「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

美しい物 アルフレッドside

　アルフレッドは馬車の中から、青い空を見上げる。
本当なら、自分も一緒に神殿に行く予定だったのだから。

お茶会の、招待が来た伯爵家とキャスル侯爵家には、ある程度の交流が有り、お互いの家のお茶会、夜会等は招待し合う中だ。

そうなると、子供達の年が近い場合等は、自然、幼なじみのような関係になる。

恋の鞘当てもセットのように付いて来るのだ。

「母上、私はイザベラに将来的な約束をした覚えは有りませ。それに、我が家では託宣の花嫁を頂いてるんです。エーベル家は正気なんでしょうか？」

「アル、お前は女心が解らないの？」

「…………」

アルは、必死に落とし処を考える。

『イザベラ・フォン・エーベル』伯爵家の4女(14歳)で、アルフレッドの幼なじみ。

以前から、エーベル家から婚姻の申し込みは来ていた事は知っていたが、キャスル家は返事を避けてきた相手だ。

エーベル伯爵家の門を馬車が通り抜ける。
キャスル侯爵夫人とアルフレッドが完璧な貴族の顔付きに変わる。




　エーベル伯爵は、中堅の伯爵家だ。国の中央の要職には縁が無く、領地経営は農業が中心になっている。

あえて言うなら、女子の出生率に恵まれる家系らしく、当代は、2男5女に恵まれている。

政略結婚を全面に、人脈を掴み農作物の流通に力を持つ。

フレーゲル兄さんからの情報何だけど、今回は、政略どかは、関係無い感じがするんだ。

本来、伯爵家の人達は穏和な方達なんだ。

イザベラの好意には、気付いていた。
僕に向ける視線も、兄さん達に向ける視線も、熱の籠った物だった。

側室の打診かな？女子が少ない社会だけど、婚約者が幼い場合は時に、側室を置く場合があるからね。

政略的にも、キャスル家との縁組みと成れば損はないか。

だけど、イザベラは大切な幼馴染みなんだ。

彼女を、側室何て考えられない。






　僕と母上は、伯爵夫人にも歓迎され、お茶会も終了したけど、別室に通された。

お茶会でのイザベラは、とても綺麗だった。
母上との会話も弾み、愛らしく笑っていた。

僕達が応接室に行くと、イザベラは美しいカーテシーで迎えてくれた。

リリィーのカーテシーは、まだ危うい感じが抜けないけど、イザベラのカーテシーは、僕からしたら完璧だと思える。

何回も何回も練習した事が解る、美しさだ。

「侯爵家に気高い花が、香り高く咲くで有ろう事は承知しておりますが、どうか我が家の花も、ご覧下さいませ」
伯爵夫人が、言葉を紡ぐ。

イザベラの指先が震えているんだ。

「侯爵家にとって、物足りない娘で有る事は承知しております」

伯爵夫人の言葉は、間違っている。
イザベラは、物足りなく無い。

「白百合の君を蔑ろにする事無く、良き嫁になります」

イザベラの声が震えている。
母上は優しく、イザベラを見詰めて要るんだ。

「アルフレッド貴方が、お返事をするべきだわ」
母上………　。



「イザベラはとても素敵な少女だと思います。一輪の花としても、充分に美しいです。イザベラを側室に何て、もったいない事なんでしょう。ですが、イザベラが大切だからこそ、迎え入れる事は出来ません」

僕は、呼吸を整える。

「ごめんね、イザベラ。君を迎える事は出来ない。君には、幸せになって貰いたいんだ」




　帰りの馬車の中で、母上に35点と言われてしまった。

結局イザベラには、泣かれてしまった。
けど、彼女は笑って送り出してくれたんだ。

その時の、彼女の笑顔を美しいと思たのは、僕だけだったのかな？