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憎奪戦争編
マリニウム王国 最後の日
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【ブルージュ村キウの館】
明日の午後1番にマリニウム城ではジョブス王子の戴冠式が執り行われ、ほぼ同じ時刻に城を落とす決起を開始するオヅベルド公爵
リキュールとケチュア達は、その日の夕方に
三姉妹達はその日の夜にはマリニウム城に着こうか?という日の前夜
ブルージュ村の村長の元魔王(ザッド)キウが、村唯一にして【消去の魔女】の教え子のミアナ・ラドシャを呼び寄せていた
「ミアナよ。有栖たちが【フィンフィヨルド】に入ったようだ。お前も知っての通り、あの国は俺の故郷だ。せっかくなのでガイドしに行ってやろうと思ってな」
「お師匠様は元魔王(ザッド)様の故郷をハネムーンの場所に選んだのですか?元魔王(ザッド)様自らガイドされれば、お師匠様も喜んでくださると思います」
突然、彼の自室に呼び寄せられたミアナは、久しぶりに夜伽の相手をさせられる。と思い身を清めてから入室したのだが、予想外の話に面食らっていた
「それで…私を呼ばれたご用件は?…あぁ。私も元魔王(ザッド)様にご同行してサポートして欲しいという事ですね?」
「……お前はソレで良いのか?」
「えっ!?」
「徳川有栖から聞いているぞ。マリニウムはお前の生まれた国だろう?ソコが今まさに内乱状態に突入する寸前だと、先程エーデから伝えられた。と有栖からの通信魔法で教えられたぞ。あの国に行かなくても良いのか?」
「わ、私は元魔王(ザッド)様の身を終身お世話して欲しい。とお師匠様から頼まれた身…その様な個人的な事で…職務を放棄する訳には…」
その言葉通りミアナは徳川有栖に頼まれ、その生涯をブルージュ村村長として生きる元魔王(ザッド)の世話役に捧げる誓いを、過去にしている彼女だが…明らかに動揺が顔に出ていた
「そうか…分かった。俺は明日の朝食の後【フィンフィヨルド】に1人で向かう!俺が館を出た後は、ミアナに3日間の休暇を与える。好きに羽を伸ばすが良い。いいか?くれぐれも付いてくるなよ!」
「……あ、有難うございます!!」
有栖達が偶然、元魔王(ザッド)の生まれ故郷【フィンフィヨルド】を訪れた事が、ミアナに苦い思い出を彼女に刻んだ生まれ故郷に行く機会を与えた。それとも、アレクス城でマリニウム地方の話を聞いた有栖が、こうなる様に予定を変更してハネムーン先を調整したのか?ソレは有栖のみが知る事だった
【スズカの街中】
借りている宿には帰らず街の裏路地で落ち合ったミクイと、静かに人混みをすり抜けてきたエーデが居た
「ミクイさん…追っ手が来るかも?と予想して敢えて街に出たのですよね?…意外と何も起きませんね?」
「うん…意外ね。てっきり奴ら、血眼(ちまなこ)になって私達の事を探しに来ると思ってたんだけどなぁ……」
翌朝、ミクイは少年とその妹を宿屋に待機させエーデを連れて街に繰り出し、追って来るであろう追跡を警戒しながらの情報収集していたのだが、予想に反して彼女たちの身に何も起きなかった
「ミクイさんの撹乱と隠密スキルの前に、奴らは私たちの正体を知ることも無く見逃してしまったのでしょうか?」
「かも知れないわね…まぁ、ミクイのアサシンスキルは天才的だからねっ!バレてないのなら、それに越したことはないわね。引き続き情報収集を頑張りましょう!」
「はい!」
嵐の前の静けさ。その言葉が示すようにスズカの街には、いつもと変わらぬ平和な時間が流れていた
【国境沿いの山岳地帯】
「ふぅー。ようやく肉眼でマリニウムが見えてきましたね。この分なら今日の夕方までにはマリニウム城に入れるハズです」
「ようやく帰って来れたのね。私(ワタクシ)の故郷に…」
「ケチュア。何があっても私から離れては駄目よ。私は貴女を失うのは耐えられないんだからね!」
「うん。分かってるわ」
山岳地帯をもうすぐで抜ける所まで辿り着いたオルガス、ケチュア、リキュールとチェイム。彼らはようやくマリニウム地方を視界に捉え、緊張感も湧いてきたのだが…イシス王国に辿り着いてからというもの、ケチュアとリキュールの夜のスキンシップは段々と濃密になっていき、今ではオルガス達の目の前であっても、お互いの感情を確認し合い百合っぽくハグをする仲の良さを隠すそぶりもしなくなっていた
【マリニウム城 謁見の間】
「皆の者ら、よくぞ集まってくれた!本日は我が息子ジョブスの戴冠式に大勢の者が参加してくれた事を嬉しく思う!」
運命の日の午後、スティーブ王は昼食を提供しつつ息子の戴冠式を開いていた。その席にはマリニウム地方の多くの貴族が参加しており、今回の戴冠式が終わればジョブス王子がマリニウム城の次期 正当後継者として認められる事になる
「皆の者、食事を楽しみながら見守って欲しい。今から承認儀式として名工による聖剣の授与に移る。紹介しよう!鍛冶師【ヒイロ・アルバート】よ、前へ!」
「ははっ!」
その為に完成させたソードを布で包(くる)んで運ぶヒイロが、ジョブス王子の眼前で片膝をつき、そのソードを王子の前に差し出した
「彼は、かの名工【ヘパイトス】と【ヘルメスの街】で肩を並べるほどの人気を誇る鍛冶師だ。数多(あまた)の城や名家には、決まって名工のソードが掲げられていると思うが…その中でも彼のソードを飾っている場所はまだあるまい!
未来あるジョブスの帯剣として、これ以上のソードはあるまい。ヒイロよ、皆にそのソードの説明をせよ!」
「はっ!このソードは、魔物たちの生息地として有名なエルドラ山脈の中でも、最も危険と言われている山頂付近でしか採れないハイミスリルを使い、全霊を込めて王子の為だけに作り上げました!」
「おおーっ!」
「かのヘパイトス氏と肩を並べる程とは!」
「なんと美しいソードだ!」
「若いのにやりおるな」
参加者たちは希少鉱石のハイミスリルで作られた、ソードの美しさと輝きに目を奪われていた
「素晴らしい仕事だ。ヒイロ・アルバート、では有り難く頂戴させてもらうぞ」
今まさにジョブス王子が、ハイミスリルソードを掴もうとした時だった
「失礼!」
「何だオヅベルド公爵、今はまだ儀式の最中であるぞ!!」
「申し訳ありません。ですが……くくく!ジョブス王子に未来がある。とは、とても思えませんがな!」
「どういう意味だ、オヅベルド!」
「こういう事ですよ。スティーブ王!!」
ほくそ笑むオヅベルドが右手を上げ、その指を鳴らすと
「ドドドドド…」
正面口から武装した集団が謁見の間になだれ込んで来た!今、マリニウム地方は最後の日を迎えようとしていた
続く
明日の午後1番にマリニウム城ではジョブス王子の戴冠式が執り行われ、ほぼ同じ時刻に城を落とす決起を開始するオヅベルド公爵
リキュールとケチュア達は、その日の夕方に
三姉妹達はその日の夜にはマリニウム城に着こうか?という日の前夜
ブルージュ村の村長の元魔王(ザッド)キウが、村唯一にして【消去の魔女】の教え子のミアナ・ラドシャを呼び寄せていた
「ミアナよ。有栖たちが【フィンフィヨルド】に入ったようだ。お前も知っての通り、あの国は俺の故郷だ。せっかくなのでガイドしに行ってやろうと思ってな」
「お師匠様は元魔王(ザッド)様の故郷をハネムーンの場所に選んだのですか?元魔王(ザッド)様自らガイドされれば、お師匠様も喜んでくださると思います」
突然、彼の自室に呼び寄せられたミアナは、久しぶりに夜伽の相手をさせられる。と思い身を清めてから入室したのだが、予想外の話に面食らっていた
「それで…私を呼ばれたご用件は?…あぁ。私も元魔王(ザッド)様にご同行してサポートして欲しいという事ですね?」
「……お前はソレで良いのか?」
「えっ!?」
「徳川有栖から聞いているぞ。マリニウムはお前の生まれた国だろう?ソコが今まさに内乱状態に突入する寸前だと、先程エーデから伝えられた。と有栖からの通信魔法で教えられたぞ。あの国に行かなくても良いのか?」
「わ、私は元魔王(ザッド)様の身を終身お世話して欲しい。とお師匠様から頼まれた身…その様な個人的な事で…職務を放棄する訳には…」
その言葉通りミアナは徳川有栖に頼まれ、その生涯をブルージュ村村長として生きる元魔王(ザッド)の世話役に捧げる誓いを、過去にしている彼女だが…明らかに動揺が顔に出ていた
「そうか…分かった。俺は明日の朝食の後【フィンフィヨルド】に1人で向かう!俺が館を出た後は、ミアナに3日間の休暇を与える。好きに羽を伸ばすが良い。いいか?くれぐれも付いてくるなよ!」
「……あ、有難うございます!!」
有栖達が偶然、元魔王(ザッド)の生まれ故郷【フィンフィヨルド】を訪れた事が、ミアナに苦い思い出を彼女に刻んだ生まれ故郷に行く機会を与えた。それとも、アレクス城でマリニウム地方の話を聞いた有栖が、こうなる様に予定を変更してハネムーン先を調整したのか?ソレは有栖のみが知る事だった
【スズカの街中】
借りている宿には帰らず街の裏路地で落ち合ったミクイと、静かに人混みをすり抜けてきたエーデが居た
「ミクイさん…追っ手が来るかも?と予想して敢えて街に出たのですよね?…意外と何も起きませんね?」
「うん…意外ね。てっきり奴ら、血眼(ちまなこ)になって私達の事を探しに来ると思ってたんだけどなぁ……」
翌朝、ミクイは少年とその妹を宿屋に待機させエーデを連れて街に繰り出し、追って来るであろう追跡を警戒しながらの情報収集していたのだが、予想に反して彼女たちの身に何も起きなかった
「ミクイさんの撹乱と隠密スキルの前に、奴らは私たちの正体を知ることも無く見逃してしまったのでしょうか?」
「かも知れないわね…まぁ、ミクイのアサシンスキルは天才的だからねっ!バレてないのなら、それに越したことはないわね。引き続き情報収集を頑張りましょう!」
「はい!」
嵐の前の静けさ。その言葉が示すようにスズカの街には、いつもと変わらぬ平和な時間が流れていた
【国境沿いの山岳地帯】
「ふぅー。ようやく肉眼でマリニウムが見えてきましたね。この分なら今日の夕方までにはマリニウム城に入れるハズです」
「ようやく帰って来れたのね。私(ワタクシ)の故郷に…」
「ケチュア。何があっても私から離れては駄目よ。私は貴女を失うのは耐えられないんだからね!」
「うん。分かってるわ」
山岳地帯をもうすぐで抜ける所まで辿り着いたオルガス、ケチュア、リキュールとチェイム。彼らはようやくマリニウム地方を視界に捉え、緊張感も湧いてきたのだが…イシス王国に辿り着いてからというもの、ケチュアとリキュールの夜のスキンシップは段々と濃密になっていき、今ではオルガス達の目の前であっても、お互いの感情を確認し合い百合っぽくハグをする仲の良さを隠すそぶりもしなくなっていた
【マリニウム城 謁見の間】
「皆の者ら、よくぞ集まってくれた!本日は我が息子ジョブスの戴冠式に大勢の者が参加してくれた事を嬉しく思う!」
運命の日の午後、スティーブ王は昼食を提供しつつ息子の戴冠式を開いていた。その席にはマリニウム地方の多くの貴族が参加しており、今回の戴冠式が終わればジョブス王子がマリニウム城の次期 正当後継者として認められる事になる
「皆の者、食事を楽しみながら見守って欲しい。今から承認儀式として名工による聖剣の授与に移る。紹介しよう!鍛冶師【ヒイロ・アルバート】よ、前へ!」
「ははっ!」
その為に完成させたソードを布で包(くる)んで運ぶヒイロが、ジョブス王子の眼前で片膝をつき、そのソードを王子の前に差し出した
「彼は、かの名工【ヘパイトス】と【ヘルメスの街】で肩を並べるほどの人気を誇る鍛冶師だ。数多(あまた)の城や名家には、決まって名工のソードが掲げられていると思うが…その中でも彼のソードを飾っている場所はまだあるまい!
未来あるジョブスの帯剣として、これ以上のソードはあるまい。ヒイロよ、皆にそのソードの説明をせよ!」
「はっ!このソードは、魔物たちの生息地として有名なエルドラ山脈の中でも、最も危険と言われている山頂付近でしか採れないハイミスリルを使い、全霊を込めて王子の為だけに作り上げました!」
「おおーっ!」
「かのヘパイトス氏と肩を並べる程とは!」
「なんと美しいソードだ!」
「若いのにやりおるな」
参加者たちは希少鉱石のハイミスリルで作られた、ソードの美しさと輝きに目を奪われていた
「素晴らしい仕事だ。ヒイロ・アルバート、では有り難く頂戴させてもらうぞ」
今まさにジョブス王子が、ハイミスリルソードを掴もうとした時だった
「失礼!」
「何だオヅベルド公爵、今はまだ儀式の最中であるぞ!!」
「申し訳ありません。ですが……くくく!ジョブス王子に未来がある。とは、とても思えませんがな!」
「どういう意味だ、オヅベルド!」
「こういう事ですよ。スティーブ王!!」
ほくそ笑むオヅベルドが右手を上げ、その指を鳴らすと
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続く
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