8 / 38
第21話 王都『アドラ』
しおりを挟む
「あれが王都『アドラ』だ」
馬車を走らせているとギルランスが前方を指差した。
そちらを見ると高い城壁に囲まれた大きな街が見えてきていた。
「うわぁ!大きいね!」
和哉は目の前の光景に感動して声を上げた。
徐々に近づいて来る城壁は見上げる程高く、まるで万里の長城のように横にどこまでも続いているようだった。
城門では厳重な警備がされており、出入りする人達も皆身分証のような物を呈示しているのが見える。
多くの人が門の前に並び、検疫を受けているようだ。
「次のかた、どうぞ!」
やがて自分達の順番になり、和哉とギルランスは馬車を降りて三人の門番の前に立った。
「こんにちは、今日はどのようなご用件ですか?」
人の良さそうな笑顔を浮かべる若い門番が質問をするが、すぐにその隣に立つ厳つい顔をした別の門番がギルランスの顔を見た途端ハッと息を呑み、急に態度を急変させた。
「ギ、ギルランス……!?」
目を見開き驚いている様子だ。
その名を聞いた人の良さそうなほうの門番も、「えっ!?」と笑顔のまま顔を引き攣らせていた。
「……ギルランスだって?あの、双剣使いの……?」
そして三人目の門番もまた、信じられないとでもいうような面持ちで食い入るようにギルランスを見つめていた。
当のギルランスはそんな視線など気にする様子もなく平然とした顔で、懐から身分証を出して呈示する。
「ああ、そうだ、ギルランス・レイフォードだ。後ろのコイツはカズヤ、俺の連れだ。コイツの身分証はねぇが、通っていいか?」
その言葉に我に返った様子の門番たちは慌てて身分証の確認をし、書類に印を捺すと顔を上げた。
「失礼しました!どうぞお通り下さい!」
そう言って書類をギルランスに手渡す門番の顔は”尊敬”や”憧れ”といったものより、むしろ”恐れ”に近いもののように和哉には見えた。
そんな門兵たちの様子にギルランスはどこか複雑な苦笑いを見せた後、あっけにとられたまま突っ立っている和哉に向き直る。
「行くぞ」
「あ、うん」
和哉はギルランスに促されるまま、積荷のチェックを終えた馬車に再び乗り込んだ。
そして、緊張した様子で立つ門兵たちの間を通り過ぎ、二人は王都の門をくぐり抜け進んで行った。
ギルランスと門番の一連のやりとりに、和哉としては少々驚くものがあった。
彼らがなぜあんな態度だったのかは分からなかったが、どちらにせよこの街ではギルランスはかなり有名なようである事だけは確かなようだ。
(ギルって、思ってたよりも凄い人なんだ……きっと、実力があるから一目置かれてるのかも……?)
和哉は馬車に揺られながら、隣に座るギルランスに目を向けしみじみ思う。
(この人と一緒に旅をするなんて、今更だけど凄い事だよね)
しかも、そんな彼が自分と組んでくれている事が未だに信じられなくもあった。
(今の僕なんかじゃ釣り合わないだろうけど……でも、いつかは僕も強くなってギルと一緒に肩を並べられるくらいになりたいな)
そう思うと俄然やる気が湧いてくるというものだ。
(よし!!頑張るぞ!!)
和哉がフンッ!と鼻息荒く気合いを入れていると、横からククッと笑いを堪える声が聞こえてきた。
どうやらギルランスに見られていたらしい。
「な、なに?」
気恥ずかしさを誤魔化すように尋ねる和哉の頭をギルランスは目を細めながらポンと軽く叩いた。
「いや、お前見てるとホント飽きねぇなと思ってな」
そう言うとギルランスはクツクツと笑いながら再び前に向き直り手綱を握る。
(うぅ……また笑われた……)
どうにもギルランスには笑われてばかりいるような気がして、少しだけ悔しく感じる和哉だったが、同時に不思議と嫌な気はしなかった。
むしろ、仏頂面がデフォルトの彼が自分の前で時々見せてくれる笑顔に嬉しさを感じるのだ。
その感情がなんなのか、和哉自身にも分からなかったが……それでも嫌じゃないのは確かだった。
そうこうしているうちに馬車は街中に入り、辺りの様子も活気に溢れたものに変わっていった。
行き交う人々の格好も様々で、武器や防具を身に着けた者や、ローブを纏った魔法使い風の者、中にはエルフ族のような尖った耳を持つ者までいる。
(すごい!ホントに映画かRPGの世界みたいだ!)
「うわぁ~!!」
和哉は思わず声を上げながら、身を乗り出さん勢いでその景色に見入っていた。
遠くの小高い丘の上に見える大きな王宮は太陽の光を浴びて白く輝いており、お伽話に出てくるような幻想的な美しさだ。
石畳の道にレンガや石で作られた建物が立ち並ぶ街並みは、まるで中世のヨーロッパのようで、和哉は感動と興奮を抑えられかった。
「すごい!ここが王都……」
ワクワクした気持ちを抑えられず、キョロキョロと辺りを忙しなく見回している和哉の様子が可笑しかったのか、ギルランスはクツクツと笑いを噛み殺しながら肩を竦める。
「なんだよ、そんなに珍しいか?」
またまた笑われてしまったが、そんな事はもう気にならなかった――和哉は目を見開きコクコクと頷く。
「うん、こんな綺麗な街見た事ないや!夢みたいだよ!」
興奮冷めやらぬ気持ちで素直に答える和哉に、ギルランスは意外そうに目を丸くした後、「フッ」と笑いを零す。
「大げさな奴だな」
呆れたように言いながらもどこか楽しそうなギルランスの表情に、和哉は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
(なんかよく分からないけど、ギルの笑った顔見れるのは嬉しいな……)
そんな事をぼんやりと考えながら、和哉は再び前に視線を移すと、心を躍らせながら流れて行く景色を飽きることなく眺め続けた。
馬車を走らせているとギルランスが前方を指差した。
そちらを見ると高い城壁に囲まれた大きな街が見えてきていた。
「うわぁ!大きいね!」
和哉は目の前の光景に感動して声を上げた。
徐々に近づいて来る城壁は見上げる程高く、まるで万里の長城のように横にどこまでも続いているようだった。
城門では厳重な警備がされており、出入りする人達も皆身分証のような物を呈示しているのが見える。
多くの人が門の前に並び、検疫を受けているようだ。
「次のかた、どうぞ!」
やがて自分達の順番になり、和哉とギルランスは馬車を降りて三人の門番の前に立った。
「こんにちは、今日はどのようなご用件ですか?」
人の良さそうな笑顔を浮かべる若い門番が質問をするが、すぐにその隣に立つ厳つい顔をした別の門番がギルランスの顔を見た途端ハッと息を呑み、急に態度を急変させた。
「ギ、ギルランス……!?」
目を見開き驚いている様子だ。
その名を聞いた人の良さそうなほうの門番も、「えっ!?」と笑顔のまま顔を引き攣らせていた。
「……ギルランスだって?あの、双剣使いの……?」
そして三人目の門番もまた、信じられないとでもいうような面持ちで食い入るようにギルランスを見つめていた。
当のギルランスはそんな視線など気にする様子もなく平然とした顔で、懐から身分証を出して呈示する。
「ああ、そうだ、ギルランス・レイフォードだ。後ろのコイツはカズヤ、俺の連れだ。コイツの身分証はねぇが、通っていいか?」
その言葉に我に返った様子の門番たちは慌てて身分証の確認をし、書類に印を捺すと顔を上げた。
「失礼しました!どうぞお通り下さい!」
そう言って書類をギルランスに手渡す門番の顔は”尊敬”や”憧れ”といったものより、むしろ”恐れ”に近いもののように和哉には見えた。
そんな門兵たちの様子にギルランスはどこか複雑な苦笑いを見せた後、あっけにとられたまま突っ立っている和哉に向き直る。
「行くぞ」
「あ、うん」
和哉はギルランスに促されるまま、積荷のチェックを終えた馬車に再び乗り込んだ。
そして、緊張した様子で立つ門兵たちの間を通り過ぎ、二人は王都の門をくぐり抜け進んで行った。
ギルランスと門番の一連のやりとりに、和哉としては少々驚くものがあった。
彼らがなぜあんな態度だったのかは分からなかったが、どちらにせよこの街ではギルランスはかなり有名なようである事だけは確かなようだ。
(ギルって、思ってたよりも凄い人なんだ……きっと、実力があるから一目置かれてるのかも……?)
和哉は馬車に揺られながら、隣に座るギルランスに目を向けしみじみ思う。
(この人と一緒に旅をするなんて、今更だけど凄い事だよね)
しかも、そんな彼が自分と組んでくれている事が未だに信じられなくもあった。
(今の僕なんかじゃ釣り合わないだろうけど……でも、いつかは僕も強くなってギルと一緒に肩を並べられるくらいになりたいな)
そう思うと俄然やる気が湧いてくるというものだ。
(よし!!頑張るぞ!!)
和哉がフンッ!と鼻息荒く気合いを入れていると、横からククッと笑いを堪える声が聞こえてきた。
どうやらギルランスに見られていたらしい。
「な、なに?」
気恥ずかしさを誤魔化すように尋ねる和哉の頭をギルランスは目を細めながらポンと軽く叩いた。
「いや、お前見てるとホント飽きねぇなと思ってな」
そう言うとギルランスはクツクツと笑いながら再び前に向き直り手綱を握る。
(うぅ……また笑われた……)
どうにもギルランスには笑われてばかりいるような気がして、少しだけ悔しく感じる和哉だったが、同時に不思議と嫌な気はしなかった。
むしろ、仏頂面がデフォルトの彼が自分の前で時々見せてくれる笑顔に嬉しさを感じるのだ。
その感情がなんなのか、和哉自身にも分からなかったが……それでも嫌じゃないのは確かだった。
そうこうしているうちに馬車は街中に入り、辺りの様子も活気に溢れたものに変わっていった。
行き交う人々の格好も様々で、武器や防具を身に着けた者や、ローブを纏った魔法使い風の者、中にはエルフ族のような尖った耳を持つ者までいる。
(すごい!ホントに映画かRPGの世界みたいだ!)
「うわぁ~!!」
和哉は思わず声を上げながら、身を乗り出さん勢いでその景色に見入っていた。
遠くの小高い丘の上に見える大きな王宮は太陽の光を浴びて白く輝いており、お伽話に出てくるような幻想的な美しさだ。
石畳の道にレンガや石で作られた建物が立ち並ぶ街並みは、まるで中世のヨーロッパのようで、和哉は感動と興奮を抑えられかった。
「すごい!ここが王都……」
ワクワクした気持ちを抑えられず、キョロキョロと辺りを忙しなく見回している和哉の様子が可笑しかったのか、ギルランスはクツクツと笑いを噛み殺しながら肩を竦める。
「なんだよ、そんなに珍しいか?」
またまた笑われてしまったが、そんな事はもう気にならなかった――和哉は目を見開きコクコクと頷く。
「うん、こんな綺麗な街見た事ないや!夢みたいだよ!」
興奮冷めやらぬ気持ちで素直に答える和哉に、ギルランスは意外そうに目を丸くした後、「フッ」と笑いを零す。
「大げさな奴だな」
呆れたように言いながらもどこか楽しそうなギルランスの表情に、和哉は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
(なんかよく分からないけど、ギルの笑った顔見れるのは嬉しいな……)
そんな事をぼんやりと考えながら、和哉は再び前に視線を移すと、心を躍らせながら流れて行く景色を飽きることなく眺め続けた。
1
あなたにおすすめの小説
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
BL団地妻on vacation
夕凪
BL
BL団地妻第二弾。
団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。
頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。
なんでも許せる人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる