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第25話 新しい装備
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「ギル、ごめん……僕の見た目のせいで君が悪く言われる事に我慢できなくて……つい……」
ギルドを出てから暫く歩いたところで、和哉はギルランスの背中に声をかけた。
和哉自身、なぜ、あんなにも腹が立ったのか自分でも分からなかった。
とにかく自分のルックスのせいで、彼が悪く言われた事が我慢ならなかったのだ。
だが、自分の行動のせいで、かえってギルランスに迷惑をかける事になってしまったかも――と、和哉は猛反省していた。
俯きがちに謝る和哉の言葉に足を止めたギルランスは、くるりと振り返ると和哉の頭に大きな掌をポンと乗せた。
「気にすんな、お前はいっこも悪くねぇよ」
「え?」
予想外の言葉に顔を上げた和哉にギルランスはニッと笑う。
その笑顔と頭に置かれた手が温かくて、不思議と和哉の胸のモヤモヤは溶けて消えるように無くなっていった。
「ギル……」
(なんでだろう?ギルの手って、なんだかすごく落ち着く……)
そんな事を考えながら和哉がホンワカした心地でいると、今度はぐしゃぐしゃと頭を掻きまぜられた。
「わっ!?ちょ、ちょっと!?」
慌てて頭を押さえながら見上げると、そこにはニヤリと笑うギルランスの顔があった。
「――っうか、カズヤ、お前、怒ると怖ぇな……マジでビビったぞ」
悪戯っぽく笑うギルランスの言葉に、和哉はハッと自分がとった行動を思い出し、改めて恥ずかしくなる。
まさか自分があんなに感情を露わにしてしまうとは――しかも、あの屈強な冒険者の男たちを相手にするなど無謀もいいとこだった。
「あ、あれは!その……!」
ギルランスにどう言い訳しようかとあたふたする和哉の頭に再びギルランスの手が置かれた。
「ありがとな」
そう言って、くしゃりと和哉の頭を撫でたギルランスは優しい笑みを浮かべていた。
そんな彼の表情に、思わず胸が高鳴るのを感じた和哉だったが、その感情の正体は分からないままだった――。
****
****
暫く歩いて行くと、二人は街の中心部である大きな広場に出た。
(わぁ……ここもすごいなぁ!)
行く先々で目にするもの、全てが和哉には新鮮であり、驚きに満ちていた。
そこは石組で造られた大きな円形状の広場で、中央に向かって数段の下り階段があり、中央にある噴水が水飛沫を上げながら涼しげな音を響かせている場所だった。
その噴水のある円形の広場を中心にして放射状に道が伸びており、様々な店や露天商などが軒を連ねている。
多くの人々が行き交い、活気に満ち溢れている風景を見ていると、なんだかこちらまで元気が湧いてきそうだった。
そんな街の風景に心を躍らせながら歩いていた和哉だったが……。
ふと、すれ違う人達がチラチラと自分たちを見ている事に気付いた。
中にはあからさまに振り返ってまで自分達を見る者もいる。
隣を歩くギルランスは相変わらず気にした様子もないが、和哉はどうにも居心地が悪かった。
(……やっぱりこの髪と瞳の色のせいだよね……?もう、いっそのこと染めよっかな?)
そう思いながら自分の前髪を摘まんでみる和哉に気が付いたのかギルランスが声をかける。
「気になるか?」
「う~ん……まぁ、僕はどう見られても別に構わないんだけど……」
ギルドでの一件のように、一緒に居るギルランスまでもが好奇の目で見られてしまうのは申し訳ない気がしたのだ。
するとそんな和哉の考えを見透かしたようにギルランスが口を開く。
「俺の事は気にすんな。お前が大丈夫ならそれでいい……それに――」
そこまで言うとギルランスは突然立ち止まり、真面目な顔で和哉に向き直る。
「俺はお前の髪も瞳も綺麗だと思うぞ」
「なっ!?」
まさかそんな事を言われるとは夢にも思っていなかった和哉は、驚いて言葉を失ってしまった。
だがギルランスは構わず続ける。
「初めて会った時から思ってた、綺麗な髪だと……だからそんなに自分を卑下すんな」
そんな風に言われては、もうなにも言い返せなかった。
(な、なんかズルい……)
ギルランスとしたら素直に自分の感想を述べただけなのだろうが……和哉はドギマギしながらも「う、うん」と頷く事しか出来なかった。
そんな和哉にギルランスは満足気にニッと笑みを浮かべると、「さて、とりあえずお前の装備や服を買いに行くぞ」と言ってまた歩き始めた。
****
****
広場からほど近い一軒の店の前でギルランスは足を止めた。
そこは様々な衣服や装飾品を扱う店のようで、ショーウィンドウには煌びやかなアクセサリーや服が飾られていた。
「ここだ」
そう言って先に入っていくギルランスの後を、和哉も続く。
カランコロン――ドアベルの音を聞きながら中に入ると、そこには沢山の服や帽子などが並んでいた。
ギルランスによると、ここは一般的な服と一緒に冒険者用の服も取り扱っている店らしい。
店内には中世ヨーロッパの貴婦人が着るようなドレスや、どこかの王子様が着ていそうな洋服と並んで、冒険者用の物も所狭しと並べられていた。
(うっわ……高そうな服がいっぱいだ)
キラキラしい洋服たちに圧倒されながら店内を見回していた和哉に「いらっしゃいませ」と声をかけ、奥から店員らしき男性が歩み寄ってきた。
「今日はどのような御用向きで?」
朗らかな笑みを浮かべつつ用件を尋ねる男性に、ギルランスはぶっきらぼうに答える。
「……こいつの服一式が欲しい」
そう言って顎先で和哉を指すギルランスの様子に店員は一瞬顔を強張らせたが、すぐに笑顔に戻った。
そんな男性の反応を気にするわけでもなく、ギルランスは更に続ける。
「それと……今着てる服も処分してくれ」
そのギルランスの一言に和哉はギョッとして、「えっ!イヤだ!」と思わず拒否の声を上げた。
今和哉が着ているのはギルランスが以前着ていたお下がりだ――せっかく手に入れた”推しキャラの服”を手放すなんて惜しい事はしたくなかったのだ。
和哉の反応が予想外だったのか、ギルランスが「は?なんでだよ?」と聞いてくるが、まさか『ギルの服は僕にとっての大事な宝物だから』などと言えるはずもない。
「え、えっと……ほら、まだこれ着れるんだし……捨てちゃうなんてもったいないじゃん?」
和哉は内心焦りながらも咄嗟に言い訳を口にした。
そんな和哉を訝し気な顔で見遣るギルランスだったが、すぐに「そういうもんか?」と(渋々といった様子だが)納得したように呟くと、店員に向き直り「とりあえず、いくつか見繕ってくれ」と告げる。
すると、店員は「かしこまりました」と笑顔で返事をすると、何着かの服を和哉に手渡してきた。
「どれでもお好きな物をお選びください。ご試着も可能ですよ」
店員の言葉に、和哉は手渡された服を広げてみる。
どれも上質な素材で作られた物ばかりで、素人の和哉でさえもとても良い品である事が分かる。
その中から選ぼうと手に取りながら考えるのだが、和哉にはどれが自分に似合うのかなど皆目見当もつかない。
(う~ん、もっとオシャレとか勉強しておくべきだったかなぁ……)
和哉がたくさんの服を前に頭を悩ませていると、いっしょに選んでいたギルランスがその中の一着を「おい、これなんかどうだ?」と言いながら手渡してきた。
「お前が着ていたあの服に少し似てる感じだろ?」
そう言って差し出された服は、確かに最初に着ていた道着に雰囲気が似ているような気がする。
和哉は早速それを試着してみる事にした。
「ど、どうかな?」
着替え終わり試着室から出て来た和哉を見たギルランスと店員は一瞬固まった。
(あれ?何かおかしかったかな?)
二人の反応に不安になり和哉は鏡の前で自分の姿を確認してみる。
白いシャツとその上に羽織っているグレーのジャケットはどちらも襟の合わせが和服のように右前になっていて、そのジャケットの上から腰にベルトを締めている。
下は黒いズボンに膝下までのブーツだ。
(着方はこれで合ってるはずだよね……?)
再度和哉は固まっている二人に振り返り、その顔を窺う。
「あ、あの……何か変かな?」
(もしかして、全然似合ってないとか……?)
不安に駆られた和哉がおずおずと尋ねると、ギルランスはハッとしたように慌てて首を左右に振った。
「い、いや……大丈夫だ、うん」
そう言いながら、頭を掻きながら頷くギルランスの隣では、パッと顔を明るくさせた店員が「いや~、大変よくお似合いです!!」と拍手しながら満面の笑みを浮かべている。
「そ、そうかな?」
店員の大袈裟な誉め言葉に照れ臭さを感じながらも、二人からの言葉に和哉はホッと胸を撫で下ろした。
(よかった~……ちょっとコスプレ感あるかな、って心配だたけど……うん、大丈夫そうだ)
和哉が改めてもう一度姿見で自分の格好を確認しながら頬を緩ませていると、後ろに立っているギルランスと鏡越しに目が合う。
それに気づいたギルランスは和哉の肩にポンと手を置きニッと笑った。
「なかなかサマんなってるぞ」
そう言ってもらえるとやはり嬉しいもので、ますます和哉の頬は緩んでしまう。
「へへ……ありがと」
和哉の笑顔につられてか、ギルランスも嬉しそうに笑った。
その後、防寒用のマントも購入し、支払いを済ませた二人は店を後にした。
勿論、和哉は今買ったばかりの服を着用していて、大切なあのおさがりの服は大事に荷物袋の中にしまってある。
「さて、次は武器屋だ」
「うん」
二人は店を出たその足で、武器屋へ向かうため、街の大通りを歩き始めた。
通りは人で溢れており、まるでお祭りのような賑わいを見せていた。
(すごい人だな……迷子にならないように気をつけないと)
和哉は人込みをかき分けつつ、ギルランスの背中を見失わないように付いて行く。
すると、不意に伸ばされたギルランスの手が和哉の手を掴んだ。
突然のことに驚き目を瞠る和哉に、ギルランスは前を向いたまま「……はぐれたら面倒だからな」と素っ気なく言う。
たしかに、ここではぐれてしまったら、人ごみの中を探すのは大変そうだ――ギルランスとしてもそんな厄介なことに巻き込まれたくはないのだろう。
だが、それだけでなく、これは彼の純粋な優しさからくる行動なのだという事を和哉は理解していた。
「うん、そうだね……ありがとう」
少し照れくささを感じながらも素直に礼を言うと、ギルランスは一瞬きょとんとしたがすぐにフンッと顔を背ける。
そんな仕草一つにも優しさが滲み出ているような気がして和哉の胸は温かくなる。
(なんか嬉しいな)
憧れていた物語の勇者から自分に向けられる優しさが嬉しくて、和哉は一人(何故か熱くなる)顔を緩ませながら、その温かな大きな手を握り返した。
その後、二人は武器屋で和哉用の短剣や弓矢のメンテナンス用品を購入し、弓を背負うための革製ホルスターや手甲などの装備一式を購入して準備を終えた。
全ての買い物を終え、馬車に戻る頃にはすっかり日も傾いていた。
「よし、じゃあ今夜の宿を探すぞ」
「うん!」
ギルランスの言葉に頷き、真新しい装備に身を包みすっかり冒険者らしくなった和哉は馬車に乗り込んだ――。
ギルドを出てから暫く歩いたところで、和哉はギルランスの背中に声をかけた。
和哉自身、なぜ、あんなにも腹が立ったのか自分でも分からなかった。
とにかく自分のルックスのせいで、彼が悪く言われた事が我慢ならなかったのだ。
だが、自分の行動のせいで、かえってギルランスに迷惑をかける事になってしまったかも――と、和哉は猛反省していた。
俯きがちに謝る和哉の言葉に足を止めたギルランスは、くるりと振り返ると和哉の頭に大きな掌をポンと乗せた。
「気にすんな、お前はいっこも悪くねぇよ」
「え?」
予想外の言葉に顔を上げた和哉にギルランスはニッと笑う。
その笑顔と頭に置かれた手が温かくて、不思議と和哉の胸のモヤモヤは溶けて消えるように無くなっていった。
「ギル……」
(なんでだろう?ギルの手って、なんだかすごく落ち着く……)
そんな事を考えながら和哉がホンワカした心地でいると、今度はぐしゃぐしゃと頭を掻きまぜられた。
「わっ!?ちょ、ちょっと!?」
慌てて頭を押さえながら見上げると、そこにはニヤリと笑うギルランスの顔があった。
「――っうか、カズヤ、お前、怒ると怖ぇな……マジでビビったぞ」
悪戯っぽく笑うギルランスの言葉に、和哉はハッと自分がとった行動を思い出し、改めて恥ずかしくなる。
まさか自分があんなに感情を露わにしてしまうとは――しかも、あの屈強な冒険者の男たちを相手にするなど無謀もいいとこだった。
「あ、あれは!その……!」
ギルランスにどう言い訳しようかとあたふたする和哉の頭に再びギルランスの手が置かれた。
「ありがとな」
そう言って、くしゃりと和哉の頭を撫でたギルランスは優しい笑みを浮かべていた。
そんな彼の表情に、思わず胸が高鳴るのを感じた和哉だったが、その感情の正体は分からないままだった――。
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暫く歩いて行くと、二人は街の中心部である大きな広場に出た。
(わぁ……ここもすごいなぁ!)
行く先々で目にするもの、全てが和哉には新鮮であり、驚きに満ちていた。
そこは石組で造られた大きな円形状の広場で、中央に向かって数段の下り階段があり、中央にある噴水が水飛沫を上げながら涼しげな音を響かせている場所だった。
その噴水のある円形の広場を中心にして放射状に道が伸びており、様々な店や露天商などが軒を連ねている。
多くの人々が行き交い、活気に満ち溢れている風景を見ていると、なんだかこちらまで元気が湧いてきそうだった。
そんな街の風景に心を躍らせながら歩いていた和哉だったが……。
ふと、すれ違う人達がチラチラと自分たちを見ている事に気付いた。
中にはあからさまに振り返ってまで自分達を見る者もいる。
隣を歩くギルランスは相変わらず気にした様子もないが、和哉はどうにも居心地が悪かった。
(……やっぱりこの髪と瞳の色のせいだよね……?もう、いっそのこと染めよっかな?)
そう思いながら自分の前髪を摘まんでみる和哉に気が付いたのかギルランスが声をかける。
「気になるか?」
「う~ん……まぁ、僕はどう見られても別に構わないんだけど……」
ギルドでの一件のように、一緒に居るギルランスまでもが好奇の目で見られてしまうのは申し訳ない気がしたのだ。
するとそんな和哉の考えを見透かしたようにギルランスが口を開く。
「俺の事は気にすんな。お前が大丈夫ならそれでいい……それに――」
そこまで言うとギルランスは突然立ち止まり、真面目な顔で和哉に向き直る。
「俺はお前の髪も瞳も綺麗だと思うぞ」
「なっ!?」
まさかそんな事を言われるとは夢にも思っていなかった和哉は、驚いて言葉を失ってしまった。
だがギルランスは構わず続ける。
「初めて会った時から思ってた、綺麗な髪だと……だからそんなに自分を卑下すんな」
そんな風に言われては、もうなにも言い返せなかった。
(な、なんかズルい……)
ギルランスとしたら素直に自分の感想を述べただけなのだろうが……和哉はドギマギしながらも「う、うん」と頷く事しか出来なかった。
そんな和哉にギルランスは満足気にニッと笑みを浮かべると、「さて、とりあえずお前の装備や服を買いに行くぞ」と言ってまた歩き始めた。
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広場からほど近い一軒の店の前でギルランスは足を止めた。
そこは様々な衣服や装飾品を扱う店のようで、ショーウィンドウには煌びやかなアクセサリーや服が飾られていた。
「ここだ」
そう言って先に入っていくギルランスの後を、和哉も続く。
カランコロン――ドアベルの音を聞きながら中に入ると、そこには沢山の服や帽子などが並んでいた。
ギルランスによると、ここは一般的な服と一緒に冒険者用の服も取り扱っている店らしい。
店内には中世ヨーロッパの貴婦人が着るようなドレスや、どこかの王子様が着ていそうな洋服と並んで、冒険者用の物も所狭しと並べられていた。
(うっわ……高そうな服がいっぱいだ)
キラキラしい洋服たちに圧倒されながら店内を見回していた和哉に「いらっしゃいませ」と声をかけ、奥から店員らしき男性が歩み寄ってきた。
「今日はどのような御用向きで?」
朗らかな笑みを浮かべつつ用件を尋ねる男性に、ギルランスはぶっきらぼうに答える。
「……こいつの服一式が欲しい」
そう言って顎先で和哉を指すギルランスの様子に店員は一瞬顔を強張らせたが、すぐに笑顔に戻った。
そんな男性の反応を気にするわけでもなく、ギルランスは更に続ける。
「それと……今着てる服も処分してくれ」
そのギルランスの一言に和哉はギョッとして、「えっ!イヤだ!」と思わず拒否の声を上げた。
今和哉が着ているのはギルランスが以前着ていたお下がりだ――せっかく手に入れた”推しキャラの服”を手放すなんて惜しい事はしたくなかったのだ。
和哉の反応が予想外だったのか、ギルランスが「は?なんでだよ?」と聞いてくるが、まさか『ギルの服は僕にとっての大事な宝物だから』などと言えるはずもない。
「え、えっと……ほら、まだこれ着れるんだし……捨てちゃうなんてもったいないじゃん?」
和哉は内心焦りながらも咄嗟に言い訳を口にした。
そんな和哉を訝し気な顔で見遣るギルランスだったが、すぐに「そういうもんか?」と(渋々といった様子だが)納得したように呟くと、店員に向き直り「とりあえず、いくつか見繕ってくれ」と告げる。
すると、店員は「かしこまりました」と笑顔で返事をすると、何着かの服を和哉に手渡してきた。
「どれでもお好きな物をお選びください。ご試着も可能ですよ」
店員の言葉に、和哉は手渡された服を広げてみる。
どれも上質な素材で作られた物ばかりで、素人の和哉でさえもとても良い品である事が分かる。
その中から選ぼうと手に取りながら考えるのだが、和哉にはどれが自分に似合うのかなど皆目見当もつかない。
(う~ん、もっとオシャレとか勉強しておくべきだったかなぁ……)
和哉がたくさんの服を前に頭を悩ませていると、いっしょに選んでいたギルランスがその中の一着を「おい、これなんかどうだ?」と言いながら手渡してきた。
「お前が着ていたあの服に少し似てる感じだろ?」
そう言って差し出された服は、確かに最初に着ていた道着に雰囲気が似ているような気がする。
和哉は早速それを試着してみる事にした。
「ど、どうかな?」
着替え終わり試着室から出て来た和哉を見たギルランスと店員は一瞬固まった。
(あれ?何かおかしかったかな?)
二人の反応に不安になり和哉は鏡の前で自分の姿を確認してみる。
白いシャツとその上に羽織っているグレーのジャケットはどちらも襟の合わせが和服のように右前になっていて、そのジャケットの上から腰にベルトを締めている。
下は黒いズボンに膝下までのブーツだ。
(着方はこれで合ってるはずだよね……?)
再度和哉は固まっている二人に振り返り、その顔を窺う。
「あ、あの……何か変かな?」
(もしかして、全然似合ってないとか……?)
不安に駆られた和哉がおずおずと尋ねると、ギルランスはハッとしたように慌てて首を左右に振った。
「い、いや……大丈夫だ、うん」
そう言いながら、頭を掻きながら頷くギルランスの隣では、パッと顔を明るくさせた店員が「いや~、大変よくお似合いです!!」と拍手しながら満面の笑みを浮かべている。
「そ、そうかな?」
店員の大袈裟な誉め言葉に照れ臭さを感じながらも、二人からの言葉に和哉はホッと胸を撫で下ろした。
(よかった~……ちょっとコスプレ感あるかな、って心配だたけど……うん、大丈夫そうだ)
和哉が改めてもう一度姿見で自分の格好を確認しながら頬を緩ませていると、後ろに立っているギルランスと鏡越しに目が合う。
それに気づいたギルランスは和哉の肩にポンと手を置きニッと笑った。
「なかなかサマんなってるぞ」
そう言ってもらえるとやはり嬉しいもので、ますます和哉の頬は緩んでしまう。
「へへ……ありがと」
和哉の笑顔につられてか、ギルランスも嬉しそうに笑った。
その後、防寒用のマントも購入し、支払いを済ませた二人は店を後にした。
勿論、和哉は今買ったばかりの服を着用していて、大切なあのおさがりの服は大事に荷物袋の中にしまってある。
「さて、次は武器屋だ」
「うん」
二人は店を出たその足で、武器屋へ向かうため、街の大通りを歩き始めた。
通りは人で溢れており、まるでお祭りのような賑わいを見せていた。
(すごい人だな……迷子にならないように気をつけないと)
和哉は人込みをかき分けつつ、ギルランスの背中を見失わないように付いて行く。
すると、不意に伸ばされたギルランスの手が和哉の手を掴んだ。
突然のことに驚き目を瞠る和哉に、ギルランスは前を向いたまま「……はぐれたら面倒だからな」と素っ気なく言う。
たしかに、ここではぐれてしまったら、人ごみの中を探すのは大変そうだ――ギルランスとしてもそんな厄介なことに巻き込まれたくはないのだろう。
だが、それだけでなく、これは彼の純粋な優しさからくる行動なのだという事を和哉は理解していた。
「うん、そうだね……ありがとう」
少し照れくささを感じながらも素直に礼を言うと、ギルランスは一瞬きょとんとしたがすぐにフンッと顔を背ける。
そんな仕草一つにも優しさが滲み出ているような気がして和哉の胸は温かくなる。
(なんか嬉しいな)
憧れていた物語の勇者から自分に向けられる優しさが嬉しくて、和哉は一人(何故か熱くなる)顔を緩ませながら、その温かな大きな手を握り返した。
その後、二人は武器屋で和哉用の短剣や弓矢のメンテナンス用品を購入し、弓を背負うための革製ホルスターや手甲などの装備一式を購入して準備を終えた。
全ての買い物を終え、馬車に戻る頃にはすっかり日も傾いていた。
「よし、じゃあ今夜の宿を探すぞ」
「うん!」
ギルランスの言葉に頷き、真新しい装備に身を包みすっかり冒険者らしくなった和哉は馬車に乗り込んだ――。
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