ネコは大事だが歌うたいはそうでもない

『 猫が大事だといっているのはいったい誰なのか――?

  歌うたいのジョンが言葉を話すネコのサフソルムと異世界を旅する物語 』


 他の人には見えないものが見える歌うたいのジョンは、夏至の日に剣を持ったマグナスと言葉を話すネコのサフソルムに出会う。見ず知らずの彼らから一通の手紙を渡されていうには、もし彼らに同行し、その手紙を書いた女性の前で歌をうたえばジョンに報酬が渡るという。用心しながらも報酬という言葉に弱いジョンは彼らと共に旅をすることになった。
 その後、女剣士イザベラも加わって、馴染みのない異世界を進んでいくが、一行は途中マグナスの知り合いの屋敷に立ち寄ることになる。そこにはかつてオオカミ一族が栄えて住んでいたものの、今は訳あって女主人マリオンとその子供アリステアが暮らすだけになっていた。今、親子にはそこに住むことによる危険があったため、マグナスの考えからその屋敷に敢えて残る者たちと、旅を続ける者たちとに分かれることになった。
 そのまま旅を続けることになったジョンとネコのサフソルムであったが、目的地に着くと手紙を書いた女性イーバから一冊の本を託される。本にはマグナスに関する大切なことが書いてあり、一人と一匹はその本と共に、再び別の旅をすることになった。
 ジョンから見ればマグナスは見た目の良い、恵まれた「人間」に見えていたが、実はそうではなかった。彼はこの世界の「主」からも可愛がられるような人物であったが、「主」たちの複雑な願望も絡み合い、物事は思わぬ方向へも転がっていく。
 ジョンとネコのサフソルムは丁々発止のやり取りを繰り広げながら、マグナスの大切なものを取り戻したいという女性イーバの願いをかなえるため、あるいはジョンにとっては大事な報酬を得るために旅を続けるのであった。
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