17 / 94
わたしはだあれ?
しおりを挟む
私はある企業で、受付業務をしている。
会社の「顔」ともいえるため、業務中は一瞬も気を抜くことができず、緊張の連続だ。
それは勤務中に限らず、私生活でも「会社の顔」としての行動を望まれている。
普段の立ち居振る舞いは言うまでもなく、SNSなどの「ネット関係」でも不用意な言動を差し控えるよう、結構強く言い渡されている。
そんな生活では息が詰まってしまうので、本当はよくないけどSNSで「裏アカウント」を使ってストレスを吐き出させてもらっている。
もちろん言いたいことをそのままつぶやいたりはせず、「フェイク情報」を取り混ぜている。
身分がばれるリスクは避けたいので、フォロワーはいるけれどこちらからのフォローは行なわない。
おかげで「フォロワー多数、フォロー0」という、いびつなアカウントになっている。
「最近辛口じゃない?」
ランチを一緒にした同僚から、そんなことを言われた。
「ランチがおいしくなかったことの感想が、かなりきつかった」のだそうだ。
「そうかしら?そんなことないと思うけどなぁ」
「自分で気づいていないかもしれないけど、きつかったよ?」
「うーん、じゃあ気を付けないとね」
そう返したものの、私が感じたことを言っただけなのだから、あまり目くじらを立てることもないと思う。
「何を考えているの!?」
ある日の業務中、受付の隣に座っている先輩に突然控室に引っ張りこまれ、物凄い形相で怒鳴られた。
何が起こったのか解らないままでいると、
「お客様に何て言ったか、気づいてないの?」
と先輩。
いつもと同じく『いらっしゃいませ』と出迎えたつもりだけど、開口一番に
「悪趣味なネクタイを締めてるわね」
と言ったそうだ。
…全く身に覚えがない…
先輩は大きくため息をつくと、私に早退するよう命じた。
私は言われるままに早退し、身支度をしに洗面所へと向かった。
一体どうしてしまったのだろう。
「表」と「裏」の区別がつかなくなっている?
そんなことをぼんやり考えていると、
「何を言ってるの?さっきのあなたが本当のあなたの姿じゃない」
という声が聞こえた。
周りを見ても誰もいない。
どうやらその声は、私が無意識のうちに発していたようだ。
改めて鏡を見ると、そこにはとても卑しい笑顔を浮かべる私がいた。
まるで自分ではないようだ。
その顔を見て思わず、
「…あなたはだあれ?わたしはだあれ?」
問いかけてみたけど鏡の中の私は何も答えず、卑しい笑顔を浮かべているだけだった。
会社の「顔」ともいえるため、業務中は一瞬も気を抜くことができず、緊張の連続だ。
それは勤務中に限らず、私生活でも「会社の顔」としての行動を望まれている。
普段の立ち居振る舞いは言うまでもなく、SNSなどの「ネット関係」でも不用意な言動を差し控えるよう、結構強く言い渡されている。
そんな生活では息が詰まってしまうので、本当はよくないけどSNSで「裏アカウント」を使ってストレスを吐き出させてもらっている。
もちろん言いたいことをそのままつぶやいたりはせず、「フェイク情報」を取り混ぜている。
身分がばれるリスクは避けたいので、フォロワーはいるけれどこちらからのフォローは行なわない。
おかげで「フォロワー多数、フォロー0」という、いびつなアカウントになっている。
「最近辛口じゃない?」
ランチを一緒にした同僚から、そんなことを言われた。
「ランチがおいしくなかったことの感想が、かなりきつかった」のだそうだ。
「そうかしら?そんなことないと思うけどなぁ」
「自分で気づいていないかもしれないけど、きつかったよ?」
「うーん、じゃあ気を付けないとね」
そう返したものの、私が感じたことを言っただけなのだから、あまり目くじらを立てることもないと思う。
「何を考えているの!?」
ある日の業務中、受付の隣に座っている先輩に突然控室に引っ張りこまれ、物凄い形相で怒鳴られた。
何が起こったのか解らないままでいると、
「お客様に何て言ったか、気づいてないの?」
と先輩。
いつもと同じく『いらっしゃいませ』と出迎えたつもりだけど、開口一番に
「悪趣味なネクタイを締めてるわね」
と言ったそうだ。
…全く身に覚えがない…
先輩は大きくため息をつくと、私に早退するよう命じた。
私は言われるままに早退し、身支度をしに洗面所へと向かった。
一体どうしてしまったのだろう。
「表」と「裏」の区別がつかなくなっている?
そんなことをぼんやり考えていると、
「何を言ってるの?さっきのあなたが本当のあなたの姿じゃない」
という声が聞こえた。
周りを見ても誰もいない。
どうやらその声は、私が無意識のうちに発していたようだ。
改めて鏡を見ると、そこにはとても卑しい笑顔を浮かべる私がいた。
まるで自分ではないようだ。
その顔を見て思わず、
「…あなたはだあれ?わたしはだあれ?」
問いかけてみたけど鏡の中の私は何も答えず、卑しい笑顔を浮かべているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる