行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
33 / 44
第1章

第32話 指導

しおりを挟む
ゴブリンとの初戦は、一瞬驚いたり戸惑ったりという場面があったものの、誰も怪我などなくあっさりと終わった。

現在俺たちの前には、上下真っ二つになったゴブリンが2匹と、うつ伏せで絶命したゴブリンが転がっている。
俺はゴブリンにトドメをさした後、フゥー、と息をいてから、ナイフを引き抜いて立ち上がった。抜いた傷口からは、人や動物のソレよりも黒味がかった血が流れ出ている。しばしそのまま立ち尽くしていると、ケインさんがナイフの刃に水をかけて血を流してくれた。

「いいナイフだ。汚れと水気は毎回しっかりとっておけ」

そう言って手拭いを渡してくれるので、ナイフを丁寧にいていった。

「師匠! どうだったすか!?」
「師匠ってホンットすごいんだ!    めっちゃカッコ良かった~!」

コータもミーコも魔法の時より更に興奮してるようだ。ケインさんから師匠になってるし。
まぁ、確かに凄かったよな。あれが元高ランク冒険者か。ホントに怪我で引退したのかと、疑いたくなるような身のこなしだった。

「おまえ「コータっす」…コータは、まぁとりあえずいいだろう。剣術スキルを磨け」

「うっす!  あざっす!! …あ、あの、剣術スキルを磨くって、どうしたらいいんすか?」

コータは好感触の評価を得て嬉しそうにガバっと礼をしたが、少し戸惑いがちに質問した。

「普通に剣を振ってりゃあ勝手に伸びてく」

「はい! あっ、剣術スキルの効果ってなんすか?」

スキルの効果は気になるよな。ステータスでは説明のようなものはなかったらしいし。

「スキルが上がれば補正がつく」

「補正っすか?」

「技のキレや剣の切れ味が良くなったり、与えるダメージがデカくなったり、身体に返ってくる負荷が軽減されたり。とにかくやればやるだけ有利になる」

補正か…。技とかそういうものではないんだな。そういえば、ケインさんの大剣はパッと見切れ味が良さそうには見えないけれど、さっきはゴブリンを一刀両断したんだった。あれも補正の効果なのかもしれないな。

「なるほど! 頑張りまっす!」

「ユウスケ、だったか「はい」…盾持ちが敵を見失ってるようでは話にならん」

「うっ、はい。すみません」

「盾の陰に隠れるな。攻撃の瞬間に合わせろ」

「はい!」

「師匠! あたし! あたしはどうでしたか!?」

ミーコが前のめりになってケインさんの評価を聞きだそうとするが…、お前何もしてないのに評価も何もないだろ。

「…前に出ようとし過ぎだ。ユウスケが気にかけていた。敵に集中させてやれ」

「「えっ!?」」

思わずミーコと顔を見合わせる。
確かに、ミーコが前に出よう出ようとしている気配があってちょっと気が散っていたけれど、「気配」というかミーコの性格上そんな気がしたというレベルで、あからさまに出ていたわけでもない。それでもケインさんにはそう見えたし、俺の気が散っていたのもしっかり見抜かれていたんだな。

「うぅ。ごめん、ユウ兄」

「素早さを生かす戦い方を身に着けろ」

「は、はい!」

「後ろの槍持ち…「サヤカです」後衛は一番戦場全体が見えてるはずだ。落ち着いて指示を出せるようになれば前衛ユウスケの負担が減る。一つ一つの戦闘や敵の動き、味方の動き、よく見ておけ」

「はい!」

サーヤはどこか嬉しそうに、気合の入った返事をしている。そうだな、サーヤが全体を見て指示を出してくれればやりやすくなるし、俺も敵の動きに集中できそうだ。欲を言えば回復ができる光魔法を会得えとくしてくれるとありがたいな…。

無口なケインさんだが、戦闘のことに関してはしっかり的確なアドバイスをくれる。少し楽しそうに見えるのは気のせいだろうか? それにしても、ケインさんのおかげで本当に短期間で強くなれそうな気がするな。引き受けてもらえて良かった。

その後、皆でゴブリンの死体を隅の方へ集めて置いた。さすがにそのまま転がしていては邪魔だし気分も良くないからな。それに、ゴブリンは素材や食材として使える部分がないらしく、解体なども必要ないとのことだ。後でまとめて埋めておくらしい。

「さて、次もゴブリンなら2匹相手にしてみろ。オークなら1匹からだ」

「オークってデカイんすよね?」
「ゴブリン2匹…。今度は出番あるかな?」
「ミーコは出すぎたらダメだよ」
「ゴブリン2匹はなんとかなりそうだが、オークは緊張するな…」

「オークはデカイし力も強い。正面から攻撃を受けたらその盾くらいはすぐ壊れるぞ」

「はい!」

そうだ、盾の基本は攻撃を受け流すことと攻撃される前に押さえること。大丈夫、俺たちでもちゃんと倒せるからケインさんもいどませるんだ。落ち着いてかかれば大丈夫、なはず…!

ケインさんが再び例のびんせんを抜いて、中身を数滴すうてきらした。

「さっきと同じだ。多ければ俺が間引く」

先程は風の流れに任せていたが、今度はケインさんが魔法で風を起こして風上側にニオイを送っていく。おかげで周辺のニオイはすぐになくなった。
ケインさんは少なくとも地魔法(おそらく)と風魔法が使えるんだな。ノバラの適性と共通しているが、そのへんは血筋なんかも関係するんだろうか? またアヤメさんにでも聞いてみるか。

しばらくして、風上側から木々をかき分ける音と、ドスッドスッと足音が聞こえてきた。さっきのゴブリン達より大きな音だ。まだ姿は見えないが、音からしてたぶんオークが1匹だと思う。
ケインさんを見ると、1つ頷いて後方へ下がっていった。

「たぶん、オークが1匹だな」
「そうっすね!」
「今度はあたしも活躍するんだから!」
「ミーコは出過ぎるなよ!」
「うっ、わかってるよ!」
「速さを活かす…ミーコ、戦闘が始まってからサイドか後ろから回りこんでみて」
「サイド…。うん、わかった!」

早速サーヤがミーコに指示を出す。そうだな、最初から回り込みやすい位置にいたら、オークがそちらミーコから狙いかねない。隠れておくか、戦闘に入ってから動くのが正解だろう。

「待てよ? 遠くから勢いをつけて突進されるとマズイんじゃないか?」
「そうですね。ゴブリンの死体をおとりにするのはどうですか?」
「それで行こう」

急いでさっき片付けたゴブリンを一匹、この広場(?)の中央付近に置いた。自分達はそこから2~3m程の距離をとり、左右に分かれて木や岩の陰に身をひそめた。

陰から音のする方をうかがうと、それからすぐに敵が見えた。予想通り1匹のオークだ。2m程の大きさで筋肉はムキムキ、手足は短めで身体に対して頭がデカイ。顔はまんま豚のような感じで、上顎うわあご下顎したあごから計4本の大きな牙が上向きに生えている。手には大きめのこん棒を持っているようだ。皮膚の色が青っぽいのがちょっと気持ち悪いな。

俺たちの隠れている場所から5mくらいに近付いたとき、オークがゴブリンの姿を見つけて走り出した。2mの筋肉質な巨体が走る姿は、迫力があって恐ろしい。それになかなかのスピードだ。そういえば、イノシシなんかも人間よりよほど早く走れるんだったな。囮を立てて良かった。サーヤ、グッジョブ!

さあ、いよいよオークとの戦闘開始だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

処理中です...