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え?という感じで隆が声のした方を見上げると、空中に女性が一人ぷかぷかと浮いていた。
その姿を見て、隆はつい、
「あんた、一体誰?」
と聞いてしまった。
「私?私はあなた方が『天使』と呼んでいるモノ、とでも言えばいいかしら?あなたが千佳さんを救いたい、っていう強い願いに呼び寄せられてきたって訳」
「…本当に?」
あまり信じられないといった感じで隆は聞いたが、彼女はそれには答えず、
「それよりも、今あなたが言った事、本当なの?」
と言った。
「今言った事?」
「そう。あなたの命と引き換えにしてでも、千佳さんを元通りにして欲しい、って事」
「…あぁ、本当だ。もし本当にそうなるんなら」
彼女は隆のその言葉を聞いて、
「でも、命と引き換えにって事は、もしかしたら、あなた、死んじゃうかも知れないって事なのよ?本当にそれでもいいの?」
と言った。
その瞬間、あの晩の千佳の、
『隆と一緒にいるだけで、何よりも幸せ』
と言う言葉を思い出していた。
しかし隆はそれを振りきるように、
「…あぁ、俺はどうなっても構わない。もし千佳が元に戻るんだったら…」
彼女は隆の真剣な眼差しをしばらくじっと見ていると、
「…わかったわ、あなたの願いをかなえてあげる。その代わり、あなたはどうなっても知らないわよ。いいのね?」
と言った。
隆は無言で、しかし力強く頷いた。
すると彼女は、
「じゃあ、千佳さんの手を握ったら、目をつぶって」
と言った。
彼女に言われるまま、隆は千佳の手を握り締め、目を閉じた。
「それじゃ今から始めるわよ。いい?やめるんだったら今のうちよ」
隆は何も言わず、千佳の手をぎゅっと握り締めた。
すると、千佳の手を握った隆の手の上に、彼女の手が被さってくるのを感じた。
しばらくして、意識が少しずつ遠くなっていくのを隆は感じた。
―『死ぬ』って言うのはこういう感触なのかな―
隆はふとそんな事を考えていた。
時間が経つにつれ、隆の意識はどんどん遠くなっていき、やがてほとんど何も感じなくなった。
意識がなくなる瞬間、隆は自分の腕にしがみ付いて、上目遣いで自分を見ている千佳の顔を思い出した。
「千佳…」
隆は最後に、そう一言だけつぶやいた。
「先生!彼女が、目を覚しました!」
次の日の朝、見回りに来た看護婦が、ベッドの上でむっくりと起き上がっている千佳の姿を見て、思わず叫んでいた。
その声を聞いて、医師が慌てて病室に駆け込んできた。
そして千佳の姿をその目で確かめると、
「信じられん、まるで奇跡だ…」
とだけつぶやいた。
一方千佳は、一体何が起こったのかよくわからず、目をぱちぱちさせて、辺りをきょろきょろと見回している。
そして、自分の手をしっかりと握りながら、ベッドに突っ伏している隆が目に入った。
「…隆?」
その姿を見て、隆はつい、
「あんた、一体誰?」
と聞いてしまった。
「私?私はあなた方が『天使』と呼んでいるモノ、とでも言えばいいかしら?あなたが千佳さんを救いたい、っていう強い願いに呼び寄せられてきたって訳」
「…本当に?」
あまり信じられないといった感じで隆は聞いたが、彼女はそれには答えず、
「それよりも、今あなたが言った事、本当なの?」
と言った。
「今言った事?」
「そう。あなたの命と引き換えにしてでも、千佳さんを元通りにして欲しい、って事」
「…あぁ、本当だ。もし本当にそうなるんなら」
彼女は隆のその言葉を聞いて、
「でも、命と引き換えにって事は、もしかしたら、あなた、死んじゃうかも知れないって事なのよ?本当にそれでもいいの?」
と言った。
その瞬間、あの晩の千佳の、
『隆と一緒にいるだけで、何よりも幸せ』
と言う言葉を思い出していた。
しかし隆はそれを振りきるように、
「…あぁ、俺はどうなっても構わない。もし千佳が元に戻るんだったら…」
彼女は隆の真剣な眼差しをしばらくじっと見ていると、
「…わかったわ、あなたの願いをかなえてあげる。その代わり、あなたはどうなっても知らないわよ。いいのね?」
と言った。
隆は無言で、しかし力強く頷いた。
すると彼女は、
「じゃあ、千佳さんの手を握ったら、目をつぶって」
と言った。
彼女に言われるまま、隆は千佳の手を握り締め、目を閉じた。
「それじゃ今から始めるわよ。いい?やめるんだったら今のうちよ」
隆は何も言わず、千佳の手をぎゅっと握り締めた。
すると、千佳の手を握った隆の手の上に、彼女の手が被さってくるのを感じた。
しばらくして、意識が少しずつ遠くなっていくのを隆は感じた。
―『死ぬ』って言うのはこういう感触なのかな―
隆はふとそんな事を考えていた。
時間が経つにつれ、隆の意識はどんどん遠くなっていき、やがてほとんど何も感じなくなった。
意識がなくなる瞬間、隆は自分の腕にしがみ付いて、上目遣いで自分を見ている千佳の顔を思い出した。
「千佳…」
隆は最後に、そう一言だけつぶやいた。
「先生!彼女が、目を覚しました!」
次の日の朝、見回りに来た看護婦が、ベッドの上でむっくりと起き上がっている千佳の姿を見て、思わず叫んでいた。
その声を聞いて、医師が慌てて病室に駆け込んできた。
そして千佳の姿をその目で確かめると、
「信じられん、まるで奇跡だ…」
とだけつぶやいた。
一方千佳は、一体何が起こったのかよくわからず、目をぱちぱちさせて、辺りをきょろきょろと見回している。
そして、自分の手をしっかりと握りながら、ベッドに突っ伏している隆が目に入った。
「…隆?」
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