ようこそ幼い嫁候補たち ③

龍之介21時

文字の大きさ
63 / 135
憎奪戦争編

それぞれの答え

しおりを挟む
【森林地帯】
「元魔王(ザッド)様のご子息ヨシュア様。貴方はどうお考えなのでぇすか?是非ともお教えくださぁい!」

ヨシュアは慎重に考えていた。むしろ慎重にならざるを得なかった。なにしろ相手は元魔王(ザッド)が、一国総出の侵攻への対応をたった1人に任せる程、信頼を寄せていた男ディー・アモンだからだ
もしも、彼を怒らせたり失望させたりする答えを迂闊に言ってしまえば、今後どのような展開に転ぶか分からない

「ヨシュア……」

必死に悩んでいるヨシュアを今、彼とお付き合いしているアリスが心配して顔を覗き込んできた

(アリス……俺はどう答えるべきなんだ?)

ヨシュアは思い出していた。あの日ふとアリス達が現れ、取るに足らない言い争いから彼女と勝負した結果、彼女と付き合うことになり今日まで様々な経験をしてきた事を…


「元魔王(オヤジ)の片腕ディー・アモンよ、静かに聞いてくれ!」

「お考えは纏(まと)まった様ですねぇ…してお答えは?」

悩んでいたヨシュアは、アリスの顔を見て答えを決めた。真っ直ぐにディー・アモンを見る

「すまないが…俺は人間や魔族達と、どのように接していくか?は、まだ考えていない!」

「なんとぉ!?…それは、どういう事ですかねぇ…」

ディー・アモンの表情が険しくなった。それもそのハズ、彼は吸血鬼(ヴァンパイア)の生き方に忠実ではあるが、魔族の行く末を配慮して生きてきた事もまた事実だからだ
なのに、忠誠を誓った元魔王(ザッド)の息子が魔族の行く末を考えていない。と言うのだから…ヨシュアの話の続き次第では、いくら彼が元魔王の息子と言えど実力行使もやむ無し!と腹を決めた


「俺はまだ生まれて10年のガキなんだ!若輩の身の俺が、その問いに対して簡単に答えを出して良いものだとは思っていない。それに【渇望の魔女フュール】が連れて来た元魔王(オヤジ)の血を引く別の者を、時期魔王として育てているらしいからな。俺は理由も無しにソイツと揉めたいとは思わない」

「なーるほどでぇす…確かに、時期魔王候補が立てられた。とは吾輩も聞いていますよぉ」

そしてヨシュアはアリスを見た

「それにだ!俺は今、ここに居る女アリス・アルバートと真剣に恋をしている!まずはコイツとの仲を上手く実らせたいんだ!」

「ヨシュア!そんなにアタシとのお付き合いを、本気で考えてくれてたんだぁ…アタシ、嬉しいよぉ♪」
 

「ふむぅ…なるほどでぇす。確かにぃ、魔王の血を引く者が女1人をモノに出来ないようでは~魔族復興を掲げるなど、ちゃんちゃらおかしいというものでぇすねぇ…分かりました。今はその過程であり、その赤毛の少女と付き合ってる関係で聖騎士とも絡んでいるに過ぎない。という事でよろしいですねぇ?」

「あぁ、その通りだ!悪いが、俺にもう少し時間をくれ。ディー・アモン伯爵!」

「フッフッフ……了解致しましたよ。長々と引き留めてしまって失礼致しましたですねぇ。それでは元魔王(ザッド)様のご子息よ、良き旅を!失礼しますのでぇす!」

「バサバサバサ!」
そう言うとディー・アモンは突然コウモリに姿を変え、夜の闇へと羽ばたいて行った



【オヅベルド邸】
「助かったぜオッサン。おかげで傷はほぼ塞がったぜ…さて、いつまでも休んでられねーからな。レキシントンお前は行けるか?」

「もちろんよ。行きましょうか?」

治療班の班長である男性にお礼を言ったランドルフは、マリニウム城攻略戦に復帰する為、レキシントンと共にオヅベルド邸を後にした

「ふぅー、ようやく怪我人はおらんくなったか…ワシも一休みさせてもらおうかな?」

「コツコツコツ。お久しぶりですね。あまり、お変わりない様ですね。お父様…」
 

「むっ!?…ミーコか…久しいな…」

秘密結社?ホロミナティのBOSSであるミーコ・サクラバが、オヅベルド邸で班長として治療にあたっている男を「お父様」と呼んだ

「茶くらいしかないが、構わないか?」

「頂くにぇ…」

男はお茶の用意を始めた。と言っても水筒らしき物の蓋を開け、コップに注いでいるだけなのだが…

……………………………………………

「お父様も、元気そうでなによりだにぇ…」

「お前こそな…しかしミーコよ。何故マリニウム王国を裏切ったのだ?お前は今、何をしているのだ?」

久しぶりに再開した親子の会話にしては、空気が重く怪しい雰囲気の2人…

「マリニウム王国は…戦に勝つ為なら何でもするにぇ。多少どころじゃないにぇ…」

「それは、お前の催眠力(チカラ)を利用する事か?」

「アイツらは戦に勝つ為なら、どんな手を使っても勝利を目指しやがるにぇ…ミーコの気持ちも考えずに催眠力(アンジ)で、人の気持ちを洗脳する…ほんと恐ろしいで…」

「ワシもだ。だからワシは、反王国派のオヅベルド公爵に付いた。なのに、何故お前はオヅベルド公爵のチカラになろうとせんのだ?」

父親と共にオヅベルド公爵に協力しない事を聞かれたミーコは、その身を震わせて答えた

「でゃまれっ!!ミーコが嫌だと思ったのは、ミーコのこんな卑怯な催眠力(チカラ)を利用してまで…人の心を踏みにじって、その人の人生を狂わしてでも勝利を得ようとする、その根性が信じられないにぇ!」

ミーコは、彼女が持つ催眠力(チカラ)…コヨリィやノエール、サケマタにミーコがBOSSである。と洗脳させたチカラを利用する者の歪んだ心に嫌気が刺したのだ

「しかし、秀でた能力を使わないは勿体(もったい)ない!というのも間違っていないのではないか?」

「ミーコは嫌なんだにぇ!人の意志を強制的に書き換えるこんな催眠力(チカラ)。ミーコはこのチカラを戦争に利用したくなんか、ないんだにぇ!!」

ミーコは自分が持つ催眠力(チカラ)を好んでいなかった。ましてや、そのチカラを戦争に利用しようとする者たちも同じように嫌っていたのだ

「相も変わらず子供の言い分だな…」

「元々このチカラは国を平和に導く神様から授かったチカラのハズだにぇ!私利私欲や理想を叶える為に使うチカラじゃないハズだにぇ!!」

秀でたチカラは、より良き者に協力する為に使うべきだ!という父親と、あくまで平和の為に使うべきだ!とするミーコの間で、考え方に大きな開きがあるようだ



続く
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...