「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

閑話 公爵家の子猫

　商談の帰りの馬車の中で、浮かぶのは、我が家にやって来た子猫のこと。

この時間なら、子猫が寝る前に帰れそうだと思うと、少し前の事を思い出す。

神殿から、クラーク公爵家に託宣の花嫁の知らせが来た時は、面倒な事になったと思っていた。

正直、御断りを入れようかと思った。

しかし、年下の叔父と双子の弟達が、乗り気になってしまい、諦めた経緯がある。

神殿で初めて見た時、２人の幼女が、半裸で戯れていて、まるで、銀色の毛玉と水色の毛玉が、遊んでいるようで可笑しく成ってしまったが、水色の毛玉が自分の花嫁だと何故か納得した。

美しい毛並みの、子猫を連想させる幼女は初日から、自分を退屈にさせない不思議な存在でしかなかった。

召喚された翌朝、キャスル侯爵家の次男に喧嘩を売った挙げ句、猫の子のように摘ままれた姿を見た時、侯爵家の次男坊に殺気を覚えた。


我が家に、やって来た当初の警戒心を隠せない子猫その物の行動を思い出し、笑みを浮かべてしまう。

警戒する子猫に揺さぶりを掛けて、公爵は、子猫の生い立ちを考察して見た。

子猫は、召喚初日に帰れないと告げても、泣き出したりしなかった。寧ろ安堵の色がみえたくらいだ。


　幼児の心理に疎い、公爵は召喚翌日の朝食の後、幼児達が、密かに相談してる時サイラスに訪ねた。
帰れないと告げた時の反応を。
サイラスからの答えは、告げた時と、目覚めた時に泣かれてしまったと、返ってきのだ。



気になったのは、男児のような言葉使い。
その割りに、マナーなどは、拙い所も有るが合格に近い。

公爵は、百戦錬磨の腹黒さで揺さぶりを掛けて徐々に聞き出した。子猫は気付いていないだろう。

　子猫は、名家の嫡男として育てられていたのだろう。この世界では考えられないが、子猫達がいた世界の男女比は、ほぼ互角だと聞いた。

女子しか、産まれなかったか、たった１人の直系が女子だったのか、そんな理由だろう。

子猫には、婚約者もいたみたいだ。しかも同性のだ。

『絶対に結婚したく無い相手』初めて、子猫が泣いた。

初めての、感情だった。激しい嫉妬と、庇護欲。
子猫位の子がいても、可笑しく無い年になっているのに。

考えてみると、子猫も6歳にして波乱万丈の人生だ。

性別を偽って嫡男と育て上げられ、結婚したく無い相手と婚約して、異世界に花嫁召喚されるなんて。
しかも、クラーク公爵家の花嫁だ。

公爵が屋敷に戻ると階段から、子猫が転がるように降りて来て、公爵に抱きつく。

公爵が、子猫を抱上げると「彼奴が、相談が有るみたいだぞ」と告げる。

双子の弟と一緒に居たのは、キャスル家の四男坊だった。