ようこそ幼い嫁候補たち ③

龍之介21時

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憎奪戦争編

運命の日

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【フィンフィヨルド村長宅ハナレ】
「ほーら、もうとっくに朝日は登っているわよ…良い加減に起きなさい、お寝坊な旦那様♪」

マリニウム城でクーデターが起きた日の朝
【消去の魔女】徳川有栖は、一条優輝を連れて大陸から海を渡りアレクス城から東に400kmほど離れたフィヨルド島にやって来ていた

優輝はベイ城での猛訓練の後、アレクス城での結婚祝いを受けた。そしてブルージュ村でも祝われ、疲労が溜まりまくっていたので今朝は爆睡していた

「こーんな可愛いお嫁さんが優しく起こしてるっていうのに…まーだ目覚めない気かしら!?…こうなったら実力行使しちゃうんだからね(笑)」

有栖は魔法で鳥の羽を十数個作り出すと、シャツとパンツだけで爆睡している優輝の全身をくすぐりまくった!

「うひゃひゃひゃひゃっ!!な、何だよっ!?…あ、有栖おはようっ!と、取り敢えずコレ、止めてくれー!笑い死ぬー(汗)」

「ようやく起きたわね。おはようございます…だ・ん・な・さ・ま……(*´³`*)chu♪」
 

【消去の魔女】として戦ったり、最強の魔女としての責務に追われたりしてきた有栖だが…普通の女性としての幸せを望む気持ちは潰えてはいなかったようだ。新郎である優輝に犬も食わないような、イチャラブな行動を満喫していた。その時ドアがノックされた

「コンコン!」
「有栖、居るか?邪魔するぞ!」

「元魔王(ザッド)様!?どうしてコチラに?」
「あ、おはようございます!!」

フィンフィヨルド島の村長の敷地内のハナレを訪ねてきた元魔王(ザッド)に驚く2人

「おっ!?良い匂いがしているな…朝食か?もしかして有栖が作ったのか?意外だな(笑)」

「ナニ言ってるんですか!私だって恋する乙女なんですよ。愛しの旦那様の為に朝食くらい作りますって!」

優輝の為に早起きして作った、気合いの入れた朝食を褒められ嬉しいのだが…消去の魔女が!?と言われているようで少し「ムッ!」とした有栖

「本当に美味しそうだな!有栖、これを俺の為に作ってくれたのか?最高だよ!」

「ま、まーね。私も本気を出せば家庭的な朝食のレパートリーのひとつやふたつは有るからね、ざっとこんな物よ!恐れ入ったか旦那様(笑)」


有栖は突然現れた元魔王(ザッド)の分も朝食を用意すると、3人で和気あいあいと食べていた
(この星に転移させられてから最強の魔女と結婚して、ハネムーン初日に元魔王(ザッド)様を交えて朝食か……まるで予想出来なかったな)

日本に居た頃の中学時代、勉強もスポーツも今一歩だった優輝には今の状況が信じられなかった



【マリニウム城謁見の間】
「スティーブ王、覚悟しやがれっ!」

虚を突いたクーデターに、迎撃態勢が遅れてしまった。魔界の魔神ランドルフが右手に炎を纏(まと)わせ、護衛騎士達に邪魔する僅かな時間も与えない超高速の動きで、スティーブ王の首目掛けて鋭い爪を突き付けた!

「ガキィッ!!」
瞬(まばた)きする暇さえ無かったランドルフの一撃を信じられない速さで動き、刀で止めた男がランドルフに立ち塞がった

「何だと!?俺様の本気の一撃を……てめぇ…人間じゃねぇな。一体何者だぁ!」

「拙者か?…拙者は基礎(ベース)型超人類の武蔵と申す者だ。スティーブ王の生命は我が生命に替えても取らせはしないっ!」

王の周囲を固めていた騎士隊と風貌の違う、ゴツイ身体をした【Theサムライ】の姿をした武蔵と名乗る者がランドルフの凶刃を止めた

「騎士隊よ!侵入者を排除せよっ!」
「…お、おおーっ!」
「貴様ら、良い度胸だ!」

ジョブス王子の一喝により、呆気にとられていた騎士達がオヅベルドの率いる軍団に立ち向かって行く

「おうらぁ!…はぁはぁ…キミは!ヘルメスの街で会ったレキシントンさん。何故ココに居るんだ?何故こんなヤツらの片棒を担いでいるんだっ!?」

ヒイロはジョブス王子に献上し損ねたハイミスリルソードを使い、オヅベルド公爵が雇ったならず者達を片付けている最中、魔神ランドルフと行動を共にしているレキシントンを発見した

「それは私らのセリフだってーの!あんた達に気を使ってワザワザこんな離れた場所まで移動したってーのに、何でまた私らの前に立ち塞がって…どういうつもりさ!」
 

ヒイロはヘルメスの街でカルーアと外泊デートをしている時に、公園で出会ったレキシントン達に再びこんな場所で、こんなタイミングでの再開に驚いていた
しかし、城内は彼らの意外な再会など気にする暇もなく激しく争いあい、まるで戦場と化していた!



【マリニウム城下町の外れ】
「お邪魔します…営業していますか?」

マリニウム城下町の外れにある、いかにも寂れて客も寄り付いてなさそうな茶屋に入ったミアナ・ラドシャ

「おい!客だぞ!?珍しい事もあるもんだ!」
「余計なこと言うんじゃないよ!帰られたらどうするつもりだい!何に致します?」

「ランチをお願いします…」

清掃も行き届いていない茶屋。店主の男は注文を聞き、厨房へと入っていった。旦那らしき男を一喝していたオバサンが、ミアナに水を差し出した。ミネラルドリンクではなく、タダの水道水の様だが…ミアナはそんな事には少しも気になっていなかった

「あんた……この辺じゃ見ない顔だね。どちらから来なさった?」

「……クラウン城の近くの小さな村から来ました。失礼な事をお聞きしますが、あまり繁盛されてないのですか?」

「あはは(笑)ストレートに言うお嬢さんだねぇ。10年前くらいはね、この辺もまだ治安が悪くてね。生きていくのもギリギリだったのさ、そんな時……意外なことで大金が手に入ってね。それで商売を始めてみたんだけどね…
慣れない事はするもんじゃないね。見ての通り店内はこの有様さ…」

「そうでしたか…商いというのも難しいものなのですね…」

この地方出身であるミアナが訪ねた閑古鳥が鳴いていそうな小さな食堂。本来、見知らぬ者には積極的に話し掛けない彼女が、ウェイトレスをしているオバサンに質問を続けていた

「あの…その…良い年齢に見えますが…子供さんは…娘さんとかいらっしゃらないのでしょうか?」
 

夫婦で茶屋を営む(ほぼ客ゼロの毎日の様だが)夫婦は、見た目50くらいで年頃の子供が居てもおかしくない年齢だ

「…あんた、よく分かったね。いたよ昔…それがね…」

元魔王(ザッド)に休暇を与えられたミアナ・ラドシャは、間もなくクーデターが始まるだろうこのマリニウムに来ていた
元魔王が肉体を失った戦争が始まる10年前に、幼かった自分を城に売った両親の現在(いま)を知りにやって来たのだが……運命の歯車は周り出しており、彼女に生き別れた両親との再会の為に十分な時間を与えてはくれない



続く
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