「R-18」異世界で花の乙女になった少女 ~侯爵夫人への階段を昇る~

Mona

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異世界での一歩

夜の帳1

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 モコモコの泡の中にいる私を、メイドさん達が丹念に洗ってくれる。

何か特別な事が有る、そんな予感がする。

毛玉(魔梟の雛)も、一緒に入れようとしたら真面目に注意されてしまったよ。

ハイハイ、解ります。生き物とお風呂に入ってはダメですよね。

毛玉の瞳が、悲しげだったと思うのは私だけなんでしょうか?

モコモコの泡は、お母様と同じ臭いがします。

白と金の配色、猫足のバスタブはお姫様気分になります。

いつもはエミリーだけなのに今日はメイド長もいる。

「お嬢様、…………の話が旦那様からあります。お返事は、…………のように返して、最後にカーテシーです」

「…………で………なの?」

「そうでございます」

メイド長さんは泡まみれの私に根気良く教えてくれてる。

バスタブの泡と湯が抜かれ、頭の上から優しく、新しいお湯を掛けて貰うとリフレッシュする。

メイドさん達が、フワフワのタオルを何枚も使い身体と髪を拭いてくれるのは幸せな気分。

湯上がりの後は、エミリーが保湿クリームを塗ってくれてたんだけど、今日は何時もと違います。

銀色のトレーに乗せられた貝殻の容器。
メイドさんが、笑いながら容器の蓋をとって見せてくれる。
白くキラキラした粉の上には可愛らしいピンクのパフが乗っていた。

メイドさんが、身体全体に粉を叩いてくれてる。
粉が乗った瞬間は、白っぽいんだけど、暫くすると透明になる。

手がむずむず、してしまうよ。

粉を、持っているメイドさんが笑いながらパフを渡してくれたので、鏡の前に張り付くようにして顔に粉を叩いた。

「エミリー、可愛くなった?」

「キャー!お嬢様」

エミリーを筆頭に、使用人達は絶句した。
透明になるはずの粉が、透明にならないほど厚塗りをした幼女が、自身満々に白い顔で笑ってるのだから。


 手を繋いで貰って廊下を進む幼女は不機嫌なオーラを、隠そうとしない。

使用人達は、思い返す。

不安げな様子の幼女が侯爵夫人に甘える、愛らしい仕草。

そんな事を気にしない、メイド長は幼女に「お嬢様、旦那様へのご返答の仕方は………よろしいですか。その時の立ち位置は………」

「大丈夫!!」幼女は、更に不機嫌になる。

何故なら、幼女が不機嫌になっている原因はメイド長だからだ。

彼女達は、少し前の時間に思いを馳せる。

「キャー!お嬢様、なんて事でしょう」
メイド長にしては珍しく声を荒げて、白塗りの幼女の顔をごしごし拭きまくった。

「此では、死人ですよ」

その時、幼女の瞳からはポロポロと涙がこぼれていたのだが。

「申し訳有りません。布が固かったですね」

メイド長は、幼女の涙の意味が解らなかったのだ。

メイド達は反省する。鏡に夢中に向かって、パフを叩く姿が余りに愛らしく、止めるのを忘れてしまった事を。






  応接室には、キャスル侯爵、侯爵夫人、サイラス、フリーゲルが、待機していた。

「リィ・ブロウ、……… あの子の資質は?」
侯爵が、夫人に問いかける。
「そうですわね。足らない、所も多いですが、此れからの教育で賄えると思います。1ヶ月後の陛下への謁見の儀が最初の山場ですわね」

「報告書を見る限り元々の生まれは、貴人の縁戚、主家の子供達と勉学を共にしていた」

サイラスが、報告書を読み上げる。
此は、本人からの聞き取り。

「使用人からの報告は愛情に飢えている様子、戸惑い。気になる所などは対人に対する反応で、顔色を伺いながら行動する場面がみえる。食事の所作などは、拙い場合も多いが基本的には問題点は無し。学力テスト等は、地理、歴史は此れからの学習次第、算術、考える力などは基本を遥かに上回る出来」

サイラスが、読み上げた報告書に対して侯爵がフリーゲルに意見を求める。

「親元で育てられた子供ではありませんね。6才の子供が親元から離れ、数日で見せる反応では有りません。召喚された事実に泣いたのは、初日の説明と翌日の朝のみ」

フリーゲルは、暫く沈黙し考えを纏める。

「私の考察は親元から主家の家に引き取られた分家の娘。息子の婚約者候補、令嬢のスペアです。叔母上への異常な懐き具合が実感にたります。実母から、愛情に触れた事が無いのでしょう」

遠からず、当たっているフリーゲルの考察に沈黙が流れる。

「6才の、能力は上回っております。本人次第ですが次代の真のキャスル侯爵夫人に足る資質は有していると思います」

「神殿に要る、適齢期の乙女達より遥かに良い」
サイラスが、神殿にいる乙女達の奇想天外な行動の暴露を始める。

彼も、乙女達の被害者故に皆が唖然とする実話を次々に話していると、《トントン》扉をノックする音とメイド長の入室を求める、メイド長の声が聞こえた。

「お嬢様を、お連れいたしました」










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