正直者が馬鹿を見ないことがあってもいいんじゃないですか? ダックスフンドを添えて

コンビニ

文字の大きさ
18 / 20

18

しおりを挟む
 日記に日々の不満や出来事を記載して四年、この村にババアのとこにきて、ルーカス達と共同の生活をしてからは三年が経過した。
 俺の生活は大きく変化はない。たまに村に行くことはあっても基本的に新しく建てた魔道具の研究をする倉庫に篭ってることが多い。
 当然、狩りにも適度に出てはいるが、今ではあんこを抜きにすれば狩りだけ腕前ならルーカスの方が上になっている。まぁ単純な強さという点については今でも負ける気はしないけど。

 遂にルーカスが成人をすることになり、念願のエレナとの結婚という話になり、ババアの母家とは別に新婚夫婦用に家を建築してもらい、さぁもう少ししたら本格的な進行生活だぞ! っという対明で問題が起こっている。

「もう嫌なの! 私、兄弟子と結婚する!」
「何を馬鹿なこと言ってるんだエレナ! 俺のどこが嫌なんだよ!」
「靴下は裏返すし、トイレは立ったままするし、食事の用意だってサボってばっかり! お風呂だって汚れを落としてから入っていってるのに入らないし!」
「わかったよ、ごめん直すから、俺、変わるかさ」
「その話、何度目だと思ってるの!」

 マリッジブルーってやつだろうか? これの使い方が正しいかもわからないけどさ。どうするのこれ。
 数日後には村で結婚するカップルは祭りと一緒に集められて、村全員から祝福されるみたいなイベントがある。
 俺が来てからの数年は新しい薬草関連の事業も始まったりでバタバタしており、今回は八組と最多の大きな祭りになるとは聞いている。俺も美味いものが食えるとワクワクしていたのだが、肝心の参加予定である弟子と妹弟子がこれである。

「師匠、これどうするんですか?」
「私に聞くんじゃないよ。それよりも、あんたも巻き込まれてるけど、どう収拾をつけるつもりだい」
「兄弟子は今話したことも守ってるし、料理も上手だし、優しいし、薬学も魔道具作成だって腕がいいし」

 おいおい、エレナよ、お前そんなに俺に惚れていたのか? そこまで熱烈に言われたらやぶさかではないぞ。

「顔は好みじゃないけど! 妥協するのではあれば最高の相手なんだから!」
「兄貴に失礼だろうが!」

 ルーカス! お前の言ってること、そこだけは正しいぞ!
 おい、ババア、爆笑するな!
 エレナが自室に鍵を閉めて最終的に篭ってしまった。どうしたものか。

「おい、ルーカス表に出ろ」
「兄貴?」

 上半身裸になり、ルーカスにも同じように服を脱ぐように指示する。
 ババアもお茶を飲みながら熊を椅子にして見物をしている。あんこ、これは遊んでるわけじゃないから、グルグル走り回らないでね。
 エレナも異変に気がついたのか、玄関の扉からこちらを覗き込んできる。

「ルーカス、お前が俺に負けたらエレナは俺がもらう!」
「兄貴? そんな、そんなのってないですよ!」
「どうした、勝てばいいだけだろ?」
「俺が勝てるわけないじゃないですか!」

 いいぞ、エレナが顔を真っ赤にしてこちらを見ている。シチュエーションとしては最高だ。

「お前の気持ちはそんなもんかあぁあああああああああ! だったらエレナをもらっちまうぞぉおおおお!」
「ぐっ、でもエレナは兄貴みたいな人に貰われた方が幸せなのかもしれないです」

 おいおい、引き下がるなよ! エレナも焦ってるぞ。

「ぐへへ、毎晩あの乳を好きにできる思えば、今から考えただけで、ぐへへへ、子供は何人産ませようかなぁ」

 ルーカスが顔を真っ青にしている。効いてる、効いてるぞ! そしてエレナからの真顔のゴミを見るような視線も俺の心に響いいているぞ!

「兄貴にエレナは渡せない!」
「ガハハ! かかってこい!」

 意外にルーカスのパンチは効くなぁ、だが俺も負けるつもりはない!
 行くぞ我が至高の筋肉達、ビースト、キング、アレク、サンダー全力解放!

「どうした! どうした! お前のエレナに対しての気持ちはこんなもんか!」
「俺はエレナを愛しているんだああああああ!」

 いつだって正義が勝つとは限らない。人生の厳しさを教えてやろう!
 俺のパンチを受けていた両腕が痛みからかもう上がらず、垂れ下がってしまっている。問答無用で、顔面にストレートを叩き込むこと、ルーカスは倒れ込んでしまった。

「ルーカス!」

 飛び出してきたエレナがルーカスを抱き起こす。
 美しい光景だ。

「ルーカス、大丈夫? こんなになるまで……」
「俺、負けちゃったよ。幸せになれよ、エレナ」
「ごめんなさい、あそこまで私のことを愛してくれていたなんて」
「俺こそごめん、エレナに迷惑ばかりかけて」

 おいおい、二人だけの世界にはいちゃったよ? 魔王はまだここでピンピンしてるぞ?

「ルーカスまだ立てるだろ? かかって来い」
「まだ、まだやれる!」
「ルーカスもういいの! 兄弟子ももうやめて! 私が嫁になれば気が済むんですよね」

 悪役を演じてはいるけどさ、元々はエレナが嫁になるって言い出したんだよ? 扱い酷すぎない?

「うおおおおおおおお」

 ルーカスの渾身のパンチが俺の胸板に響く。心にこそ響くが体はノーダメージだ。
 
「ぐああああああああああ」
「兄貴?」

 大袈裟に吹き飛んで、転げ回る。

「ルーカス、お前の勝ちだよ。エレナと幸せになりな」
「兄貴! ありがとうございます」
「ルーカス!」

 二人は熱いキスを交わしている。羨ましい。
 もう成人だし結婚すること決まってるんだったら多めに見てくれますよね?

「四〇点くらいかね」
「演技力はともかく、演出を含めての点数ですか?」
「こんな演出じゃあ、客も取れやしないよ」
「別に客を取ること目指してませんから」

 我ながら完璧な演出だった。
 エレナには演出であった話をしたが暫くは会うたびに胸を隠されるという仕打ちを受けた。たまにしか見てないよ?
 またルーカスは今回の一件でエレナに尻に敷かれることになるのは別の話である。
 結婚憧れるなぁ。俺も来年で二十一になるんだけど、先は長そうだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...