ようこそ幼い嫁候補たち ③

龍之介21時

文字の大きさ
88 / 135
日常編

年末祭(後編)

しおりを挟む
【ヘルメスの街の繁華街】
1年を通して1番盛り上がっている街の広場に出店された出店の前で、楽しそうに話しているアリスとヨシュア

「えへへぇ♪ヨシュア、ありがとうねぇ!」
「アリスも目覚まし時計取ってくれたからな。ま、アレくらい造作もねーよ」

どうやら射的勝負をしていたアリスとヨシュアは、互いの欲しい物を無事にゲット出来たようだ。とは言っても、ヨシュアの望んだ目覚まし時計は、朝が弱いアリスの為の物であるのだが…

「でもぉ、エルデスさん。歌じょうずなんだねぇ!アタシもぉ、ウットリしちゃったぁ!」

「うふふ~有難うございます~!」

射的勝負をしていたが、エルデスの歌声はしっかり聞こえていたようだ。しかし、もらった籠いっぱいのフルーツはエルフ族で非力なエルデスが持つには重過ぎるようだ

「エルデスさん。重そうですの。サーシャが代わりに持ってあげますの」
「あぅあぅ、コハラコが持つノ!」

重そうにしているエルデスのフルーツ入りの籠を、腕力に自信のあるサーシャが代わりに持とうとしたら、コハラコが自分が持つと言い出した

「良いんですの。サーシャは筋力には自信がありますから大丈夫ですの」

そう言ってサーシャが持とうとしたが…

「俺が持つよ。俺が1番力持ちだからな」

「ふふ。サーシャもヒイロも優しいね」
 

鍛冶師をして筋肉に自信のあるヒイロが籠を持った。その男らしい振る舞いに、彼の彼女の立場であるカルーアは誇らしげな顔をしている。その時…

「きゃうっ!?」
「バタッ」突然コハラコが街の人とぶつかり、その場に転倒してしまった

「す、すみません。うっかりしていました。お嬢さん大丈夫…あっ!擦りむいてしまってるね…そうだ!ポーションを買ってきますから、しばらく待っていてください」

「大丈夫ですの。それには及びませんの。コハラコ、傷口を見せてくださいですの」
「ん~ママ、ここなノ」

「擦りむいただけですね。少しじっとしてて欲しいですの」

そう言うとサーシャは片膝を付いて、擦りむいたコハラコの傷口にそっと手を添えると天使語の呪文を詠唱した…瞬く間に擦り傷は塞がっていった

「おお!凄い回復魔法ですね。しかし、怪我させておいて何もしないのも申し訳ないし…」

「良いですの。この程度なら」

「そういう訳には…そうだ!コレをもらってくれませんか?せめてのものお詫びに」

そう言うと、コハラコにぶつかった20代半ばくらいの男はサーシャに何やら紙の束を手渡して去って行った

「何をもらったんだい?サーシャ…」

「お兄さまから頂いたのと同じ無料券ですの。どうやら、あの人もギルド関係者みたいですの」

「あー、そういやジュリアンさんの部下にあの人見たような気がするな。そうか、彼の部下だったか…」

ヒイロは以前、部下と共に大広場で設営作業を部下と共に頑張っているジュリアンを見たことがあった。その中に先程の男を見たことがあった

「はい、コハラコ。これで、もうひとつ何かに使うと良いですの」
「ママいいノ?」

コハラコの問いかけに笑顔で応えるサーシャ

「サーシャは本当に優しいよね」

「長女としてアタシも鼻が高いわぁ!」

「そうだよな。サーシャは本当に欲が無いよな」

「(/// ^///)そ、そんなに褒められると恥ずかしいですの。サーシャは家族(ファミリー)が幸せならソレが1番嬉しいんですの!」
 

そう言うとサーシャは屈託の無い笑顔を浮かべた。その顔にいつも以上に母性を感じたコハラコは、彼女にベッタリと引っ付いた

「でも無料券まだまだ有るね。残りのソレ、どうするのさ?」

ギルド関係者の兄さんからもらった無料券は30枚ほどの束なので、屋台で使い切るのは難しいほどの量だ

「そうだな、ソレでみんなに服をプレゼントしよう!アリスは15歳にカルーアは14歳、サーシャは13歳、コハラコは6歳になった事だしな…予算オーバーは気にするなよ。足りない分は俺が出すからな」

「お兄ちゃん、良いのぉ?」
「ヒイロ、良いのかい?」
「お兄さま、有難うですの♪」
「ヒイロ、最高なノ!」

「ヒイロさん優しいですね~」
「エルデスの服は俺が買ってやるよ」

ヒイロが4人に服を買うと言ったのを聞いたエルデスの顔が、少し羨ましそうに見えたヨシュアは、いつも自分を気にかけてくれているエルデスの服を自分が買ってやることにした

「そんな~悪いですよ~」
「いつも世話になってるからな。遠慮するんじゃねーよ!」

そうして彼らは服屋に向かった



【服屋】
「いらっしゃい、いらっしゃい!今日は年末祭だ!定価から1割り引きの大セール中だよ!無くなる前に買っていってくれよ!……おっ!ヒイロさんじゃないですか!…妹さん達に年末のプレゼントですか?ウチのバカ息子がいつも世話になってます」

「いえいえ、こちらこそ助かってますよ」

服屋の店主は50過ぎくらいで、その息子が街の警備員をしている。彼の武器防具はヒイロが製作から修理までおこなっているので、店主の父親は日頃の礼を述べていた

「お世話になっているヒイロさんの買い物なら、今日は更にお安くさせてもらいますよ」

店主は他の客には聞こえない様に小声でヒイロに、更なる値引きを約束した



【街の東の公園】
「流石にこの格好は、わたしには可愛すぎないかな?」
 

いつぞやカルーアと外泊デートした時に訪れた公園に、カルーアはヒイロと2人で訪れていた。他の者たちは引き続き年末祭を楽しんでいる

「いや、良く似合ってるよ♪」

「そ、そうかい?何だか照れちゃうね…それにしてもスカート丈が短すぎるよ。絶対サーシャの趣味だよね?」

「あ、あぁサーシャはそんな服ばかり着させたがるよな(笑)」
(俺の一存で買ったことは黙っておこう。すまんなサーシャ)

他の家族(ファミリー)は、ヒイロとカルーアに気を使って2人きりにしてくれたようだ。いつもは中々2人でデートする機会が無いので、2人は久しぶりの平和なひと時を満喫していた

「ヒイロ、ありがとう。その、好きだよ…」
「俺もさ。カルーアが世界一だよ」

ヘルメスの街は今日、年末祭で商店街や大広場に人が集中していて、東の外れの自然公園には2人以外に人が居なかった

それを確認したカルーアは、静かに目を閉じるとヒイロはそれに応えて優しい口付けをした

(こんな楽しい日々だけが毎日続いたら良いな)

まだまだ幼いながらも何度も争いごとに巻き込まれているカルーアは、1日でも多くこんな日が有ることを願った



続く
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...