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罰3
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「変な遊びをするな」
糸の切れた操り人形のように床に倒れている女を見下ろしながら、レオは一言呟く。
その言葉を聞くと
「こんな遊びもたまには良いだろう?」と、シルバーブロンドの男は楽しげな声を出す。
3人の男は残った二人を眺めた。
片方はぶら下げられた女、もう一人は処置後に拘束された男。
ギルは男の方に近づくと、その体を観察する。
良い筋肉をしている。解体したら、引き締まった赤身の肉が出てくることだろう。
そのままスッと、胸元に入っているレタリングタトゥーを白い指でなぞる。
白い肌に黒い文字でかかれているそれは、見慣れた言語ではない。
「...人生?」
ギルが唯一読み取れた単語を呟く。すると、拘束された男の側にいたアルが、それをチラリと見ると
「イカれた俺の人生」
淀みなく翻訳してみせた彼の顔を、ギルは驚いたように見る。近くで作業をしていたレオも、それを聞いていた思わず振りむき、彼らのやり取りを見守る。
「俺の故郷の言葉だよ...思い出したくもない」
そんな2人の様子に気づいたアルは、眉間にシワを寄せて言い捨てる。
「...お前、南出身だったのか」
意味じたいは読み取れないが、使われている言語そのものはどこのものか、だいたいの察しがついていた。
意外な事実を知り、思わずギルは聞き返すが、アルはそれ以上語ろうとはしない。
「で、こいつはどうする?一応いろいろ前処理はしたが...」
アルは不機嫌そうに拘束されたオリバーを見て、話をそらすように話しだした。
彼の雰囲気を見て、ギルもそれ以上の追求はせず、同じようにオリバーを見下ろして悩みだした。
「さっきの会話からして食うには向かねぇな.....売却にするか?レオ、どっかないか?」
先に仕留めたイブリンを吊り下げていたレオは、返り血のついたエプロン姿で二人の方に体を向けた。
「...少し周りに声をかけてみよう。どうせ予定外だ、安値でもいいだろう」
思案するように目線を動かしながら提案すると、拘束されている男は唯一動く頭を必死に持ち上げ、今までとは打って変わったように、まるで機嫌をとるような口調で弱々しい声をあげた。
「なあ...やめてくれよ...反省しているんだ...」
「反省ですめば、世の中平和だよな」
鼻で笑うように言うギル。その会話を聞いたのか、静かにしていたアリエラも、震える声で
「ねぇ…だ、抱いてもいいよ?ほら、ね?好きにしても良いから……」
天井に吊られながら、媚びるように体をくねらせる。その様子を冷たく見る男たち。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ」
吐き捨てるように話すギル
「食指も動かん」
表情も変えずに切り捨てたレオ
アルはそんなアリエラを無言で見つめている。
彼はアリエラを店で見た時から、おかしな既視感と嫌悪感、そしてまるで心の奥底を無遠慮にかき混ぜられるような感覚に陥っていた。
心の底に、自らの記憶の奥に仕舞い込んでいた何かが浮かび上がってくる。彼はそれを抑え込むのに必死だった。
そんなアルの様子に気づくはずもないアリエラは、依然として下手な誘惑を続けている。
「お願い!見捨てないで!」
甲高い声が、耳に嫌でも聞こえてくる。
「私、結構うまいのよ…?ねぇ、楽しませてあげられるから!」
『私よりも良い女がいるっていうの!?』
アリエラの声のほかに、誰か別の女の声が被るように頭に流れてくる。
「何でもするから……!何でもしてあげる!」
『楽しいことしましょうよ……ああ、「あれ」?気にしなくて良いわよ』
頭が割れそうになってきた。
昔の、子供の頃、どこかで聞いた声が自分を苛んでいる。
「死にたくないのよ!!お願い!!」
『さっさと出ていきな!夜まで帰ってくんじゃないよ!』
アルは、無言のままアリエラの前に進む。
無機質な顔でアリエラの眼の前に立つアル。
いつもの彼とは違うその雰囲気に、ギルとレオは不可解そうにその背中を眺める。
「なあ……」
ようやく口を開いたアルは、低く冷たい声で吊るされた女に話しかけた。
「お前……子供いるか?」
どこか抑揚の口調で語りかける。まるで、自分を押し殺してるかのような平坦な話し方。
アリエラは突然の問いに戸惑ったような顔を見せた。
が、自分の前に立った、血の気が消え感情が読めない黒髪の男を見て、喉の奥から絞り出すような声で
「………16のころ、産んだ」
と、まるで牧師に告白するかのように話しだした。
「……その子は今どこに?」
「どうでもいいじゃない!」
かわらず感情の見えない声で質問をするアルに、顔色を変えて、声を張り上げるアリエラ。
「……どこにいる?」
淡々と問いただすアル。
バツ悪そうに顔を背け、言い淀むアリエラ。しかし、すぐに開き直ったような声で
「…ちょっと……ちょっと、数日帰らなかっただけだったのよ…?なのにあのガキ、勝手に外に出ていって……」
と、決定的な言葉を口にした。
「はあ?お前マジかよ」
「……最低の母親だな」
呆れたようなギルと、非難するようなレオの声が加工場に響く。
しかし質問したアル本人は、その声をどこか遠くで聞いてるような気分に陥っていた。
もはや暴れだしそうな感情と、封じ込めたい記憶が彼を包みこんでいった。
自分を正当化するような言葉を続けているアリエラ
次に彼女が見たのは
深い闇に満ちたような、ヘーゼルアイ
アルはさらにアリエラに近づく
まるで密着するかのような距離
そのまま彼女の首元に自らの口元を近づけると
その喉元に食らいついた
骨を噛み砕くような音と、溢れ出る鮮血が彼の体を汚していく
女の首元を噛みちぎっている最中、彼の瞳は何も映していなかった
糸の切れた操り人形のように床に倒れている女を見下ろしながら、レオは一言呟く。
その言葉を聞くと
「こんな遊びもたまには良いだろう?」と、シルバーブロンドの男は楽しげな声を出す。
3人の男は残った二人を眺めた。
片方はぶら下げられた女、もう一人は処置後に拘束された男。
ギルは男の方に近づくと、その体を観察する。
良い筋肉をしている。解体したら、引き締まった赤身の肉が出てくることだろう。
そのままスッと、胸元に入っているレタリングタトゥーを白い指でなぞる。
白い肌に黒い文字でかかれているそれは、見慣れた言語ではない。
「...人生?」
ギルが唯一読み取れた単語を呟く。すると、拘束された男の側にいたアルが、それをチラリと見ると
「イカれた俺の人生」
淀みなく翻訳してみせた彼の顔を、ギルは驚いたように見る。近くで作業をしていたレオも、それを聞いていた思わず振りむき、彼らのやり取りを見守る。
「俺の故郷の言葉だよ...思い出したくもない」
そんな2人の様子に気づいたアルは、眉間にシワを寄せて言い捨てる。
「...お前、南出身だったのか」
意味じたいは読み取れないが、使われている言語そのものはどこのものか、だいたいの察しがついていた。
意外な事実を知り、思わずギルは聞き返すが、アルはそれ以上語ろうとはしない。
「で、こいつはどうする?一応いろいろ前処理はしたが...」
アルは不機嫌そうに拘束されたオリバーを見て、話をそらすように話しだした。
彼の雰囲気を見て、ギルもそれ以上の追求はせず、同じようにオリバーを見下ろして悩みだした。
「さっきの会話からして食うには向かねぇな.....売却にするか?レオ、どっかないか?」
先に仕留めたイブリンを吊り下げていたレオは、返り血のついたエプロン姿で二人の方に体を向けた。
「...少し周りに声をかけてみよう。どうせ予定外だ、安値でもいいだろう」
思案するように目線を動かしながら提案すると、拘束されている男は唯一動く頭を必死に持ち上げ、今までとは打って変わったように、まるで機嫌をとるような口調で弱々しい声をあげた。
「なあ...やめてくれよ...反省しているんだ...」
「反省ですめば、世の中平和だよな」
鼻で笑うように言うギル。その会話を聞いたのか、静かにしていたアリエラも、震える声で
「ねぇ…だ、抱いてもいいよ?ほら、ね?好きにしても良いから……」
天井に吊られながら、媚びるように体をくねらせる。その様子を冷たく見る男たち。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ」
吐き捨てるように話すギル
「食指も動かん」
表情も変えずに切り捨てたレオ
アルはそんなアリエラを無言で見つめている。
彼はアリエラを店で見た時から、おかしな既視感と嫌悪感、そしてまるで心の奥底を無遠慮にかき混ぜられるような感覚に陥っていた。
心の底に、自らの記憶の奥に仕舞い込んでいた何かが浮かび上がってくる。彼はそれを抑え込むのに必死だった。
そんなアルの様子に気づくはずもないアリエラは、依然として下手な誘惑を続けている。
「お願い!見捨てないで!」
甲高い声が、耳に嫌でも聞こえてくる。
「私、結構うまいのよ…?ねぇ、楽しませてあげられるから!」
『私よりも良い女がいるっていうの!?』
アリエラの声のほかに、誰か別の女の声が被るように頭に流れてくる。
「何でもするから……!何でもしてあげる!」
『楽しいことしましょうよ……ああ、「あれ」?気にしなくて良いわよ』
頭が割れそうになってきた。
昔の、子供の頃、どこかで聞いた声が自分を苛んでいる。
「死にたくないのよ!!お願い!!」
『さっさと出ていきな!夜まで帰ってくんじゃないよ!』
アルは、無言のままアリエラの前に進む。
無機質な顔でアリエラの眼の前に立つアル。
いつもの彼とは違うその雰囲気に、ギルとレオは不可解そうにその背中を眺める。
「なあ……」
ようやく口を開いたアルは、低く冷たい声で吊るされた女に話しかけた。
「お前……子供いるか?」
どこか抑揚の口調で語りかける。まるで、自分を押し殺してるかのような平坦な話し方。
アリエラは突然の問いに戸惑ったような顔を見せた。
が、自分の前に立った、血の気が消え感情が読めない黒髪の男を見て、喉の奥から絞り出すような声で
「………16のころ、産んだ」
と、まるで牧師に告白するかのように話しだした。
「……その子は今どこに?」
「どうでもいいじゃない!」
かわらず感情の見えない声で質問をするアルに、顔色を変えて、声を張り上げるアリエラ。
「……どこにいる?」
淡々と問いただすアル。
バツ悪そうに顔を背け、言い淀むアリエラ。しかし、すぐに開き直ったような声で
「…ちょっと……ちょっと、数日帰らなかっただけだったのよ…?なのにあのガキ、勝手に外に出ていって……」
と、決定的な言葉を口にした。
「はあ?お前マジかよ」
「……最低の母親だな」
呆れたようなギルと、非難するようなレオの声が加工場に響く。
しかし質問したアル本人は、その声をどこか遠くで聞いてるような気分に陥っていた。
もはや暴れだしそうな感情と、封じ込めたい記憶が彼を包みこんでいった。
自分を正当化するような言葉を続けているアリエラ
次に彼女が見たのは
深い闇に満ちたような、ヘーゼルアイ
アルはさらにアリエラに近づく
まるで密着するかのような距離
そのまま彼女の首元に自らの口元を近づけると
その喉元に食らいついた
骨を噛み砕くような音と、溢れ出る鮮血が彼の体を汚していく
女の首元を噛みちぎっている最中、彼の瞳は何も映していなかった
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