千物語

松田 かおる

文字の大きさ
10 / 94

不思議な拳銃

しおりを挟む
今日も最低最悪上司に怒られた…というか、パワハラのターゲットにされた。

-ちくしょう、やりたい放題やりやがって…いつか痛い目に遭わせてやる-

そんなことを考えながら歩いていたら、爪先に何か固い物の当たる感触があった。
視線を移すと、一丁の拳銃が落ちていた。
しかもなぜか、ピンクのリボンが結ばれている。
思わず拾い上げてみると、ずしりとした重みが手の中に伝わってくる。
どうやら本物のようだ。

よく見ると、ピンクの不似合いなリボンに何か書いてあった。
読んでみると
<ガマン  ガ  デキナク  ナッタラ  ツカエ>
と書いてあった。

-そうか、これであいつを-
そう考えて、拳銃をカバンにしまって家に帰った。

次の週末。
本当に拳銃が使えるのか確かめに、山奥まで試し撃ちに行った。
拳銃の威力は大したものだったが、あまりに威力が大きすぎて、一発試し撃ちをしただけで腕を痛めてしまった。
ついでに言うと、山奥までの行き帰りで全身が筋肉痛になってしまった。

こんな有様では、「あいつに一発」どころではない。
まずは拳銃を使える筋力を身につけるため、トレーニングを始めることにした。

トレーニングの成果は上々で、三か月もすると全身に筋肉がつき始めてきた。
これも「あいつを痛い目に遭わせる」という、はっきりした目的があるおかげだろう。
その間もあいつのパワハラは続いていたが、
-あともうちょっとの辛抱だ、今に見てろよ-
そう心の中で呟き続けて、日々のパワハラに耐えてきた。

半年が過ぎる頃。
気が付いたら「拳銃を撃つため」ではなく、「体を鍛える」方にトレーニングの目的が移っていた。
そのせいか、拳銃のことが頭から離れることも増えてきた。

そんなある日、あいつのパワハラが行き過ぎて、さすがに腹に据えかねるようなことが起こった。

-もう我慢の限界だ!-

いよいよ覚悟を決めて、久しぶりに引き出しの奥にしまっていた拳銃を出そうとしたら、引き出しの中から拳銃が消えていた。
その代わり、拾った時と同じピンクのリボンが一本だけ残されていた。
リボンを手に取ってみると、
<ヨウズミ  ニ  ナッタ  ミタイ  ダカラ  キエル  コトニ  スルヨ>
と書いてあった。

それを読んで、改めて気づいた。
…確かに拳銃なんて使うのは間違いだよな、そもそも犯罪だし…
ギリギリのところでそう思い留まらせてくれた不思議な拳銃に少し感謝しながら、引き出しを閉じた。






そして次の日。
最低最悪上司をフルパワーでぶん殴り倒してやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...