前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

文字の大きさ
42 / 221
波乱の建国記念式典

父上変人コレクター説浮上

しおりを挟む
気になったので3人2人の左遷理由を聞いてみたら、2人3人ともなんとまあ変人だった。

サムエルは今年近衛騎士団に配属となった新人らしいが、一発目の仕事が第一皇女俺の異母姉の護衛だったらしい。第一皇女と言えば気が短い神経質な人で有名だから、俺と同じく近衛騎士の中でめっちゃ避けられる任務だ。近衛騎士の先輩方は右も左も分からない新人に押し付けたのだろう。まじギルティ。

そして第一皇女の護衛をしていたサムエルは急に歌いたくなったので、第一皇女に許可もとらずに歌い出したらしい。第一皇女はquietを通り越してsilentを好むからサムエルの行動奇行に激怒。その場で首を落とされそうになったから全速力で逃げて近衛騎士団団長団長さんの元へ逃げたらしい。

ちょっと待って歌いたくなるまではわかるけど、なんでそれを実行しちゃうかな?しかも物音ひとつしない第一皇女の側無音地帯で。欲望に忠実かよ馬鹿野郎仲間だな

その後団長さんにこっぴどく叱られたが、部下想いの団長さんが頑張ってくれたお陰で5年間の減給で済んだらしい。5年間って長く思うかもだけど、十分軽いからね!皇族を怒らせたんだ、普通なら打首を覚悟しなくちゃいけない。

団長さんにそれを捻じ曲げる権力があったのかって?なんと団長さんは皇帝陛下父上を頼って、父上がサムエルを全力で擁護したのだ。皇帝父親が許してしまえば第一皇女は逆らえない。かくしてサムエルは第一皇女に大きな恨みを買われた状態で近衛騎士を続けているのだ。

なんで父上はサムエルを庇ったんだろ?ただの新人近衛騎士変人でしょ?てかなんか父上って変人を色々囲ってない?ペッテリ然り、パヌ先生ダンスの講師然り。なんなの父上は変人コレクターかなんかなの??

まあそれは置いておいて。だけど皇族を怒らせた騎士の扱いには困らない訳もなく。色んな所をタライ回しにされた後、不人気な宮殿警備の夜番に落ち着いたそうだ。

この一件でサムエルも学んだらしく、歌う時は一度周りに確認をとるようになったそうだ。なんでそこで歌わないって選択肢がないかな?うん。紛うことなき変人だな、サムエルは。

次にアスモの話だが、まあこちらはまだしもマシと言うか、同情の余地があった。

なんでもアスモの実家は薬屋らしく、小さい頃から薬学に触れていたアスモは薬にとても興味があったそうだ。そして将来、薬屋になりたいと思っていたらしい。

しかしアスモは次男。家業は長男が継ぐし、新しく店を開くにはお金が全く足りない。家は家業でなんとか生活出来ている、所謂貧乏家庭であったが故に高い受験費のかかる薬師試験は長男しか受けることが出来ず、渋々夢を諦めて収入の良い騎士団に入団したらしい。

そこでオリヴァと同期として紆余曲折ありながらも仲良くなり、2人は揃って近衛騎士団に配属となったのを機に付き合うようになったらしい。オリヴァが何故アスモ全肯定botになったかは秘密だそうな。なんで!?そこが一番気になるのに!?

2人は何だかんだ言って上手くやって行っていた。オリヴァは基本的にアスモ関連以外でしっかりした常識人だったからだろう。時々宮殿内に生えていた薬草やらの薬の材料を拾って来ては薬を作っていたらしいが。基礎的なものは実家で教わったらしい。

でも騎士が薬学の知識があるのって、割と有利だよね。怪我した時の応急処置とか、毒の判別とか。それを団長さん上司がきちんと理解してくれていたから、少々のことは目を瞑ってもらっていたらしい。団長さんめっちゃ良い人!

だけど世の中そんな人ばかりではなくて。ある日アルットゥリ兄上第二皇子の護衛をしていた時、滅多に見ない薬の材料を見つけて興奮して、一瞬だけ護衛を抜けてその材料の採集に行ったらしい。だけどそのことをアルットゥリ兄上にバレて、一言。

「そんなに薬が好きなら騎士なんて辞めて薬屋になれば良いでしょうに」

こう言われたがために直ぐにアスモはアルットゥリ兄上の護衛から外されて、強制退団させられそうになった。アルットゥリ兄上は効率主義者だから、騎士は騎士の、薬屋は薬屋の仕事をすべきだと言う考えの持ち主だから無理もない。だけど護衛を抜けたのも一瞬だし、それで退団はいかがなものかと俺は思う。アスモが薬屋ではなく騎士になっているのにも、お金と言う高く高くそびえ立つ壁があったからなのに。あくまで俺の主観だけど。

職を失う大ピンチだったが、そこでまたしても団長さんが頑張って、皇帝陛下父上が擁護して減給1年間で済んだそうだ。その場でアスモを庇って一緒に強制退団させられそうになったオリヴァはお咎めなしで。

まあアスモの薬学の知識は騎士団でも重宝しているし、薬のことになると止まらないアスモの監視お守りをしてくれるオリヴァはアスモとセットで必要だったのだろう。そして父上変人コレクター説が割と有力になってしまった。なんてこった。

そして例の如くアスモの扱いに困り、こちらも宮殿警備の夜番に落ち着いたそうだ。もちろんオリヴァもセットで。

うん。まあ同情はする。でも変人なことには変わりないな、2人とも。

彼らのそんな身の上話を聞いていると俺も落ち着きを取り戻して、木箱の中ならもそもそと出た。ヤルノが呆れたようなホッとしたような溜息をつく。ごめんね、心配させて。

「気分が紛れて冷静になれました。お話しくださり、ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ我々などと言う低俗な輩の話をお聞きくださり、ありがとうございました。……ですが、なんだかヴァイナモが羨ましいですね」

オリヴァは少し悲しそうな表情を浮かべてそう呟いた。俺がその真意を聞くと、オリヴァは戸惑いながらも答えてくれた。

「ヴァイナモは主の理解があり、大切にしてもらえているからです。……俺たちは主からの理解が得られなかったので」

俺は胸が締め付けられた。彼らが不憫で、そして……ヴァイナモの良き主として見られているのが嬉しくて。そうだ。俺はヴァイナモの主なんだ。きちんとヴァイナモの意思を尊重してあげないと。

「それに、ヴァイナモが上からの命令に背くのも珍しいですよ。アイツの中では基本的に上からの命令は絶対ですから」

「……そう、なんですか……」

そっか。ヴァイナモにとってこの訓練は、それだけ重要なものなんだ。それを俺のために……だなんて。何だこれめっちゃむず痒い。でもまあ、それなら俺は尚更そんなヴァイナモの意思を、軽々しく否定するべきではないな。

でも、それでも俺にも曲げられないものがあるから。

「……少し、とある提案をしてもよろしいでしょうか?」

少しでも、折り合いをつけられるように努力しよう。

俺の言葉に一同キョトンとした。それがあまりにシンクロすぎて、俺は思わず笑ってしまった。

変人はシンクロ率が高いのかな??




* * * * * * * * *




2020/12/15
脱字を修正しました。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...