狩人達と薔薇の家

紫陽花

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襲撃2

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ベンは薄暗い廊下を歩きながら、辺りを見渡していた。

他の二人はアリエラを落ち着かせるため、ひとまずはリビングへとどまっていた。

「馬鹿な奴らだ…長居はできないってのによ…」

小声で呟きながら廊下を歩き、曲がり角で人気がないことを確認する。
こういった経験は初めてではない。
長居をすればするほど、発見のリスクが高くなること承知だ。
いくら全員殺すと言っても、いつまでもダラダラとしてはいられないのだ。

廊下を曲がり、すぐの部屋に目を付けると音を立てないようにそっと開ける。
数センチほどの隙間から、様子を伺うとどうやら誰かの寝室のようだ。

部屋の中はカーテンの隙間から月明かりが細く入ってくる程度で、ほとんど何も見えなかったが唯一、ベッドの上のの毛布が人の形になっていることが確認できた。
すっぽりと毛布で覆われているせいで顔までは見ることができない。

腰にぶら下げていたハンドガンをかまえ、足音をたてないように近づいていく。
男か…いや、女物の洋服の裾が見える。

女も殺せと言われたが、少しくらい遊んでも構わないだろう。
下卑た笑みを浮かべ、ベッドにもう一歩近づいた時ふと違和感を感じた。

ベッドの人物はピクリとも動かないのだ。
呼吸すらもしているのか怪しい。
毛布を思いきりめくる。

「....あ?なんだこれ」

ベンがベッドの中身を認識した瞬間、彼の体に衝撃が走る。
頭の上から足の先にかけてつんざくよう痛みを受け、床に倒れこみもがくベン。
必死に手に持っていた拳銃で応戦しようとするが、倒れた拍子にどこかに落としたらしい。
薄暗闇の中でバタバタと床を叩くように動かし落としたものを探すと、指先に冷たい皮の感触を感じた。
視線を向け男物の革靴を目に留めると、それと同時に再度襲い掛かった強い刺激でベンの意識を失った。


「…待て。何か変だ」

アリエラのそばでうんざりしたように立っていたオリバーは、廊下に続くドアを見るとソファに座る二人の女の前に手をやり静かにさせる。
ベンが様子を見に行って数分しかたってはいない。まだ近くにいるはずのベンの気配がない。
それどころか、鈍い物音まで聞こえた。

オリバーとベンが空き巣や押し込み強盗を行うのは初めてではない。
そんな彼が侵入している最中にこんな響くような音をたてるはずかなかった。

なにか、トラブルでもない限り。

屈強な男は腰からぶらさげていたサバイバルナイフを手に取る。
この家に住人たちは猟師だ。銃の扱いには慣れている連中相手にナイフは悪手かもしれない。
が、下手に銃声を響かせて居場所を知られるのは避けたかった。
なんてことはない。相手にも撃たせないように、先手をとって切りかかってやる。

ぺろりと下唇をなめるオリバー。
喧嘩では昔から負けたことはない。
いつだってこの恵まれた体格で勝利を掴んできた。

今回も勝ってやる。全員殺して森に埋めて、根こそぎ金目の物を奪ってやる。
丁度いいことにこいつらの家は住み心地がよさそうな上に、人気がない。
しばらく自分たちのねぐらにしたあと、時期を見て奪った物を売った金で大きな街へ行こう。

「…俺はこんなとこで終わらない」

オリバーは決意めいた言葉を小さく呟くと、暗く静寂に包まれている廊下にでた。
足音をたてないようにすり足で歩き警戒をする。
壁伝いに慎重に進んでいくと曲がり角の近くから、窓から差し込むささやかな月明り照らされた人影がぼんやりと映った。

その人物は、大柄なオリバーよりも頭一つ飛びぬけた体格の持ち主のようだ。
大きな何かを担ぎながら、こちらに向かってゆっくりと進んでくる。
暗くて見えづらいが、どうやらもう一方の手には拳銃らしきものを持っているようだ。

予想通りだ。
オリバーはナイフを握りなおすと、曲がり角のすぐそばでしゃがみこみその体を小さくする。
最初の計画通り、先手を取る。ふいうちで急所に切りかかり仕留めれば何も問題はない。

影の主が曲がり角に近づいてくる。
狙うは右脇腹の近辺。やや上の方、肝臓を狙えば大抵のやつは動けなくなる。

しっかりと狙いを定め、タイミングを計る。
あと数歩、あと少し。

今だと言わんばかりにオリバーが飛びかかろうとした刹那、むき出しの首筋にちくりとした感触を感じた襲撃者は飛び出すのを止め、本能的に首筋を庇うと、なにやら小さい針のようなものが二つほど刺さっていた。
引き抜こうと掴んだまさにその時、首筋から脳天を貫くほどの電流が走る。

膝をついた体勢のまま、背中をのけ反らせ低い叫び声を喉から絞り出すオリバー。

顔の筋肉が勝手に動くだけではなく、首筋から両肩にかけて流れる電気のせいで上半身が言うことを聞かない。
ガタガタと上下に止まらない震えのせいで、持っていたナイフが床に金属音をさせながら落ちていく。

必死に保っていた意識が遠くなる。天を仰ぎながら必死に視線を動かすと、目の前に例の男が立っている。
驚く様子もなくこちらを見下ろすその人物が抱えている、オリバーが荷物と思っていたそれの正体がわかったとき、
これ以上ないくらい見開かれた両目がさらに動揺する。

「ベ……ン…」

回らない舌で、ようやくその荷物の名前を呟けたとき、オリバーの意識は深い闇に落ちていった。

    
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