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夢忘れ編
ヒルドゥルブ砦攻防戦
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【ヒルドゥルブ砦 前方10km】
黒系の鳥たちが夜空を更に黒く染めている。彼らは群れを成し砦を目指して進行していた
ソレらのほとんどは既に死に絶えた鳥であり、不死の皇ディー・アモンによって蘇らされ配下に入れられた
「んふふ~ふふ♪良いですねぇ~。思った通り、この地には亡くなって放置されたままの魂がたっぷり居~ますねぇ…吾輩の下僕がいくらでも増やせるじゃあ~りませんか♪」
ディー・アモンはご機嫌だった
普通は大規模な争いの決着戦の最前線を任されるなんて役目は、大切な部下を大量に失う可能性が高いので、どんな武勇のある将でも嫌がる場面なのだが…彼にとっては新たな部下を、大量に増やせる財宝の隠し場所のようだった
「【広域拡声(ラード・ドゥーン)】…
んっ、んう。あ~20年以上の長きに渡り、抵抗を続けているマナティートの人族たちよ。聞こえていますかねぇ?…吾輩はザッド・クルス様の左腕にしてぇ、不死軍団を束ねる吸血鬼の始祖【ディー・アモン伯爵】でぇすっ!…今宵は~この国での戦争を終わらせる為に眠りから覚め、馳せ参じた次第でぇすっ!」
空を埋め尽くす比翼タイプの不死化した魔物の大群の中央に、彼の愛鳥である不死化龍の背に乗って砦を目指すディー・アモン
(さぁて、敵にはフュール嬢から聞いている狼娘の退魔師を連れた狐の聖騎士とぉ、基礎型超人類とやらの精霊剣士を孫に持つ武闘女神のアテナが居るハズでぃすが~、どちらが吾輩の迎撃に来ますかねぇ(笑))
22年前の大戦で、単軍でマリニウム国を退けた自分の軍団の情報がこの地にも伝わっているハズと予想しているディーは、そのどちらかが自分の進軍を止める為に出向くだろうと予想していた
(…いやぁ、そう言えばフュール嬢が言っていた有栖さんから教えられた超極大魔法とやらを使うハイエルフも、あの砦に居るハズでしたねぇ。さてさて…)
不死軍団の長にして、完全なる半幽半霊体(アストラルボディ)を持つ自分とまともに戦えるのは、その3チームくらいだろうと予想していた
【森林地帯の中】
彼の軍団の前方眼下に拡がる森林地帯の中に身を潜め、天空に両腕を突き出し耳では正確に聞き取れない独特な詠唱を奏でる少女が居た
「…バッフルゲャベァリード」
退魔師であるメイアンは、周囲の木々や土や小動物、微生物に至るまでのモノから精霊力(マナ)を借りて、自身の退魔術のエネルギー源として組み込み、対不死生命(アンデッド)への攻撃としていた
「ギギュゥニュぅぅぅ…ドツパッアン!」
狼少女メイアンが天空に打ち出した光弾が、ディーの周辺で複数に分裂した後、複雑な魔術式が描かれた魔法陣が空に浮き上がると、その中に居た不死化された鳥たちは死亡直後の姿に形を変え、不死化が解除されて地上へと落下し始めた
「おおうっ!?コレがフュール嬢が言っていた退魔師のチカラでぇすかぁ?なんとも凄まじく美しいっ!!…と、言うことはぁ~…」
自分の配下たちを次々と落下させていく魔法陣に一瞬、心を奪われたディー・アモンだが…彼は自身に迫る物体の空を切り裂く音を逃さなかった
「行っけぇ!【吹雪剣王(フブキング)】。ヤツを切り刻んじゃってぇ!!」
メイアンと離れた別の場所から9本の尻尾を展開し、コピー増産した吹雪剣王を操り空中に居るディーを攻撃するブリニァン・ホワイト
「ふぅーはぁはぁはぁ。むぅだでぇすねぇ。吹き飛ばしなさ~い!」
不死化龍はその大きな両翼を力強くはためかせ強風を巻き起こし、迫り来る聖剣たちを吹き飛ばした
「ディー・アモン吸血ビームっ!!」
闇の力を体内で増幅させたディーは、そのチカラを超圧縮して目から放出してブリニァンを攻撃した
「ドッゴォォォん!!」
大岩を1激で粉微塵にしそうな程の威力を持つ攻撃だったが、ブリニァンは大量の樹木の中を高速移動している為、遙か上空からの攻撃では彼女にダメージを与えられなかった
……………………………………………
その後もブリニァンの攻撃は不死化龍に遮られるが、ディーの攻撃も当たらないパターンが続いていたが…
「こぉれはイっけませんねぇ…互いにダメージを与えられない間にぃ、退魔師の狼娘さんに吾輩の配下がガンガン削られちゃってますねぇ……仕方があぁりませんねぇ!吾輩 自らが出向いてあげちゃいますよぅお!」
【吹雪剣王(フブキング)】の攻撃を完全回避出来る空中に居ては、配下の不死化鳥軍団が削られる一方だと理解したディーは、不死化龍の背から飛び降りブリニァン目掛けて飛び込んだ
「来ましたか…死なない程度に相手してあげるよぉ!」
「始祖の吸血鬼たる吾輩に慈悲の心でぇすかぁ!?お優しいでぇすねぇ。しかし、しかしですよぉ…吾輩は一切容赦しませんがねぇ(笑)」
「死なない程度に」という言葉が自分に向けて発せられた言葉だと解釈したディーは、ブリニァンを甘いヤツだと嘲笑したのだが…彼女は、メイアンとの生活をこんな戦争で終わらせるつもりは全く無いので自分がヤバくなったら、何時でもメイアンを連れてこの国から逃げ出す気で吐いたセリフだった
【ヒルドゥルブ砦 北北西】
砦の西方から不死軍団とマリニウム魔軍全軍で進行している本体とは別に、昨日もこのルートから砦に接近していたフュールが再び、このルートを使い単身飛行していた
「先程の報告によると、昨日戦った獣人族コンビはディーの方に現れたみたいね。という事は…私の方にはSSランクの武闘女神が来てるのかな?」
フュールは、ディーを獣人族コンビが迎え撃って来たように、自分にも凄腕の猛者が立ちはだかると予想していた
「それとも…古代13獣神マルバァスとの戦場に居たあの進化型超人類(ハイエルフ)のカルーアって子かも?」
渇望の魔女と敵からは恐れられ味方からは敬われている彼女は、並大抵の戦力を自分に当てるハズは無いと理解しているので、自分が戦うのは生ける武神アテナや古代人の生み出した基礎型超人類か、超極大魔法を操る進化型超人類が来るだろうと予想している
「…ま、ドチラが現れたにしても私はソイツらを撃破して、ローゼンバーグ家の跡取り娘を殺し魔族に勝利をもたらすだけね」
魔王専属の魔女として、今回派遣された自分に期待されている事の大きさを再確認したフュールは気を引き締めた。その時…
「ふんっ!」
森林地帯上空を飛行する彼女の斜め下方800メートルまで伸びている大木の枝から、何かが勢い良く発射されたのを感じ取ったフュール
「ようやく逢えたのぅ♪ふんがっ!」
フュール目掛けて飛んできたのは槍や弓ではなく、武闘女神アテナ自身だった
「その距離から1飛びで来るなんて…噂通り規格外なのね。でも!空中で自由に動けない相手なんて雑魚でしかないわね♪」
いかに超破壊力をもつ武闘女神と言えど空中戦では、火炎と飛行を司(つかさど)る魔女フュールには動かない的(まと)でしかなかった。が…
「フヒュン!フヒュヒュン!」
「何!?下から?」
真っ直ぐ進んでくるアテナを岩をも気化させる程の熱量を持つ、火炎魔法で迎え撃とうとしたフュールの遙か下方の地上から、空気を切り裂く刃が複数飛んできているのを感知した
「甘いわね」
右手に可視化できる程の闘気を集中させたアテナに狙われながら、下方から複数飛んできた衝撃波も華麗に回避したフュール
「この攻撃でも余裕かよ」
「私を誰だと思っているのかしら?」
地上から約1km上空の位置で、お互い10数メートル離れて交差するアテナとフュール
しかし、アテナはこの先、自由落下するしかないのだが…フュールは飛行魔法で彼女を追撃し、強烈な火炎魔法をブチ当てれば勝敗はアッサリと決まるのだが…
「はぁぁぁ…精霊剣ロマーニャ。私の斬撃を固体化させる魔法力(チカラ)を貸して」
地上に居るエリエスは、斬撃を放った精霊剣ロマーニャに闘気を流し込むと…フュールの周辺を飛んでいく回避された衝撃波が固定化された
「なっ!?コレは何だ?」
「フハハ♪貴様を仕留める為の足場じゃよ」
フュールの周囲で動きを止め固体化された衝撃波は、岩やレンガのような足場となり、アテナは自由が効かない空中で移動方向を変える為に利用した
「私を舐めるなよっ!【炎獄弾(フレマルド)】!」
フュールはオリジナルの火炎魔法を撃ち出し、川辺の岩を利用してピョンピョンと飛び跳ねるかのように移動しているアテナを狙ったが…
「ぬるいわいっ!」
「バッフォォォン」
アテナは闘気を込めたパンチで飛んできた炎を軽く殴ると…渇望の魔女のフュールの火炎攻撃ですら簡単に打ち消してしまった
「くっ…何か特殊な技を使っているな」
「空中の鬼ごっこも悪くはないのぅ」
格闘家であるアテナは、いかに武闘女神と呼ばれていても空中は自在に動けないのでロマーニャの衝撃波を足場に使い、下から追加されるエリエスの斬撃と共にフュールと戦っていた
【ヒルドゥルブ砦 客間】
「わたしだって別に好き好んで見放している訳じゃないのに…」
ロミータの寝室から比較的近くの客間を与えられているカルーアは、ベッドの上に座りながら呟いていた
「本当なら…わたしが頼る相手も居ない1人者だったなら、ホルン叔母さんと一緒に戦いたいよ!…だって、エルドルド地域の古代遺跡で生まれたわたしは戦果を避けてこの地に着いて、初めて安堵と幸せを感じた場所なんだよ?身内の唯一の生き残りのホルン叔母さんの為に戦いたいんだよ。でも、今のわたしには家族が居て…帰りたい場所があるんだ」
謁見の間で何度も何度も兵士長たちから
「少しで良いからその強い魔法で、この国の人族を助けてくれないか?」
と死がソコまで迫っている人達からの頼みを断り続けるのは、固体化してまだ14年の少女であるカルーアには辛い事だったのだ
「…分かってる。お前が戦いに参加してしまったら、俺やアリスやサーシャたちまで魔族の敵になってしまうからな。だから、我慢してくれたんだよな」
家族の幸せの為に、集中砲火の如くお願いされた頼みを、断りきったカルーアの心境を察しているヒイロ
「人助けも程々にしておかないと、思わぬ火傷をする事になってしまうんだね…」
【七精守護霊(ハーロウィーン)】といった精霊魔法で、王都クラウンからSランク認定されているカルーアが力添えすれば、死なずに済む兵士たちも沢山居ることだろう
「そうだな…しかし、同じ惑星神エリスア様を崇める者に対してチカラを振るえば、お前たち…いや、俺たちの平和はイッキに失われてしまうからな。ヘタすればヘルメスの街まで侵攻対象になるだろうな」
「そう…だね。エリスア様には何度も何度も助けられたけど、流石に今回のことは難しいことだね。平和なヘルメスに帰りたいな…」
元々エルフ族は【森の番人】と言われる種族で、自ら交戦することを良しとしない。カルーアは早く平和な日常に帰りたいだけなのだ
続く
黒系の鳥たちが夜空を更に黒く染めている。彼らは群れを成し砦を目指して進行していた
ソレらのほとんどは既に死に絶えた鳥であり、不死の皇ディー・アモンによって蘇らされ配下に入れられた
「んふふ~ふふ♪良いですねぇ~。思った通り、この地には亡くなって放置されたままの魂がたっぷり居~ますねぇ…吾輩の下僕がいくらでも増やせるじゃあ~りませんか♪」
ディー・アモンはご機嫌だった
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んっ、んう。あ~20年以上の長きに渡り、抵抗を続けているマナティートの人族たちよ。聞こえていますかねぇ?…吾輩はザッド・クルス様の左腕にしてぇ、不死軍団を束ねる吸血鬼の始祖【ディー・アモン伯爵】でぇすっ!…今宵は~この国での戦争を終わらせる為に眠りから覚め、馳せ参じた次第でぇすっ!」
空を埋め尽くす比翼タイプの不死化した魔物の大群の中央に、彼の愛鳥である不死化龍の背に乗って砦を目指すディー・アモン
(さぁて、敵にはフュール嬢から聞いている狼娘の退魔師を連れた狐の聖騎士とぉ、基礎型超人類とやらの精霊剣士を孫に持つ武闘女神のアテナが居るハズでぃすが~、どちらが吾輩の迎撃に来ますかねぇ(笑))
22年前の大戦で、単軍でマリニウム国を退けた自分の軍団の情報がこの地にも伝わっているハズと予想しているディーは、そのどちらかが自分の進軍を止める為に出向くだろうと予想していた
(…いやぁ、そう言えばフュール嬢が言っていた有栖さんから教えられた超極大魔法とやらを使うハイエルフも、あの砦に居るハズでしたねぇ。さてさて…)
不死軍団の長にして、完全なる半幽半霊体(アストラルボディ)を持つ自分とまともに戦えるのは、その3チームくらいだろうと予想していた
【森林地帯の中】
彼の軍団の前方眼下に拡がる森林地帯の中に身を潜め、天空に両腕を突き出し耳では正確に聞き取れない独特な詠唱を奏でる少女が居た
「…バッフルゲャベァリード」
退魔師であるメイアンは、周囲の木々や土や小動物、微生物に至るまでのモノから精霊力(マナ)を借りて、自身の退魔術のエネルギー源として組み込み、対不死生命(アンデッド)への攻撃としていた
「ギギュゥニュぅぅぅ…ドツパッアン!」
狼少女メイアンが天空に打ち出した光弾が、ディーの周辺で複数に分裂した後、複雑な魔術式が描かれた魔法陣が空に浮き上がると、その中に居た不死化された鳥たちは死亡直後の姿に形を変え、不死化が解除されて地上へと落下し始めた
「おおうっ!?コレがフュール嬢が言っていた退魔師のチカラでぇすかぁ?なんとも凄まじく美しいっ!!…と、言うことはぁ~…」
自分の配下たちを次々と落下させていく魔法陣に一瞬、心を奪われたディー・アモンだが…彼は自身に迫る物体の空を切り裂く音を逃さなかった
「行っけぇ!【吹雪剣王(フブキング)】。ヤツを切り刻んじゃってぇ!!」
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不死化龍はその大きな両翼を力強くはためかせ強風を巻き起こし、迫り来る聖剣たちを吹き飛ばした
「ディー・アモン吸血ビームっ!!」
闇の力を体内で増幅させたディーは、そのチカラを超圧縮して目から放出してブリニァンを攻撃した
「ドッゴォォォん!!」
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「来ましたか…死なない程度に相手してあげるよぉ!」
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「死なない程度に」という言葉が自分に向けて発せられた言葉だと解釈したディーは、ブリニァンを甘いヤツだと嘲笑したのだが…彼女は、メイアンとの生活をこんな戦争で終わらせるつもりは全く無いので自分がヤバくなったら、何時でもメイアンを連れてこの国から逃げ出す気で吐いたセリフだった
【ヒルドゥルブ砦 北北西】
砦の西方から不死軍団とマリニウム魔軍全軍で進行している本体とは別に、昨日もこのルートから砦に接近していたフュールが再び、このルートを使い単身飛行していた
「先程の報告によると、昨日戦った獣人族コンビはディーの方に現れたみたいね。という事は…私の方にはSSランクの武闘女神が来てるのかな?」
フュールは、ディーを獣人族コンビが迎え撃って来たように、自分にも凄腕の猛者が立ちはだかると予想していた
「それとも…古代13獣神マルバァスとの戦場に居たあの進化型超人類(ハイエルフ)のカルーアって子かも?」
渇望の魔女と敵からは恐れられ味方からは敬われている彼女は、並大抵の戦力を自分に当てるハズは無いと理解しているので、自分が戦うのは生ける武神アテナや古代人の生み出した基礎型超人類か、超極大魔法を操る進化型超人類が来るだろうと予想している
「…ま、ドチラが現れたにしても私はソイツらを撃破して、ローゼンバーグ家の跡取り娘を殺し魔族に勝利をもたらすだけね」
魔王専属の魔女として、今回派遣された自分に期待されている事の大きさを再確認したフュールは気を引き締めた。その時…
「ふんっ!」
森林地帯上空を飛行する彼女の斜め下方800メートルまで伸びている大木の枝から、何かが勢い良く発射されたのを感じ取ったフュール
「ようやく逢えたのぅ♪ふんがっ!」
フュール目掛けて飛んできたのは槍や弓ではなく、武闘女神アテナ自身だった
「その距離から1飛びで来るなんて…噂通り規格外なのね。でも!空中で自由に動けない相手なんて雑魚でしかないわね♪」
いかに超破壊力をもつ武闘女神と言えど空中戦では、火炎と飛行を司(つかさど)る魔女フュールには動かない的(まと)でしかなかった。が…
「フヒュン!フヒュヒュン!」
「何!?下から?」
真っ直ぐ進んでくるアテナを岩をも気化させる程の熱量を持つ、火炎魔法で迎え撃とうとしたフュールの遙か下方の地上から、空気を切り裂く刃が複数飛んできているのを感知した
「甘いわね」
右手に可視化できる程の闘気を集中させたアテナに狙われながら、下方から複数飛んできた衝撃波も華麗に回避したフュール
「この攻撃でも余裕かよ」
「私を誰だと思っているのかしら?」
地上から約1km上空の位置で、お互い10数メートル離れて交差するアテナとフュール
しかし、アテナはこの先、自由落下するしかないのだが…フュールは飛行魔法で彼女を追撃し、強烈な火炎魔法をブチ当てれば勝敗はアッサリと決まるのだが…
「はぁぁぁ…精霊剣ロマーニャ。私の斬撃を固体化させる魔法力(チカラ)を貸して」
地上に居るエリエスは、斬撃を放った精霊剣ロマーニャに闘気を流し込むと…フュールの周辺を飛んでいく回避された衝撃波が固定化された
「なっ!?コレは何だ?」
「フハハ♪貴様を仕留める為の足場じゃよ」
フュールの周囲で動きを止め固体化された衝撃波は、岩やレンガのような足場となり、アテナは自由が効かない空中で移動方向を変える為に利用した
「私を舐めるなよっ!【炎獄弾(フレマルド)】!」
フュールはオリジナルの火炎魔法を撃ち出し、川辺の岩を利用してピョンピョンと飛び跳ねるかのように移動しているアテナを狙ったが…
「ぬるいわいっ!」
「バッフォォォン」
アテナは闘気を込めたパンチで飛んできた炎を軽く殴ると…渇望の魔女のフュールの火炎攻撃ですら簡単に打ち消してしまった
「くっ…何か特殊な技を使っているな」
「空中の鬼ごっこも悪くはないのぅ」
格闘家であるアテナは、いかに武闘女神と呼ばれていても空中は自在に動けないのでロマーニャの衝撃波を足場に使い、下から追加されるエリエスの斬撃と共にフュールと戦っていた
【ヒルドゥルブ砦 客間】
「わたしだって別に好き好んで見放している訳じゃないのに…」
ロミータの寝室から比較的近くの客間を与えられているカルーアは、ベッドの上に座りながら呟いていた
「本当なら…わたしが頼る相手も居ない1人者だったなら、ホルン叔母さんと一緒に戦いたいよ!…だって、エルドルド地域の古代遺跡で生まれたわたしは戦果を避けてこの地に着いて、初めて安堵と幸せを感じた場所なんだよ?身内の唯一の生き残りのホルン叔母さんの為に戦いたいんだよ。でも、今のわたしには家族が居て…帰りたい場所があるんだ」
謁見の間で何度も何度も兵士長たちから
「少しで良いからその強い魔法で、この国の人族を助けてくれないか?」
と死がソコまで迫っている人達からの頼みを断り続けるのは、固体化してまだ14年の少女であるカルーアには辛い事だったのだ
「…分かってる。お前が戦いに参加してしまったら、俺やアリスやサーシャたちまで魔族の敵になってしまうからな。だから、我慢してくれたんだよな」
家族の幸せの為に、集中砲火の如くお願いされた頼みを、断りきったカルーアの心境を察しているヒイロ
「人助けも程々にしておかないと、思わぬ火傷をする事になってしまうんだね…」
【七精守護霊(ハーロウィーン)】といった精霊魔法で、王都クラウンからSランク認定されているカルーアが力添えすれば、死なずに済む兵士たちも沢山居ることだろう
「そうだな…しかし、同じ惑星神エリスア様を崇める者に対してチカラを振るえば、お前たち…いや、俺たちの平和はイッキに失われてしまうからな。ヘタすればヘルメスの街まで侵攻対象になるだろうな」
「そう…だね。エリスア様には何度も何度も助けられたけど、流石に今回のことは難しいことだね。平和なヘルメスに帰りたいな…」
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続く
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