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第33話 お前には敵わない
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「チッ、けっこう手間取っちまったな……」
宿屋へ続く夜の街を歩きながら、ギルランスは舌打ち混じりに呟いた。
ギルドでの報告に手間取り、予定よりだいぶ遅くなってしまったからだ。
(カズヤのやつ、腹空かせてっかな?)
一人宿屋で待たせている和哉のことを考えながら、ギルランスは足早に通りを進んでいた。
今日は初めて和哉と二人でパーティーを組んでの仕事だった。
Eランクの簡単な依頼だったので、報酬も少なく、正直言ってあまり実入りの良い仕事ではなかったが、それでも和哉のたっての希望だったし、何より二人で仕事をするのは楽しかった。
しかし、簡単な仕事だと油断してしまった事で、和哉を危険な目に遭わせてしまった。
この世界に来たばかりの、土地勘もない和哉を一人にさせるなど、してはならない事だったはずだ。
だが、それを和哉に謝ると逆に自分の方こそ悪いと言い返されてしまった。
(あいつはそういう奴だよな……)
それを分かっているからこそ、ギルランスはまた自分のせいで和哉を危険に晒してしまった事に腹を立てていた。
そんな気持ちを抱えたまま部屋のドアを開けたギルランスだったが……そこには予想外の光景があった。
部屋で待っているはずの和哉の姿が見当たらなかったのだ。
何事かと慌てて室内を見回すと、テーブルの上に一枚の紙が置かれているのに気付いた。
そこにはこう書かれていた――。
『ちょっと屋上に行って来ます』
それを見た途端、一気に脱力感に襲われる。
(ったく、紛らわしい事しやがって!)
てっきり何かあったのかと心配してしまった自分が馬鹿らしくなってしまったギルランスは、苛立ち紛れに紙をクシャリと握り潰すとそのままゴミ箱へ投げ捨てた。
(まあ、いいか……どうせすぐに戻って来るだろう)
ギルランスはソファーにドカリと腰を下ろし、暫く和哉を待っていたが――待てど暮らせど一向に戻ってこない。
(まさか、なんか問題でも……?)
さすがに心配になったギルランスは立ち上がると部屋を飛び出した。
階段を駆け上がり勢い良く屋上のドアを開けると、ひんやりとした夜風がギルランスの頬を撫でていく。
その冷たさとは反対に、目の前の景色はとても美しかった。
満天の星空に、眼下に広がる街の灯りがとても幻想的で美しい夜景を作り出している。
(これを見た時のあいつの顔が浮かぶな……)
『うわ~』とか言いながら目を輝かせている和哉の顔を想像して、思わず口元が緩む。
そんな頬を引き締めながら辺りを見回していたギルランスは、暗がりに人影を見つけた。
近付いてみると、それはこちらに背を向けて立つ和哉の後ろ姿だった。
「カズ――」
声をかけようとしたギルランスだったが、和哉の雰囲気を感じ取って思わず言葉を飲み込む。
(なんだ……?)
怪訝に思いながらも黙って様子を見ていると、次第に和哉の周りに魔力が渦を巻き、満ちて行くのを感じた。
――キュイィン
辺りの空気が震え、和哉の身体から溢れ出す膨大な魔力を肌で感じ取る事が出来た。
(これは……)
ギルランスは驚きのあまり声を失う。
和哉を包む魔力の渦はどんどん大きくなり、バチバチッと火花のような光と共にスパーク音を立て始める。
やがて雷光の様なものが走り始め、同時に激しい風が吹き荒れ始めた。
雷光と風が一層大きくなり激しくなったその時だった――一瞬、カッ!と眩い閃光に包まれ、辺りを白く染め上げた。
その眩しさにギルランスは思わず目を細めるが、次の瞬間にはフッと全ての魔力は掻き消え、立っていた和哉の膝がガクンと崩れ落ちた。
咄嗟に駆け寄って倒れる寸前の和哉の身体を抱き留める。
腕の中でぐったりとしている和哉を見てギルランスは思わずゾッとする――自分の血の気が引いていくのが分かった。
「おい!カズヤ!しっかりしろ!!」
その呼びかけに気が付いたのか、フッと目を開けた和哉はギルランスの顔を見てパッと満面の笑みを浮かべた。
「あ、ギル!おかえり!待ってたよ!」
「……は?」
予想外の言葉に思わず呆気に取られるギルランスだったが、和哉は気にしていないようだった。
「また途中で失敗しちゃったけど、とりあえずここまで魔力を練れるようになったよ!見てた?」
腕の中で無邪気に笑いかける和哉にギルランスは面食らった。
(いや、確かに見ていたけど……)
「おま……まさかずっとここで訓練してたのかよ?」
「うん、だって他にする事なかったし……それに僕、早く魔法使えるようになってギルの役に立ちたいんだ!」
屈託のない笑顔でそう言われると、何も言えなくなってしまう。
「ま、まあ……お前が無事ならそれで良いけどよ……」
そう言って和哉を抱き起して立たせてから、ギルランスは改めて声をかける。
「しかし、お前すげぇな、短時間であそこまで……しかも、想像以上の魔力量だったぞ」
ギルランスが素直に感心していると、和哉は少し照れ臭そうに笑った。
「えへへ……ありがとう!でもまだ全然だよ……もっと頑張らなきゃな」
(いや、あれ以上頑張るってのはちょっと危ねぇんじゃないか……?)
ギルランスは苦笑いを浮かべながら心の中で呟く。
正直、和哉の体への負担を考えるとこれ以上無理して欲しくはないのだが、本人は至ってやる気のようだ。
(まあ、こいつらしいっちゃらしいか……)
「頑張るのはいいが、あんま無茶すんなよ?」
心配しながらも和哉の頭を軽く撫でてやると、和哉は嬉しそうに笑った。
「うん、大丈夫!心配してくれてありがと!」
その笑顔につられるようにギルランスも笑みを返すと、和哉の背中をポンと軽く叩き促す。
「さ、飯食いにいくぞ」
「そうだね、僕もお腹空いた~!」
腹を抑えながら大袈裟に言う和哉にギルランスはフッと笑みをこぼすと、二人で一階の食堂へと向かった。
****
****
「いっただきま~す」
元気に食前の挨拶をし、相変わらず美味しそうに料理を頬張る和哉を横目で見ながら、ギルランスは自分の食事に手をつけた。
「ん~、やっぱりうまうま~!」
和哉はそう言いながらニコニコと笑顔を向ける。
(ったく、ホント、美味そうに食うよな……)
見ているこっちまで幸せな気分になるくらい嬉しそうに食べるものだからつい口元が緩んでしまう。
そんな和哉の姿を眺めながらギルランスは先程の事を考えていた。
(あんなになるまで訓練してたのか……)
確かに和哉は時間があればギルランスに手合わせを申し込んだり魔法の練習をしていたりと、熱心に修行していた。
だが、まさかこんなになるまで無理をしているとはギルランスも思っていなかった。
(それにしても、さっきのあの魔力量……)
あの時の事を思い出すだけでギルランスの背筋にゾクリとするものが走る――あんな凄まじい魔力を見たのは久しぶりだったのだ。
ギルランスは自分の見立て以上の才能を秘めた和哉に驚きつつも、やはり少し不安を覚えていた。
(あのまま続けたらどうなっていたのか……)
しかし、和哉に魔法の練習を止めるようには言えなかった。
(こいつなりに必死なんだな……)
和哉は今までの生活とは全く違う環境で必死に努力しているのだ――そんな姿を見て、ギルランスは和哉を応援してやりたいという気持ちを持っていた。
(俺はコイツに何をしてやれるんだろう……?)
そんな事を考えつつ食事を終え、二人で部屋に戻る。
****
****
「んじゃあ、俺も風呂入って来るわ」
そう言ってバスルームへ向かうギルランスの後ろから、先に風呂から上がった和哉の「いってらっしゃーい」という声が返ってくる。
シャワーのコックを回し頭からお湯を浴びながら、ギルランスはふと今日の出来事を思い返していた。
(さすがにあいつがはぐれて迷子になった時は焦ったな……)
その後やっと探し出して、和哉が男たちに囲まれている姿を見た時はかなり頭に血が上ったものだ。
あの時、もう少し駆けつけるのが遅かったらどうなっていたか――今思い出すだけで腸が煮えくり返る程の怒りを覚える。
(間に合って良かった……だが……)
結局、怒りに任せ男たちを皆殺しにしたのだが、ギルランスはあの時の自分を見る和哉の怯えた表情が忘れられなかった。
まるで恐ろしい悪魔でも見るような目だった――。
(”悪魔”、か……ま、そうだろうな……)
ギルランスは自分の感情のままに行動してしまった事を後悔した。
実際、あの時の姿はまさに化け物だっただろうと思うからだ。
(本当はすぐに打ち明けるべきなんだろうが……)
ギルランスには和哉を怖がらせてしまうと思い、伝えていない事があった。
だが、和哉と出会い、一緒に過ごすうちにアレの影響は次第に薄れていったようにも感じていた。
実際、今ではほとんど意識せずにいられるようになっていたのだ。
ふと、師匠に言われた言葉を思い出す。
『いいか、ギルランス、ソイツに飲み込まれるなよ』
(ああ……分かってるって)
ギルランスは内心で亡き師匠へ返事をしながら、ひとり、苦笑いを浮かべた。
その時だった。
――コンコン――突然ドアをノックする音がしてギルランスはハッ我に返った。
「ギルー、お風呂長いけど、大丈夫ー?」
ドアの向こうから和哉の声がする。
どうやら心配になって様子を見に来たらしい。
「ああ、大丈夫だ」
ギルランスは気を取り直してドア越しに答えると、手早くシャワーを済ませた。
浴室から出たギルランスが部屋に戻ると、和哉はソファーに座ったままウトウトと眠りに落ちていた。
待っている間に勉強でもしていたのだろうか、ルーラから貰った魔法書が開かれたまま膝から落ちそうになっている。
(無理しやがって……)
和哉にとって今日は初のクエストだった上に、あの後は限界まで魔力操作の訓練をしていたのだ。
それでも飽き足らずまだ勉強しようとしていた和哉の姿に、ギルランスは苦笑いを浮かべながら近づくと、そっと和哉の手から本を取り上げる。
よく見れば髪もまだ濡れていた。
「ったく……風邪引くじゃねぇか」
ギルランスは呆れたように呟きながらも、タオルで和哉の髪を拭いてやるために隣に座り手を伸ばしかけるが……。
和哉の濡れた髪が照明に照らされキラキラと光る様に目を奪われ、思わず見惚れてしまった。
この世界では異質な黒髪を和哉は気にしているようだったが、ギルランスには不思議と魅力的に見えていた。
(やっぱ、綺麗だよな……)
目を閉じて気持ち良さそうに眠る和哉の寝顔を見つめながら、ギルランスの手は無意識に動いていた。
和哉の頬にかかった黒髪を掬い耳にかける――そしてそのまま耳の形をなぞるように指先を滑らせていく……。
すると、それがくすぐったかったのか、「ん……」と小さく声を上げた和哉は身じろぎしながらゆっくりと目を開けた。
(――!!)
ハッと我に返ったギルランスは慌てて手を引っ込め、思わず咄嗟に持っていたタオルを和哉の顔面に投げつけてしまった。
「ぶっ!……な、何……?」
いきなり顔に叩きつけられたタオルに驚いて和哉が目を白黒させている。
「な、なんでもねぇ!それよりお前、ちゃんと髪拭けよ!風邪ひくだろうが!」
動揺のあまり少々乱暴な言動で取り繕うギルランスに対して、和哉は不機嫌そうにムゥと唇を尖らせる。
そんな和哉にフォローを入れることもままならないほどに、ギルランスは自分で自分の無意識の行動が理解出来ずに混乱していた。
「もぉ~、乱暴なんだから……」
ブツブツと愚痴をこぼしながらも素直に頭を拭いている和哉の隣で、ギルランスは混乱した頭のまま、自分の手をジッと見つめていた。
(アレは、なんだったんだ?……俺はいったい、なにを……?)
和哉の頬にかかった黒髪を掬って耳にかけただけなら、まあ、分かる気もする――だが、その後の行動はどう考えても理解不能だったのだ。
まるで磁石か何かに引き寄せられるかのように、自分の意思とは関係なくギルランスの手は和哉の耳へ指を這わせていた。
和哉の閉じられた瞼の長いまつ毛やしっとりと濡れた黒髪、そしてその黒とは対照的な白い肌がいやに眩しかったのだけは覚えている。
そして、あの瞬間感じた背筋をなにかが這い上がるようなゾワゾワした感覚――それはギルランスが今まで感じた事のない感情だった。
(なんだ?あれは……?)
ギルランスは戸惑いながらも心の中で問いかけるが、答えは見つからなかった。
その時だった――。
「ギル?」
ハッとして顔を上げると、髪を拭きながら和哉が心配そうに顔を覗き込んでいた。
「どうかした?なんか怖い顔してるよ?」
「あ、いや……なんでもねぇよ」
ギルランスは咄嗟に誤魔化しながら、指先に残る感触ごとその手を握り込んだ。
そして、とりあえず落ち着こうと、テーブルの上に置かれている酒瓶を手に取り、グラスに注いで一気に飲み干す。
アルコール度数の高い酒をストレートで飲んだため喉が焼けるように熱くなるが、おかげで少し冷静になれた気がした。
そのまま暫く無言で酒を飲んでいたギルランスだったが、少し気になっていた事があったので和哉に尋ねてみる。
「なあ、カズヤ……お前、もし可能だとしたら、元の世界に帰りたいって思うか……?」
その問いに和哉は髪を拭いていた手を止め、少し考えてから答えた。
「う~ん……どうだろう……正直、元の世界に全く未練がないって言えば嘘になるかな……友達や家族に会いたいとも思うし。でもね、今はこの世界に来て良かったと思ってるんだ」
「何でだよ?」
意外な返答に驚くギルランスに、和哉は明るい口調で続ける。
「だって、この世界に来なければ僕はギルに出会えなかったからね」
「――!」
黒曜石のような瞳で真っ直ぐに見つめられ、ギルランスは思わずドキリと胸が鳴ったような気がした。
同時に、今日、返り血で真っ赤に染まった自分を見つめたその同じ瞳に恐怖の色が浮かんでいた瞬間を思い出し、胸に鋭い痛みが走るのを感じた。
「……お前は、俺が怖くねぇのか?」
思わずそう尋ねていた。
すると、和哉はキョトンとした顔を見せた後、おかしそうにクスクス笑い出した。
「え、なんで?怖いなんて全然思わないよ?」
そう言って微笑みながら和哉は言葉を続ける。
「そりゃ最初出会ったばっかりの頃はちょっと怖かったかもだけど(笑)……でも、ギルはいつでも優しいから――優しいって知ってるから、どんなギルでも僕は怖くないよ!」
「――っ」
ニッコリと微笑みながらあっけらかんと答える和哉の言葉に、ギルランスは思わず声を詰まらせる。
誰かから『優しい』などと評されるのは初めての事だった。
(……優しいのはお前だろ)
心の中で呟き返しながらも、ギルランスは思う。
(こいつはいつもそうだ……)
和哉はまるで分かっているかのように、いつだって欲しい言葉をくれる――ギルランスの心の闇をその一言でいとも簡単に払拭してしまうのだ。
(まったく、こいつには敵わねぇな……)
そんな事を考えているギルランスを知ってか知らずか、和哉はさらに続ける。
「だから、この世界に来て本当に良かったって思ってるよ!神様に感謝したいくらいだよ、ギルに出会わせてくれてありがとうってね!」
満面の笑みでそう言い切る和哉につられるようにギルランスの頬も自然と緩む。
「まあ、それは俺も同じかもな……お前と会えてなきゃ、多分俺はあのまま腐り続けてただろうしな」
言いながらギルランスがククッと笑いを零すと、和哉は少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。
「あ、やっと笑った!ギルは笑ってる方が断然良いよ!」
和哉が無邪気に笑う。
(ああ、そうか……俺はこいつに出会ってから笑うようになったんだな……)
「――るせぇ」
何だか気恥ずかしくてつい素っ気なく返してしまう。
ああ、本当に敵わない――心の中でまた独り言ちるギルランスだった。
それから少し雑談した後、寝ようという事になり、昨日のようにベッドを和哉に使わせギルランスはソファで寝ようとしたのだが、今夜は和哉がソファで寝ると言って聞かなかった。
「ダメだ!ベッドでゆっくり休め!」
半ば強引に和哉をベッドに押し込み、明かりを消して自分もソファに横になった。
初めはブツブツと文句を言いながらもベッドに潜り込んでいた和哉だったが、すぐにスヤスヤと寝息をたて始めたのを聞いて、ギルランスは安堵の溜め息をついた。
(よっぽど疲れてたんだな……)
「ふぁ~あ……さて、俺も寝るか……」
和哉の寝息を聞きながら、ギルランスもいつの間にか眠りに落ちていた。
宿屋へ続く夜の街を歩きながら、ギルランスは舌打ち混じりに呟いた。
ギルドでの報告に手間取り、予定よりだいぶ遅くなってしまったからだ。
(カズヤのやつ、腹空かせてっかな?)
一人宿屋で待たせている和哉のことを考えながら、ギルランスは足早に通りを進んでいた。
今日は初めて和哉と二人でパーティーを組んでの仕事だった。
Eランクの簡単な依頼だったので、報酬も少なく、正直言ってあまり実入りの良い仕事ではなかったが、それでも和哉のたっての希望だったし、何より二人で仕事をするのは楽しかった。
しかし、簡単な仕事だと油断してしまった事で、和哉を危険な目に遭わせてしまった。
この世界に来たばかりの、土地勘もない和哉を一人にさせるなど、してはならない事だったはずだ。
だが、それを和哉に謝ると逆に自分の方こそ悪いと言い返されてしまった。
(あいつはそういう奴だよな……)
それを分かっているからこそ、ギルランスはまた自分のせいで和哉を危険に晒してしまった事に腹を立てていた。
そんな気持ちを抱えたまま部屋のドアを開けたギルランスだったが……そこには予想外の光景があった。
部屋で待っているはずの和哉の姿が見当たらなかったのだ。
何事かと慌てて室内を見回すと、テーブルの上に一枚の紙が置かれているのに気付いた。
そこにはこう書かれていた――。
『ちょっと屋上に行って来ます』
それを見た途端、一気に脱力感に襲われる。
(ったく、紛らわしい事しやがって!)
てっきり何かあったのかと心配してしまった自分が馬鹿らしくなってしまったギルランスは、苛立ち紛れに紙をクシャリと握り潰すとそのままゴミ箱へ投げ捨てた。
(まあ、いいか……どうせすぐに戻って来るだろう)
ギルランスはソファーにドカリと腰を下ろし、暫く和哉を待っていたが――待てど暮らせど一向に戻ってこない。
(まさか、なんか問題でも……?)
さすがに心配になったギルランスは立ち上がると部屋を飛び出した。
階段を駆け上がり勢い良く屋上のドアを開けると、ひんやりとした夜風がギルランスの頬を撫でていく。
その冷たさとは反対に、目の前の景色はとても美しかった。
満天の星空に、眼下に広がる街の灯りがとても幻想的で美しい夜景を作り出している。
(これを見た時のあいつの顔が浮かぶな……)
『うわ~』とか言いながら目を輝かせている和哉の顔を想像して、思わず口元が緩む。
そんな頬を引き締めながら辺りを見回していたギルランスは、暗がりに人影を見つけた。
近付いてみると、それはこちらに背を向けて立つ和哉の後ろ姿だった。
「カズ――」
声をかけようとしたギルランスだったが、和哉の雰囲気を感じ取って思わず言葉を飲み込む。
(なんだ……?)
怪訝に思いながらも黙って様子を見ていると、次第に和哉の周りに魔力が渦を巻き、満ちて行くのを感じた。
――キュイィン
辺りの空気が震え、和哉の身体から溢れ出す膨大な魔力を肌で感じ取る事が出来た。
(これは……)
ギルランスは驚きのあまり声を失う。
和哉を包む魔力の渦はどんどん大きくなり、バチバチッと火花のような光と共にスパーク音を立て始める。
やがて雷光の様なものが走り始め、同時に激しい風が吹き荒れ始めた。
雷光と風が一層大きくなり激しくなったその時だった――一瞬、カッ!と眩い閃光に包まれ、辺りを白く染め上げた。
その眩しさにギルランスは思わず目を細めるが、次の瞬間にはフッと全ての魔力は掻き消え、立っていた和哉の膝がガクンと崩れ落ちた。
咄嗟に駆け寄って倒れる寸前の和哉の身体を抱き留める。
腕の中でぐったりとしている和哉を見てギルランスは思わずゾッとする――自分の血の気が引いていくのが分かった。
「おい!カズヤ!しっかりしろ!!」
その呼びかけに気が付いたのか、フッと目を開けた和哉はギルランスの顔を見てパッと満面の笑みを浮かべた。
「あ、ギル!おかえり!待ってたよ!」
「……は?」
予想外の言葉に思わず呆気に取られるギルランスだったが、和哉は気にしていないようだった。
「また途中で失敗しちゃったけど、とりあえずここまで魔力を練れるようになったよ!見てた?」
腕の中で無邪気に笑いかける和哉にギルランスは面食らった。
(いや、確かに見ていたけど……)
「おま……まさかずっとここで訓練してたのかよ?」
「うん、だって他にする事なかったし……それに僕、早く魔法使えるようになってギルの役に立ちたいんだ!」
屈託のない笑顔でそう言われると、何も言えなくなってしまう。
「ま、まあ……お前が無事ならそれで良いけどよ……」
そう言って和哉を抱き起して立たせてから、ギルランスは改めて声をかける。
「しかし、お前すげぇな、短時間であそこまで……しかも、想像以上の魔力量だったぞ」
ギルランスが素直に感心していると、和哉は少し照れ臭そうに笑った。
「えへへ……ありがとう!でもまだ全然だよ……もっと頑張らなきゃな」
(いや、あれ以上頑張るってのはちょっと危ねぇんじゃないか……?)
ギルランスは苦笑いを浮かべながら心の中で呟く。
正直、和哉の体への負担を考えるとこれ以上無理して欲しくはないのだが、本人は至ってやる気のようだ。
(まあ、こいつらしいっちゃらしいか……)
「頑張るのはいいが、あんま無茶すんなよ?」
心配しながらも和哉の頭を軽く撫でてやると、和哉は嬉しそうに笑った。
「うん、大丈夫!心配してくれてありがと!」
その笑顔につられるようにギルランスも笑みを返すと、和哉の背中をポンと軽く叩き促す。
「さ、飯食いにいくぞ」
「そうだね、僕もお腹空いた~!」
腹を抑えながら大袈裟に言う和哉にギルランスはフッと笑みをこぼすと、二人で一階の食堂へと向かった。
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「いっただきま~す」
元気に食前の挨拶をし、相変わらず美味しそうに料理を頬張る和哉を横目で見ながら、ギルランスは自分の食事に手をつけた。
「ん~、やっぱりうまうま~!」
和哉はそう言いながらニコニコと笑顔を向ける。
(ったく、ホント、美味そうに食うよな……)
見ているこっちまで幸せな気分になるくらい嬉しそうに食べるものだからつい口元が緩んでしまう。
そんな和哉の姿を眺めながらギルランスは先程の事を考えていた。
(あんなになるまで訓練してたのか……)
確かに和哉は時間があればギルランスに手合わせを申し込んだり魔法の練習をしていたりと、熱心に修行していた。
だが、まさかこんなになるまで無理をしているとはギルランスも思っていなかった。
(それにしても、さっきのあの魔力量……)
あの時の事を思い出すだけでギルランスの背筋にゾクリとするものが走る――あんな凄まじい魔力を見たのは久しぶりだったのだ。
ギルランスは自分の見立て以上の才能を秘めた和哉に驚きつつも、やはり少し不安を覚えていた。
(あのまま続けたらどうなっていたのか……)
しかし、和哉に魔法の練習を止めるようには言えなかった。
(こいつなりに必死なんだな……)
和哉は今までの生活とは全く違う環境で必死に努力しているのだ――そんな姿を見て、ギルランスは和哉を応援してやりたいという気持ちを持っていた。
(俺はコイツに何をしてやれるんだろう……?)
そんな事を考えつつ食事を終え、二人で部屋に戻る。
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「んじゃあ、俺も風呂入って来るわ」
そう言ってバスルームへ向かうギルランスの後ろから、先に風呂から上がった和哉の「いってらっしゃーい」という声が返ってくる。
シャワーのコックを回し頭からお湯を浴びながら、ギルランスはふと今日の出来事を思い返していた。
(さすがにあいつがはぐれて迷子になった時は焦ったな……)
その後やっと探し出して、和哉が男たちに囲まれている姿を見た時はかなり頭に血が上ったものだ。
あの時、もう少し駆けつけるのが遅かったらどうなっていたか――今思い出すだけで腸が煮えくり返る程の怒りを覚える。
(間に合って良かった……だが……)
結局、怒りに任せ男たちを皆殺しにしたのだが、ギルランスはあの時の自分を見る和哉の怯えた表情が忘れられなかった。
まるで恐ろしい悪魔でも見るような目だった――。
(”悪魔”、か……ま、そうだろうな……)
ギルランスは自分の感情のままに行動してしまった事を後悔した。
実際、あの時の姿はまさに化け物だっただろうと思うからだ。
(本当はすぐに打ち明けるべきなんだろうが……)
ギルランスには和哉を怖がらせてしまうと思い、伝えていない事があった。
だが、和哉と出会い、一緒に過ごすうちにアレの影響は次第に薄れていったようにも感じていた。
実際、今ではほとんど意識せずにいられるようになっていたのだ。
ふと、師匠に言われた言葉を思い出す。
『いいか、ギルランス、ソイツに飲み込まれるなよ』
(ああ……分かってるって)
ギルランスは内心で亡き師匠へ返事をしながら、ひとり、苦笑いを浮かべた。
その時だった。
――コンコン――突然ドアをノックする音がしてギルランスはハッ我に返った。
「ギルー、お風呂長いけど、大丈夫ー?」
ドアの向こうから和哉の声がする。
どうやら心配になって様子を見に来たらしい。
「ああ、大丈夫だ」
ギルランスは気を取り直してドア越しに答えると、手早くシャワーを済ませた。
浴室から出たギルランスが部屋に戻ると、和哉はソファーに座ったままウトウトと眠りに落ちていた。
待っている間に勉強でもしていたのだろうか、ルーラから貰った魔法書が開かれたまま膝から落ちそうになっている。
(無理しやがって……)
和哉にとって今日は初のクエストだった上に、あの後は限界まで魔力操作の訓練をしていたのだ。
それでも飽き足らずまだ勉強しようとしていた和哉の姿に、ギルランスは苦笑いを浮かべながら近づくと、そっと和哉の手から本を取り上げる。
よく見れば髪もまだ濡れていた。
「ったく……風邪引くじゃねぇか」
ギルランスは呆れたように呟きながらも、タオルで和哉の髪を拭いてやるために隣に座り手を伸ばしかけるが……。
和哉の濡れた髪が照明に照らされキラキラと光る様に目を奪われ、思わず見惚れてしまった。
この世界では異質な黒髪を和哉は気にしているようだったが、ギルランスには不思議と魅力的に見えていた。
(やっぱ、綺麗だよな……)
目を閉じて気持ち良さそうに眠る和哉の寝顔を見つめながら、ギルランスの手は無意識に動いていた。
和哉の頬にかかった黒髪を掬い耳にかける――そしてそのまま耳の形をなぞるように指先を滑らせていく……。
すると、それがくすぐったかったのか、「ん……」と小さく声を上げた和哉は身じろぎしながらゆっくりと目を開けた。
(――!!)
ハッと我に返ったギルランスは慌てて手を引っ込め、思わず咄嗟に持っていたタオルを和哉の顔面に投げつけてしまった。
「ぶっ!……な、何……?」
いきなり顔に叩きつけられたタオルに驚いて和哉が目を白黒させている。
「な、なんでもねぇ!それよりお前、ちゃんと髪拭けよ!風邪ひくだろうが!」
動揺のあまり少々乱暴な言動で取り繕うギルランスに対して、和哉は不機嫌そうにムゥと唇を尖らせる。
そんな和哉にフォローを入れることもままならないほどに、ギルランスは自分で自分の無意識の行動が理解出来ずに混乱していた。
「もぉ~、乱暴なんだから……」
ブツブツと愚痴をこぼしながらも素直に頭を拭いている和哉の隣で、ギルランスは混乱した頭のまま、自分の手をジッと見つめていた。
(アレは、なんだったんだ?……俺はいったい、なにを……?)
和哉の頬にかかった黒髪を掬って耳にかけただけなら、まあ、分かる気もする――だが、その後の行動はどう考えても理解不能だったのだ。
まるで磁石か何かに引き寄せられるかのように、自分の意思とは関係なくギルランスの手は和哉の耳へ指を這わせていた。
和哉の閉じられた瞼の長いまつ毛やしっとりと濡れた黒髪、そしてその黒とは対照的な白い肌がいやに眩しかったのだけは覚えている。
そして、あの瞬間感じた背筋をなにかが這い上がるようなゾワゾワした感覚――それはギルランスが今まで感じた事のない感情だった。
(なんだ?あれは……?)
ギルランスは戸惑いながらも心の中で問いかけるが、答えは見つからなかった。
その時だった――。
「ギル?」
ハッとして顔を上げると、髪を拭きながら和哉が心配そうに顔を覗き込んでいた。
「どうかした?なんか怖い顔してるよ?」
「あ、いや……なんでもねぇよ」
ギルランスは咄嗟に誤魔化しながら、指先に残る感触ごとその手を握り込んだ。
そして、とりあえず落ち着こうと、テーブルの上に置かれている酒瓶を手に取り、グラスに注いで一気に飲み干す。
アルコール度数の高い酒をストレートで飲んだため喉が焼けるように熱くなるが、おかげで少し冷静になれた気がした。
そのまま暫く無言で酒を飲んでいたギルランスだったが、少し気になっていた事があったので和哉に尋ねてみる。
「なあ、カズヤ……お前、もし可能だとしたら、元の世界に帰りたいって思うか……?」
その問いに和哉は髪を拭いていた手を止め、少し考えてから答えた。
「う~ん……どうだろう……正直、元の世界に全く未練がないって言えば嘘になるかな……友達や家族に会いたいとも思うし。でもね、今はこの世界に来て良かったと思ってるんだ」
「何でだよ?」
意外な返答に驚くギルランスに、和哉は明るい口調で続ける。
「だって、この世界に来なければ僕はギルに出会えなかったからね」
「――!」
黒曜石のような瞳で真っ直ぐに見つめられ、ギルランスは思わずドキリと胸が鳴ったような気がした。
同時に、今日、返り血で真っ赤に染まった自分を見つめたその同じ瞳に恐怖の色が浮かんでいた瞬間を思い出し、胸に鋭い痛みが走るのを感じた。
「……お前は、俺が怖くねぇのか?」
思わずそう尋ねていた。
すると、和哉はキョトンとした顔を見せた後、おかしそうにクスクス笑い出した。
「え、なんで?怖いなんて全然思わないよ?」
そう言って微笑みながら和哉は言葉を続ける。
「そりゃ最初出会ったばっかりの頃はちょっと怖かったかもだけど(笑)……でも、ギルはいつでも優しいから――優しいって知ってるから、どんなギルでも僕は怖くないよ!」
「――っ」
ニッコリと微笑みながらあっけらかんと答える和哉の言葉に、ギルランスは思わず声を詰まらせる。
誰かから『優しい』などと評されるのは初めての事だった。
(……優しいのはお前だろ)
心の中で呟き返しながらも、ギルランスは思う。
(こいつはいつもそうだ……)
和哉はまるで分かっているかのように、いつだって欲しい言葉をくれる――ギルランスの心の闇をその一言でいとも簡単に払拭してしまうのだ。
(まったく、こいつには敵わねぇな……)
そんな事を考えているギルランスを知ってか知らずか、和哉はさらに続ける。
「だから、この世界に来て本当に良かったって思ってるよ!神様に感謝したいくらいだよ、ギルに出会わせてくれてありがとうってね!」
満面の笑みでそう言い切る和哉につられるようにギルランスの頬も自然と緩む。
「まあ、それは俺も同じかもな……お前と会えてなきゃ、多分俺はあのまま腐り続けてただろうしな」
言いながらギルランスがククッと笑いを零すと、和哉は少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。
「あ、やっと笑った!ギルは笑ってる方が断然良いよ!」
和哉が無邪気に笑う。
(ああ、そうか……俺はこいつに出会ってから笑うようになったんだな……)
「――るせぇ」
何だか気恥ずかしくてつい素っ気なく返してしまう。
ああ、本当に敵わない――心の中でまた独り言ちるギルランスだった。
それから少し雑談した後、寝ようという事になり、昨日のようにベッドを和哉に使わせギルランスはソファで寝ようとしたのだが、今夜は和哉がソファで寝ると言って聞かなかった。
「ダメだ!ベッドでゆっくり休め!」
半ば強引に和哉をベッドに押し込み、明かりを消して自分もソファに横になった。
初めはブツブツと文句を言いながらもベッドに潜り込んでいた和哉だったが、すぐにスヤスヤと寝息をたて始めたのを聞いて、ギルランスは安堵の溜め息をついた。
(よっぽど疲れてたんだな……)
「ふぁ~あ……さて、俺も寝るか……」
和哉の寝息を聞きながら、ギルランスもいつの間にか眠りに落ちていた。
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