に行けば、もう少し一般的に使われているようですけど」
魔道具も魔石も高いとうのは異世界もののラノベでもよくあるな。とすると、魔石の出所は定番のモンスターか? ホーンラビットの解体の時には特にそういう話題は出なかったが……。
「アヤメさん、魔石というのはどこから採れるんですか?」
「魔石はモンスターや動物、人など魔力を持っている生物の身体の中心にあります。いわば魔力の源のようなものですね。魔力の多いモンスターほど、大きく質の良い魔石を持っているらしいですよ」
「人にもあるんですか!?」
「はい。ごくごく小さいものですが」
「えーと、地球生まれの私達にもあるんでしょうか?」
「……さすがにそこまではわかりませんが、皆さんはステータスの確認はされたんですよね? MPがあるなら、魔石もあると思いますよ」
……マジか。そんなもんがあるようには全く感じないが……。
なんとなく気になって自分の腹に手を当てていたが、他の3人も同様に手を当てたり押したりしているようだ。そんな俺たちの様子を見ながら、アヤメさんはクスリと笑って教えてくれる。笑われてしまったが、嫌味な感じはしない。
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