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ポッキンチューチュー
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「ぽいぽい、とんとん、ぽいぽい、とんとん」
おじいちゃんの肩を、もふもふさまが尻尾で肩たたきしています。
もふもふさまがおじいちゃんの後ろに背中合わせに立って
バッサバッサと左右に尻尾を振って肩にヒットさせています。
「あ~良い気持ちでございます」
「そうか、気持ち良いか、爺」
「それはもう、心の疲れもとれる心地よさでございます」
もふもふさまが肩たたきをしている様子をゆりちゃんも古いソファに座って、にこにこ見つめていました。
「次は私がしてあげる」
「ありがとう、ゆり」
今度はゆりちゃんが、おじいちゃんの肩を叩きます。
もふもふさまがこの家に来て、炊飯器で朝と晩に五合炊く毎日になりました。
美味しいお米は格安で売ってくれる知り合いの米農家さんがいるので助かっています。
こんなに不思議な存在にも、おじいちゃんは何も言わずに三人での暮らしが始まりました。
今日の夕飯は、お肉多めの野菜炒めと味噌汁でした。
庭の野菜がとれるのは、もう少し先です。
「それでは行ってくるよ」
おじいちゃんが夜勤に行きます。
それでも、もう寂しくはありません。
「ゆりゆり、おふろに入りたいな」
「うん、お風呂入ろうか」
もふもふさまと一緒だと、なんでも楽しい。
おじいちゃんがもふもふさまに、なんでも神術でゆりに楽をさせないようにしてください、と頼んだので
お風呂掃除もしっかり二人でやります。
網模様の冷たいタイルが苦手だったお風呂場も二人でゴシゴシ。
もふもふさまは、ゆりちゃんと同じシャッツとパンツ姿です。
「今日はなんのにおいにする?」
「う~ん……みかんのにおいがいい」
「美味しそうだもんね」
「うむ、美味しそうだ」
お湯がいっぱいになって、二人ではいります。
みかんのにおい。
もふもふさまは髪の毛ももふもふなので、ツインテールにしてぐるぐる巻いてあげました。
「うう……あったかい……あうう……ぐううううう」
染みるように小さく唸る、もふもふさま。
「もふもふさま、おじいちゃんみたい」
「……魂のさけびじゃ……」
「なぁにそれ」
「わからん」
「くふふ」
「くふふ」
二人で顔を寄せ合い笑います。
「ゆりゆり見てろ」
「あ、それ知ってる」
両手で円を作って、その上にかけたタオルを空気を入れたまま
湯船に浮かべすぐに風船のように掴みます。
そしてお湯の中に入れると……タオルから空気の泡が沢山出てきました。
「ぶじゅ~~~」
「サイダーサイダー」
「みかんサイダー」
尻尾はゆりちゃんが洗い場で身体を洗っている時だけ、お湯に入れます。
ぼっちゃんじゃぼんじゃぼん
ゆりちゃんが目を閉じて頭を洗っていると、もふもふさまが尻尾で遊んでいる音が聞こえます。
だから、目を閉じるのも全然怖くない。
シャワーで泡を流します。
「終わったよ。もふもふさま、洗ってあげる」
ゆりちゃんとおなじ、リンスインシャンプー。
もふもふさまは、いっぱいもふもふなので三回プッシュします。
「あひゃ! くすぐったい!」
「うごいたら、だめ~」
あわあわもふもふさまのできあがり。
「ゆりゆりにも」
あわあわを頭に乗っけられました。
ちょんちょんと指で尖らせます。
「あは、お耳!」
「おそろいだ」
「おそろいだ~」
曇った鏡の隙間に二人の笑顔が映ります。
きゃっきゃとお風呂の楽しい声に、黒猫が窓の外でピクリと反応しました。
さすがにもふもふさまにドライヤーをかけるのは大変なので神術で一気に頭から尻尾を乾かします。
「わたしもしてほしい」
「うむ」
ピカッと、ゆりちゃんも乾きました。
二人でパタパタと冷蔵庫まで行きます。
「今日はじゃあ、オレンジにしよう」
ゆりちゃんは冷凍庫から二つに割れるチューブのアイスを取り出しました。
「ここではポッキンアイスっていうんだって、わたしはチューチューアイスって言ってたよ」
「ふぅん、じゃあポッキンチューチューって呼べばいい」
「それはいいね、ポキチューは?」
「うむ、ポキチューいい」
「じゃあ、はんぶんこ」
牛乳も沢山飲みたいので、アイスは半分こ。
ゆりちゃんはポッキンして、先の尖った方をもふもふさまに渡しました。
「こっちの方が大きいぞ」
「うん、ちょびっとね。いいの」
「ありがとう」
「うん」
ゆりちゃんは『ありがとう』と言われた時の心が好きでした。
きゅっと温かくなって、自分が此処にいていいんだと思える音がするようでした。
二人でアイスをチューチュー食べました。
そして寝る前に歯磨きをします。
ゆりちゃんはピンク。おじいちゃんは白。もふもふさまは黄色です。
ちょっとだけ、歯磨き粉をつけます。
おじいちゃんの歯磨き粉はものすごく苦くて辛いので二人はブドウ味で磨きます。
「あわあわ、べ~」
「くふふ、きたないよ」
なんでも楽しい。
さぁ寝ようとした時に、ゆりちゃんはソファに置きっぱなしにしていた
スマホを思い出しました。
もふもふさまが来てから、今まで以上にスマホを見ることは少なくなりました。
「今日は、われがコンコンも抱っこする。ゆりゆりどうした?」
「あ、ううん。なんでもない~いいよー!」
スマホには『未読メール一件』となっていましたが、ゆりちゃんは開けようとしませんでした。
今日ももふもふさまの尻尾にコンコンと包まれて眠るのです。
二人で大きなみかんを食べる夢を、見ました。
おじいちゃんの肩を、もふもふさまが尻尾で肩たたきしています。
もふもふさまがおじいちゃんの後ろに背中合わせに立って
バッサバッサと左右に尻尾を振って肩にヒットさせています。
「あ~良い気持ちでございます」
「そうか、気持ち良いか、爺」
「それはもう、心の疲れもとれる心地よさでございます」
もふもふさまが肩たたきをしている様子をゆりちゃんも古いソファに座って、にこにこ見つめていました。
「次は私がしてあげる」
「ありがとう、ゆり」
今度はゆりちゃんが、おじいちゃんの肩を叩きます。
もふもふさまがこの家に来て、炊飯器で朝と晩に五合炊く毎日になりました。
美味しいお米は格安で売ってくれる知り合いの米農家さんがいるので助かっています。
こんなに不思議な存在にも、おじいちゃんは何も言わずに三人での暮らしが始まりました。
今日の夕飯は、お肉多めの野菜炒めと味噌汁でした。
庭の野菜がとれるのは、もう少し先です。
「それでは行ってくるよ」
おじいちゃんが夜勤に行きます。
それでも、もう寂しくはありません。
「ゆりゆり、おふろに入りたいな」
「うん、お風呂入ろうか」
もふもふさまと一緒だと、なんでも楽しい。
おじいちゃんがもふもふさまに、なんでも神術でゆりに楽をさせないようにしてください、と頼んだので
お風呂掃除もしっかり二人でやります。
網模様の冷たいタイルが苦手だったお風呂場も二人でゴシゴシ。
もふもふさまは、ゆりちゃんと同じシャッツとパンツ姿です。
「今日はなんのにおいにする?」
「う~ん……みかんのにおいがいい」
「美味しそうだもんね」
「うむ、美味しそうだ」
お湯がいっぱいになって、二人ではいります。
みかんのにおい。
もふもふさまは髪の毛ももふもふなので、ツインテールにしてぐるぐる巻いてあげました。
「うう……あったかい……あうう……ぐううううう」
染みるように小さく唸る、もふもふさま。
「もふもふさま、おじいちゃんみたい」
「……魂のさけびじゃ……」
「なぁにそれ」
「わからん」
「くふふ」
「くふふ」
二人で顔を寄せ合い笑います。
「ゆりゆり見てろ」
「あ、それ知ってる」
両手で円を作って、その上にかけたタオルを空気を入れたまま
湯船に浮かべすぐに風船のように掴みます。
そしてお湯の中に入れると……タオルから空気の泡が沢山出てきました。
「ぶじゅ~~~」
「サイダーサイダー」
「みかんサイダー」
尻尾はゆりちゃんが洗い場で身体を洗っている時だけ、お湯に入れます。
ぼっちゃんじゃぼんじゃぼん
ゆりちゃんが目を閉じて頭を洗っていると、もふもふさまが尻尾で遊んでいる音が聞こえます。
だから、目を閉じるのも全然怖くない。
シャワーで泡を流します。
「終わったよ。もふもふさま、洗ってあげる」
ゆりちゃんとおなじ、リンスインシャンプー。
もふもふさまは、いっぱいもふもふなので三回プッシュします。
「あひゃ! くすぐったい!」
「うごいたら、だめ~」
あわあわもふもふさまのできあがり。
「ゆりゆりにも」
あわあわを頭に乗っけられました。
ちょんちょんと指で尖らせます。
「あは、お耳!」
「おそろいだ」
「おそろいだ~」
曇った鏡の隙間に二人の笑顔が映ります。
きゃっきゃとお風呂の楽しい声に、黒猫が窓の外でピクリと反応しました。
さすがにもふもふさまにドライヤーをかけるのは大変なので神術で一気に頭から尻尾を乾かします。
「わたしもしてほしい」
「うむ」
ピカッと、ゆりちゃんも乾きました。
二人でパタパタと冷蔵庫まで行きます。
「今日はじゃあ、オレンジにしよう」
ゆりちゃんは冷凍庫から二つに割れるチューブのアイスを取り出しました。
「ここではポッキンアイスっていうんだって、わたしはチューチューアイスって言ってたよ」
「ふぅん、じゃあポッキンチューチューって呼べばいい」
「それはいいね、ポキチューは?」
「うむ、ポキチューいい」
「じゃあ、はんぶんこ」
牛乳も沢山飲みたいので、アイスは半分こ。
ゆりちゃんはポッキンして、先の尖った方をもふもふさまに渡しました。
「こっちの方が大きいぞ」
「うん、ちょびっとね。いいの」
「ありがとう」
「うん」
ゆりちゃんは『ありがとう』と言われた時の心が好きでした。
きゅっと温かくなって、自分が此処にいていいんだと思える音がするようでした。
二人でアイスをチューチュー食べました。
そして寝る前に歯磨きをします。
ゆりちゃんはピンク。おじいちゃんは白。もふもふさまは黄色です。
ちょっとだけ、歯磨き粉をつけます。
おじいちゃんの歯磨き粉はものすごく苦くて辛いので二人はブドウ味で磨きます。
「あわあわ、べ~」
「くふふ、きたないよ」
なんでも楽しい。
さぁ寝ようとした時に、ゆりちゃんはソファに置きっぱなしにしていた
スマホを思い出しました。
もふもふさまが来てから、今まで以上にスマホを見ることは少なくなりました。
「今日は、われがコンコンも抱っこする。ゆりゆりどうした?」
「あ、ううん。なんでもない~いいよー!」
スマホには『未読メール一件』となっていましたが、ゆりちゃんは開けようとしませんでした。
今日ももふもふさまの尻尾にコンコンと包まれて眠るのです。
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