行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

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第1章

第30話 調合

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ケインさんに協力の約束を取り付けた俺は、早速外に出て皆にそのむねを伝えた。
その後、使い込まれた大剣を持って家から出てきたケインさんに、改めて各々おのおの自己紹介をし、現在のレベルやステータス、魔法やスキル等についても申告していった。

その間、ケインさんは終始黙って聞いていたが、全員終わると険しい顔で口を開いた。

「修行は厳しくやる。甘い考えでいると死ぬぞ。一人の油断が全員の命を危険にさらす。覚悟のないやつは大人しく宿に帰れ」

そう言って、俺たちの横をすり抜けてさっさと歩き出した。
俺たちはお互い顔を見合わせてうなずきあい、ケインさんの後を追って歩き出した。とそこで、ノバラがケインさんに走り寄って声をかける。

「ケインさ~ん、私も一緒に行っていいですよね?」

「…帰れ」

「えー!? 私レベル14ですよ! みんなと一緒に剣の練習もしたし、魔法も使えますよ!」

「お前は一緒に旅するわけじゃないだろう。邪魔だ」

「じゃあ見てるだけ! 離れて見てるだけなら邪魔にならないですよね?」

「邪魔だ。帰れ」

「そうよ、ノバラ。無理言わないの」

「うぅ。はぁい…」

ケインさんが一際ひときわ厳しい声で言い、アヤメさんにもたしなめられて、渋々ノバラは諦めた。

「皆さん、頑張ってくださいね。ノバラと一緒に『赤い狐亭』で待ってますから! それから、これ持っていってお昼に食べてくださいね」

アヤメさんが、宿から持ってきていた袋をコータに渡しながら言う。

「わっ! サンドイッチ! うまそ~。あざっす!」

「「「ありがとうございます!」」」

お礼を言ってから、そんなやりとりの間も止まらずに歩き続けているケインさんを追って、早足で出発した。

ーーーーーーーーー

道中ほとんどしゃべらないケインさんに付いてきて辿たどり着いたのは、数日前にマックスと薬草を探した草原だった。
ケインさんはさすが元高ランク冒険者というべきか、ただ歩いているだけなのにスピードが早く、俺たちは時折ときおり小走りになりながらなんとか遅れず付いて来て、草原でケインさんが足を止めた時には若干息が上がっていた。

そんな俺たちを見てケインさんは「情けない」とでも言うかのような顔でため息を吐いた後、足元から1種類の草を採り、いつの間にか手に持っていたもう1種類の草と合わせて俺に手渡した。

「その2種類の草を1人3本ずつ採って来い」

ケインさんが言う2種の草のうち、1つはタンポポの葉っぱのような細長いギザギザの葉で、ちぎれた部分から血のようなニオイがただよってきて思わず顔をしかめてしまった。
もう1つは四葉のクローバーによく似た小さな草で、葉の表面が水玉模様になっているものだった。なかなかにポップで可愛らしい葉っぱだ。

どのような意図があってこの2種の植物を探すのかはわからないが、早く訓練を始めるためにもさっさと探しだそう。

1人3本ずつとのことなので、それぞれ別れて草を探す。ミーコとコータは「絶対一番に見つける!」とか「よーし!」とか言いながら、気合を入れて少し離れた所へ駆け出していった。サーヤは動かず自分の足元から探し始める。

俺はケインさんが先程草を千切ちぎり採った周辺から探し始めた。ケインさんが足元から採った方は、葉の模様をのぞけばクローバーに酷似こくじしている草だから、群生ぐんせいしている可能性があると踏んだからだ。周りの他の草より背が低く、パッと見ただけではわかりにくかったが、予想通り群生していてすぐに見つかった。

もう一方のタンポポのような草は、大きく葉を広げている形状からして、周りに背の高い草が少ない、開けた場所にありそうだ。ケインさんがいつの間にか手にしていたことから考えても、近くに行けばすぐにわかるんじゃないだろうか。辺りを見回してそういう場所に目星をつけて探すと、こちらもすぐに見つかった。

それぞれ3本ずつ採集してケインさんのもとへ戻る。遠くでコータの「あった!」という声が聞こえたが、全部集めて戻ったのは俺が一番早かった。

「ずいぶん早かったな」

「予想が当たったので。…ところで、これを集める理由を伺ってもいいですか?」

「後で説明する」

「…はい」

1人だけ早く終わってしまい、ケインさんと2人並んで待っているが……間が持たない。いや、ケインさん的には静かでいいのかもしらんが、なんか気まずい。誰か早く帰って来いよ!
沈黙が続いて居心地が悪く、そういえばアヤメさんが「ケインさんは魔法もかなり使える」と言っていたことを思い出したので質問してみた。

「あの、ケインさん。魔力の流れを感じるというのがどうにも上手くいかないんですが、何かコツとかいい方法はありませんか?」

すると、ケインさんはチラリとこちらを見てからすぐに答えてくれた。

「お前は考えすぎなんだろう。連中のように身体を動かせ」

ケインさんはあごでミーコとコータを指し示していた。うん。未だに納得がいかないが、あの2人がすぐに出来ていたのは事実だ。

「わかりました。少し2人を見習ってみます」

考えすぎか。うーん、「考えるな、感じろ」ってヤツか? ブルー○・リーとヨー○が頭にちらつくが、ケインさんはどちらかと言えばブ○ース・リー寄りか。まぁ、そんなことはどうでもいい。ケインさんの真意はよくわからんが、どうせ今は暇なことだし、とりあえず素振りでもしておこう。

俺はケインさんから少し距離をとって、皆が戻るまで30分近く素振りを続けた。ちなみに、2番目に戻ったのはサーヤで、3番目がコータ。僅差きんさだったが、最後は「絶対一番」と言っていたミーコだった。

「最後の2人。注意力を養え。そして考えなしの行動は改めろ」

「「うぅっ、…はい」」

その後、ケインさんは俺たちが集めた2種類の草を細かく千切り、持ってきていた小瓶こびんに入れて棒ですりつぶした。そして水を少し加えてコルク栓をしてから撹拌かくはんし、小瓶を両手でしばらく包み込んでから俺に手渡してくる。

「ニオイをいでみろ」

言われたとおり、栓を抜いて嗅いでみる。

「「「「…!!!」」」」
「「げぇっほ! げほっ! ごほっ!」」
「「ぐぅっ! うぐぅっ…」」

臭っっっさ!! 臭すぎて言葉が出ない。吐き気がしてきた。
このニオイ、あれだ! この前のホーンラビット解体の時に嗅いだようなニオイだ! しかもアレの数倍は強烈な強い刺激臭だ。
咳き込んだり吐き気をおさえている俺たちを見て、ケインさんは心なしか楽しそうな表情になっている。

「これは冒険者時代にとある国で知った調合法だ。このニオイにゴブリンやオークが寄ってくる」

なるほど。ケインさんが百発百中でモンスターを狩ってくる秘密はコレか。それにしてもよく平気な顔して潰してたな。

「ケインさん、よくこれを平気ですり潰したりしてましたね」

「最後に魔力を込めなきゃ、それほど臭わん」

あー、確かに潰してる間、割と近くで見てたけど臭ってこなかったな。最後に瓶を両手で持ってたのは魔力を込めるためだったのか。

「それじゃあ行くぞ。ここで暴れたら、貴重な薬草がダメになりかねん」

ケインさんは、未だダメージが残る俺たちを気にも留めず出発した。もちろん俺たちは追いかけるしかない。各々慌てて荷物を持ち直し、ケインさんの後に続いた。
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