令嬢の願い~少女は牢獄で祈る~

Mona

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少女は再び目覚める

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 カタカタカタ・・・・夜の帝都をキャバラン公爵家の馬車が、駆け抜ける。

 夜の帝都も静なんだけど、馬車の中はちょっぴりカオスになっている。

一番の原因は、先生も一緒に馬車に乗っているからだ。

 何で一緒に乗っているか。それは、私よりも先に記憶を取り戻した先生は、手際良く先代のキャバラン公爵から、私の家庭教師の推薦状を入手していました。


 「では、今日は失礼します。後日会えるのを楽しみにしていますわ」
私とエラは、神殿を後にしようとしていました。

「いやいや、私も一緒に帰ります」
なんて、先生が言い出しました。

それからが、長かったわ。

そんな事を言うなら、荷物は纏めて有ると思いますよね。

しかし、そんな都合が良いことはなかった。
荷造りと、掃除が始まってしまった。

私に対して責任と愛情が有るエラは、外が暗くなる前に屋敷に戻りたかった筈。

「後日、公爵家から、迎えの馬車が来るようにいたしますわ」
エラが先生に伝えると、良く解らない、うんちくで引き留められてしまったのです。

エラが先生を見る目、それは、詐欺師を見る目だ。


 そんなカオスな空気でも、馬車は公爵邸を目指します。

カタカタカタ・・・・石畳の大通りを、一定の速度で馬車が走っていると。

強い衝撃が、馬車に乗っている私達に伝わってきました。

その時、私には予感がありました。

外にいる、護衛や御者が慌ただしく動いているのが伝わってくる。

「子供が、馬車に当たりました。どうか車内でお待ち下さい」
護衛が私達に、知らせてくれる。




 私は、単独で馬車から降りると、前方に向かって行く。

先生も降りた様子だ。


 こんな状況なのに、私は淡い期待を抱いている。

「まるで、脳ミソの水分が蒸発してる気分だわ」
かなり興奮してしまっている。

「お前が言うと、現実味が有るな。それより、当たりかも知れないな」

ええ、先生には私の計画を少し伝えてある。

「お嬢様、馬車に戻って下さい」
エラも、馬車から降りたみたいね。
私を、心配してくれてるのよね。
でも、ごめんなさい、自分で確かめないと。


 私は馬車の先頭に急いで進み、護衛と御者の間から事故現場に潜り込む。

そこには、まだ小さな彼らがいた。

水色の髪の少年達は、間違え無くアンリとジェイだった。

 彼らはエリスの従者を経て、兄であるアンリは優れた頭脳を生かし、解放軍の参謀となる。

弟のジェイは、将軍となり武勇の象徴となる。

今まで、さんざん私を苦しめた二人だ。


 海老で鯛を釣った気分だわ。まあ、海老はこれから与えるんだけども。


邪神さまの導きを、強く感じる。

私はその場で跪き、邪神様に感謝の祈りを捧げた。

そして、彼らの声が聞こえた。

「死んでないからなー!!」


何故か、護衛も御者も跪き祈っていたからだ。


 



 それからは、何もかもが大変だったわ。

とりあえずの処置を、その場で先生がしてくれる事になった。

「この近くに、俺の知り合いの家がある。そこに運ぼう」
先生の知り合いのお宅に、彼等を連れて行く事になったの。

 私達が、彼等を運ぶのと同時に、護衛の人達に彼等の家族を迎えに行って貰うのも、勿論忘れない。

彼等を釣り上げるなら、家族も釣り上げるのみ。

単純明快な答えだ。



 「公爵家の姫様、私で役に立てる事が有るなら、なんなりと」

「心遣い感謝いたします」

私は、いきなり訪れたにもかかわらず。家主の女性に挨拶を居間で受けている。

そして、彼女に抱き付きたい衝動を、必死に押さえる。

彼女にも、繰り返しの記憶が有るのかしら。
私が、そんな事を考えていると。

彼女が・・・・キャサリンさんがお茶の用意をしてくれたらしい。

「庶民の、飲み物ですがよろしかったら」

「これは・・・・」

「カモミールティーでございます。よろしかったら蜂蜜を、お好みに合わせて混ぜて下さい」


私は、好奇心の向くままにカモミールティーに、口を付けた。
「とても、とても、美味しいです」

そして、カモミールティーに蜂蜜を垂らし、飲み進める。

「蜂蜜を垂らすと、とても優しい味になりますのね」

蜂蜜を垂らした、カモミールティーはとても優しい味になり、涙を我慢しなくてはならなくなった。

私は、自分でも知らず知らずのうちに、気を張っていたのだと実感する。

もし、私だけなら感情を溢れさせていたかも知れない。

しかしながら、通された居間にはエラと護衛もいる。

ディスティニーは溜め息を吐く。





 カチャリと扉が開く。


「ガキどもの様態は落ち着いた。親も着いたようだから俺達は帰ろう」

「そうですか」



「マダム、申し訳ないが、あの親子を暫く頼む」

「おまかせ下さい」

私達は、先生に促されるようにこの場を後にした。

私達を馬車まで送ってくれたキャサリンさんに、お礼を言い、馬車に乗るしかなかった。





 公爵邸に着いたのは、かなり遅い時間になっていたが、先生は父に挨拶に向かったようだ。

「お嬢様」
「ええ、解ってるわ」

エラも疲れている様子がわかる。

私は、素直に従い自室に戻ると、三人組のメイド達が待っていてくれた。

今までの繰り返しで、いなかったと筈の人達。

でも、素直に嬉しいと思う。

そして、少しだけ明日が楽しみにになってくる。

邪神様、今日という日を与えていただいた事に、感謝いたします。

お休みなさい。




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