「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

異世界での一歩

秋の王宮舞踏会 文官side

　華やかな王宮舞踏会。その中で異彩を放つ一族。
彼らの周りに人々が群がる。

今宵は、３男の婚約者も同行している。

幸せそうな、少女の笑顔が眩しい。


彼女に向けられる視線は、好意的な物ばかりでは無い。

今をトキメク一族に、嫁ぎたいと思っていた令嬢達からしたら、嫉妬の対象にもなるだろう。



　少女の名前は、確かレイチェル嬢。落ちぶれた伯爵家の庶子。

この場の誰もが、予想しなかった御相手。

正に、王道のプリンセス・ストーリーだよね。

戦の勝利にて、莫大な富を手中にし、託宣の花嫁まで迎えた一族。

蜜に群がる蟻の様に、令嬢達が彼らに群がる。

可哀想に、無駄に時間を使っている事が、彼女達には解らないのだろう。


長男、クリフォード様は嫡男で有りながら宰相室、補佐官を勤め次期、宰相候補。

補佐官の勤めに邁進できる環境は、従兄弟のフリーゲル殿が、当主代行に就任したのが大きいよ。

フリーゲル殿は、中性的な容姿の、端正な貴公子なんだけど、お腹の中は真っ黒だ。

対策室で、学園の構想を徹夜で何日も、皆で考えてた時、フリーゲル殿が乗り込んで来たんだよね。
正直、感謝してる。
王太子様の側近で硬められている、王太子府の人達って、現実が解って無いから案件が纏まらなかったんだよ。
フリーゲル殿が対策室に、乗り込んで来たら、あっさり纏まったんだ。
フリーゲル殿の退室を求めた、王太子様の側近は、いたよ。
けど、あの人、当主代行に就任していたんだ。
御本人は、「まだまだ見習いだよ」何て言ってたけど粗略には、扱えないよ。
当主代行とは、それほど大きな権限を持っているから。

次男のサイラス様は、国軍の中佐。
実力は、折上付きだ。

3男のリアン様は、キャスル侯爵家の領地で、領軍の副隊長を勤めてる。
ペルリン国との戦では、一番手柄を掲げ、レイチェル嬢と婚約した。
兄弟の中で彼のみ「白百合の君」と、婚約しなかった事で、いろんな噂が出たけど、本人達が幸せなら構わないと思うよ。

レイチェル嬢と婚約者の方達が、楽しそうにしている。
今宵のヒロインは、彼女だ。


　まずい！鈴蘭の君が、キャスル侯爵の方達に絡み始めた。

あぁっー！赤薔薇の君が、王族のいる壇上に上ろうとしている。





やれやれ、押さえる事ができた。
俺？俺は文官Bです。
男爵家の３男ですが、能力を認めて貰い宰相室に勤務しているエリートです。
が、不幸な事に《花の乙女対策室》に、出向しています。
僕の今宵の役割は、舞踏会に出席している花の乙女達の監視です。
「⚫⚫⚫さん」
「カモミールの君とセントポーリアの君、どうかしましたか？」
「苺ミルクタンが、いません！」
まずいな、問題児がいなくなってるなんて。


俺はこの後、苺ミルクタンを無事発見する事ができた。

舞踏会修了後、自室に戻ると大きなため息がでる。
疲れた身体を、ベッドに沈め瞳を閉じる。
召喚された、少女の姿が浮かぶ。
困った様にはにかむ笑顔。


リンゴの匂いを、微かに纏っている彼女。
召喚された少女達の中では、埋没しまいがちだろう。
あの子が隣にいて、自分に微笑んでくれたら。

俺は、自分の考えを否定する。

己は、彼女達を管理する側なのだと。



彼女に、幸せになって貰いたい。