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日常編
悩めるミル
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【アルバート家】
アドルを巡ってミャンジャムとメリーズが、仲良くイチャコラしていた頃…ヘルメスの街では平和な時間が流れていた
「カルーアお姉さま…嬉しいのは凄く分かりましたの」
「ソレ…美味しいノ?」
ヒイロと街の役所に婚約届けを出し指輪をもらったカルーアは、あまりに嬉しくてサーシャやコハラコに何度も見せ付けていた
「あはは。ごめんよ、あまりに嬉しくてさ…ところでミルが居ないみたいだけど…またサメ焼き屋の方なのかい?」
「ええ、そうなんですの…」
カルーアの質問に浮かない表情のサーシャ
「何だい?ミルと喧嘩でもしたのかい?」
「そういう訳ではないのですけど…どうも最近ミルがサーシャによそよそしいんですの…」
「そうなのかい?」
婚約指輪をゲットして気分が舞い上がっていたカルーアだが…意外なサーシャの悲しげな顔で落ち着きを取り戻した。静まり返った場にヒイロが意見する
「お前たちもそうだけど、若いうちって色々と悩んじゃうもんなんだよ。ミルは今、サーシャとの接し方に凄く悩んでいるんだろうな…」
サーシャの事が好きだけど自分に自信の持てないミルが、最近のアルバート家には凄い人が多くて自分の居場所さえも確立出来ない自分に嫌気が刺してしまい、グレイスたちのサメ焼き屋に身を寄せている気持ちをなんとなく察していたヒイロ
【サメ焼き屋】
「ミル。こんな所に居たのニャ、今日は休みだからヒイロさんとこに居ても良い。って言ったニャ」
サメ焼き屋の裏は池のある公園になっている。池とサメ焼き屋の間にグレイスたちの家があり、更にその裏手は小さな広場になっている
せっかくお店が休みだというのにミルは、その公園に設置された長椅子に座り何をするでもなく、ボンヤリと空を見つめていた
「グレイスさん…ヒイロさんの所には、しばらく帰りたくない気分なんです…家事しか取り柄のないボクがあの家に居ても…」
「凄い人がいっぱい居るから、自分が居る必要性が無いって言うのかニャ?」
「はい…」
ミルは意味もなく下を向いた。顔を上げられるほど今の自分に自信が持てる部分が無いようだ
「必要があるか?無いかニャんてどうでも良いと思うけどニャ?…大事なのは自分がドコに居たいか?じゃないのかニャ?」
16歳とはいえ、グレイスは妹を連れて戦争孤児となり若いその身ながらも危険な裏路地でお店を経営したり、泥棒という悪事に手を染めてまで自分たち姉妹の居場所を守り抜いてきたグレイスの言葉は、悩んでいるミルに深く刺さった
「そうですね…そうだと思います……けど、そうなんですけど…あの家に居る人たちは…みんな凄くて…ボクなんかは情けで置いてもらってる…そんな気がして…気がして…ならないんです!そんな情けないボクが…サーシャさんを好きだ!…なんて…身の丈を弁(わきま)えろ!って話…ですよね…」
「ヒイロさん達は確かに優しいから…お情けで何日かは置いてくれると思うニャ。でもミルはずっと長いこと居させてもらってるし、1人で留守を任されるほど信用されてるニャ」
「そう…ですけど…ボクの悩みなんて…アルバート家の皆さんがする悩みに比べたら…恥ずかしいくらい…小さい話なんです…」
ミルはこの気持ちを誰かに打ち明けたかったが…世界を左右する様な戦いの場で、生命を削るような戦いをしてきた経験を持つ者たちが集まるアルバート家で、そんな小さな悩みを相談する勇気が持てなかったようだ
セーラー服を身にまとっているが…どこからどう見ても可愛い少女にしか見えないミルだが…それでもミルは男の子なのだ!
あの家の中で1人だけスペックスケールの小さい自分が、世界でもトップクラスにレアな種族である天使族のサーシャを好きでいるなど…弱気な男の子であるミルには耐え難いようだ。彼は肩を震わせ頬に水滴を流していた
「いっそ…普通の街の女の子とかを好きになっていたら…こんなに悩まなくても…良かったかも…」
「ミルは難しく考え過ぎだニャ…世界からどう見られようが関係ないニャ。泥をすすっても分不相応な恋をしても、胸を張って言い切れば良いだけニャ」
「でも!ダメなんです!サーシャさんが死にそうな場面になった時…サーシャさんが苦しくて…絶望に飲まれてしまった時……ボクはキット…彼女のチカラに…なれない気がしてならないんです!…そんな彼女の横で棒立ちしている自分の姿しか…見えないんです…」
悲しみに暮れるミルを、グレイスは優しく包み込んだ。それは、まるで母親のような温もりだった。ミルは声にならない鳴き声をあげて、グレイスを抱き返して泣き続けた
【その日の夜】
「キャルトはミカンちゃん家にお泊まり行ってくるニャン♪明日のお昼には帰るニャン!」
晩ご飯を食べ終わった後キャルトはそう言って、西の自然公園の隣で姉妹で宿屋を営む姉妹の家へお泊まりに出かけて行った
美人お姉さん(次期魔王候補の女の子を産んだ)テルアは、BARで夜の踊り子の仕事をする為に出かけて行った。今夜は家にミルとグレイスの2人で寝ることになった
「……………………………………………」
初めてサーシャの事で不安に襲われている。という悩みを打ち明けたミルは、何も考えていないような顔で天井を見上げて寝転がっていた
「ガチャ」
「ミル。起きてるかニャ?」
「グレイスさん?起きてますよ…」
明日のお店の準備も終えて夜もすっかり深くなった頃、姉妹の部屋に居たグレイスが客間(ミルの部屋でもある)にやって来た
「ど、どうしたんですか?その格好は…」
グレイスはネグリジェ1枚の姿だった
「ミルに男の自信を付けさせてあげるニャ。ミルは頑張り屋さんで働き者だから、気持ち良いご褒美をあげるニャ♪」
「Σ(*oωo艸;)エェ!?でも、グレイスさんはボクの事を…好きなんですか?」
「そんな事はどうでも良いニャ!ミルは可愛い。ミルの事が好き。久しぶりに異性とエッチぃ事をしたくなった……理由はそれだけで十分ニャ♪」
「そ、それだけの理由なんですか?」
獣人族の猫科であるグレイスには、どうしても逆らえない発情期というものが定期的に来てしまう。特定の異性との付き合いが長いので、普段は妹と発散し合っているのだが…今夜はミルを相手に湧き上がる欲情を発散するようだ
「理由なんてソレだけで十分ニャ!横に立てる資格が無いニャら、頑張り続けてれば良いのニャ」
夜の薄暗い部屋の中、グレイスは猫目を光らせて横たわるミルに近付いていく
続く
アドルを巡ってミャンジャムとメリーズが、仲良くイチャコラしていた頃…ヘルメスの街では平和な時間が流れていた
「カルーアお姉さま…嬉しいのは凄く分かりましたの」
「ソレ…美味しいノ?」
ヒイロと街の役所に婚約届けを出し指輪をもらったカルーアは、あまりに嬉しくてサーシャやコハラコに何度も見せ付けていた
「あはは。ごめんよ、あまりに嬉しくてさ…ところでミルが居ないみたいだけど…またサメ焼き屋の方なのかい?」
「ええ、そうなんですの…」
カルーアの質問に浮かない表情のサーシャ
「何だい?ミルと喧嘩でもしたのかい?」
「そういう訳ではないのですけど…どうも最近ミルがサーシャによそよそしいんですの…」
「そうなのかい?」
婚約指輪をゲットして気分が舞い上がっていたカルーアだが…意外なサーシャの悲しげな顔で落ち着きを取り戻した。静まり返った場にヒイロが意見する
「お前たちもそうだけど、若いうちって色々と悩んじゃうもんなんだよ。ミルは今、サーシャとの接し方に凄く悩んでいるんだろうな…」
サーシャの事が好きだけど自分に自信の持てないミルが、最近のアルバート家には凄い人が多くて自分の居場所さえも確立出来ない自分に嫌気が刺してしまい、グレイスたちのサメ焼き屋に身を寄せている気持ちをなんとなく察していたヒイロ
【サメ焼き屋】
「ミル。こんな所に居たのニャ、今日は休みだからヒイロさんとこに居ても良い。って言ったニャ」
サメ焼き屋の裏は池のある公園になっている。池とサメ焼き屋の間にグレイスたちの家があり、更にその裏手は小さな広場になっている
せっかくお店が休みだというのにミルは、その公園に設置された長椅子に座り何をするでもなく、ボンヤリと空を見つめていた
「グレイスさん…ヒイロさんの所には、しばらく帰りたくない気分なんです…家事しか取り柄のないボクがあの家に居ても…」
「凄い人がいっぱい居るから、自分が居る必要性が無いって言うのかニャ?」
「はい…」
ミルは意味もなく下を向いた。顔を上げられるほど今の自分に自信が持てる部分が無いようだ
「必要があるか?無いかニャんてどうでも良いと思うけどニャ?…大事なのは自分がドコに居たいか?じゃないのかニャ?」
16歳とはいえ、グレイスは妹を連れて戦争孤児となり若いその身ながらも危険な裏路地でお店を経営したり、泥棒という悪事に手を染めてまで自分たち姉妹の居場所を守り抜いてきたグレイスの言葉は、悩んでいるミルに深く刺さった
「そうですね…そうだと思います……けど、そうなんですけど…あの家に居る人たちは…みんな凄くて…ボクなんかは情けで置いてもらってる…そんな気がして…気がして…ならないんです!そんな情けないボクが…サーシャさんを好きだ!…なんて…身の丈を弁(わきま)えろ!って話…ですよね…」
「ヒイロさん達は確かに優しいから…お情けで何日かは置いてくれると思うニャ。でもミルはずっと長いこと居させてもらってるし、1人で留守を任されるほど信用されてるニャ」
「そう…ですけど…ボクの悩みなんて…アルバート家の皆さんがする悩みに比べたら…恥ずかしいくらい…小さい話なんです…」
ミルはこの気持ちを誰かに打ち明けたかったが…世界を左右する様な戦いの場で、生命を削るような戦いをしてきた経験を持つ者たちが集まるアルバート家で、そんな小さな悩みを相談する勇気が持てなかったようだ
セーラー服を身にまとっているが…どこからどう見ても可愛い少女にしか見えないミルだが…それでもミルは男の子なのだ!
あの家の中で1人だけスペックスケールの小さい自分が、世界でもトップクラスにレアな種族である天使族のサーシャを好きでいるなど…弱気な男の子であるミルには耐え難いようだ。彼は肩を震わせ頬に水滴を流していた
「いっそ…普通の街の女の子とかを好きになっていたら…こんなに悩まなくても…良かったかも…」
「ミルは難しく考え過ぎだニャ…世界からどう見られようが関係ないニャ。泥をすすっても分不相応な恋をしても、胸を張って言い切れば良いだけニャ」
「でも!ダメなんです!サーシャさんが死にそうな場面になった時…サーシャさんが苦しくて…絶望に飲まれてしまった時……ボクはキット…彼女のチカラに…なれない気がしてならないんです!…そんな彼女の横で棒立ちしている自分の姿しか…見えないんです…」
悲しみに暮れるミルを、グレイスは優しく包み込んだ。それは、まるで母親のような温もりだった。ミルは声にならない鳴き声をあげて、グレイスを抱き返して泣き続けた
【その日の夜】
「キャルトはミカンちゃん家にお泊まり行ってくるニャン♪明日のお昼には帰るニャン!」
晩ご飯を食べ終わった後キャルトはそう言って、西の自然公園の隣で姉妹で宿屋を営む姉妹の家へお泊まりに出かけて行った
美人お姉さん(次期魔王候補の女の子を産んだ)テルアは、BARで夜の踊り子の仕事をする為に出かけて行った。今夜は家にミルとグレイスの2人で寝ることになった
「……………………………………………」
初めてサーシャの事で不安に襲われている。という悩みを打ち明けたミルは、何も考えていないような顔で天井を見上げて寝転がっていた
「ガチャ」
「ミル。起きてるかニャ?」
「グレイスさん?起きてますよ…」
明日のお店の準備も終えて夜もすっかり深くなった頃、姉妹の部屋に居たグレイスが客間(ミルの部屋でもある)にやって来た
「ど、どうしたんですか?その格好は…」
グレイスはネグリジェ1枚の姿だった
「ミルに男の自信を付けさせてあげるニャ。ミルは頑張り屋さんで働き者だから、気持ち良いご褒美をあげるニャ♪」
「Σ(*oωo艸;)エェ!?でも、グレイスさんはボクの事を…好きなんですか?」
「そんな事はどうでも良いニャ!ミルは可愛い。ミルの事が好き。久しぶりに異性とエッチぃ事をしたくなった……理由はそれだけで十分ニャ♪」
「そ、それだけの理由なんですか?」
獣人族の猫科であるグレイスには、どうしても逆らえない発情期というものが定期的に来てしまう。特定の異性との付き合いが長いので、普段は妹と発散し合っているのだが…今夜はミルを相手に湧き上がる欲情を発散するようだ
「理由なんてソレだけで十分ニャ!横に立てる資格が無いニャら、頑張り続けてれば良いのニャ」
夜の薄暗い部屋の中、グレイスは猫目を光らせて横たわるミルに近付いていく
続く
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