千物語

松田 かおる

文字の大きさ
14 / 94

アンケート

しおりを挟む
「ケイちゃん、この間の『グランピング』動画、とても評判良かったよ!」
「本当ですか、よかったです」
「やっぱりアンケートを取り入れるようになってから、人気が出始めてきたね」
「そうですね、この方法は当たりでしたね」
「この調子で、また次の企画を配信しようね」
「はい、頑張ります!」

わたしは今、「ケイ」という名で動画配信を行なっている。
自分で言うのもなんだけれど、そこそこ人気の配信者になっている。
少し前までは動画のウケが今ひとつよくなかったのだけれど、マネージャーの
「視聴者に寄り添う方向で行こう」
という提案に乗って、アンケート方式で配信内容を決めるようになった。
この方式は結構当たって、おかげでチャンネルの人気も出てきた。
ある意味「アンケート様さま」ではある。


「ケイちゃん、次の企画が決まったよ」
「今度は何ですか?もしかしてお料理配信ですか?」
「当たり。今回は『ミルフィーユを作る』動画だよ」
「ミルフィーユ…ですか」
「あれ?気に入らなかった?」
「そうですねぇ…できればもっとわたし好みで、得意分野の和風料理を作りたかったなぁ…と思って」
「でもアンケートのトップが『ミルフィーユ』だったから、今回はこれで行くよ」
「ちなみにわたしが出した『里芋の煮っころがし』は…」
「最下位だったねえ」
「…そうですか」


「ケイちゃん、次の企画が決まったよ」
「…次は何でしょうか?」
「『ケイちゃんの家でベランピング』配信」
「わたしの家で?でもわたしの家はおんぼろアパートだから、そんなことできないですよ?」
「大丈夫、新しく家を借りてあげたから」
「え?」
「だからケイちゃんはその家に引っ越してもらって、そこから配信するよ」
「…」
あのアパート、おんぼろだけれど気に入っていたのにな…


「ケイちゃん、次の企画が決まったよ」
「…今度は何ですか?」
「『ケイちゃんのご両親』をゲストに招いて、親子配信」
「はあ!?わたしの両親は青森住まいですよ!?わざわざ呼び寄せるんですか!?」
「いやいや、こっちで『ケイちゃんにふさわしいご両親』を用意するから、後は台本に沿って配信してくれればOKだよ!」
「…」
「これもアンケートの結果なんだから、きちんと応えないと」

アンケート、アンケート、アンケート…
人気のためならこれでもいいと思ってきたけれど、このままでは「自分」がなくなっていく感じがする…
このままでいいのだろうか…



「ケイちゃん、次の企画が決まったよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...