甘い関係

如月 永

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2.進展

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   ◇◇◇

同棲に慣れてきたある日の事。
聡志さんがケーキを食べる僕を見て、長い溜息を吐いてから言った。
「朋希。その食べ方どうにかならないか?」
「食べ方?変?」
汚い食べ方をしたつもりはない。
「そのな、ケーキ食べてる時、エッチな顔してる」
「エッチな?してないよ!」
何を言っているのだろうこの人は。
聡志さんのケーキは美味しいけど、エッチな顔なんてしてない。
「生クリーム舐める時とか恍惚としてるっていうか、エッチな声も漏れてるし」
「ん…っ」とか「はぁ…」とかなまめかしい声や吐息が漏れているらしい。
言われてみれば美味しさに浸っている時は確かにそんな声が出るかもしれない。
恍惚な表情ってのは分からないけど、舌なめずりは無意識にしているかもしれない。
でもそれは美味しすぎるケーキがいけない。
「あと、そのエッチな顔で『聡志さんの美味しい』とか『好き』とか言うな」
「だって美味しいし、好きだよ?」
「私の『ケーキが』だよね。いやらしい言葉に聞こえて、股間にクるというのか……」
ケーキという単語が抜けるだけで、まるでセックスの間に言う台詞だと聡志さんも赤い顔して言うから、僕もつられて赤くなる。
「聡志さんがエッチなこと考えてるからそう思うんです!僕はエッチじゃないです」
「仕方ないだろ。私は朋希が好きなんだから」
「え?えっ?えぇーー?!」
告白されて驚いてしまう。
こんなにストレートに言われるとは思ってないから、いきなり好きだと言われても心の整理ができない。
「朋希がケーキが好きなように、私は朋希が好きなんだよ」
僕のケーキ愛と同じようにって事は……。
思考回路が変な風に繋がった。
「聡志さんは僕を愛してるって事ですか?」
「あ~!もう!間違ってないけど、はっきり言わないで。恥ずかしい」
「僕は恥ずかしくないです。聡志さんのケーキが大好きです!愛してます!」
「その台詞、『ケーキ』を抜けてくれると嬉しいんだけど」
「聡志さん……が…好き……?」
言っていて理解してくる。
恋愛にうとすぎる僕は聡志さんの言うことがやっと分かった。
だからいつも天然だって言われるんだ。
「突然かと思うかもしれないけど、公園で会った時に自覚したんだ」
僕が店に来なくて落ち込んでしまったことや、ばったり公園で会って嬉しくてドキドキしたとか、また会えないかと思って公園に通ったとか、どうしても話がしたくてケーキを押し付けようとしていたとか聡志さんは話してくれた。
そんなふうに思っていたのだと聞かされてびっくりした
「あの時からエッチな顔するとは思ったけど、こんな近くでエッチな顔されると我慢できなくなるから気をつけて欲しい」
「我慢出来なくなるって……?」
「朋希を食べたくなるんだよ」
聡志さんは急に色っぽい顔になって言った。
聡志さんが僕にエッチな顔しちゃダメって言った気持ちが分かる。ドキドキする。
聡志さんの顔を見れなくて俯いていると、そっと頬に手が添えられた。
見上げると聡志さんが欲情した表情で見ていた。
「ごはん作るのも、家に住めば良いって言ったのも下心もあったんだ。でも無防備すぎて逆に心配になったよ」
聡志さんから目が離せない。
「本当に食べちゃってもいい?」
食べられちゃうのかと口元を凝視してしまっていたら、唇がどんどん近付いて重なった。
目なんて閉じる事も忘れていた。
触れるだけのキスなのに頭がクラクラしてしまう。
「もっと、していい?」
返事をする間もなくもう一度口付けられる。今度はさっきよりも深い。
舌が入って来て僕の舌を絡めとっていく。
初めての感覚にゾワリとした快感が走る。
歯列をなぞられ、上顎を擦られるとビクビク体が震えてしまう。
こんな刺激初めてだった。
聡志さんから薫る甘い香りに包まれて、頭の中が蕩けてしまいそうなほど気持ち良い。
力が抜けて聡志さんの胸の中にしなだれかかった。
「大丈夫か?」
「うん。なんかフワフワして幸せ」
ふわふわしているのは本当だ。
それを言葉にしようとしたら、幸せと発していた。
「可愛いこと言うな。やめられなくなる」
そのまま覆い被さってくるとまた深く口付けてくる。
何度も角度を変えて繰り返される行為に、息継ぎが上手く出来なくて苦しい。
「んっ、んんっ、あっ……」
それでも止めてくれない。聡志さんとのキスに夢中になる。
「あー……ダメだ。もう我慢できない。抱きたい」
切羽詰まったように聡志さんは呻く。
「えっ、あ、でも……僕はお腹たぷたぷしてますよ?お尻も大きいし」
「それは気持ち良さそうだ」
聡志さんがそれで良ければ良いんだけど、あんまり自信がない。自信があったらダイエットなんてしていないし。
聡志さんは重い僕を軽々と持ち上げるとベッドに下ろした。
そして少しも離れたくないと言っているように僕にキスをする。
舌が絡み合い、唾液が口の端から零れる。
聡志さんの手が服の中に入ってきて、腹の脇を撫でられた。
僕は身を捩るが逃げられない。
聡志さんの手はどんどん下へ降りていき、パンツの中に入って来た。
陰毛を触られ、僕は息を飲む。
「あのっ、やっぱり聡志さんとエッチ出来るような体してないので!」
聡志さんは微笑んで、それから僕の耳元で言う。
吐息がくすぐったくて僕はゾクッとした。
「そんな朋希の体に欲情してるんだよ」
「はわわわ……」
聡志さんの声がエロすぎて変な声が出た。
聡志さんは手際よく僕を脱がしていく。
抵抗したけど無理だった。
裸にされて恥ずかしい。
僕は真っ赤になりながら両手で顔を覆った。
だって聡志さんは僕の体を舐めるように見ているんだもの。
僕はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。
「拒まないならしてしまうよ?」
「あの、優しくしてください……」
恥ずかしさと不安で消え入りそうな声で答えると、優しいキスが降ってきた。
大きな手が肌の上を滑る。
乳首に触れられて、指先で捏ねられる。
摘ままれて転がされるとムズムズした感じがする。
聡志さんの唇が離れていくと、僕は自分の口から漏れている喘ぎに驚いた。
今まで聞いたこともない高い女みたいな声が出ていたのだ。
聡志さんは僕をじっと見つめて、僕の反応を見ながら愛撫を続ける。
弄られているうちにそこはツンと尖り始めた。
恥ずかしいのに、体は正直だ。
僕の性器も緩やかに勃ち上がっていく。
聡志さんはそこに触れると、優しく上下に扱き出した。
直接的な刺激に腰が跳ね上がる。
僕はどうしたら良いのか分からなくてされるがままだった。
「あぁっ……あぅ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……あ……」
敏感な部分を責め立てられて、僕の理性はどこかに飛んでしまった。
「朋希は可愛いな。もっと気持ち良くなって」
聡志さんはそう言って、僕を口に含んだ。
熱い粘膜に包まれ、舌で先端をグリグリされる。
「ひゃあああっ!だめぇっ!それっ!ああっ!あっ!あっ!あっ!」
あまりの快感に僕の頭は真っ白になってしまう。
「出ちゃう……ダメ……もう、ダメ……離して……」
懇願するが聡志さんは止めてくれなかった。
むしろ強く吸われて、僕は耐えきれずに達してしまった。
聡志さんはゴクリと喉を鳴らすと飲み込んでしまう。
「ダメっ!ダメだよぉ!聡志さんの口は僕の精液なんて飲んじゃダメだよ!」
「美味いものじゃないけど、好きな相手のなら飲むだろ」
「聡志さんはケーキの味見だってする口なんだから、飲んじゃダメぇ!」
僕は綺麗にしなきゃという気持ちで聡志さんの唇にしゃぶりついた。
舌を差し入れて、口の中も舐め回す。もう精液なんて残ってないけど、口の周りがベタベタになっても構わず続けた。
聡志さんは大人しくしている。
僕が満足するまで好きにさせてくれた。
僕は口を拭って、聡志さんを見た。
「綺麗になった?」
「なったよ」
「もう精液なんて飲んじゃダメだからね」
「朋希のおちんちん舐めたいし、飲んだらまた綺麗にしてくれるだろう?」
聡志さんは悪戯っぽく笑った。
僕は何も言えなくなって俯いた。
聡志さんが僕のお尻を揉みだす。
最初は優しくマッサージするように。それから徐々に力が強くなる。
割れ目を広げられた。
僕は恥ずかしくて身を捩る。
聡志さんはベッドサイドに置いてあったローションを手に取ると、それをたっぷり指に絡めた。
嫌な想像をしておずおずと聞いた。
「それ……どうするの?」
「お尻に入れるんだよ」
聡志さんは躊躇なく僕のアナルに触れた。
「ダメダメダメダメぇ!!触っちゃダメぇ!!」
僕にとってはケーキを作れる神聖な手で、穢れた場所に触れるなんて耐えられない。
僕は泣きながらティッシュでローションを拭くと、指を綺麗に綺麗になるように舐めた。
「朋希、お願い。私を受け入れて欲しい」
「エッチなことならしても良いけど、手で触るのはダメ!」
「そんな無茶な。初めてなら慣らさないと痛いよ?」
「聡志さんの指が汚れるくらいなら痛いほうがマシ!」
僕は必死で抵抗した。
すると聡志さんはラテックスの使い捨てゴム手袋を持ってきた。
掃除の時などに使ってる手のサイズぴったりの手袋だ。
ちょっとゴム臭いけど生で触られるより全然良い。
「次は医療用の買っておくから。今日はこれで我慢して」
指にローションを塗して、肛門に塗り込み、括約筋か緩むまでアナルをほぐしてくれた。
「もう入れてください」
「力抜いててね。ゆっくり入れるよ」
「ん……ふぅ……はぁ……」
僕はなるべく力を抜くように呼吸する。
聡志さんが入ってくる。
凄い圧迫感。苦しい。
でも聡志さんが幸せそうな顔をしているから、僕も嬉しい。
「大丈夫?全部入ったけど、平気?」
「聡志さんので、お腹いっぱいだよ」
全部入ったみたいだ。
聡志さんはゆっくりと腰を動かす。
だんだん馴染んでくると、苦しさも薄れてきた。
「あっ……あんっ……あぅ……あぁっ……あぁっ……あぁっ……あぁっ……あぁっ……」
気持ち良いのかよく分からないけど、変な感じがする。
「朋希の中、熱くてトロトロだ」
「やぁ……恥ずかしぃ……言わないで……」
「朋希はケーキの感想を教えてくれるんだから、私はエッチな朋希の感想を教えてあげる」
「あぅ……やぁっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」
律動が激しくなる。
聡志さんの動きに合わせて声が出てしまう。
「朋希……好きだよ……愛してる……可愛い……大好き……愛してる……ずっと側に居て……」
「ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!ああっ!」
聡志さんは愛の言葉を囁き続け、その度に僕の中はキュンキュンと疼いた。
聡志さんはしがみついた僕を抱き締めてくれた。
快感が強くて聡志さんの背中に爪を立ててしまったけど、それでも離してくれない。
それどころか更に激しくなった。
パンッ!パァン!という音と共に身体の奥深くに衝撃を感じる。
何度も繰り返されるピストンに気持ち良すぎておかしくなりそうで、僕は聡志さんの肩口に噛み付いて、どうにか正気を保った。
「朋希……出すよ……中に出して良いよね?」
「うん、聡志さんなら良いよ。僕の奥に聡志さんの熱いミルクちょうだい」
「ああ、朋希……朋希……朋希!!」
聡志さんは僕を強く強く抱いて、一番深いところで果てた。
ドクンドクンと脈打つ感覚に僕は身震いしてしまう。
聡志さんは蕩けた僕の顔中に啄むキスを落とす。
「朋希、好き、好き、好きだ、好き、好き、好きなんだ。悪い。一度じゃ治まらない」
聡志さんはまた動き出した。
「ダメダメダメダメぇ!!イッてるから!今イキっぱなしだからダメなのぉ!!」
「ごめん朋希、もう少しだけ付き合って」
「今日はもう無理ぃ!許して!許してくださいぃ!」
その後、僕は何度イカされただろうか。
数え切れないほど絶頂を迎えた後、意識を失った僕のアナルからはホイップされた聡志さんの精液が溢れ流れた。
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