ようこそ幼い嫁候補たち④

龍之介21時

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夢忘れ編

フュールの怒り

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【ファスク城展望台横 休憩室】
「んぅ!?…貴様。妙にこなれていないかの?はぁはぁ…今までに何人抱いてきたのじゃ?」

数百年前、彼女がまだ駆け出し見習い魔法使いであった頃【魔導師ドゥーン】の元に弟子入りしてからは、年頃の娘の楽しみなどの一切を捨て修行に励み、強力な魔法使いへと成長した彼女は魔族の兵に志願した

その後も、言い寄ってくる男どもには目もくれず、魔女としての責務に従事してきた彼女がこの世の別れ際に身体を許したディーが、行為の後も余裕な態度でいることに少し拗ねているようだ

「軍団長ともなぁれば~、言い寄ってくる女性は数知れず。でぇすからねぇ~…最初は相手にしていなかったのですが~、中にはいじらしくて健気な子もいましてね~。流されている内に気が付けば何人もの相手をするハメに…というヤツですよぉ~(笑)」


城の最上に位置しているこの展望台は、夜通し監視する者の為に部屋の横に仮眠室も設けられている

「ふん。どうだかのぅ【英雄色を好む】と言うからのぅ…楽しんでたクチではないのかえ?」

「楽しみましたよ~♪楽しみましたとも…まぁ、仕方なく数人とでぇすがねぇ(笑)」

「そらみい、言わんこっちゃないわな」

昔話に花を添えながらチビチビとアルコールとツマミを楽しんでいた2人であったが、寿命の近いシャオシュウが「この世の最期の戯れに」と、幼なじみとも言えるディー・アモンに一夜限りの男女の契りを頼んだようだ
 
……………………………………………

2度目の合体を済ませたシャオシュウは、ゆっくりとベッドの上に起き上がるとボディタオルで大切な部分を隠して女の子座りをした

「くっ、はぁはぁ…随分と手馴れておるじゃないか?…ディーよ。本当は、かなりの人数を楽しんでおるな?」


息づかいも荒くなり全身に汗を滲ませている彼女は、予想以上のテクニックを披露してくれたディー・アモンに対してカマを掛けた

「のん、ノン、NOン。違いますよ同志シャオシュウ。吾輩のを受け入れてくれる女性に対して、まず吾輩が楽しまずに行為をするのは失礼と言うものでぇす♪」

ところが彼は、思いを寄せてくれた女性に対しての礼儀だと言う

「ふん、どうだかのぅ…モノは言い様じゃからな…」

シャオシュウは、齢(よわい)800年が近い魔女なのだが…彼女たちの魔法の師匠である【魔導師ドゥーン】から習った老化減衰魔法を極めており、蓄積した魔力を注ぎ込むことで一夜くらいなら全盛期の肉体を維持できるようだ

「大丈夫でぇす!今、吾輩の瞳に映るのは…美しいシャオシュウだけでぇす❤︎」

ディー・アモンは彼なりに、今は目の前のシャオシュウの事しか考えていない!とアピールしていた

「ふん。喜んでおいてやるわい♪」

800年近くも生きておきながら、初めての合体を体験するシャオシュウを意外にも丁寧に扱ってくれたディー・アモンの言葉に喜びながら、照れ隠しを言って喜んでいる彼女だったが…


「ガタンッ…ドカドカドカ…」

展望台横の休憩室に居る2人にも聞こえた騒がしい音が、1階の方から聞こえてきた

「……ん?なんじゃ、通用門の方か?夜分とは思えんほど騒々しいようじゃが…この魔力はマーマルじゃな。何かあったのかの?」

「ん~、なるほどなるほど~。コレはタダ事ではないよーでぇすね~…仕方あーりませんね~。この続きは明日、この国の戦争に終止符を打った後になりますね~」

「そうじゃのぅ…嫌な予感がするわい」

休憩室で1ラウンドを楽しんだシャオシュウとディー・アモンは、もう少し重なっていたかった気分を抑えてイソイソと服を着、1階の通用門へと向かった



【通用門前】
「……!?ば、バカな、この焼け焦げた死体がオボロ様だと言うのか?嘘じゃろう…」

元オボロ姫だった肉塊を両腕に抱いて運んできたリュウキは、悲しみの涙を目に浮かべ無言で立ち尽くしている

「申し訳ありませんシャオシュウ様。僕たちが姫を発見した時には、既にもう…」

リュウキがおんぶしてきたツバキを兵士に手渡すと、マーマルは師匠であるシャオシュウに事の次第を丁寧に説明し始めた

「うぉぉ…オボロ姫…こんなハズが…」

彼女が生まれた日から、彼女を気にかけていたシャオシュウには、変わり果てた彼女の姿は現実だと認識するのを困難にさせていた


「………私が責任を取らなければ…」

マーマルとシャオシュウの会話は続く
その話を遠巻きに聞いていたディー・アモン。そして、オボロの父親であるヴァル。彼は何かを呟くと静かに部屋を出て行った

「……んぅ~、吾輩気になっちゃいますね~。不得意なぁのですが~、お節介を焼いちゃいましょうかね~」

思い詰めた表情で部屋を後にしたヴァルの事を見ているディーは「ヤレヤレでぇすね~」と言っているかの表情で、彼の後を追おうと扉に手をかけようとした時だった


「ドバンッ!」

「オボロ姫が殺されたという話は本当か!?嘘や冗談じゃあるまいなっ!?」

別室で回復治療を施されていたフュールが、凄まじい勢いで扉を開き入室してきた

「…申し訳ありませんフュール様。僕たちのチカラ不足で姫をこんな姿にしてしまいました…」

飛び込んできたフュールに対して、遊撃隊隊長のマーマルが説明をする

「ば、バカな…どうしてこのような事に…」

マーマルの足元で、半身を焦がされたオボロの遺体を見詰め崩れ落ちるフュール。無言のまま涙が頬をつたい床に落ちた

「一緒に居たツバキさんも魔力枯渇していまして、別室で魔力供給中です」

「それと、オボロ姫が殺されていたスエスの町の燃え尽きた宿屋に、従者の男を放置しています。手が足りなかったので…」

リュウキとツバキは、シャオシュウに説明した内容をもう一度フュールに伝えた

「…おのれぇ人族どもめ…許さない。絶対に許さないわ!……ん!?ミアナはどうした?何故ココに居ない?」

オボロの従者2人の現状を聞かされたフュールは、ある1つの疑問に辿り着いた。中立の町とは言え、人族も多数居る場所に姫を向かわせる危険を絶対に回避する為に同席させた【消去の魔女】の唯一の弟子「ミアナ・ラドシャ」がこの場に居ないのだ

「僕たちが偶然、その町の酒場で姫さまたちに出会った時には既に、そのミアナという人は居なかったのです」

「なんだとっ!?姫さまの護衛にと付けたあの女が、姫さまのピンチの場面で居なかっただと!?…あの女、どういうつもりだ!」

元々のオボロ姫の護衛であるツバキとモメントを信用していなかった訳ではないが、彼ら以上の信頼を寄せて良いハズだった「ミアナが不在の状況で姫が殺された」と聞かされては、姫を失った怒りの矛先はミアナに向けられた

「ミス、フュール。あまり彼女1人に怒りを向けるのは…」

「うるさいっ!姫さまが殺されたのだぞ。そんな時に不在で役に立たなかった責任だ、誰であっても許される訳が無いでしょ!!」

フュールは浮遊と火炎魔法を得意にしている。火属性が高い者ほど、怒った時の暴れようは手が付けられない事を知っているディーは、珍しく彼女をなだめようとしたのだが…

「あ、あのフュール様。ツバキ殿から少し聞いた話では、その女性はオボロ姫の用事を頼まれ席を外していたと聞いています。決して、サボって遊んでいた訳ではないと思いますが…」

「だからって、それで許される事態ではないでしょ!マーマルでしたね。私は今から、その町に出向きますが貴女は自分の職務に忠実にしていなさいよ?」

マーマルは【最強の魔女の弟子】と言われるミアナを庇う補足説明をしようとしたのだが、アレクス城の1件からミアナへの不満感を覚えていたフュールは、得意魔法が火属性という事もあり彼女への怒りが目に見えて噴出していた

「は、はい。シャオシュウ様の指示に忠実に従い、最善を尽くす所存です。お、お任せください」

マーマルは、初対面した最上位の立場である【渇望の魔女】フュールの怒りの迫力に押されてしまったので、マニュアル通りの返事をするのがやっとだった

「良し。シャオシュウ殿…しっかりしてくださいシャオシュウ殿!私はミアナを探してきますので、軍の再編や兵たちの動揺を抑えてください。それでは…」

フュールはまだ姫さまの死の衝撃から半分放心状態でいるシャオシュウに激を飛ばして、城を後にしようとした時…

「お待ちなさいフュール。感情に任せて行動するなど、新兵の様ではあーりませんか?」

「うっるさい!貴様は黙っていろっ!!」

フュールは最後までディー・アモンの静止を受け入れずに、ミアナを探す為に文字通り城を飛び出した



【スエスの町】
ミアナは燃え盛る町の中を歩きながら天を仰いでいた。彼女からしてみれば、いかに強力な個体とは言え、たった1体の魔装機兵に町がここまで騒然としているのは予想外だった

「やー、これは酷い有り様ですね。こんな混乱状態の中から、姫さまたちを探し出すのは流石に難しいなぁ…」

流石のミアナでもこの中から、まだ出会ったばかりのオボロ姫たちを魔法で探し出すのは困難だったので、半分愚痴るように歩いていたのだが…

「もう姫さまを探し出す必要など無いわっ!!」

「バキィっ!!」

得意の浮遊飛行魔法を全開にして町にやって来たフュールは、ミアナを発見すると即座に近付き彼女の顔面に拳を叩き込んだ!

「グハァッ!」

マグマのように燃えたぎる熱量を帯びた右拳を躊躇いもなく叩き付けたフュールと、そのあまりの衝撃で宙を舞うミアナ



続く
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