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57.ジョンの話
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57.
「エメラルドだ。美しい。こんなに大きくてたくさんの。見たことがあるか?」ベルナーはすっかり感動した口調で話した。
起き上がったぼくはふらふらしながら、その緑の宝石でできた屋敷のほうへ向かった。
数段の階段をのぼると、背の高い扉が両方とも開いていて、ぼくたちを招き入れてくれているようだった。
なかは天井が吹き抜けの大きなホールになっていた。そして中央にきれいな水が滾々と湧く、丸い噴水のようなところがあった。ソリで下ってきた辺りは日の光も少なくなっていたが、緑の屋敷のなかはどこから差してくるのかきらきらした光が満ち溢れていた。
噴水の周りから一、二、三と、三羽の鳩が顔を出した。てくてくと一羽がこちらに歩いてきたが、残りの二羽はさっと噴水の縁にあがった。
近づいてきた一羽が「よく来た」といった。「食事はお気に召されたかな。たまに来る客人へのもてなしはいつも忘れたころにやってくるのじゃ」フォッフォッと鳩が笑った。「味付けや調理方法に間違いがなかったとよいがのぅ」
「おいしかったですとも」ベルナーが答えた。「もう少しで飢え死にするところだった。倒れてそのままになるところだった」
彼は不意に涙声になった。「ここにいるみんなに感謝しなくては」
サフソルムが口を出した。「この御仁は無理なことをした」
「海に出たからだ。陸の上ならばそうはならなかった」ぼくはそう付け加えた。
噴水の上にいた一羽がパタパタと下りて、スタスタと歩いてこっちにやってきた。「海に出ることは間違いでもあるが、正解でもある。わしらの仲間が各地に住んで居るが、顔に悪い相がでておる者には海に出るよう助言させとるがの」
三羽は声を揃えてフォーフォッと笑った。
ベルナーは真顔になった。「あの老婆が?」
「わしらの仲間じゃよ。今度会ったら豆をプレゼントするように」
「さて」と最初の一羽がこちらを見上げて話した。「ここは昔に来た者と次に来る者をつなぐ場所なのじゃ。知っておったかね?」
三羽はぼくたちの返事を待たずに、建物の奥に向かってトコトコと歩き出した。そこには扉があって、彼らが近づくとスーッと開いた。ぼくたちも慌ててついていくと、そこはまるで宇宙の空のように紺色の空間に星々がきらめいていた。しかし「はっはっはっー」と鳩の一羽が笑い声をあげると、中央の辺りで明かりがパッとついて一枚の大きな木の机が浮かび上がった。机の上には大きなキノコや宝石がいくつもあって、それらが明るい光を放っていて、そこは居心地の良い光にあふれた部屋になった。
壁の一面に小さく区切られた棚が作られていて、そこに紙が巻かれたものが一つ一つ入れられていた。紙ではなく、動物の革を使ったものや、黄色く色が変わっているもの、リボンでとめられているものもあった。百か二百か、それ以上にたくさんの紙が小さな棚に丁寧に収まっていた。
「さぁさ、好きなものを一つだけ取るがいい。ここは数えきれないほどの年数の経った……」
「ちょっと待って」とぼくは尋ねた。「手紙? これは全て手紙なのかい?」
「手紙というべきか、言伝というべきか」鳩の一羽が答え、別のがまた話した。「どれも無記名で書くのじゃ。そして一枚を受け取ったならば、代わりの手紙をしたため、またここに戻しておく。次に来た人がそれを読んで」
三羽は声を揃えた。「元気がでるようにな!」
「エメラルドだ。美しい。こんなに大きくてたくさんの。見たことがあるか?」ベルナーはすっかり感動した口調で話した。
起き上がったぼくはふらふらしながら、その緑の宝石でできた屋敷のほうへ向かった。
数段の階段をのぼると、背の高い扉が両方とも開いていて、ぼくたちを招き入れてくれているようだった。
なかは天井が吹き抜けの大きなホールになっていた。そして中央にきれいな水が滾々と湧く、丸い噴水のようなところがあった。ソリで下ってきた辺りは日の光も少なくなっていたが、緑の屋敷のなかはどこから差してくるのかきらきらした光が満ち溢れていた。
噴水の周りから一、二、三と、三羽の鳩が顔を出した。てくてくと一羽がこちらに歩いてきたが、残りの二羽はさっと噴水の縁にあがった。
近づいてきた一羽が「よく来た」といった。「食事はお気に召されたかな。たまに来る客人へのもてなしはいつも忘れたころにやってくるのじゃ」フォッフォッと鳩が笑った。「味付けや調理方法に間違いがなかったとよいがのぅ」
「おいしかったですとも」ベルナーが答えた。「もう少しで飢え死にするところだった。倒れてそのままになるところだった」
彼は不意に涙声になった。「ここにいるみんなに感謝しなくては」
サフソルムが口を出した。「この御仁は無理なことをした」
「海に出たからだ。陸の上ならばそうはならなかった」ぼくはそう付け加えた。
噴水の上にいた一羽がパタパタと下りて、スタスタと歩いてこっちにやってきた。「海に出ることは間違いでもあるが、正解でもある。わしらの仲間が各地に住んで居るが、顔に悪い相がでておる者には海に出るよう助言させとるがの」
三羽は声を揃えてフォーフォッと笑った。
ベルナーは真顔になった。「あの老婆が?」
「わしらの仲間じゃよ。今度会ったら豆をプレゼントするように」
「さて」と最初の一羽がこちらを見上げて話した。「ここは昔に来た者と次に来る者をつなぐ場所なのじゃ。知っておったかね?」
三羽はぼくたちの返事を待たずに、建物の奥に向かってトコトコと歩き出した。そこには扉があって、彼らが近づくとスーッと開いた。ぼくたちも慌ててついていくと、そこはまるで宇宙の空のように紺色の空間に星々がきらめいていた。しかし「はっはっはっー」と鳩の一羽が笑い声をあげると、中央の辺りで明かりがパッとついて一枚の大きな木の机が浮かび上がった。机の上には大きなキノコや宝石がいくつもあって、それらが明るい光を放っていて、そこは居心地の良い光にあふれた部屋になった。
壁の一面に小さく区切られた棚が作られていて、そこに紙が巻かれたものが一つ一つ入れられていた。紙ではなく、動物の革を使ったものや、黄色く色が変わっているもの、リボンでとめられているものもあった。百か二百か、それ以上にたくさんの紙が小さな棚に丁寧に収まっていた。
「さぁさ、好きなものを一つだけ取るがいい。ここは数えきれないほどの年数の経った……」
「ちょっと待って」とぼくは尋ねた。「手紙? これは全て手紙なのかい?」
「手紙というべきか、言伝というべきか」鳩の一羽が答え、別のがまた話した。「どれも無記名で書くのじゃ。そして一枚を受け取ったならば、代わりの手紙をしたため、またここに戻しておく。次に来た人がそれを読んで」
三羽は声を揃えた。「元気がでるようにな!」
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