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第22話 アドラ冒険者ギルド
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中世ヨーロッパが舞台の映画セットのような街並みを暫く進むと、一際目を引く大きな建物の前でギルランスは馬車を停めた。
「着いたぞ」
ギルランスに促され、馬車から降りた和哉が呆けたように口を開けたまま見上げるその建物は『冒険者ギルド・アドラ支部』と看板が掲げられ、剣と杖のマークが描かれた旗が風に揺れていた。
(す、凄すぎる!!これが本物のギルド!?)
レンガ造りの立派な二階建てで横幅もかなり広く、奥行もありそうな建物の正面の扉は大きく開け放たれており、大勢の冒険者風の人達が出入りしている様子が伺える。
和哉は思わずゴクリと喉を鳴らした。
(やっぱり……やっぱりあるんだ……)
この世界はやはり元いた世界とは全く別の世界であり、小説やゲームなどで度々見かけた単語や設定、世界観などが現実にそこにあった。
それを頭では分かってはいたが、今まではどこかまだ夢見心地だった和哉はやっと実感出来た気がした。
(僕は今ここに生きているんだ――!)
そう強く確信した瞬間、胸が熱くなる――と、同時に、急に不安と緊張が押し寄せてきて、和哉は思わず隣にいるギルランスの袖をギュッと掴んでしまった。
不意に袖を引かれたギルランスは驚いたように足を止めると、和哉を見て一瞬目を見張った後すぐに優しい眼差しを向けた。
「大丈夫だ、なんも心配いらねぇよ」
おそらく和哉の気持ちを察してくれたのだろう、ギルランスは袖を掴む和哉の手の上に自分の手を乗せ、安心させるように優しく握ってくれた。
(あ……)
その手の温もりは、不思議と和哉の不安や緊張を和らげ、心を落ち着かせてくるものだった。
和哉は一旦、フゥ……と息を整えると、改めて目の前の建物を見上げた。
(うん、大丈夫……僕はちゃんとやっていける)
自分自身に言い聞かせるように心の中で呟き頷く和哉の様子に、ギルランスはフッと笑いを零すと握っていた手を離し、「行くぞ」と言って歩き出した。
和哉は、離れていってしまった手の温もりをなぜか少し寂しく感じる自分を不思議に思いながらも、先を行くギルランスの後を追ってギルドの扉をくぐった。
ギルド内に入ると、まるで市役所や銀行のような雰囲気の広いホールの正面に受付カウンターがあり、数人の受付嬢が座っていた。
その受付の向こうは、どうやら食堂になっているようで、奥のバーカウンターやテーブル席で冒険者らしき者達が食事を取ったり、酒を酌み交わしたりしている様子が見えた。
右手側奥の階段は二階へ通じている。
ホール左手には何枚も紙が貼り出されている大きな掲示板のようなものがあり、そこにも数人の冒険者達が群がっていた。
和哉は通りすがらチラリと掲示板に貼られている紙を見てみると、どうやらギルドからのお知らせや依頼書などのようだった。
どの依頼書にもランク付けされているようで、AとかBなどのアルファベットと数字が記載されており、中でも一番上に貼られている紙なんかは、SSSの表示と共に金色の文字で『ドラゴン討伐』と書かれていた。
(ド、ドラゴン!?)
和哉は驚愕に目を見開いた。
ドラゴンと言えばゲームや漫画、映画などでお馴染みの最強クラスのモンスターだ。
とは言え、当たり前だが実際に見た事などあるはずもない和哉にとって、その姿や強さなど想像の域を遥かに超えていた。
(もし、本当に対面したらどんな感じなんだろう?……もう、一周廻って”怖い”とか”倒そう”なんて気持ちにはなれないかももね……)
などと考えながらギルランスの後を付いて行く和哉だったが、一つ、気になっている事があった。
それは、周囲の冒険者たちが遠巻きに自分たちを見ている事だった。
その視線にはあまり良い感情ではないものが込められているように感じられる。
(なんだろ……?なんだか視線が痛いような気が……??)
首を傾げながら和哉はもう一度周囲を見渡してみたが、やはり皆一様にジロジロとこちらを盗み見ているようにしか見えなかった。
だが、前を行くギルランスは、特に気にする様子もなくスタスタと歩いている。
(気にしすぎかな?)
和哉もあまり気にしないようにして、ギルランスの後を追っていった。
そして複数ある受付窓口の一つに二人並んで立つ――すると、俯いて書類に書き物をしていた受付嬢はハッと気付いたように顔を上げたかと思うと、一瞬驚いたような表情をした後、慌てて姿勢を正し笑顔を貼り付けた。
「ようこそ、アドラ冒険者ギルドへ!」
営業スマイルではあるが、その笑顔はどこかぎこちないものだった。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
受付嬢の問い掛けに、ギルランスは懐から身分証を出し、カウンターの上に置いた。
「俺はこのギルドへの移籍――で、こいつは冒険者登録だ」
ギルランスは和哉に向けて親指をクイッと動かし、受付嬢に紹介する。
「かしこまりました」
受付嬢は恭しく頭を下げると、和哉の方に顔を向けた。
「では、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」
そう言うと、カウンターの下から書類と羽根ペンを取り出し、和哉の前に差し出した。
「あ、はい」
和哉は受付嬢から渡された書類を受け取り、そこに目を落とす。
書類には氏名、年齢、性別、出身地の他に使用武器や得意魔法などを書く欄があり、その横にはギルドへの誓約書が添えられていた。
和哉は、この世界の文字や言語などをなぜ理解できるのか自分でも不思議に感じながらも(これが”異世界転移”ってやつか……)と妙な納得をしながら、受け取ったペンでそれぞれの項目を記入していった。
だが、直ぐに”ある項目”で手が止まる。
(う~ん、出身地……どうしよう……)
まさか元の世界の住所を書くわけにも行かないし、かといって適当な地名も思いつかない。
困った和哉がギルランスに目配せして助けを求めると、それを察した彼は受付嬢に声を掛けた。
「おい、今日、ルーラはいるか?」
「え?ええ、おりますが……?」
急に話を振られた受付嬢は困惑したように答えた。
「なら、ルーラを呼んできてくれ」
「え……あ、はい」
ギルランスの要望に受付嬢は”何がなんだか”といった表情を浮かべていたものの、それでも「少々お待ちください」とだけ言うと、席を立って慌てて奥へと引っ込んで行った。
ギルランスの横では和哉もまた困惑していた。
(急にどうしたんだろ?――つか、ルーラって???)
和哉の読んでいた小説にはその名前の登場人物は出てきた記憶はなかった。
(何だろう?)
和哉は少し不安に感じながらも、言われた通りギルランスと一緒に受付嬢が戻ってくるのを待っていた。
すると、不意に後ろから落ち着いた口調で透明感のある美しい声がした。
「お待たせいたしました」
その声に振り向いた和哉は思わず息をのむ。
そこには、まるで絵画の中から出てきたのではと思わせるような美しい女性がいた。
腰まで伸びた深緑色の長い髪に切れ長の藍色の瞳、すっと通った鼻筋と薄い唇は上品でどこか冷たい印象を与えるが、それが彼女の魅力を引き立たせている。
170cmはあるだろう長身にスラリとしたモデル体型の彼女が身に着けている服は、チャイナドレス風のデザインで、ボディーラインがはっきりと分かるような深紅のワンピースに黒のハイヒール姿という非常に煽情的なものだった。
だが、そんな妖艶でミステリアスな雰囲気の身なりとは正反対に、彼女はどこか知的で理知的な印象をも与える不思議な魅力を持っていた。
(……マジで、この世界の顔面偏差値どうなってんの!?)
心の中で盛大に突っ込みながらも、和哉はギルランスがこんな美人と知り合いだった事にも驚いていた。
女性は魅力的な微笑みをたたえたままゆっくりとした足取りで二人の前に立つと、たおやかな身のこなしで頭を下げた。
「お待たせいたしました、ギルランス様」
「よう、ルーラ……久しぶりだな」
ギルランスの呼びかけに、「ほんとうに……」と言いながら顔を上げたルーラと呼ばれた女性の表情を見て、和哉はまた驚く事になった。
なぜなら彼女はその藍色の瞳に涙を溜めながらギルランスを真っ直ぐに見つめて微笑んでいたのだ。
「噂では亡くなったとの声もあり……もう、二度と会えないかと思っていました……」
その涙声は微かに震えていて、彼女の喜びが伝わってくる。
「あー、まぁ、心配かけたな……」
バツが悪そうに頭を掻きながらそっぽを向いて答えるギルランスの表情は、どこか感傷的でもあり優し気だった。
そんなギルランスの様子にルーラと呼ばれた女性はくすりと小さく笑いを零した。
「相変わらずの物言いですね……でも、良かった……」
そう言って安堵の顔を見せたルーラは涙を拭い、表情を引き締めると、今度はギルランスの隣で二人のやり取りを傍観していた和哉へと視線を向けた。
「こちらのかたですね?」
「ああ、そうだ」
ルーラはギルランスの声に小さく頷くと、和哉に向かって一礼する。
「それでは早速ですが、お手続きに入らせていただきますので、こちらへどうぞ」
そう言って彼女は階段を上り、和哉とギルランスを二階の部屋まで案内してくれた。
「そちらにおかけになってお待ちくださいませ」
ルーラは部屋の応接セットを指し二人を促すと、一旦部屋を出て行った。
「着いたぞ」
ギルランスに促され、馬車から降りた和哉が呆けたように口を開けたまま見上げるその建物は『冒険者ギルド・アドラ支部』と看板が掲げられ、剣と杖のマークが描かれた旗が風に揺れていた。
(す、凄すぎる!!これが本物のギルド!?)
レンガ造りの立派な二階建てで横幅もかなり広く、奥行もありそうな建物の正面の扉は大きく開け放たれており、大勢の冒険者風の人達が出入りしている様子が伺える。
和哉は思わずゴクリと喉を鳴らした。
(やっぱり……やっぱりあるんだ……)
この世界はやはり元いた世界とは全く別の世界であり、小説やゲームなどで度々見かけた単語や設定、世界観などが現実にそこにあった。
それを頭では分かってはいたが、今まではどこかまだ夢見心地だった和哉はやっと実感出来た気がした。
(僕は今ここに生きているんだ――!)
そう強く確信した瞬間、胸が熱くなる――と、同時に、急に不安と緊張が押し寄せてきて、和哉は思わず隣にいるギルランスの袖をギュッと掴んでしまった。
不意に袖を引かれたギルランスは驚いたように足を止めると、和哉を見て一瞬目を見張った後すぐに優しい眼差しを向けた。
「大丈夫だ、なんも心配いらねぇよ」
おそらく和哉の気持ちを察してくれたのだろう、ギルランスは袖を掴む和哉の手の上に自分の手を乗せ、安心させるように優しく握ってくれた。
(あ……)
その手の温もりは、不思議と和哉の不安や緊張を和らげ、心を落ち着かせてくるものだった。
和哉は一旦、フゥ……と息を整えると、改めて目の前の建物を見上げた。
(うん、大丈夫……僕はちゃんとやっていける)
自分自身に言い聞かせるように心の中で呟き頷く和哉の様子に、ギルランスはフッと笑いを零すと握っていた手を離し、「行くぞ」と言って歩き出した。
和哉は、離れていってしまった手の温もりをなぜか少し寂しく感じる自分を不思議に思いながらも、先を行くギルランスの後を追ってギルドの扉をくぐった。
ギルド内に入ると、まるで市役所や銀行のような雰囲気の広いホールの正面に受付カウンターがあり、数人の受付嬢が座っていた。
その受付の向こうは、どうやら食堂になっているようで、奥のバーカウンターやテーブル席で冒険者らしき者達が食事を取ったり、酒を酌み交わしたりしている様子が見えた。
右手側奥の階段は二階へ通じている。
ホール左手には何枚も紙が貼り出されている大きな掲示板のようなものがあり、そこにも数人の冒険者達が群がっていた。
和哉は通りすがらチラリと掲示板に貼られている紙を見てみると、どうやらギルドからのお知らせや依頼書などのようだった。
どの依頼書にもランク付けされているようで、AとかBなどのアルファベットと数字が記載されており、中でも一番上に貼られている紙なんかは、SSSの表示と共に金色の文字で『ドラゴン討伐』と書かれていた。
(ド、ドラゴン!?)
和哉は驚愕に目を見開いた。
ドラゴンと言えばゲームや漫画、映画などでお馴染みの最強クラスのモンスターだ。
とは言え、当たり前だが実際に見た事などあるはずもない和哉にとって、その姿や強さなど想像の域を遥かに超えていた。
(もし、本当に対面したらどんな感じなんだろう?……もう、一周廻って”怖い”とか”倒そう”なんて気持ちにはなれないかももね……)
などと考えながらギルランスの後を付いて行く和哉だったが、一つ、気になっている事があった。
それは、周囲の冒険者たちが遠巻きに自分たちを見ている事だった。
その視線にはあまり良い感情ではないものが込められているように感じられる。
(なんだろ……?なんだか視線が痛いような気が……??)
首を傾げながら和哉はもう一度周囲を見渡してみたが、やはり皆一様にジロジロとこちらを盗み見ているようにしか見えなかった。
だが、前を行くギルランスは、特に気にする様子もなくスタスタと歩いている。
(気にしすぎかな?)
和哉もあまり気にしないようにして、ギルランスの後を追っていった。
そして複数ある受付窓口の一つに二人並んで立つ――すると、俯いて書類に書き物をしていた受付嬢はハッと気付いたように顔を上げたかと思うと、一瞬驚いたような表情をした後、慌てて姿勢を正し笑顔を貼り付けた。
「ようこそ、アドラ冒険者ギルドへ!」
営業スマイルではあるが、その笑顔はどこかぎこちないものだった。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
受付嬢の問い掛けに、ギルランスは懐から身分証を出し、カウンターの上に置いた。
「俺はこのギルドへの移籍――で、こいつは冒険者登録だ」
ギルランスは和哉に向けて親指をクイッと動かし、受付嬢に紹介する。
「かしこまりました」
受付嬢は恭しく頭を下げると、和哉の方に顔を向けた。
「では、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」
そう言うと、カウンターの下から書類と羽根ペンを取り出し、和哉の前に差し出した。
「あ、はい」
和哉は受付嬢から渡された書類を受け取り、そこに目を落とす。
書類には氏名、年齢、性別、出身地の他に使用武器や得意魔法などを書く欄があり、その横にはギルドへの誓約書が添えられていた。
和哉は、この世界の文字や言語などをなぜ理解できるのか自分でも不思議に感じながらも(これが”異世界転移”ってやつか……)と妙な納得をしながら、受け取ったペンでそれぞれの項目を記入していった。
だが、直ぐに”ある項目”で手が止まる。
(う~ん、出身地……どうしよう……)
まさか元の世界の住所を書くわけにも行かないし、かといって適当な地名も思いつかない。
困った和哉がギルランスに目配せして助けを求めると、それを察した彼は受付嬢に声を掛けた。
「おい、今日、ルーラはいるか?」
「え?ええ、おりますが……?」
急に話を振られた受付嬢は困惑したように答えた。
「なら、ルーラを呼んできてくれ」
「え……あ、はい」
ギルランスの要望に受付嬢は”何がなんだか”といった表情を浮かべていたものの、それでも「少々お待ちください」とだけ言うと、席を立って慌てて奥へと引っ込んで行った。
ギルランスの横では和哉もまた困惑していた。
(急にどうしたんだろ?――つか、ルーラって???)
和哉の読んでいた小説にはその名前の登場人物は出てきた記憶はなかった。
(何だろう?)
和哉は少し不安に感じながらも、言われた通りギルランスと一緒に受付嬢が戻ってくるのを待っていた。
すると、不意に後ろから落ち着いた口調で透明感のある美しい声がした。
「お待たせいたしました」
その声に振り向いた和哉は思わず息をのむ。
そこには、まるで絵画の中から出てきたのではと思わせるような美しい女性がいた。
腰まで伸びた深緑色の長い髪に切れ長の藍色の瞳、すっと通った鼻筋と薄い唇は上品でどこか冷たい印象を与えるが、それが彼女の魅力を引き立たせている。
170cmはあるだろう長身にスラリとしたモデル体型の彼女が身に着けている服は、チャイナドレス風のデザインで、ボディーラインがはっきりと分かるような深紅のワンピースに黒のハイヒール姿という非常に煽情的なものだった。
だが、そんな妖艶でミステリアスな雰囲気の身なりとは正反対に、彼女はどこか知的で理知的な印象をも与える不思議な魅力を持っていた。
(……マジで、この世界の顔面偏差値どうなってんの!?)
心の中で盛大に突っ込みながらも、和哉はギルランスがこんな美人と知り合いだった事にも驚いていた。
女性は魅力的な微笑みをたたえたままゆっくりとした足取りで二人の前に立つと、たおやかな身のこなしで頭を下げた。
「お待たせいたしました、ギルランス様」
「よう、ルーラ……久しぶりだな」
ギルランスの呼びかけに、「ほんとうに……」と言いながら顔を上げたルーラと呼ばれた女性の表情を見て、和哉はまた驚く事になった。
なぜなら彼女はその藍色の瞳に涙を溜めながらギルランスを真っ直ぐに見つめて微笑んでいたのだ。
「噂では亡くなったとの声もあり……もう、二度と会えないかと思っていました……」
その涙声は微かに震えていて、彼女の喜びが伝わってくる。
「あー、まぁ、心配かけたな……」
バツが悪そうに頭を掻きながらそっぽを向いて答えるギルランスの表情は、どこか感傷的でもあり優し気だった。
そんなギルランスの様子にルーラと呼ばれた女性はくすりと小さく笑いを零した。
「相変わらずの物言いですね……でも、良かった……」
そう言って安堵の顔を見せたルーラは涙を拭い、表情を引き締めると、今度はギルランスの隣で二人のやり取りを傍観していた和哉へと視線を向けた。
「こちらのかたですね?」
「ああ、そうだ」
ルーラはギルランスの声に小さく頷くと、和哉に向かって一礼する。
「それでは早速ですが、お手続きに入らせていただきますので、こちらへどうぞ」
そう言って彼女は階段を上り、和哉とギルランスを二階の部屋まで案内してくれた。
「そちらにおかけになってお待ちくださいませ」
ルーラは部屋の応接セットを指し二人を促すと、一旦部屋を出て行った。
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