「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

夜の帳2

　「リィ・ブロウ、4人目の婚約者が決まった」
応接室に入り、挨拶が終わるか否か、侯爵からの決定事項が告げられた。

「私の甥のフリーゲルだ」侯爵はリリィに告げる。「リィ・ブロウ、白百合の名に恥じる事が無き様に、良き妻、良き母となりなさい」

「慎んで、お受けします」リリィは、侯爵に答える「良き妻、良き母となるように精進いたします」



　フリーゲルに視線を移し、カーテシーをする。「末永く、御導き下さいませ」

完璧だ！どうだメイド長！メイド長の顔を見たい！

上手く、挨拶する事が出来た事で、得意げな幼女。その顔を見て、彼等は笑いを、押さえるのに苦労する。

フリーゲルも、笑いをこらえ、床に片膝を付き「共に、末………………」笑いをこらえ切れなくなったのだ。

彼は幼女を抱きしめ、耳を塞ぎ、額にキスをして、暫く幼女を（耳を塞いだまま）離さなかった。

威厳の有る侯爵も、貴婦人の鏡のような夫人、サイラスは勿論、幼女が聞く事が出来ない間に笑い、笑いを納めた。

彼等が笑って要る間、幼女は耳を挟まれ、額にキスを受けていたのだ。

幼女はフリーゲルの束縛から解放されると、真っ赤な顔で呆然と立ち尽くしていた。




　叔父の侯爵から、花の乙女との婚約を打診された時は、正直、気乗りしなかった。
しかし、世話になった叔父の気持ちを考えると、無下には出来なかった。
朝食の時の食堂で、6歳の花嫁を見たときは、正直、引く自分がいたのも事実だ。


だが、幼女と１日を共に過ごし、気持ちに変化がしょうじた。


自分の中に流れる血の特徴を顕著に表す、紫色の髪。

幼女は、その色を『１日が始まる色』
そんな風に、表してくれたのだ。その言葉は、希望と未来を与えてくれた。
それに、今要る、この空間は、とても暖かい。


それに、まだ硬い蕾を自分と、従兄弟達と育てる事が出来るのだから。

熱すぎる日差しから守り、涌き出る清水を与えよう。

勿論、害虫は捻り潰す。





　何時もよりも、遅い夕食は皆で和やかに頂く事ができた。

この世界の食事は、洋食が主体になって要るんだけども、過去に召喚された人の影響でバラエティーに富んでる。

例えば、カレー、餃子、チャーハン、オムライス。


侯爵家での食事は、朝食は、パンと卵料理に肉が添えられ、サラダとスープかな。
昼は、普通にカレー、チャーハン、オムライスなど。
城下町に行くと、普通にラーメン屋さんが有るみたいで、魔力測定が終わったら町に買い物に連れてって貰う予定です。

夕食は、洋食のコース料理と決まっている。
ちなみに、幼児は、お子様プレートだよ。

侯爵家に来てから、使っているプレート何だけど、凄く綺麗なんです。

艶々の表面に、可愛らしい天使達が遊んで要るのが描かれて要るんですよ。

この幼児用のプレートは、クリフォード、サイラス、アルフレッドも使っていたプレートみたいです。


お父様達は先程から少し、難しい話題をしています。

他家の実情、領地、政治。
今日は男性が多いせいでしょうか？
今までは、お母様が話題の中心にいて、流行の芝居、ドレス、サロンなどが話の中心で、お父様と、私は、聞き役に撤していました。

私は、モグモグ食べます。子供が口出し出来る話ではありません。
それに、全部食べるとご褒美が有りますから。

いよいよ、今日のメイン。プリプリの大きな海老を食べます。
オレンジバターのソースが付いてる、絶品です。

日本で生活していた時は、好きな食べ物は最初に食べていました。
諸事情で、最後迄、食事をして要られない事が多々ありましたから。

何せ、下僕でしたから。

今は、幸せです。好きな、おかずを最後に食べる事が出来るのだから。


　侯爵夫人はご機嫌で、海老を食べている幼女を見詰めている。

　当初、神殿から連れ帰って来た幼女の食事の様子は、好物と思われる物を足早に食べ、それ以外は、必要最小限しか食べなかったのだから。


好物の海老を最後に残し、笑顔の幼女が、海老を味わいながら完食したのだ。

思わず幼女の頭を撫で、口の端に付いているソースをナプキンで、優しく脱ぐってやる。

小さな手が、侯爵夫人の手に重ねられた。

「お母様、私、ちゃんと食べました」
「ええ、良い子ね。ご褒美を、あげましょうね」

ご褒美の小さなプリン。それは侯爵夫人のアイデア。

小さな子に、落ち着いて完食をさせたかった、優しい思い。


侯爵はそんな2人を見て、少し前の事を思いだす。

花の乙女の召喚の神託が、降りた時、キャスル家に宣託の花嫁の、知らせが来た。
キャスル侯爵家に、託される花嫁。
祝福、妬み、予想以上の反応が起きた。

召喚された、花嫁が幼子で更に、周囲が反応した。
自分の娘を、嫁に、妾に押し込もうとするやから。

嫁に相応しい令嬢がいたら、とっくに、嫁に迎えていた。
いないから、婚約者すら居なかったんだ。


再び、幼女を見る。

此で、良かったと。

愛しい妻の笑顔。一族から、離れて行こうとしていた甥が戻ってきた。

息子達も、幼女を愛しいと思っている。

侯爵は、決心する。害虫には、さっさと退場を願おうと。