「R-18」異世界で花の乙女になった少女 ~侯爵夫人への階段を昇る~

Mona

文字の大きさ
48 / 82
異世界での一歩

クリフォードとフリーゲル

しおりを挟む
 クリフォードは、小さな森にある東屋に向かっていた。

 幼い花嫁の様子を、使用人に聞いたら、家族に可愛がられ、元気に過ごしていたみたいだ。

ほっとした気持ちと、残念な気持ちを同時に感じる。

執着・・・相手は、幼児だ。

自分は、幼女の夫になる予定だが保護者のような位置付けである。

彼女が年頃になれば、年の近いアルフレッドと、心を重ねるのだろう。

神殿で別れた時、父の侯爵に抱かれ、眠りに就いていた。

年の離れた弟が、悔しげな表情をしていたのが思い出される。

眠りに就いた花嫁を、抱き上げる事が出来ない、自分の身体の未熟さと執着。


 東屋に立ち入ると、フリーゲルが書類仕事をしている。

東屋の中に使用人の姿はなく、変わりに、子供の娯楽品やら、花嫁が書いた手習いが乱雑に置かれている。

「兄さん、帰れたみたいだね」
癖の強い、年下の従兄弟が話し掛けてくる。
「あぁ、昨日の、お前の活躍のおかげだ」
「あっははは…… それは、良かった」
嫌味を、混ぜて答えても、素知らぬ振りで返してくる精神力。
祖父、先代の侯爵は、死に際まで、従兄弟の処遇に気を揉んでいた。
『使い方を、間違えぬように』父達に、諭していた。

「怒ってる?」
紫色の髪、銀の瞳。中性的な端正な顔立ち。
己の持てる、すべてを武器に代える才能。

「あれは、どうした?」
「あれでは無いよ。リリィーだよね」
「…… 。 何処にいる?」
「ハイハイ。使用人達と小川で水遊びをしてるよ」
従兄弟が、子供用の魔獣図鑑を見せてくる。
「川の底にいる、魔虫取りをしてるんだよ。土の中にいる魔虫では取れない栄養が有ります。此、読んだら飛び出して行っちゃたんだ」
魔虫?栄養?
「魔梟の雛をプレゼントしたんだよ。そろそろ、おやつだから、連れて来てくれないかな」


 小さな森、何代か前の侯爵家に嫁いで来た、花の乙女の為に用意された、豪華な鳥籠。

花嫁の衣を剥ぎ取りながら、森の中で狩りを楽しむ様に花嫁を羽交い締めにし、情事を楽しんだ夫達。

情事の事のみ知れば、顔をしかめる者もいるだろう。
しかし、彼等の業績は素晴らしい物だ。
国の中央での、権力の把握。領地改革。
花嫁との間に、優秀な子供を多数儲けた、実績。

当時、高位貴族家であったキャスル家の土台を、更に固めた。


「キャァ!キャァ!はっはっはっ!」
水が流れる音と、幼女の楽しげな声が聞こえてくる。
リリィーが着て要るのは、私達のお下がりだろう、男児の服装だ。
メイドと子守りの少女達は、水に入ってはいないが、濡れている。
犯人は、小川に入っている、リリィーなのが解る。

「キャァ!はっはっ!!キャァ!」

従者も何人か、小川に入り遊び相手になっているようだ。

「お嬢様、仕返しです!」

メイド達が楽しげに、リリィーに水を掛けると、従者とリリィーで倍の水を掛けている。

 

 リリィーの視線が上がり、私を捉えたようだ。

「クリフォード様!!」
私を求めるように、走り寄る子の為に腰を屈め、抱き上げる。

幼い子供、特有の香りが心地良く感じる。

「あのね、会いたかったの。ずっと、会いたかったの」
私は会いたかった。クリフォードが視線に入った途端に、感情が溢れてしまった。

なんて、贅沢な思いなんだろう。

そして、クリフォードに、抱き上げて貰うのが好きなんだと、思う。

不器用な愛情が、伝わってくる。




 東屋の中で、フリーゲルに全裸にされ着替えた時は、拷問かと思いました。

小さな子供のように、フリーゲルが広げたパンツの中に足を通すように強制されたからです。

クリフォードは、毛玉を丹念に拭いてくれていた。

着せて貰ったワンピースは、更々で着心地良く、暑い日には最高ですよ。

「毎日、こんな感じなのか?」
「基本、そうだね」

2人の男は、遊び疲れ寝てしまった、幼女を見詰めてる。
「お前が、家督を継がないか?」 
クリフォードが、フリーゲルに問いかける。
「嫌だね。自分が、向いて無いのは、解って要るよ」
フリーゲルは、心底、嫌そうに答える。
「先代の意思を、兄さんは誤解している」
「誤解?」
「先の戦にも勝ち、召喚も成功し、聖女も降臨した。今、国は安定している。」

「………」

「先代の侯爵は、恐らく、無謀を視野に入れていたんだろうね」
先代の国王と、本気で、ケンカをしたらしいからね。

「!」

「戦国の世なら、お前を跡目にしただろう。だが、安定した世ならクリフォード以上の適任は、いないだろう」
俺を、追い出すように子爵位を早々に譲ったのが、何よりもの証拠だ。
あの人は、俺の事を、良く思って無かったしね。

「先代が、俺に残した言葉だよ。兄さん、あなたは、お祖父様に信頼されていたんですよ」

あの人は、俺の根本を見抜いていたんだろう。

「それとも、国取りでもやりますか。今なら勝つ自信がありますから」

召喚前に終わった戦争の兵力の6割は、キャスル侯爵家、3男のリオンが率いる領兵。
残りは、サイラス率いる国軍。

隣国、ペルリン国と、キャスル家の領地は、境を接して長期に渡り境界線がはっきりとしなかった。

原因は、希少金属が採掘できる鉱脈だ。

戦争は、勝利を納め、ペルリン王国は滅亡した。

キャスル侯爵家は、境界線を有利に引き直し、希少金属の鉱脈も、手中に納めた。

領兵の武装解除は、未だにされて無く、兵達の士気は、高いままで保っている。

「止めておく」

「良かったよ。面倒だからね。兄さん、家族を守るよ」

「そうか。この場所が好きか?」

「悪くない」



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...