【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

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21 (※)ゼリファン

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最悪の状況だった。

開けた空間に浮かぶ大量のスクリーン。
ルシウスから送られる学生たちの映像に異変が起こったのはグループごとの魔獣狩りがはじまって1時間少ししたころだった。

突如として魔獣の数が増えた。
そしてその脅威も位置を考えれば明らかにおかしい。

毎年恒例の魔獣狩り。
魔力量の多い貴族だけあってそれなりの強さを備えた学生も多い。

だがあくまでも学生の課外授業。
森の深層部には決して近づかないよう指導してあるし、教師やクラウ・ソラスのメンバー数人が見回りも行っている。もちろん中には怪我をする生徒もいる。だが身をもって危険を体感することすらこの授業の意義だ。

そして例年ならそれで事足りていた。
決して緊急事態に陥ることなどなかった。

次々と写し出される映像に待機していた面々も急いで散って救助へと走る。

腕につけた機械を弄れば、周囲に展開される小型スクリーンとマップ。
樹々の間を飛ぶように剣を手に走っている途中、一つのスクリーンの映像に息を呑んだ。

大量のスコルの群れ。
そして殿下をはじめ見覚えのある数人。

「おいおいっ!嘘だろ!?なんだよあのスコルの群れっ!!ほぼ深層付近の魔獣規模じゃねぇか!しかも殿下たちだぞっ!!」

隣を並走していた斧使いのグレゴリーが叫ぶ。

「急がないとまずいな」

同じグループにはカイルの姿もあった。

カイルはその実力から卒業後はクラウ・ソラスへの入隊がほぼ確実と言われているだけあり面識もあった。
その弟のアレンもいるし、直接闘うところを見たことはないが殿下たちの優秀さは漏れ聞いている。

だが……あれだけのスコルや魔獣の大群相手にどこまで持つかはわからない。
それでも、もしあの魔獣たちに行き交ったのが他の生徒たちなら即死も免れなかったことを思えば運がいいのか悪いのか。

間に合え。

念じるように駆ける足に力を込めたその時だった。

東の方角から聞こえた悲鳴。
ちっと一つ舌打ちしグレゴリーへと叫ぶ。

「お前はあっちへ!」

グレゴリーと別れた後も、他の生徒を救助したり、魔獣を駆逐しながらの道のりはなかなか思うように進まない。

苛立ちと焦燥を胸に駆けていると衝撃の映像が目に入った。

アシュフォースとアレンが互いの居る方向へと攻撃を放とうとしていたのだ。
しかも互いの間にいるのは殿下たち。

錯乱さくらんかっ?!

そう思うものの離れたこの場所からではどうすることもできない。

歯噛みした次の瞬間、
カイルがアレンを羽交はがめにし、アシュフォースも魔法により拘束された。
魔法が爆ぜ、夢からめるように戸惑う彼ら。

どうやら黒髪の青年が夢幻鳥を倒したらしい。

品よく整ったその青年の姿だけは見覚えがなかった。
雰囲気からしてカイルと同じ年頃の上級生か。

幻覚からめてなお、その影響は大きかった。

目に見えて落ちた動きに宙に浮かぶマップで残りの位置を確認する。
まだ、もう少しかかる……。

アシュフォースを庇い黒髪の青年が怪我をした。

そして、
そこから流れは驚くほどに変わった_______。

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