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しおりを挟む一限後、俺は速やかに撤退した。
登校後とSH後の騒動はボッチ気味の黄昏男子には刺激が強すぎたのだ。
つまり、あれだ。
朝から疲れました。
なので一限終了後、誰かに捕まる前に速やかに教室を後にした。
敵前逃亡と笑いたければ笑うがいい。
お気に入りのスポットで大樹に背を預ける。
いー天気。日差しも温かくて気温もちょうどよかった。
今日は本も持ってきてないので心地いい風を全身で感じるように瞼を閉じていると誰かが駆けてくる足音が聞こえた。
おや?と眸を開いたところで、足音の主レイヴァンの姿が見えた。
顎を滴る汗を袖を拭うらしくない姿に、どうしたんだろう?と不思議に思い声をかけようとしたところで彼の方がこちらに気付いた。
そして100メートル走並みの猛ダッシュ。
早っや!!
そして普通に吃驚した。
「見つけたっ」
肩で息をしながらのレイヴァンの言葉に、まさかの目的が俺だったと知る。
「大丈夫ですか?」
ぜぇぜぇいってるレイヴァンにハンカチを差し出した。
膝に両手をついて前傾姿勢なレイヴァンは受け取る余裕もなさそうなので、こめかみから伝う汗を代わりに拭った。
弾かれたように顔を上げたレイヴァンが反射のようにハンカチを手にする。
「あ、ありがとうございます……」
顔が真っ赤だし、まだ息も苦しそうだ。
ひとまず彼の呼吸がある程度落ち着くのを待ってから「どうしました?」と問いかけた。
まさか「あの時は流されて許したけど、よく考えたらやっぱムカついた」的なお礼参りとかじゃないよね?ね?
「怪我はもう平気なんですか?」
「はい、平気です」
「良かったっ。ずっと気になってて……」
全然お礼参りとかじゃなかった……。
全力疾走するほど心配してくれるとか、めっちゃいい子じゃない?
密かに感動する俺をよそに、レイヴァンは安堵に緩めた表情を深く翳らせて表情を暗くした。
「本当に、すみませんでした。全部……僕の所為です」
「ちょっ?!レイヴァン……様?!」
悔恨に表情を歪め、頭を下げたレイヴァンに慌てる。
しかもまた勝手に名前呼んじゃったよ。やっべ!
慌ててつけた様がいかにもとってつけた感満載だが、どうかそこには気づかないでくれっ!!
「僕を庇ったから、エバンス先輩があんな大怪我を……。それどころか……先輩が止めてくれなかったら、僕はきっと殿下たちを…………っ!」
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