狩人達と薔薇の家

紫陽花

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夜の森2

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レオが少女を脅迫している時、ギルもまた獲物を見つけることに成功していた。
ちらちらと光る明かりが見え、忍んでいくとどうやらライターの明かりだと言うことがわかった。
どうやら小枝を集め焚き火を作ろうとしているようだ。
生木のせいか燃えづらく悪戦苦闘している。

男一人と女一人だ。
男の方が火をつけようと必死になっており女の方は、木を背にして座り込みうつむいている。

ギルはこっそりと女の後ろに回り込む。
物音をたてぬように気を付け、慎重に進んでいく。
丁度真後ろに回ったとき、ギルはサバイバルナイフをゆっくりと引き抜く。
息を殺し体勢を整え、左手で女の口を抑えると
右手で持ったナイフで思いっきり首を掻き切った。

赤い鮮血があたりに飛び散る。悲鳴を出す間もなく息絶えた女を適当にそのまま横にすると、
どうやら夢中になっていて気づいてない男の後ろにたつ。
ガサガサと何度も小枝を組み直している。
些細な水の音など気にしてられなかったらしい。

するとこの狩人は、そんな男の肩にポンッと手を置く。
振り返った男は、突如として現れた猟銃を背負った猟師らしい風貌の男に戸惑った顔をする。
その直後、真後ろにいたはずの女の姿に目を止める。
服を首からの鮮血で染め上げ、人形のように動かない女を見て、恐怖の声をあげようとする男にの口に猟銃を突っ込み黙らせる。

「二つ良いこと教えてやる」

口に銃を突っ込まれた苦しみと恐怖に喘ぐ男に
ギルは、語りかける。

「一つはそんな枝じゃあ火はつかない」

引き金に指をかける。
男は何やら必死に訴えかけてくるが、くぐもっていて聞き取ることができない。

「もう一つは」

そんな男の様子を気にもとめずに、ギルは続ける。

「もっと周囲に気をつかえ。命取りだぞ」

その言葉と同時に、引き金を引く。
鈍い銃声と共に返り血が彼の頬を汚す。
倒れた男の頭の周りに血の海が出来上がっていた。

乱暴に頬の血を拭うと、二つの肢体を見て少し後悔をする。
女の方はまだしも男の方だ。
体格が良く、背も高い。
引きずって行くにしてもなかなか苦労しそうだ。

他の二人に様子を聞いて手助けを頼むか。
そう思い連絡しようと、ポケットの中を探ったところ斜め後ろから聞こえた物音に振り返る。
暗闇のなかに誰かが立っている。
様子からしてレオやアルではなさそうだ。

すぐさま銃を構えて相手の方に向き直ると、
ひっ!っと言う声が聞こえて、逃げようと駆け出したのが見えた。

「アインス!」

ギルがとっさに叫ぶと、近くの草影から白い影が飛び出す。
アインスと呼ばれた尻に茶褐色の模様のある犬は、俊敏な走りで相手に追い付くとその足に思いきり噛みついた。

小さい悲鳴をあげ倒れこむ。
女のようだ。
ギルもそこへ急いで向かおうと走り出したその時、

「....ギャン!」

アインスのただならぬ声が耳に届く。
駆け寄ってみると、アインスは伏せており右前足の近くにポケットナイフが落ちている事に気づいた。
確認すると、右前足の付け根の毛がうっすらと赤く滲んでいる。
すでに相手との距離は離れている。
追いかけることも考えたが、アインスの事も心配だ。
ここは一旦引くことにしよう。

先ほどの焚き火の場所まで戻ると現在地を確認する。以外にも自分達の家からそう遠くはない。
多少苦労はするがこの距離なら運べなくはないが...ギルは痛々しく布を足に巻いた犬を見る。
思ったより深いかもしれない。
この短い距離を移動するだけでも辛そうなのをみると、彼にも介助が必要だろう。
無線を取り出し、応援を呼ぼうとすると、アインスがすまなそうに鼻を鳴らす。
そんな忠犬を見て、ギルは笑いながら頭を撫でる。

「気にするな。むしろ無茶させたのは俺だから」

そう言って慰めていると、先ほどの男の死体が目にはいる。
思わず先ほどの自信の台詞を思い出す。

「周りを見てないのは俺もだったな...ごめんなアインス」

ギルはため息混じりに己の至らなさを反省した。

ギルがアインスを撫で落ち込んでいるとき、レオは例の二人を誘導していた。
どうやら、ボーイッシュな少女は運ぶことを選択したらしいい。
涙を流しながら、怪我をした少女をおぶって先頭を歩いている。
時折ちらりと、後ろにいるレオを盗み見る。

厳つい体つきの男は麻袋を肩に抱えながら銃を突きつけており、青い瞳は冷たい光が宿っていた。

麻袋の中身をしっている少女達は、何度も蘇る先ほどの恐怖に吐き気を覚えながら、一歩一歩歩みを進めていた。

その時だった。

「止まれ」

ふいにレオに命じられて、ビクリと体を揺らす。
しかし彼は、そんな二人に気もとめず、右方向を気にする。
誰かが走ってくる音だ。
麻袋を地面に下ろすと、しっかりと銃を構えなおし警戒をするが間に合わない。

「ぎゃあ!」
「いやっ!」

髪を振り乱した少女が飛び出してきた。
その勢いは凄まじく、二人に思いきりぶつかり怪我をした少女をその場で落すと、残った二人は反対側の草影に転がっていった。

転がっていった少女二人は、痛みでうずくまったが、お互いの顔を見ると驚いたような顔をし

「ヘザー!」
「カレン!」

と互いの名前を叫んだ。
ヘザーと呼ばれたボーイッシュな少女は、新たな知り合いに出会えたことに感動していたが、それも一発の銃声で現実に戻される。

レオが二人が消えていった暗がりに向かって、発砲したのだ。

「出ておいで。この子が死んでしまうぞ?」

そう言うともう一発発砲する。
ヘザーはその声に「行かなきゃ」と慌てて立ち上がろうとするが、片手を捕まれてそれを防がれる。
カレンと呼ばれた少女は必死に首をふる。

「怪我をしていて逃げられないんだぞ?見捨てるのか?十数えるうちに出てくるんだ」

「....いやだ...いやっ!!!助けてお願い!」

レオの言葉と同時に助けを求める少女の声。
ヘザーはカレンの顔を見たまま動けないでいた。

カレンは声に出さないよう、口の動きだけで伝える。

「にげよう。このまま」
カウントする男の声が、どこか遠くにヘザーは聞こえた。

十秒数えたが、二人の少女が出てくる様子はなかった。
レオは、二人の方角にもう一発弾をうつ。

反応はない。

「どうやら...見捨てられたらしいな君は」

やや憐れんだように話すレオ。
少女は声も出ず、はらはらと涙を流す。
そんな中、急に無線から声が聞こえてきた。

「はい?こちらレオ」

『ギルだ。獲物運ぶの手伝えるか?』

レオは力無く座り込んでいる少女を見下ろしながら、ギルに返事をする。

「残念だが、こっちも手一杯だ。アルに頼みな」

『了解。...あ、そう言えばお前今どのあたりだ?』

「今か?Bの3あたりって所じゃないか?どうかしたか?」

レオは片手で現在地を確認しつつ答える。

『獲物一匹逃してな。そっちに走っていったよ。女だ。見つけたらよろしく』

ギルの言葉を聞くと、一瞬間をあけたのち笑いだす。
突然笑いだしたレオに不振がっている声が無線から聞こえた。

「ああ、悪いな。その獲物だが」

レオは二人が逃げていった方向を見据える。

「もう、会っているよ」
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