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アリス IN 異世界地球
戸惑うアリス
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【沖田道場の裏路地】
ひと通りの少ない裏路地で、互いの意見をぶつけ合う男女が居る
「なんで、あんなお子様思考の子供が良いのよ?年齢的に幼いから純粋なだけじゃない!」
「違うっ!アリスは幼いだけじゃない!自分の国では企業(ギルド)に所属し、ちゃんと働いて妹達と一緒に稼いでいた。アリスの純粋さは子供っぽいだからだけじゃない!」
「佐々木お兄ちゃん、どうしたの?」
トイレに居る時に聞こえた言い争う声は、やはりアリスの知る佐々木だった。好きな人が喧嘩している事に耐えられないアリスは仲裁に入る
「ケンカは良くないよぉ…やめようよ、ねぇ?」
「アリス…いや、これは…」
「何言ってるのよ!貴方が原因なのよ!…何をとぼけた事を言ってるの!」
「えっ!?アタシが原因なの!?」
純粋無垢なアリスは、自分が何か悪い事をしたのか?としか考えられなかった…彼女には何も思い当たる節は無かったが…
「ご、ごめんなさい…アタシ…頭が悪いから、知らないうちに怒らせちゃってたのかなぁ?」
「アリスは悪くないんだ。謝らなくて良い」
「良くないわっ!」
「岸田っ!やめろっ!」
どうやら揉め事の中心は自分らしい事はなんとか理解したアリス。だが、どうしたら2人の喧嘩が収まるのか?全く分からないでいた
「あのぅ…なんで、お姉さんはそんなに怒っているの?」
「貴女が!佐々木くんと付き合ってるからよ!私は…私は…いつか、ちゃんと彼に告白する気だったの!…何時までも勇気を出せない臆病者だけど…中学生の頃からずっと…好きだったの!」
岸田は生まれて初めて、自分の素直な意見を大きな声で人に聞かせていた
【目立つことはしない。静観。注視。検討】が彼女の家の家訓だ。岸田はその教えに習い育ってしまい、自分から物を言えない性格になっていた
「で、でも…佐々木お兄ちゃんは…付き合ってる人は居ないって、言ってたよぉ…」
「そーよ!付き合ってる人は居なかったでしょうよ!佐々木くんは女性嫌いだから…だから、そんなに慌てなくて良いと油断してたわよ!ソコは私が悪いし…そんな考え方はズルかったわよ!
でも!…貴女のその性格もズルいのよ!どこの国から来たか知らないけど…日本で生まれ育っていたら、貴女みたいな性格で成長できる娘なんて居る方がおかしいのよ!」
「えっ!?アタシが…間違ってるのぉ?」
岸田から否定されたアリスは、何が何だか分からなくなっていた
「やめろ岸田!何処で育ったかは問題じゃない!アリスは…異国に1人で来て、逃げずに毎日頑張って生きてるんだ!」
「違う!ソレが問題じゃないの!」
「じゃあ、何なんだよっ!」
アリス本人が来てしまった事で、2人の言い争いは逆に火がついてしまった。ヒートアップしている2人はかなり目立っていた
「何やってるんすか、佐々木さん?」
「こんな所で揉めてたら、みんなに注目されてますよ!」
道場の裏手で大声での言い争いに、気が付いた優香と宗一郎が駆けつけてきた。冷静に周りを見渡せば…佐々木と岸田の大声に、近所の人達が野次馬観戦しており、注目の的になっていた
「あ!ご、ごめんなさい…私…今日は帰ります…」
我に返った岸田は恥ずかしさが込み上げてきて、逃げるようにその場を去った
「彼女が酷いこと言ってごめんな……アリス?」
しかし、アリス本人は別の事に考えを巡らせていた
(さっき、佐々木お兄ちゃんが…アタシは毎日逃げずに頑張ってる!って…あれ?そもそもアタシ…なんでこの世界に来たんだっけぇ…)
悩むアリスを岸田という女性に怒鳴られて、気落ちしているのだと勘違いした優香は「中に入って紅茶でも飲んでひと息着こう!」と誘った
(あの、お姉さんは佐々木お兄ちゃんを取り返しにココに来たんだ…なのにアタシは…)
アリスは自分がこの世界に来る事になった原因を思い返していた
「う、うん…アタシ少し疲れちゃったぁ…」
(アタシは…逃げて来たんだったぁ…アドルに振られて…お兄ちゃんの言葉に勝手に傷ついてぇ……アタシ…ココにいちゃ駄目なんじゃないかなぁ…)
佐々木に振り向いてもらおうと、初めて真っ直ぐに挑んできている岸田と、嫌な事から逃げてココに来てしまった自分を比較して悩みこんでしまうアリス
【少し離れた駐車場】
「うぐっ…ひぐっ…私…私…どうしたら…」
生まれて初めて自分の感情を表に出し大声で叫んだ自分に驚き、また恥ずかしさも込み上げている岸田
「今日は帰ったら、気が済むまで飲もう…明日は休みなんだし…」
帰りにコンビニでチューハイを買って帰ろうと思い、自分の乗用車に乗ろうとした時だった
「はぁ…本当、めんどくさいな。私って……うあっ!?痛っ!」
運転席のドアを開けた時、背後から近寄ってきた虫に首筋を刺された岸田。驚き暴れて振り回した岸田の手が、その虫に当たるとその虫は道路の中央の方に落ちた
「パッパっー!」岸田のスグ横をクラクションを鳴らして通り過ぎていく車。偶然その車のタイヤが、岸田を刺した虫を轢いた
「もう!踏んだり蹴ったりだわw」
岸田は落ち込み帰路の途中にあるコンビニを目指した。が、彼女は知らなかった。自分を刺したその虫こそが、アリスの衣服に引っ付いてこの世界に一緒に来てしまった、恐ろしいヴォィドという虫だという事を…
続く
ひと通りの少ない裏路地で、互いの意見をぶつけ合う男女が居る
「なんで、あんなお子様思考の子供が良いのよ?年齢的に幼いから純粋なだけじゃない!」
「違うっ!アリスは幼いだけじゃない!自分の国では企業(ギルド)に所属し、ちゃんと働いて妹達と一緒に稼いでいた。アリスの純粋さは子供っぽいだからだけじゃない!」
「佐々木お兄ちゃん、どうしたの?」
トイレに居る時に聞こえた言い争う声は、やはりアリスの知る佐々木だった。好きな人が喧嘩している事に耐えられないアリスは仲裁に入る
「ケンカは良くないよぉ…やめようよ、ねぇ?」
「アリス…いや、これは…」
「何言ってるのよ!貴方が原因なのよ!…何をとぼけた事を言ってるの!」
「えっ!?アタシが原因なの!?」
純粋無垢なアリスは、自分が何か悪い事をしたのか?としか考えられなかった…彼女には何も思い当たる節は無かったが…
「ご、ごめんなさい…アタシ…頭が悪いから、知らないうちに怒らせちゃってたのかなぁ?」
「アリスは悪くないんだ。謝らなくて良い」
「良くないわっ!」
「岸田っ!やめろっ!」
どうやら揉め事の中心は自分らしい事はなんとか理解したアリス。だが、どうしたら2人の喧嘩が収まるのか?全く分からないでいた
「あのぅ…なんで、お姉さんはそんなに怒っているの?」
「貴女が!佐々木くんと付き合ってるからよ!私は…私は…いつか、ちゃんと彼に告白する気だったの!…何時までも勇気を出せない臆病者だけど…中学生の頃からずっと…好きだったの!」
岸田は生まれて初めて、自分の素直な意見を大きな声で人に聞かせていた
【目立つことはしない。静観。注視。検討】が彼女の家の家訓だ。岸田はその教えに習い育ってしまい、自分から物を言えない性格になっていた
「で、でも…佐々木お兄ちゃんは…付き合ってる人は居ないって、言ってたよぉ…」
「そーよ!付き合ってる人は居なかったでしょうよ!佐々木くんは女性嫌いだから…だから、そんなに慌てなくて良いと油断してたわよ!ソコは私が悪いし…そんな考え方はズルかったわよ!
でも!…貴女のその性格もズルいのよ!どこの国から来たか知らないけど…日本で生まれ育っていたら、貴女みたいな性格で成長できる娘なんて居る方がおかしいのよ!」
「えっ!?アタシが…間違ってるのぉ?」
岸田から否定されたアリスは、何が何だか分からなくなっていた
「やめろ岸田!何処で育ったかは問題じゃない!アリスは…異国に1人で来て、逃げずに毎日頑張って生きてるんだ!」
「違う!ソレが問題じゃないの!」
「じゃあ、何なんだよっ!」
アリス本人が来てしまった事で、2人の言い争いは逆に火がついてしまった。ヒートアップしている2人はかなり目立っていた
「何やってるんすか、佐々木さん?」
「こんな所で揉めてたら、みんなに注目されてますよ!」
道場の裏手で大声での言い争いに、気が付いた優香と宗一郎が駆けつけてきた。冷静に周りを見渡せば…佐々木と岸田の大声に、近所の人達が野次馬観戦しており、注目の的になっていた
「あ!ご、ごめんなさい…私…今日は帰ります…」
我に返った岸田は恥ずかしさが込み上げてきて、逃げるようにその場を去った
「彼女が酷いこと言ってごめんな……アリス?」
しかし、アリス本人は別の事に考えを巡らせていた
(さっき、佐々木お兄ちゃんが…アタシは毎日逃げずに頑張ってる!って…あれ?そもそもアタシ…なんでこの世界に来たんだっけぇ…)
悩むアリスを岸田という女性に怒鳴られて、気落ちしているのだと勘違いした優香は「中に入って紅茶でも飲んでひと息着こう!」と誘った
(あの、お姉さんは佐々木お兄ちゃんを取り返しにココに来たんだ…なのにアタシは…)
アリスは自分がこの世界に来る事になった原因を思い返していた
「う、うん…アタシ少し疲れちゃったぁ…」
(アタシは…逃げて来たんだったぁ…アドルに振られて…お兄ちゃんの言葉に勝手に傷ついてぇ……アタシ…ココにいちゃ駄目なんじゃないかなぁ…)
佐々木に振り向いてもらおうと、初めて真っ直ぐに挑んできている岸田と、嫌な事から逃げてココに来てしまった自分を比較して悩みこんでしまうアリス
【少し離れた駐車場】
「うぐっ…ひぐっ…私…私…どうしたら…」
生まれて初めて自分の感情を表に出し大声で叫んだ自分に驚き、また恥ずかしさも込み上げている岸田
「今日は帰ったら、気が済むまで飲もう…明日は休みなんだし…」
帰りにコンビニでチューハイを買って帰ろうと思い、自分の乗用車に乗ろうとした時だった
「はぁ…本当、めんどくさいな。私って……うあっ!?痛っ!」
運転席のドアを開けた時、背後から近寄ってきた虫に首筋を刺された岸田。驚き暴れて振り回した岸田の手が、その虫に当たるとその虫は道路の中央の方に落ちた
「パッパっー!」岸田のスグ横をクラクションを鳴らして通り過ぎていく車。偶然その車のタイヤが、岸田を刺した虫を轢いた
「もう!踏んだり蹴ったりだわw」
岸田は落ち込み帰路の途中にあるコンビニを目指した。が、彼女は知らなかった。自分を刺したその虫こそが、アリスの衣服に引っ付いてこの世界に一緒に来てしまった、恐ろしいヴォィドという虫だという事を…
続く
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