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カレンとソフィア
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ヘザーが事切れて数時間後、カレンは別の部屋で目を覚ました。
ソフィアがヘザーを選んだ後、別室に連れてこられると同時に薬品を注射され意識を失ってしまったのだ。
薬の影響からか激しい頭痛にカレンは顔をしかめ、働かない頭で必死に考える。
薬を打たれる直前、何か言われた気がしたのだが思い出せない。
たしか、黒髪の男が何かを話してきたはず...
そこまで思い出すと、ふいに自分の足元で何かが動いた気配がした。
どうやら高い椅子か何かに座らされていたらしい。
腰元で背もたれに縄で固定され、動けないようにされている。
カレンはまだ自由の効かない体で足元を確認しようともがくが、薄暗く良く確認ができない。
どうやら何匹もいるらしい。
そんなカレンの様子に気づいたのか、足元にいた生き物たちは活発に動き出した。
すると、ふいに辺りが明るくなった。
どうやらどこかの小屋の中らしい。
年期がありそうだが、手入れが行き届いており空調も良さそうだ。
「気分はどうだ?」
急に聞こえてきた声に驚きそちらを見ると、黒髪の男が足元の生き物たちを撫でていた。
男の側にいたのは、毛並みが良く体格の犬。
尻に茶色い模様があるその犬は、右前足に包帯を巻かれていた。
その犬の周りを何匹もの大型の犬たちがうろついていた。
足元の気配はこれらだったのだろう。
カレンは怯えた目で男を見つめ続けた。
男は自身の側に寄ってきた犬たちを、順番に相手しながら、言葉を続ける。
「ヘザーは死んだよ」
さらりと何ともないように話す男と対称にカレンの表情は暗くなる。
本来ならもっと泣きわめくべきなのだろうが、いかんせん、非現実的な事が起き続け心と頭が追い付かないのだ。
ある程度犬たちの相手が終わったのか、男は立ち上がると、壁際に置いてある木製のサイドテーブルの前にたつ。
そこに置いてあった大ぶり肉切り包丁を手に取ると、何やら肉の塊を刻みはじめた。
グチョ、ベチャっと粘着質な音をさせて刻まれ続けるそれは普通の肉よりも妙に赤みを帯びている。
飼い主である男が作業をはじめたからか、犬たちは自由に振る舞いはじめた。
そのうちの一匹が近寄ってくる。
最初に男の側いた、包帯を巻いた犬だ。
不自由そうに片足を引きずりながら、カレンの近くにすりよってきた。
大型で近くに来ると少し威圧感があるが、愛嬌のある顔をしている。
見慣れない人間が不思議なのか、カレンの匂い
を確認しているようだった。
「ご飯だよ。お前たち」
男は刻んだ肉を二つのボウルに分けていれると、床に置きながら声をかけた。
自由にくつろいでいた犬たちは、再度集まりボウルの中に顔を突っ込んで中の肉を旨そうに食べはじめる。
男はその様子を見ると満足そうに頷く。
そして、今だカレンの側にいる犬に対し慈愛のこもった口調で呼び掛けた。
「匂いで思い出したか?ほらおいでアインス。『お詫び品』をこんなに貰ったよ」
その言葉にカレンはハッとする。
森の中で犬に追いかけられ、その犬を刺してしまった事があった。
事故の時に誰かの持ち物から落ちた、小さなポケットナイフ。
スカートのポケットに用心のために入れておいたそれで、咄嗟に...
カレンはアインスと呼ばれた、包帯を巻いた犬の後ろ姿を見送る。
飼い主に呼ばれた彼は、ゆっくりと集団に近づくと同じようにボウルの中のものを食べ始めた。
ふいに、足元に痛みが走る。
打たれた薬の効果が和らいできたのだろう。
感覚が少し戻ってきているようだ。
足元を確認しようとするカレンはふと、体の異変に気づく。
ずっと両手を縛られているものと思っていた。
感覚がないのは、薬のせいだと思っていた。
『お詫びの品をこんなにもらった』
急に体の芯から冷えるような感覚がする。
震えが止まらない。
恐る恐る、視線をさげ両手と両足を見るとそこには真っ白い包帯がそれぞれ綺麗に巻かれていた。
ただ一つ。いつもと違うとすれば。
「美味しいかい?焦らないで食べるんだよ」
子供をあやすような声が聞こえる。
「まだたくさんあるんだから」
男は、両手足のない少女を眺めながら呟いた。
時を同じくして加工場内の檻の中。
薄暗い檻の中でレオは一人の少女と対峙している。
目の前に座る少女は、静かに自らの運命がどうなるかを待っていた。
「さて、ソフィア」
レオは同じように彼女の対面に座る。
名前を呼ばれると、ソフィアは暗い表情でレオを見つめた。
「今後の君の処遇についてだが、実はまた選択肢が二つあってな」
極めて穏やかで落ち着いた口調で話し始めたレオの言葉に、ソフィアは意外そうな顔をする。
殺されると思ったからだ。
怒りと恐怖に任せて残酷な選択をしてしてしまったのだ。
殺されて当然であった。
そんな彼女の反応は想定内だったらしく、気にせずレオは話を続けた。
「一つは、しばらくここで飼育された後、俺たちに殺される」
人差し指をたてて選択肢の一つを説明するレオにソフィアは神妙な顔で耳を傾ける。
「そしてもう一つは、他の人間に売却される。実は少し前から、取引先の人物から条件の良い女を見つけたら売ってほしいと言われててな。
今回捕まえた三人のうち一人を売ろうと考えてたんだよ」
そこまで言うと、レオは頭をかく。
「だが、カレンはあの性格だ。売却先でトラブルを起こすことは目に見えている。ヘザーもあのとおり。そこで安牌なソフィアでどうかと思っていたんだよ」
予想外すぎる展開に、面を食らっているソフィアに説明を続ける。
「相手は金持ちの地主でな。表向きはメイドが足りないから住み込みで雇いたいとのことだったが...まあ、ちょっとマニアックな趣味の相手をさせられると思っててほしい」
言葉を選びながら話していると、ポツリとその日はじめてソフィアが口を開く。
「...そこに行けば...私は死にますか?」
小さく生気のない声。
「それは君次第だ」
男はそんな少女の切実な疑問に率直に答えた。
「要領よく、頭を使って周りの言動に注意を払っていれば余程でないと死ぬことはない。だが、そうだな...ヘザーのような真似をしてみろ。恐らくアウトだ」
ここにいるよりは生きていられる。
だが、それも本人次第だ。
下手したらあっさり死んだ方が楽なほどの目に遭うだろう。
ソフィアはなかなか賢い子だ。
ここに来てから、いや、森で見捨てられた後から下手な抵抗や大騒ぎすることは危険だと判断し、男たちと会話するときは慎重に言葉を選らんでいた。
そこを見越しての提案であった。
ソフィアは目をつぶり、両手をキツく握っている。
人生を決める選択だ。
葛藤しているのだろう。
辛抱強くレオは見守っていると、俯いていた彼女は顔をあげた。
今度は決意のこもった瞳で男を見つめてきた。
ソフィアがヘザーを選んだ後、別室に連れてこられると同時に薬品を注射され意識を失ってしまったのだ。
薬の影響からか激しい頭痛にカレンは顔をしかめ、働かない頭で必死に考える。
薬を打たれる直前、何か言われた気がしたのだが思い出せない。
たしか、黒髪の男が何かを話してきたはず...
そこまで思い出すと、ふいに自分の足元で何かが動いた気配がした。
どうやら高い椅子か何かに座らされていたらしい。
腰元で背もたれに縄で固定され、動けないようにされている。
カレンはまだ自由の効かない体で足元を確認しようともがくが、薄暗く良く確認ができない。
どうやら何匹もいるらしい。
そんなカレンの様子に気づいたのか、足元にいた生き物たちは活発に動き出した。
すると、ふいに辺りが明るくなった。
どうやらどこかの小屋の中らしい。
年期がありそうだが、手入れが行き届いており空調も良さそうだ。
「気分はどうだ?」
急に聞こえてきた声に驚きそちらを見ると、黒髪の男が足元の生き物たちを撫でていた。
男の側にいたのは、毛並みが良く体格の犬。
尻に茶色い模様があるその犬は、右前足に包帯を巻かれていた。
その犬の周りを何匹もの大型の犬たちがうろついていた。
足元の気配はこれらだったのだろう。
カレンは怯えた目で男を見つめ続けた。
男は自身の側に寄ってきた犬たちを、順番に相手しながら、言葉を続ける。
「ヘザーは死んだよ」
さらりと何ともないように話す男と対称にカレンの表情は暗くなる。
本来ならもっと泣きわめくべきなのだろうが、いかんせん、非現実的な事が起き続け心と頭が追い付かないのだ。
ある程度犬たちの相手が終わったのか、男は立ち上がると、壁際に置いてある木製のサイドテーブルの前にたつ。
そこに置いてあった大ぶり肉切り包丁を手に取ると、何やら肉の塊を刻みはじめた。
グチョ、ベチャっと粘着質な音をさせて刻まれ続けるそれは普通の肉よりも妙に赤みを帯びている。
飼い主である男が作業をはじめたからか、犬たちは自由に振る舞いはじめた。
そのうちの一匹が近寄ってくる。
最初に男の側いた、包帯を巻いた犬だ。
不自由そうに片足を引きずりながら、カレンの近くにすりよってきた。
大型で近くに来ると少し威圧感があるが、愛嬌のある顔をしている。
見慣れない人間が不思議なのか、カレンの匂い
を確認しているようだった。
「ご飯だよ。お前たち」
男は刻んだ肉を二つのボウルに分けていれると、床に置きながら声をかけた。
自由にくつろいでいた犬たちは、再度集まりボウルの中に顔を突っ込んで中の肉を旨そうに食べはじめる。
男はその様子を見ると満足そうに頷く。
そして、今だカレンの側にいる犬に対し慈愛のこもった口調で呼び掛けた。
「匂いで思い出したか?ほらおいでアインス。『お詫び品』をこんなに貰ったよ」
その言葉にカレンはハッとする。
森の中で犬に追いかけられ、その犬を刺してしまった事があった。
事故の時に誰かの持ち物から落ちた、小さなポケットナイフ。
スカートのポケットに用心のために入れておいたそれで、咄嗟に...
カレンはアインスと呼ばれた、包帯を巻いた犬の後ろ姿を見送る。
飼い主に呼ばれた彼は、ゆっくりと集団に近づくと同じようにボウルの中のものを食べ始めた。
ふいに、足元に痛みが走る。
打たれた薬の効果が和らいできたのだろう。
感覚が少し戻ってきているようだ。
足元を確認しようとするカレンはふと、体の異変に気づく。
ずっと両手を縛られているものと思っていた。
感覚がないのは、薬のせいだと思っていた。
『お詫びの品をこんなにもらった』
急に体の芯から冷えるような感覚がする。
震えが止まらない。
恐る恐る、視線をさげ両手と両足を見るとそこには真っ白い包帯がそれぞれ綺麗に巻かれていた。
ただ一つ。いつもと違うとすれば。
「美味しいかい?焦らないで食べるんだよ」
子供をあやすような声が聞こえる。
「まだたくさんあるんだから」
男は、両手足のない少女を眺めながら呟いた。
時を同じくして加工場内の檻の中。
薄暗い檻の中でレオは一人の少女と対峙している。
目の前に座る少女は、静かに自らの運命がどうなるかを待っていた。
「さて、ソフィア」
レオは同じように彼女の対面に座る。
名前を呼ばれると、ソフィアは暗い表情でレオを見つめた。
「今後の君の処遇についてだが、実はまた選択肢が二つあってな」
極めて穏やかで落ち着いた口調で話し始めたレオの言葉に、ソフィアは意外そうな顔をする。
殺されると思ったからだ。
怒りと恐怖に任せて残酷な選択をしてしてしまったのだ。
殺されて当然であった。
そんな彼女の反応は想定内だったらしく、気にせずレオは話を続けた。
「一つは、しばらくここで飼育された後、俺たちに殺される」
人差し指をたてて選択肢の一つを説明するレオにソフィアは神妙な顔で耳を傾ける。
「そしてもう一つは、他の人間に売却される。実は少し前から、取引先の人物から条件の良い女を見つけたら売ってほしいと言われててな。
今回捕まえた三人のうち一人を売ろうと考えてたんだよ」
そこまで言うと、レオは頭をかく。
「だが、カレンはあの性格だ。売却先でトラブルを起こすことは目に見えている。ヘザーもあのとおり。そこで安牌なソフィアでどうかと思っていたんだよ」
予想外すぎる展開に、面を食らっているソフィアに説明を続ける。
「相手は金持ちの地主でな。表向きはメイドが足りないから住み込みで雇いたいとのことだったが...まあ、ちょっとマニアックな趣味の相手をさせられると思っててほしい」
言葉を選びながら話していると、ポツリとその日はじめてソフィアが口を開く。
「...そこに行けば...私は死にますか?」
小さく生気のない声。
「それは君次第だ」
男はそんな少女の切実な疑問に率直に答えた。
「要領よく、頭を使って周りの言動に注意を払っていれば余程でないと死ぬことはない。だが、そうだな...ヘザーのような真似をしてみろ。恐らくアウトだ」
ここにいるよりは生きていられる。
だが、それも本人次第だ。
下手したらあっさり死んだ方が楽なほどの目に遭うだろう。
ソフィアはなかなか賢い子だ。
ここに来てから、いや、森で見捨てられた後から下手な抵抗や大騒ぎすることは危険だと判断し、男たちと会話するときは慎重に言葉を選らんでいた。
そこを見越しての提案であった。
ソフィアは目をつぶり、両手をキツく握っている。
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