千物語

松田 かおる

文字の大きさ
54 / 94

ゲンを担ぐ

しおりを挟む
誰でも大なり小なり、「ゲン担ぎ」ってしている事ってあるよね?
「大事な勝負ごとに臨むときは『かつ丼』を食べる」とか。
「こういうことをすると運気が上がる」とか。

僕も最初はそういうことは信じてなかったんだけど、ある仕事の時に「ゲン担ぎ」をしたらうまく行ったことがあって、それ以来信じるようになったんだよね。
例えば、
-新しい商談に臨む前には『めざし』を食べて、成功を目指す-
-足を踏み出す時は左足から-
-毎朝駅前のコンビニでコーヒーを買う-
って感じの本当に他愛もないことばかりだけど、そうしていると気分が落ち着くのもあったりするからね。
それにそのおかげで仕事も順調にできている気がするので、意外とこういったことはバカにできないかもしれないよね。



新しい商談を始めることになったある日の朝。
いつもの駅前のコンビニで、コーヒーを買うのを忘れてしまったんだ。
『たまにはいいか』って気にしないでいたんだけど、やっぱりいつもと違うと気分がよくなくて、駅前までコーヒーを買いに戻ろうとしたんだ。
でもそれがちょうど横断歩道を渡ろうとした時で、振り向きながら「左足」を出そうとしたら足がもつれちゃって、横断歩道にしりもちをつく感じで転んじゃったんだ。
そして体を起こそうとした次の瞬間。
体じゅうを激しい衝撃が襲って、僕は意識を失ってしまった…



「…あ、目が覚めましたか?」
気が付いたら、僕は病院のベッドの上にいた。
看護師さん曰く、
「ちょうど転んだところに信号無視のトラックが来て、はねられちゃったんですよ」
とのこと。
なるほど、どうりで全身が外から中から軋むように痛いわけだ…
命に別状はないそうだけど、「両腕両足の骨折」「肋骨3本骨折」と、正直言ってあまり軽傷とは言えなかった。
でも看護師さんが言うには、
「それにしても運がよかったですね。あと半歩歩いてたら、死んでたかもしれなかったんですよー」
なんだってさ。

それを聞いて、
「このくらいの怪我で済んだのは、普段から『ゲン担ぎ』をしていたおかげなのかもしれないな」
なんて考えちゃったよ。
商談はスタートから少し失敗しちゃったけど、やっぱり「ゲン担ぎ」は馬鹿にできないね。



「何か欲しいものとか、して欲しいこととかありますか?」
看護師さんがそう聞いてきたので、僕は少し考えて、
「食事に『めざし』を入れてもらうことってできる?あと、駅前のコンビニで売っているコーヒーが欲しいんだけど」
と答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...