6 / 94
双星の落日
闇の底
しおりを挟むおしんの世界が、光の渦に包まれて反転する。
遠ざかる視界の中で、彼⼥は⾒た。
⼤好きだった⽩銀の空が、どす⿊い闇に塗り替えられていくのを。
⺟の巨体が崩れ落ち、その上に⿊⻯が勝利の雄叫びを上げるのを。
インクを垂らしたような闇が、⺟の笑顔を、庭園を、光を、すべて塗りつぶしていく。
嫌。やめて。お⺟様、どこ︖
……ズズンッ……
闇の底へ落ちていく感覚。
冷たい。
息ができない。
ああ、私はここで消えるのね。
ブラックドラゴンに喰われて、マナの塵になるのね。
その時だった。
無限の闇の向こう側から、奇妙な「振動」が届いた。
「……ぃ、……おい……」
誰︖
聞いたこともない⾳。
⻯語(ドラゴニック)ではない。
テレパシーでもない。
空気を下品に震わせる、荒々しくて、低い周波数の⾳波。
この世界(空間)はなにかがおかしい。
重⼒が重すぎる。
空気が薄すぎる。
聞こえてくる⾳が、全て違う。
(……そうだ、私は……)
意識の⽋⽚が、鋭い痛みとなって突き刺さる。
逃がされたんだ。
お⺟様が、命と引き換えに。
あの⽅の最期の絶叫が、まだ⿎膜に焼き付いている。
(お⺟様……ごめんなさい……私は……)
涙を流そうとしたけれど、体は鉛のように動かない。
意識が再び、深い泥の中へ沈んでいく。
遠のく意識の端で、先ほどの「振動」が、今度ははっきりと頭蓋⾻を叩いた。
「……息はあんな。……おい︕しっかりしろ︕」
温かい、無⾻な⼿が、私の体に触れた気がした。
けれど、それを確認する術(すべ)はなく。
私はそのまま、深い、深い眠りの底へと落ちていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
