「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

蓐で迎える朝

　目覚めると、サイラスとフリーゲルに挟まれている状況でした。

身体の複数の部分がピリピリ、カリカリしています？

「ピィピィピィピィピィピィ、」魔梟の雛が鳴いています。お腹が空いてしまったのかもしれない。

「今、いくよ！」寝台から飛び降りる事にします。

「リリィー、寝台から出ては駄目だよ」フリーゲルも目覚めたのですね。

「でも、毛玉が鳴いているの。餌が欲しいのかも」

「雛なら大丈夫。朝方に餌はやっておいたよ。今日は、蓐の儀の朝だから、もう少し横になっていなさい」

「毛玉には、沢山、食べさせたから心配するな」
サイラスも目覚めたんだね。


　あのね、『仮の蓐しとねの儀』は婚約の儀、又は、婚約決定した者同士が、同じ寝台で一緒に過ごす、伝統儀式で、この儀式が貴族社会では大切だそうです。

私達は、既成事実が有ります。夫婦と同じだと思って下さい。
そんな、意味合いを持つと、教えて貰いました。


　トントン、部屋の扉が開けられ、寝台の天涯の薄絹が恭しく開けられます。
「お早うございます。おめでとうございます」
メイド長が朝の挨拶と、儀式の完結の祝辞をくれまはす。

やっと、ベッドから起きる事ができます。
サイラスとフリーゲルは、優雅に起き上がって、賑やかに答えています。

どうしたんでしょう。エミリーの顔が赤いですよ。
「お早う。エミリー顔が赤いよ。熱？」
エミリーの顔が更に、赤くなる。

「お嬢様、エミリーは大丈夫です」
「本当に？」

「ゴホッゴホッ、リリィー、エミリーは大丈夫だよ」サイラスが、私の疑問を遮る。
メイドさん達は、クスクス、笑ってるし。

彼女達が、ベッドの上に食台をセットしてます。
エミリーは下を向いているし、笑い声は途切れない。

食台の上に置かれたのは、一杯の水、古くさいチーズ、侯爵家では見た事がない、固そうな黒パン。

フリーゲルが、パンにナイフを入れて分けてくれてる。
何故か、7割がサイラス、2割がフリーゲル、残りが私です。いいんでしょうか？

チーズも、同じ割合でパンの上に載せてくれてます。

神様に、無事に儀式を行う事が出来た事を、感謝して食事を頂きました。

パンは固く、チーズは匂いがきつく、食べるのに苦労しましたが、半分、固まった冷飯よりは美味しかったです。

一番、少ない量でしたが、最後の完食になってしまい、お水も結構、飲んでしまいました。

謝りながらも完食を、告げると、とても誉めて貰いました。

今、食した物は、建国当時の食事を再現した物で、貧しい地方等では、未だに、似たような食事をしているみたいです。

貴族の家で、祝い事のある時は、前後に、今のような食事をし、建国当時の志を忘れないように。
未だに、貧窮している人々が要ることを肝に命じる為に行う伝統が有るそうです。


　身支度をして、通常の朝食を食べに行く事になりましたが、エミリーに相談したい事を思い出しました。
「あのね、エミリー。何だが、身体中がカピカピヒリヒリするの」
「お嬢様！」
エミリーが、鼻血を出してしまいました。

メイド長が、私を抱き上げバスルームに向かってます。でも、まだ聞きたい事が有るんです。

「エミリー、昨日パンツはくの忘れたみたいなんだよね」
とうとう、エミリーが倒れてしまいました。
私の身の周りは、エミリーが一番良く知っているので用意して貰おうと思ったのに。

　メイドさん達が、丹念に身体中洗ってくれてます。カピカピするのは、すぐに取れたのに、ヒリヒリは治りません。

メイドさんは、ヒリヒリしている場所に軟膏を塗ってくれたので、何れ直るでしょう。

此のくらい、ヘッチャラですよ。
畑仕事の時に、毒虫に刺された事もあります。
それより心配な事があります。
「エミリー、大丈夫かな？」
「………………」
「大丈夫ですよ。火照りが覚めれば」
「やっぱり、熱があったんだね」
「………………」
「？？」