狩人達と薔薇の家

紫陽花

文字の大きさ
8 / 24

捕獲

しおりを挟む
「そんなに暴れて...怪我をしてるのよ?酷くなっちゃうわ」

レオとアルの二人が少女たちを捕獲している様子を見て、ロザリーは心配する声をあげる。

カレンもヘザー不自由な体で必死に、逃れようともがき、むき出しの肌が床とすれ擦り傷を作っていた。
カレンはレオに担がれると、殺意をこめた目でロザリーを睨む。

「だ...まし...たな...こ...のひと...ごろし..」.

薬のせいで喉まで麻痺してきたのだろう、上手く出せない声を、振り絞りながら話すカレン。
するとレオはだらりとした指を掴み、反対側にへし折ろうとした。
痛みで喉の奥から変な声が出る。

「手当てだけじゃなく手料理までご馳走してもらって、その言い草か?ん?」

ロザリーの事を罵ったからだろう、極めて冷静に話をしているが平静を装っているだけで、青筋をたてて怒っているのがわかる。

その様子を見たアルは、ヘザーを右肩に担ぎながら注意をした。

「ロザリーの前でやるなよ。ショック受けるだろ」

その言葉にレオはハッとして、掴んでいた手を離す。
悪魔でも彼等がしているのはロザリーの心配であり、この少女たちではない。
その様子を見ていたロザリーは、困り眉をしながら今もなお睨んでいるカレンに向かい、優しく話しかける。

「あのねカレン。騙したみたいになってしまったのはごめんなさいね。でもそうすると二人とも逃げてしまうでしょ?」

カレンの乱れた髪を直しながら、赤い瞳で見つめる。

「大丈夫よ。きっとこれが二人の幸せなの。私、信じてるわ」

聖母のような笑みで語りかけるロザリー。
その微笑みには一切の迷いもなく、幸せになると心から信じている笑みだった。

少女二人はその姿を見て心底恐怖を感じた。
それは、森の中で追いかけ回された際に感じたものとは別。

彼女は先ほどまで、上品な雰囲気をもつ穏和な人間であった。
恐らく、それは今でも変わらない。

だが、倫理観が、常識が、本気で歪んでしまっている。
見た目だけではわからない。
内なる怪物と呼ぶに相応しい人間を前に、彼女たちは震えが止まらなかった。

「今からまだ仕事があるから、今日はもう休んでいなさい。加工場にはいるから、なにかあったら」

「ええレオ。すぐに呼ぶから大丈夫よ。お言葉に甘えて休ませてもらうわね」

「ドライはこのまま置いていくから、ベッドの下にでも寝かせてやってくれ」

「あら良いの?アル。じゃあ、ドライが疲れないようにしないとね」

和やかな会話を続ける三人の狂人の会話は、ヘザーとカレンにはもはや届かなかった。

二人はそのまま、家の隣の加工場に連れていかれた。
ひんやりとした加工場の中では、ギルが先に作業を開始していた。

「ひぃ...!!」

「い、い...や!」

ぶら下げられ血抜きをされている様子を見て、更に暴れだした少女たちを担ぎ直すなどして、押さえ込む二人。

すると、ギルがカレンの顔を見てなにかに気づく。
しばらく顔を見たあと、カレンの前で着けていた作業用のマスクを外す。

カレンはギルの顔を見ると、目を大きくあけた。

「やっぱりな。顔は見なかったが声と髪でもしやと思ったよ。お前だなアインスを刺したのは。俺の顔を覚えていてくれて嬉しいよ」

その様子を見て、確信を得たのギルは皮肉たっぷりに告げた。
その言葉に一番に反応したのは、犬達に最も愛着を抱いているアルだった。

彼はギルと合流したさいに、アインスの状況とギルからの怪我をさせてしまったと謝罪を受けていた。
怪我は仕方ないことだ。と、言っていたがその怪我をさせた張本人を目の前にし、静かな怒りをみせた。

「二人とも、この女は最後は『俺達に』くれないか?」

アルは静かな口調で話す。

「かまわないよ」

「好きに使いな」

その様子を見た二人は快諾する。

そのまま二人は左奥の扉の奥に連れていかれる。
そこは、監獄のような檻が両脇に並んでいる空間だった。
手前の1つの鍵をあけると、乱暴に放り込まれる。

檻のなかは小さな手洗い用の水道と、ボロボロの毛布が数枚。そして、僅かばかりの衝立をされたトイレがついていた。

「しばらくそこで休んでろ。もうそろそろ薬もきれるだろ」

レオは冷たく言うと、その場を立ち去る。
もう一人の男は、その場に残り憐れな少女二人を眺めていた。
まるで品定めをしているような目だ。

「ど...どうする気..?」

カレンが少し体の麻痺がほぐれてきたのか、先程よりは流暢にアルに聞く。
ヘザーも同じように半身を起こすと、泣きながら震える声で

「どうなるんですか...助けてお願い...」

と懇願する。
アルは少し考えたが、すぐに口を開き

「...さっきのサンドイッチうまかった?」

と、だけ訪ねる。

わけがわからなそうな顔をするヘザーとカレン。

その顔を見ると楽しそうに笑いながら、立ち去っていった。

加工場内ではレオとギルは既に作業をはじめていた。
今日は徹夜になりそうだ。

早く終わらせてゆっくり休んで...ロザリーに労ってもらいたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...