229 / 295
イシス王国&ドルイド王国編
突然の別れ
しおりを挟む
【荒野の決闘の後】
アドルはオデュッセウスに勝利した。先ほどまで彼が存在していた場所で、涙を流しっぱなしのコハラコ。そんな彼女を見たカルーアが…
「あの娘はわたし達と同じかもね?」
「カルーアお姉様、どういう事ですの?」
「突然に親を奪われて希望をなくしているだろ?わたし達にも同じような事があったじゃないか…」
「あっ!そうなのです…拾ってくれた義理の父が殺され…冒険者ギルドに集められた時…正直に言うと何も期待を持っていませんでしたの」
「恐らく、あの娘も今、同じような気持ちなんじゃないのかな…」
オデュッセウスは敵ではあったが、決して非道な策は使わず戦いを挑んできて敗北した。彼がその気になれば人質を取る作戦とか、いくらでもやり方はあったハズである
コハラコには、オデュッセウスは立派な父親であったに違いない。彼女はいつまでも泣いている
「うぅぅ…うわあぁん!」
感情が溢れ出るコハラコ。涙と鼻水が洪水の様に溢れ出し、そこから動けなかった。三姉妹達はしばらく付き合った
「……決めた!アドルに付いていく…そして強くなる。そして、いつか勝負して必ず勝つ!でも、生命は取らない、でも、必ず勝てるまで諦めない!」
「そうか、分かった。じゃあ行こうか」
コハラコはアドルの袖を掴んだ。どうやら、その体制でついて行く気のようだ。その2人にアリスが近付く
「さぁ、イシスに行こうっ!これからは3人で仲良くしていこうねぇ」
アリスは2人を気遣って優しい笑顔で言ったのだが、振り返ったアドルの言葉は…
「アリス…悪いけど、ソレは出来ない!」
「えっ!?」
予想外の言葉にアリスは戸惑う
「ど、どういう事ぉ?」
「思い出したんだよ、賢者の石のチカラで、今までの全てを…僕が歩んできた人生を…」
アドルは下を向いたまま答えた。呆然と立ち尽くすアリスにカルーアが近付く
「やっぱりね、嫌な感じがしてたんだ。アドルさんが記憶を取り戻した直後の表情や言葉からね」
「えぐ…ぐすっ…カルーア、どういう事なのぉ?」
アリスは既に顔色が悪くなっていた
「これ以上、今日までのアリスとの関係は続けられない。思い出してしまったんだ…リリアの事…5年前、まだ未熟だったボクがオデュッセウスに勝てたのは、リリアのサポートのおかげだった
その後でも、ボクひとりでは勝てない戦いも彼女のサポートで乗り越えた。時には致命傷を受け死にかけたりもした。そんなボクを無理に魔法で助けてくれたんだリリアは…ある日、そんな彼女に永遠の愛を誓っていた」
三姉妹はその告白に固まっていた
しかし、サーシャが歩み寄る
「でも、それは過去の事ですの。アリスお姉様との日々を優先出来ませんの?」
「出来ない…出来ないんだよ!リリアが生まれつき身体が弱くて、そのうえ寿命の短いホムンクルスの妖精で生きていて…そんな貴重な少ない生命を削って何度も何度もボクを助けてくれたんだ!
彼女には、その誓いあった日の記憶があったのに…記憶を無くしてたボクを支える為に、アリスと仲良くしてたボクを見守ってくれたんだ…そんな彼女を裏切れる筈がないよ!!」
「…嘘だよねぇ?」
彼の話を聞いていた途中から、涙が滝のように溢れていたアリス。彼の言葉を受け入れられないでいた
「本当にすまないけど…ボクはリリアと過ごすと決めた。残り少ない彼女の人生に寄り添いたいんだ。すまない…」
「そんなっ!?アタシは…」
膝から崩れ落ちるアリス
「そうかい…それじゃここでお別れだね。わたし達はアドルさんや優輝さんのように、是が非でもイシスに向かう必要が無くなったよ。兄さんをずっと待たせてるんだ。わたし達はヘルメスに向かうよ」
「アドルぅ…どうしてもアタシを選んでくれないのぉ?」
ボロボロの顔のアリスが最後に確認をした
「悪いけど…それは出来ない」
「………分かった。そうだねぇ…も、元々…演技だったんだしぃ、それならもう良いねぇ…帰ろうか、カルーア、サーシャ…」
アリスはアドルに背を向けた。狼のハイラが彼女の足元に駆け寄って来た。カルーアとサーシャはアドルに気を使って、無言で涙を流し続ける姉を静かに見つめていた
「馬車は2頭引きだから1頭貰うよ。狼(ハイラ)悪いけど、サーシャを乗せてあげてよ」
カルーアは荷物袋を馬に縛り、乗り込んで手綱を握った
「さあ姉さん、わたしに捕まって」
アリスは無言で頷き、馬に飛び乗るとカルーアの腰に手を回した。ハイラに乗せてもらったサーシャ
「それでは皆さん、またお会いしましたら宜しくですの」
「ヘルメスまで気を付けてね」
優輝は三姉妹に手を振る
「優輝、付いてっちゃ駄目?」
「ミクイは俺の監視役だろ?駄目に決まってるじゃないか!」
大好きなサーシャについて行きたいミクイだったが使命がある為、しぶしぶ彼女達(サーシャ)との別れを受け入れた
アドル、コハラコ、優輝、ミクイは馬車に乗りイシスへと向けて出発した
……………………………………………
ソレから三姉妹はヘルメスに向けて、数分馬を走らせていた
「姉さん、もうわたし達以外は誰も居ないよ」
「…う、うわぁぁぁん!アドルぅ、アドル~大好きになったのにぃ!大好きだったのにぃ!」
我慢していたアリスが、ダムが決壊したかのように大泣きを始めた。カルーアの背中に、とめどなく温かなアリスの涙が流れ落ちていた
「アリスお姉様…」
それから数時間、アリスが泣き止むまで三姉妹は少し遅めの速度でヘルメスへ走り続けた
続く
アドルはオデュッセウスに勝利した。先ほどまで彼が存在していた場所で、涙を流しっぱなしのコハラコ。そんな彼女を見たカルーアが…
「あの娘はわたし達と同じかもね?」
「カルーアお姉様、どういう事ですの?」
「突然に親を奪われて希望をなくしているだろ?わたし達にも同じような事があったじゃないか…」
「あっ!そうなのです…拾ってくれた義理の父が殺され…冒険者ギルドに集められた時…正直に言うと何も期待を持っていませんでしたの」
「恐らく、あの娘も今、同じような気持ちなんじゃないのかな…」
オデュッセウスは敵ではあったが、決して非道な策は使わず戦いを挑んできて敗北した。彼がその気になれば人質を取る作戦とか、いくらでもやり方はあったハズである
コハラコには、オデュッセウスは立派な父親であったに違いない。彼女はいつまでも泣いている
「うぅぅ…うわあぁん!」
感情が溢れ出るコハラコ。涙と鼻水が洪水の様に溢れ出し、そこから動けなかった。三姉妹達はしばらく付き合った
「……決めた!アドルに付いていく…そして強くなる。そして、いつか勝負して必ず勝つ!でも、生命は取らない、でも、必ず勝てるまで諦めない!」
「そうか、分かった。じゃあ行こうか」
コハラコはアドルの袖を掴んだ。どうやら、その体制でついて行く気のようだ。その2人にアリスが近付く
「さぁ、イシスに行こうっ!これからは3人で仲良くしていこうねぇ」
アリスは2人を気遣って優しい笑顔で言ったのだが、振り返ったアドルの言葉は…
「アリス…悪いけど、ソレは出来ない!」
「えっ!?」
予想外の言葉にアリスは戸惑う
「ど、どういう事ぉ?」
「思い出したんだよ、賢者の石のチカラで、今までの全てを…僕が歩んできた人生を…」
アドルは下を向いたまま答えた。呆然と立ち尽くすアリスにカルーアが近付く
「やっぱりね、嫌な感じがしてたんだ。アドルさんが記憶を取り戻した直後の表情や言葉からね」
「えぐ…ぐすっ…カルーア、どういう事なのぉ?」
アリスは既に顔色が悪くなっていた
「これ以上、今日までのアリスとの関係は続けられない。思い出してしまったんだ…リリアの事…5年前、まだ未熟だったボクがオデュッセウスに勝てたのは、リリアのサポートのおかげだった
その後でも、ボクひとりでは勝てない戦いも彼女のサポートで乗り越えた。時には致命傷を受け死にかけたりもした。そんなボクを無理に魔法で助けてくれたんだリリアは…ある日、そんな彼女に永遠の愛を誓っていた」
三姉妹はその告白に固まっていた
しかし、サーシャが歩み寄る
「でも、それは過去の事ですの。アリスお姉様との日々を優先出来ませんの?」
「出来ない…出来ないんだよ!リリアが生まれつき身体が弱くて、そのうえ寿命の短いホムンクルスの妖精で生きていて…そんな貴重な少ない生命を削って何度も何度もボクを助けてくれたんだ!
彼女には、その誓いあった日の記憶があったのに…記憶を無くしてたボクを支える為に、アリスと仲良くしてたボクを見守ってくれたんだ…そんな彼女を裏切れる筈がないよ!!」
「…嘘だよねぇ?」
彼の話を聞いていた途中から、涙が滝のように溢れていたアリス。彼の言葉を受け入れられないでいた
「本当にすまないけど…ボクはリリアと過ごすと決めた。残り少ない彼女の人生に寄り添いたいんだ。すまない…」
「そんなっ!?アタシは…」
膝から崩れ落ちるアリス
「そうかい…それじゃここでお別れだね。わたし達はアドルさんや優輝さんのように、是が非でもイシスに向かう必要が無くなったよ。兄さんをずっと待たせてるんだ。わたし達はヘルメスに向かうよ」
「アドルぅ…どうしてもアタシを選んでくれないのぉ?」
ボロボロの顔のアリスが最後に確認をした
「悪いけど…それは出来ない」
「………分かった。そうだねぇ…も、元々…演技だったんだしぃ、それならもう良いねぇ…帰ろうか、カルーア、サーシャ…」
アリスはアドルに背を向けた。狼のハイラが彼女の足元に駆け寄って来た。カルーアとサーシャはアドルに気を使って、無言で涙を流し続ける姉を静かに見つめていた
「馬車は2頭引きだから1頭貰うよ。狼(ハイラ)悪いけど、サーシャを乗せてあげてよ」
カルーアは荷物袋を馬に縛り、乗り込んで手綱を握った
「さあ姉さん、わたしに捕まって」
アリスは無言で頷き、馬に飛び乗るとカルーアの腰に手を回した。ハイラに乗せてもらったサーシャ
「それでは皆さん、またお会いしましたら宜しくですの」
「ヘルメスまで気を付けてね」
優輝は三姉妹に手を振る
「優輝、付いてっちゃ駄目?」
「ミクイは俺の監視役だろ?駄目に決まってるじゃないか!」
大好きなサーシャについて行きたいミクイだったが使命がある為、しぶしぶ彼女達(サーシャ)との別れを受け入れた
アドル、コハラコ、優輝、ミクイは馬車に乗りイシスへと向けて出発した
……………………………………………
ソレから三姉妹はヘルメスに向けて、数分馬を走らせていた
「姉さん、もうわたし達以外は誰も居ないよ」
「…う、うわぁぁぁん!アドルぅ、アドル~大好きになったのにぃ!大好きだったのにぃ!」
我慢していたアリスが、ダムが決壊したかのように大泣きを始めた。カルーアの背中に、とめどなく温かなアリスの涙が流れ落ちていた
「アリスお姉様…」
それから数時間、アリスが泣き止むまで三姉妹は少し遅めの速度でヘルメスへ走り続けた
続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
377
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる