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キャスル侯爵領
嘆きの塔4
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フリーゲルは、少し遅れながらも当主の執務室に向かう。
リリィと、少しだけ夜の勉強をしたせいか、ほんわかと色っぽい。
時間も遅いせいか、使用人が彼の姿を見る事はなかった。
「遅くなりました」
フリーゲルは、当主の執務室を見渡す。
執務室には、当主である侯爵とその弟。
彼は当主の弟であり、領軍のトップ。
そして、侯爵夫人の夫であり、三男のリオンの父親だ。
厳格な侯爵とは対象的な、陽気な性格をしている。
そして、一族の主だった者の姿も見える、
「花嫁とイチャツイテいたのか」
陽気な性格の彼が、フリーゲルを見ながら笑うと、その場にいる男達が笑い出す。
「えぇ、まあ、そんな所です」
フリーゲルの返しに、再び笑いが漏れる。
ちなみに、この場に居る男達は、キャスル侯爵家の中枢を担う者達だ。
フリーゲル等、ただの若造に思ってしまうのは仕方ないだろう。
「では、本題に入りましょうか」
フリーゲルが、今日の議題を挙げる。
領の農業の出来合い等の議題も終わり、本日の主な報告に皆、耳を傾ける。
「旧ペルリン王国との戦争で、新たに領境が見直された事で、新たな鉱山などの権利の手続きが終了し、戦利品の回収等も完了した事を報告致します」
フリーゲルは、手短に報告を終わらす。
「まあ、そんな物だろうな」
男達は、満足気に頷く。
そして、その場は、酒を飲みながらの座談会に移行するのだ。
そんな時に、分家筆頭の当主が話題を持ち出す。
「召喚された花嫁の、残りの夫はどうする」
彼は、うちの息子なんてどうよなんて感じだが、目は真剣だ。
そして、フリーゲルをチラリと見る。
「確か、末の息子のアーサーでしたね。利発とは聞いていますが未だ7才ですよね」
フリーゲルは、余裕で返す。
「お前等と比べては、アーサーに部が悪すぎる」
他の者が意見を出す。
実際、分家筆頭の息子であるアーサーは、他の同年の者よりも優れている。
しかし、フリーゲルが敢えて反応を見せないでいると、当主で有る侯爵から。
「しばらくは、リリィの遊び相手として側に侍らせると良い。其処からは、本人の資質しだいだ」
アーサーという少年の母親は、侯爵の末の妹の子だ。
立場的には、フリーゲルと同じようになる。
召喚された花嫁の夫になっても、異論は出ないだろう。
「分かりました。その様に手配致します」
彼は艶やかな仮面を被り、快諾の意を伝える。
当主代行の立場の彼と、分家筆頭の関係は実に微妙なのだ。
その場は収まり、再び酒席となるがフリーゲルは内心に小さな嫉妬の炎を燃やしながら過ごす事になる。
リリィと、一番長い時間を過ごしている彼でも、当主の言葉は絶対なのだ。
酒席も終盤に差し掛かり、1人の男達が席を立つ。
「いやー酔った酔った。良い酒だった」
そして、ある事を確認する。
「では、塔の娘を1人貰っていきます」
男達が、その人物を囃し立てる。
「俺もお味見はするが、息子が11人居るんだ。嫁1人では嫁が可哀想だ」
男は、赤くなりながら言い訳をする。
「わっはっは・・確かに嫁の身が持たない!」
更に笑いが起きる。
侯爵が、男に頷くのを確認すると、彼はそそくさとその場を後にした。
彼は、これから長い夜を迎えるのだ。
そして、どこかの・・誰かは・・明けぬ夜に涙を流すのかもしれない。
✨☆✨ ✨☆✨ ✨☆✨ 🌙
月明かりの中で、フリーゲルはリリィの額にキスをする。
小動物が塔に忍び込み、探検したことの報告は受けていた。
それが、あのような行動に現れるとは。
羞恥に悶える、幼い少女の表情を思いうかべる。
そして、先ほどの酒席での出来事を思い、顔を歪ませる。
当主の一言で、あっさりと5人目の夫が内定する事実が彼のプライドを挫いたのだ。
自分が、極小な存在だなんて思っていなかった。
月明かりの中で眠る少女を見ながら、傍らで彼は再び酒をのみ始める。
彼も、長い夜を過ごすのだ。
__________________________________________________
分家筆頭家の子息アーサー。
60.61話、謁見で登場しています。
リリィと、少しだけ夜の勉強をしたせいか、ほんわかと色っぽい。
時間も遅いせいか、使用人が彼の姿を見る事はなかった。
「遅くなりました」
フリーゲルは、当主の執務室を見渡す。
執務室には、当主である侯爵とその弟。
彼は当主の弟であり、領軍のトップ。
そして、侯爵夫人の夫であり、三男のリオンの父親だ。
厳格な侯爵とは対象的な、陽気な性格をしている。
そして、一族の主だった者の姿も見える、
「花嫁とイチャツイテいたのか」
陽気な性格の彼が、フリーゲルを見ながら笑うと、その場にいる男達が笑い出す。
「えぇ、まあ、そんな所です」
フリーゲルの返しに、再び笑いが漏れる。
ちなみに、この場に居る男達は、キャスル侯爵家の中枢を担う者達だ。
フリーゲル等、ただの若造に思ってしまうのは仕方ないだろう。
「では、本題に入りましょうか」
フリーゲルが、今日の議題を挙げる。
領の農業の出来合い等の議題も終わり、本日の主な報告に皆、耳を傾ける。
「旧ペルリン王国との戦争で、新たに領境が見直された事で、新たな鉱山などの権利の手続きが終了し、戦利品の回収等も完了した事を報告致します」
フリーゲルは、手短に報告を終わらす。
「まあ、そんな物だろうな」
男達は、満足気に頷く。
そして、その場は、酒を飲みながらの座談会に移行するのだ。
そんな時に、分家筆頭の当主が話題を持ち出す。
「召喚された花嫁の、残りの夫はどうする」
彼は、うちの息子なんてどうよなんて感じだが、目は真剣だ。
そして、フリーゲルをチラリと見る。
「確か、末の息子のアーサーでしたね。利発とは聞いていますが未だ7才ですよね」
フリーゲルは、余裕で返す。
「お前等と比べては、アーサーに部が悪すぎる」
他の者が意見を出す。
実際、分家筆頭の息子であるアーサーは、他の同年の者よりも優れている。
しかし、フリーゲルが敢えて反応を見せないでいると、当主で有る侯爵から。
「しばらくは、リリィの遊び相手として側に侍らせると良い。其処からは、本人の資質しだいだ」
アーサーという少年の母親は、侯爵の末の妹の子だ。
立場的には、フリーゲルと同じようになる。
召喚された花嫁の夫になっても、異論は出ないだろう。
「分かりました。その様に手配致します」
彼は艶やかな仮面を被り、快諾の意を伝える。
当主代行の立場の彼と、分家筆頭の関係は実に微妙なのだ。
その場は収まり、再び酒席となるがフリーゲルは内心に小さな嫉妬の炎を燃やしながら過ごす事になる。
リリィと、一番長い時間を過ごしている彼でも、当主の言葉は絶対なのだ。
酒席も終盤に差し掛かり、1人の男達が席を立つ。
「いやー酔った酔った。良い酒だった」
そして、ある事を確認する。
「では、塔の娘を1人貰っていきます」
男達が、その人物を囃し立てる。
「俺もお味見はするが、息子が11人居るんだ。嫁1人では嫁が可哀想だ」
男は、赤くなりながら言い訳をする。
「わっはっは・・確かに嫁の身が持たない!」
更に笑いが起きる。
侯爵が、男に頷くのを確認すると、彼はそそくさとその場を後にした。
彼は、これから長い夜を迎えるのだ。
そして、どこかの・・誰かは・・明けぬ夜に涙を流すのかもしれない。
✨☆✨ ✨☆✨ ✨☆✨ 🌙
月明かりの中で、フリーゲルはリリィの額にキスをする。
小動物が塔に忍び込み、探検したことの報告は受けていた。
それが、あのような行動に現れるとは。
羞恥に悶える、幼い少女の表情を思いうかべる。
そして、先ほどの酒席での出来事を思い、顔を歪ませる。
当主の一言で、あっさりと5人目の夫が内定する事実が彼のプライドを挫いたのだ。
自分が、極小な存在だなんて思っていなかった。
月明かりの中で眠る少女を見ながら、傍らで彼は再び酒をのみ始める。
彼も、長い夜を過ごすのだ。
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分家筆頭家の子息アーサー。
60.61話、謁見で登場しています。
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