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憎奪戦争編
それぞれの答え
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【森林地帯】
「元魔王(ザッド)様のご子息ヨシュア様。貴方はどうお考えなのでぇすか?是非ともお教えくださぁい!」
ヨシュアは慎重に考えていた。むしろ慎重にならざるを得なかった。なにしろ相手は元魔王(ザッド)が、一国総出の侵攻への対応をたった1人に任せる程、信頼を寄せていた男ディー・アモンだからだ
もしも、彼を怒らせたり失望させたりする答えを迂闊に言ってしまえば、今後どのような展開に転ぶか分からない
「ヨシュア……」
必死に悩んでいるヨシュアを今、彼とお付き合いしているアリスが心配して顔を覗き込んできた
(アリス……俺はどう答えるべきなんだ?)
ヨシュアは思い出していた。あの日ふとアリス達が現れ、取るに足らない言い争いから彼女と勝負した結果、彼女と付き合うことになり今日まで様々な経験をしてきた事を…
「元魔王(オヤジ)の片腕ディー・アモンよ、静かに聞いてくれ!」
「お考えは纏(まと)まった様ですねぇ…してお答えは?」
悩んでいたヨシュアは、アリスの顔を見て答えを決めた。真っ直ぐにディー・アモンを見る
「すまないが…俺は人間や魔族達と、どのように接していくか?は、まだ考えていない!」
「なんとぉ!?…それは、どういう事ですかねぇ…」
ディー・アモンの表情が険しくなった。それもそのハズ、彼は吸血鬼(ヴァンパイア)の生き方に忠実ではあるが、魔族の行く末を配慮して生きてきた事もまた事実だからだ
なのに、忠誠を誓った元魔王(ザッド)の息子が魔族の行く末を考えていない。と言うのだから…ヨシュアの話の続き次第では、いくら彼が元魔王の息子と言えど実力行使もやむ無し!と腹を決めた
「俺はまだ生まれて10年のガキなんだ!若輩の身の俺が、その問いに対して簡単に答えを出して良いものだとは思っていない。それに【渇望の魔女フュール】が連れて来た元魔王(オヤジ)の血を引く別の者を、時期魔王として育てているらしいからな。俺は理由も無しにソイツと揉めたいとは思わない」
「なーるほどでぇす…確かに、時期魔王候補が立てられた。とは吾輩も聞いていますよぉ」
そしてヨシュアはアリスを見た
「それにだ!俺は今、ここに居る女アリス・アルバートと真剣に恋をしている!まずはコイツとの仲を上手く実らせたいんだ!」
「ヨシュア!そんなにアタシとのお付き合いを、本気で考えてくれてたんだぁ…アタシ、嬉しいよぉ♪」
「ふむぅ…なるほどでぇす。確かにぃ、魔王の血を引く者が女1人をモノに出来ないようでは~魔族復興を掲げるなど、ちゃんちゃらおかしいというものでぇすねぇ…分かりました。今はその過程であり、その赤毛の少女と付き合ってる関係で聖騎士とも絡んでいるに過ぎない。という事でよろしいですねぇ?」
「あぁ、その通りだ!悪いが、俺にもう少し時間をくれ。ディー・アモン伯爵!」
「フッフッフ……了解致しましたよ。長々と引き留めてしまって失礼致しましたですねぇ。それでは元魔王(ザッド)様のご子息よ、良き旅を!失礼しますのでぇす!」
「バサバサバサ!」
そう言うとディー・アモンは突然コウモリに姿を変え、夜の闇へと羽ばたいて行った
【オヅベルド邸】
「助かったぜオッサン。おかげで傷はほぼ塞がったぜ…さて、いつまでも休んでられねーからな。レキシントンお前は行けるか?」
「もちろんよ。行きましょうか?」
治療班の班長である男性にお礼を言ったランドルフは、マリニウム城攻略戦に復帰する為、レキシントンと共にオヅベルド邸を後にした
「ふぅー、ようやく怪我人はおらんくなったか…ワシも一休みさせてもらおうかな?」
「コツコツコツ。お久しぶりですね。あまり、お変わりない様ですね。お父様…」
「むっ!?…ミーコか…久しいな…」
秘密結社?ホロミナティのBOSSであるミーコ・サクラバが、オヅベルド邸で班長として治療にあたっている男を「お父様」と呼んだ
「茶くらいしかないが、構わないか?」
「頂くにぇ…」
男はお茶の用意を始めた。と言っても水筒らしき物の蓋を開け、コップに注いでいるだけなのだが…
……………………………………………
「お父様も、元気そうでなによりだにぇ…」
「お前こそな…しかしミーコよ。何故マリニウム王国を裏切ったのだ?お前は今、何をしているのだ?」
久しぶりに再開した親子の会話にしては、空気が重く怪しい雰囲気の2人…
「マリニウム王国は…戦に勝つ為なら何でもするにぇ。多少どころじゃないにぇ…」
「それは、お前の催眠力(チカラ)を利用する事か?」
「アイツらは戦に勝つ為なら、どんな手を使っても勝利を目指しやがるにぇ…ミーコの気持ちも考えずに催眠力(アンジ)で、人の気持ちを洗脳する…ほんと恐ろしいで…」
「ワシもだ。だからワシは、反王国派のオヅベルド公爵に付いた。なのに、何故お前はオヅベルド公爵のチカラになろうとせんのだ?」
父親と共にオヅベルド公爵に協力しない事を聞かれたミーコは、その身を震わせて答えた
「でゃまれっ!!ミーコが嫌だと思ったのは、ミーコのこんな卑怯な催眠力(チカラ)を利用してまで…人の心を踏みにじって、その人の人生を狂わしてでも勝利を得ようとする、その根性が信じられないにぇ!」
ミーコは、彼女が持つ催眠力(チカラ)…コヨリィやノエール、サケマタにミーコがBOSSである。と洗脳させたチカラを利用する者の歪んだ心に嫌気が刺したのだ
「しかし、秀でた能力を使わないは勿体(もったい)ない!というのも間違っていないのではないか?」
「ミーコは嫌なんだにぇ!人の意志を強制的に書き換えるこんな催眠力(チカラ)。ミーコはこのチカラを戦争に利用したくなんか、ないんだにぇ!!」
ミーコは自分が持つ催眠力(チカラ)を好んでいなかった。ましてや、そのチカラを戦争に利用しようとする者たちも同じように嫌っていたのだ
「相も変わらず子供の言い分だな…」
「元々このチカラは国を平和に導く神様から授かったチカラのハズだにぇ!私利私欲や理想を叶える為に使うチカラじゃないハズだにぇ!!」
秀でたチカラは、より良き者に協力する為に使うべきだ!という父親と、あくまで平和の為に使うべきだ!とするミーコの間で、考え方に大きな開きがあるようだ
続く
「元魔王(ザッド)様のご子息ヨシュア様。貴方はどうお考えなのでぇすか?是非ともお教えくださぁい!」
ヨシュアは慎重に考えていた。むしろ慎重にならざるを得なかった。なにしろ相手は元魔王(ザッド)が、一国総出の侵攻への対応をたった1人に任せる程、信頼を寄せていた男ディー・アモンだからだ
もしも、彼を怒らせたり失望させたりする答えを迂闊に言ってしまえば、今後どのような展開に転ぶか分からない
「ヨシュア……」
必死に悩んでいるヨシュアを今、彼とお付き合いしているアリスが心配して顔を覗き込んできた
(アリス……俺はどう答えるべきなんだ?)
ヨシュアは思い出していた。あの日ふとアリス達が現れ、取るに足らない言い争いから彼女と勝負した結果、彼女と付き合うことになり今日まで様々な経験をしてきた事を…
「元魔王(オヤジ)の片腕ディー・アモンよ、静かに聞いてくれ!」
「お考えは纏(まと)まった様ですねぇ…してお答えは?」
悩んでいたヨシュアは、アリスの顔を見て答えを決めた。真っ直ぐにディー・アモンを見る
「すまないが…俺は人間や魔族達と、どのように接していくか?は、まだ考えていない!」
「なんとぉ!?…それは、どういう事ですかねぇ…」
ディー・アモンの表情が険しくなった。それもそのハズ、彼は吸血鬼(ヴァンパイア)の生き方に忠実ではあるが、魔族の行く末を配慮して生きてきた事もまた事実だからだ
なのに、忠誠を誓った元魔王(ザッド)の息子が魔族の行く末を考えていない。と言うのだから…ヨシュアの話の続き次第では、いくら彼が元魔王の息子と言えど実力行使もやむ無し!と腹を決めた
「俺はまだ生まれて10年のガキなんだ!若輩の身の俺が、その問いに対して簡単に答えを出して良いものだとは思っていない。それに【渇望の魔女フュール】が連れて来た元魔王(オヤジ)の血を引く別の者を、時期魔王として育てているらしいからな。俺は理由も無しにソイツと揉めたいとは思わない」
「なーるほどでぇす…確かに、時期魔王候補が立てられた。とは吾輩も聞いていますよぉ」
そしてヨシュアはアリスを見た
「それにだ!俺は今、ここに居る女アリス・アルバートと真剣に恋をしている!まずはコイツとの仲を上手く実らせたいんだ!」
「ヨシュア!そんなにアタシとのお付き合いを、本気で考えてくれてたんだぁ…アタシ、嬉しいよぉ♪」
「ふむぅ…なるほどでぇす。確かにぃ、魔王の血を引く者が女1人をモノに出来ないようでは~魔族復興を掲げるなど、ちゃんちゃらおかしいというものでぇすねぇ…分かりました。今はその過程であり、その赤毛の少女と付き合ってる関係で聖騎士とも絡んでいるに過ぎない。という事でよろしいですねぇ?」
「あぁ、その通りだ!悪いが、俺にもう少し時間をくれ。ディー・アモン伯爵!」
「フッフッフ……了解致しましたよ。長々と引き留めてしまって失礼致しましたですねぇ。それでは元魔王(ザッド)様のご子息よ、良き旅を!失礼しますのでぇす!」
「バサバサバサ!」
そう言うとディー・アモンは突然コウモリに姿を変え、夜の闇へと羽ばたいて行った
【オヅベルド邸】
「助かったぜオッサン。おかげで傷はほぼ塞がったぜ…さて、いつまでも休んでられねーからな。レキシントンお前は行けるか?」
「もちろんよ。行きましょうか?」
治療班の班長である男性にお礼を言ったランドルフは、マリニウム城攻略戦に復帰する為、レキシントンと共にオヅベルド邸を後にした
「ふぅー、ようやく怪我人はおらんくなったか…ワシも一休みさせてもらおうかな?」
「コツコツコツ。お久しぶりですね。あまり、お変わりない様ですね。お父様…」
「むっ!?…ミーコか…久しいな…」
秘密結社?ホロミナティのBOSSであるミーコ・サクラバが、オヅベルド邸で班長として治療にあたっている男を「お父様」と呼んだ
「茶くらいしかないが、構わないか?」
「頂くにぇ…」
男はお茶の用意を始めた。と言っても水筒らしき物の蓋を開け、コップに注いでいるだけなのだが…
……………………………………………
「お父様も、元気そうでなによりだにぇ…」
「お前こそな…しかしミーコよ。何故マリニウム王国を裏切ったのだ?お前は今、何をしているのだ?」
久しぶりに再開した親子の会話にしては、空気が重く怪しい雰囲気の2人…
「マリニウム王国は…戦に勝つ為なら何でもするにぇ。多少どころじゃないにぇ…」
「それは、お前の催眠力(チカラ)を利用する事か?」
「アイツらは戦に勝つ為なら、どんな手を使っても勝利を目指しやがるにぇ…ミーコの気持ちも考えずに催眠力(アンジ)で、人の気持ちを洗脳する…ほんと恐ろしいで…」
「ワシもだ。だからワシは、反王国派のオヅベルド公爵に付いた。なのに、何故お前はオヅベルド公爵のチカラになろうとせんのだ?」
父親と共にオヅベルド公爵に協力しない事を聞かれたミーコは、その身を震わせて答えた
「でゃまれっ!!ミーコが嫌だと思ったのは、ミーコのこんな卑怯な催眠力(チカラ)を利用してまで…人の心を踏みにじって、その人の人生を狂わしてでも勝利を得ようとする、その根性が信じられないにぇ!」
ミーコは、彼女が持つ催眠力(チカラ)…コヨリィやノエール、サケマタにミーコがBOSSである。と洗脳させたチカラを利用する者の歪んだ心に嫌気が刺したのだ
「しかし、秀でた能力を使わないは勿体(もったい)ない!というのも間違っていないのではないか?」
「ミーコは嫌なんだにぇ!人の意志を強制的に書き換えるこんな催眠力(チカラ)。ミーコはこのチカラを戦争に利用したくなんか、ないんだにぇ!!」
ミーコは自分が持つ催眠力(チカラ)を好んでいなかった。ましてや、そのチカラを戦争に利用しようとする者たちも同じように嫌っていたのだ
「相も変わらず子供の言い分だな…」
「元々このチカラは国を平和に導く神様から授かったチカラのハズだにぇ!私利私欲や理想を叶える為に使うチカラじゃないハズだにぇ!!」
秀でたチカラは、より良き者に協力する為に使うべきだ!という父親と、あくまで平和の為に使うべきだ!とするミーコの間で、考え方に大きな開きがあるようだ
続く
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