6 / 19
少女は再び目覚める
6
しおりを挟む
カタカタカタ・・・・夜の帝都をキャバラン公爵家の馬車が、駆け抜ける。
夜の帝都も静なんだけど、馬車の中はちょっぴりカオスになっている。
一番の原因は、先生も一緒に馬車に乗っているからだ。
何で一緒に乗っているか。それは、私よりも先に記憶を取り戻した先生は、手際良く先代のキャバラン公爵から、私の家庭教師の推薦状を入手していました。
「では、今日は失礼します。後日会えるのを楽しみにしていますわ」
私とエラは、神殿を後にしようとしていました。
「いやいや、私も一緒に帰ります」
なんて、先生が言い出しました。
それからが、長かったわ。
そんな事を言うなら、荷物は纏めて有ると思いますよね。
しかし、そんな都合が良いことはなかった。
荷造りと、掃除が始まってしまった。
私に対して責任と愛情が有るエラは、外が暗くなる前に屋敷に戻りたかった筈。
「後日、公爵家から、迎えの馬車が来るようにいたしますわ」
エラが先生に伝えると、良く解らない、うんちくで引き留められてしまったのです。
エラが先生を見る目、それは、詐欺師を見る目だ。
そんなカオスな空気でも、馬車は公爵邸を目指します。
カタカタカタ・・・・石畳の大通りを、一定の速度で馬車が走っていると。
強い衝撃が、馬車に乗っている私達に伝わってきました。
その時、私には予感がありました。
外にいる、護衛や御者が慌ただしく動いているのが伝わってくる。
「子供が、馬車に当たりました。どうか車内でお待ち下さい」
護衛が私達に、知らせてくれる。
私は、単独で馬車から降りると、前方に向かって行く。
先生も降りた様子だ。
こんな状況なのに、私は淡い期待を抱いている。
「まるで、脳ミソの水分が蒸発してる気分だわ」
かなり興奮してしまっている。
「お前が言うと、現実味が有るな。それより、当たりかも知れないな」
ええ、先生には私の計画を少し伝えてある。
「お嬢様、馬車に戻って下さい」
エラも、馬車から降りたみたいね。
私を、心配してくれてるのよね。
でも、ごめんなさい、自分で確かめないと。
私は馬車の先頭に急いで進み、護衛と御者の間から事故現場に潜り込む。
そこには、まだ小さな彼らがいた。
水色の髪の少年達は、間違え無くアンリとジェイだった。
彼らはエリスの従者を経て、兄であるアンリは優れた頭脳を生かし、解放軍の参謀となる。
弟のジェイは、将軍となり武勇の象徴となる。
今まで、さんざん私を苦しめた二人だ。
海老で鯛を釣った気分だわ。まあ、海老はこれから与えるんだけども。
邪神さまの導きを、強く感じる。
私はその場で跪き、邪神様に感謝の祈りを捧げた。
そして、彼らの声が聞こえた。
「死んでないからなー!!」
何故か、護衛も御者も跪き祈っていたからだ。
それからは、何もかもが大変だったわ。
とりあえずの処置を、その場で先生がしてくれる事になった。
「この近くに、俺の知り合いの家がある。そこに運ぼう」
先生の知り合いのお宅に、彼等を連れて行く事になったの。
私達が、彼等を運ぶのと同時に、護衛の人達に彼等の家族を迎えに行って貰うのも、勿論忘れない。
彼等を釣り上げるなら、家族も釣り上げるのみ。
単純明快な答えだ。
「公爵家の姫様、私で役に立てる事が有るなら、なんなりと」
「心遣い感謝いたします」
私は、いきなり訪れたにもかかわらず。家主の女性に挨拶を居間で受けている。
そして、彼女に抱き付きたい衝動を、必死に押さえる。
彼女にも、繰り返しの記憶が有るのかしら。
私が、そんな事を考えていると。
彼女が・・・・キャサリンさんがお茶の用意をしてくれたらしい。
「庶民の、飲み物ですがよろしかったら」
「これは・・・・」
「カモミールティーでございます。よろしかったら蜂蜜を、お好みに合わせて混ぜて下さい」
私は、好奇心の向くままにカモミールティーに、口を付けた。
「とても、とても、美味しいです」
そして、カモミールティーに蜂蜜を垂らし、飲み進める。
「蜂蜜を垂らすと、とても優しい味になりますのね」
蜂蜜を垂らした、カモミールティーはとても優しい味になり、涙を我慢しなくてはならなくなった。
私は、自分でも知らず知らずのうちに、気を張っていたのだと実感する。
もし、私だけなら感情を溢れさせていたかも知れない。
しかしながら、通された居間にはエラと護衛もいる。
ディスティニーは溜め息を吐く。
カチャリと扉が開く。
「ガキどもの様態は落ち着いた。親も着いたようだから俺達は帰ろう」
「そうですか」
「マダム、申し訳ないが、あの親子を暫く頼む」
「おまかせ下さい」
私達は、先生に促されるようにこの場を後にした。
私達を馬車まで送ってくれたキャサリンさんに、お礼を言い、馬車に乗るしかなかった。
公爵邸に着いたのは、かなり遅い時間になっていたが、先生は父に挨拶に向かったようだ。
「お嬢様」
「ええ、解ってるわ」
エラも疲れている様子がわかる。
私は、素直に従い自室に戻ると、三人組のメイド達が待っていてくれた。
今までの繰り返しで、いなかったと筈の人達。
でも、素直に嬉しいと思う。
そして、少しだけ明日が楽しみにになってくる。
邪神様、今日という日を与えていただいた事に、感謝いたします。
お休みなさい。
夜の帝都も静なんだけど、馬車の中はちょっぴりカオスになっている。
一番の原因は、先生も一緒に馬車に乗っているからだ。
何で一緒に乗っているか。それは、私よりも先に記憶を取り戻した先生は、手際良く先代のキャバラン公爵から、私の家庭教師の推薦状を入手していました。
「では、今日は失礼します。後日会えるのを楽しみにしていますわ」
私とエラは、神殿を後にしようとしていました。
「いやいや、私も一緒に帰ります」
なんて、先生が言い出しました。
それからが、長かったわ。
そんな事を言うなら、荷物は纏めて有ると思いますよね。
しかし、そんな都合が良いことはなかった。
荷造りと、掃除が始まってしまった。
私に対して責任と愛情が有るエラは、外が暗くなる前に屋敷に戻りたかった筈。
「後日、公爵家から、迎えの馬車が来るようにいたしますわ」
エラが先生に伝えると、良く解らない、うんちくで引き留められてしまったのです。
エラが先生を見る目、それは、詐欺師を見る目だ。
そんなカオスな空気でも、馬車は公爵邸を目指します。
カタカタカタ・・・・石畳の大通りを、一定の速度で馬車が走っていると。
強い衝撃が、馬車に乗っている私達に伝わってきました。
その時、私には予感がありました。
外にいる、護衛や御者が慌ただしく動いているのが伝わってくる。
「子供が、馬車に当たりました。どうか車内でお待ち下さい」
護衛が私達に、知らせてくれる。
私は、単独で馬車から降りると、前方に向かって行く。
先生も降りた様子だ。
こんな状況なのに、私は淡い期待を抱いている。
「まるで、脳ミソの水分が蒸発してる気分だわ」
かなり興奮してしまっている。
「お前が言うと、現実味が有るな。それより、当たりかも知れないな」
ええ、先生には私の計画を少し伝えてある。
「お嬢様、馬車に戻って下さい」
エラも、馬車から降りたみたいね。
私を、心配してくれてるのよね。
でも、ごめんなさい、自分で確かめないと。
私は馬車の先頭に急いで進み、護衛と御者の間から事故現場に潜り込む。
そこには、まだ小さな彼らがいた。
水色の髪の少年達は、間違え無くアンリとジェイだった。
彼らはエリスの従者を経て、兄であるアンリは優れた頭脳を生かし、解放軍の参謀となる。
弟のジェイは、将軍となり武勇の象徴となる。
今まで、さんざん私を苦しめた二人だ。
海老で鯛を釣った気分だわ。まあ、海老はこれから与えるんだけども。
邪神さまの導きを、強く感じる。
私はその場で跪き、邪神様に感謝の祈りを捧げた。
そして、彼らの声が聞こえた。
「死んでないからなー!!」
何故か、護衛も御者も跪き祈っていたからだ。
それからは、何もかもが大変だったわ。
とりあえずの処置を、その場で先生がしてくれる事になった。
「この近くに、俺の知り合いの家がある。そこに運ぼう」
先生の知り合いのお宅に、彼等を連れて行く事になったの。
私達が、彼等を運ぶのと同時に、護衛の人達に彼等の家族を迎えに行って貰うのも、勿論忘れない。
彼等を釣り上げるなら、家族も釣り上げるのみ。
単純明快な答えだ。
「公爵家の姫様、私で役に立てる事が有るなら、なんなりと」
「心遣い感謝いたします」
私は、いきなり訪れたにもかかわらず。家主の女性に挨拶を居間で受けている。
そして、彼女に抱き付きたい衝動を、必死に押さえる。
彼女にも、繰り返しの記憶が有るのかしら。
私が、そんな事を考えていると。
彼女が・・・・キャサリンさんがお茶の用意をしてくれたらしい。
「庶民の、飲み物ですがよろしかったら」
「これは・・・・」
「カモミールティーでございます。よろしかったら蜂蜜を、お好みに合わせて混ぜて下さい」
私は、好奇心の向くままにカモミールティーに、口を付けた。
「とても、とても、美味しいです」
そして、カモミールティーに蜂蜜を垂らし、飲み進める。
「蜂蜜を垂らすと、とても優しい味になりますのね」
蜂蜜を垂らした、カモミールティーはとても優しい味になり、涙を我慢しなくてはならなくなった。
私は、自分でも知らず知らずのうちに、気を張っていたのだと実感する。
もし、私だけなら感情を溢れさせていたかも知れない。
しかしながら、通された居間にはエラと護衛もいる。
ディスティニーは溜め息を吐く。
カチャリと扉が開く。
「ガキどもの様態は落ち着いた。親も着いたようだから俺達は帰ろう」
「そうですか」
「マダム、申し訳ないが、あの親子を暫く頼む」
「おまかせ下さい」
私達は、先生に促されるようにこの場を後にした。
私達を馬車まで送ってくれたキャサリンさんに、お礼を言い、馬車に乗るしかなかった。
公爵邸に着いたのは、かなり遅い時間になっていたが、先生は父に挨拶に向かったようだ。
「お嬢様」
「ええ、解ってるわ」
エラも疲れている様子がわかる。
私は、素直に従い自室に戻ると、三人組のメイド達が待っていてくれた。
今までの繰り返しで、いなかったと筈の人達。
でも、素直に嬉しいと思う。
そして、少しだけ明日が楽しみにになってくる。
邪神様、今日という日を与えていただいた事に、感謝いたします。
お休みなさい。
10
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる