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第30話 初めての依頼
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翌朝――。
朝食を済ませた後二人はギルドへ赴き、早速依頼を探すことにした。
昨日、無事に登録を完了することができた和哉は、これから本格的に冒険者として稼ぐのだ。
(よっしゃ!頑張るもんね!)
意気揚々と向かったギルド内は朝も早い時間だというのに既に多くの冒険者で賑わっていた。
掲示板の前ではパーティーを組んだ冒険者たちがそれぞれ仲間内で相談しながら依頼を選んでいる姿が見られる。
だがやはりというか、案の定と言うべきか、昨日よりも更に避けられてでもいるように、二人の周りだけポッカリと空間が出来上がっていた。
「う~ん、やっぱりこうなっちゃうよね~」
「まぁしょうがねぇだろ、昨日の今日だしな」
和哉とギルランスは苦笑いを交わしながら掲示板の前に立つと、所狭しと貼られた依頼を一つ一つチェックしていく。
緊張とワクワクの入り混じった気持ちで掲示板を見つめている和哉に、ギルランスが声をかける。
「今日はカズヤの初仕事だからな、お前がやりたいやつ選べ」
「え、いいの?」
「ああ」
ギルランスの言葉に和哉は顔を綻ばせながら、改めて掲示板を見つめる。
(よし!頑張るぞ~!)
和哉は様々な依頼に目を通し始める。
護衛や討伐といった危険なものから採集などのような比較的簡単なものまで依頼の種類は豊富だ。
(うーん……何がいいかな?)
目移りをしながら迷っていた和哉の目に、一枚の依頼書が留まった。
和哉はその紙に書かれている内容に一通り目を通してからそれを取ると、ギルランスに手渡した。
「ギル、この依頼やってみたい!」
「ん?どれ……」
ギルランスは受け取った紙に目を落とし、内容を確認するが……。
「……子猫の捜索……?」
(うっ……そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいじゃん……)
依頼書の内容は『いなくなった猫を捜してほしい』というものだった。
おそらくギルランス的には、”もう少し骨のある”というか、もっといかにも冒険者らしい依頼を和哉が選ぶと思っていたのだろう。
微妙な表情のギルランスにめげることなく和哉は説得を試みる。
「ギ、ギルには全然物足りないってのは分かってるけど、気になるんだ!子猫だよ!?可愛いよ!?ダメかな?」
上目遣いで見つめる和哉の懇願に、ギルランスは眉尻を下げながら「……いや」と視線を逸らした。
「――別に、ダメってわけじゃねぇけど……」
頭を掻きながら言葉を濁すギルランスに、和哉はぱあっと表情を明るくする。
「やった!ありがとうギル!」
満面の笑みを浮かべる和哉にギルランスはやれやれといった様子で肩を竦めると、フッと笑みを零した。
「ったく、お前ってやつは……受付してくるから、ちょっと待ってろ」
呆れたような口調ではあったが、その声にはどこか優しさが込められているようで、和哉の胸は温かくなる。
受付手続きをしに行ったギルランスを待つ間、和哉はもう一度掲示板に目を戻して今後どんな依頼を受けようか?などとワクワクしながら考えていた。
その時だった――和哉が一人になったせいなのか、昨日の冒険者たちに声を掛けられたのだ。
「よう、兄ちゃん昨日は悪かったな……」
突然声をかけられ驚く和哉に、三人組のリーダーとおぼしき口髭の男がバツが悪そうに苦笑いを浮かべながら詫びる。
他の二人も気まずそうな表情をして立っていた。
「いえ、気にしてませんので……」
別に事を荒立てる気もない和哉は愛想笑いを浮かべながら答えると、男たちはホッとしたように息を吐いた。
「……そうか、ならいいんだが……いやな、あのギルランスが笑って誰かと話してるなんて珍しいから、つい俺らも調子に乗って言いすぎちまった」
「そうそう、すまねぇな兄ちゃん」
「悪かった!」
謝罪の言葉を口にしながら頭を下げる男たちに、和哉は許しの意味の笑みを浮かべた。
「いえいえ、もう気にしないでください!僕も男です、あの時のことは水に流しましょう!」
ポンと自分の胸を叩きながら言う、少し軽口を交えた和哉の言葉に男たちは顔を見合わせると、気まずそうにしていた表情が一変して笑顔になり大きく頷いた。
「へへっ、兄ちゃんもなかなかおもしれぇやつだな。それに度胸もある!気に入ったぜ!」
「ありがとうございます!」
男たちと和解でき、ホッとした和哉が満面の笑みで返していると、髭の男の影から赤髪と青髪の二人組の女性がヒョイと顔を出した。
どうやら声をかけるタイミングを窺っていたようで、和哉が昨日の一件を怒っていないと確信できた様子の彼女らは和哉に向かって「こんにちは」と挨拶をしながらニコニコと笑顔を向ける。
「あ、はい、こんにちは」
笑顔で挨拶を返す和哉に気を良くしたのか、赤髪の女性は和哉の間近に歩み寄り意外な事を口にした。
「ねぇ、ねぇ、君……美形ねぇ……名前、なんていうの?よかったら私たちと組まない?」
などと言いながら、和哉の腕にギュッとしがみついてきたのだ。
これには和哉も驚き、思わずビクリと身体を硬直させる。
(うわっ!?え、ちょっ!?当たってるって!!)
突然の誘いと、腕に感じる女性の胸の感触に動揺して赤面する和哉の様子を見て、彼女は更に身体を密着させながら耳元で囁く。
「ね?いいでしょ…?」
(――っ!この人何気に胸押し付けてきてるよね!?ってか息っ!!)
和哉が顔を熱くさせたままドギマギしていると、もう一人の青髪の女性が話に割って入ってきた。
「え~、私はギルランスのほうが好みかなぁ~。でもあの人怖くて話掛けづらいのよね……」
そう言うと、青髪は和哉にニッコリと笑いかける。
「ねぇ、君、ちょっとギルランスとの間を取り持ってくれない?」
その言葉を聞いた和哉は瞬時に心の中で(冗談じゃない!)と叫ぶと同時に苦笑いで返した。
「え、えっと、それはちょっと無理かと……」
なるべく穏便に済ませようと、やんわりと断る和哉をよそに青髪の話は続く。
「だって私、彼のことずっと気になってたのよ~?なのに全然相手にしてくれないからさ~、彼のことは諦めてたんだけど……でもほら、なんだか彼の雰囲気が柔らかくなったじゃない?だから今なら――」
「だったら、兄ちゃんは俺たちと組もうぜ!!」
青髪の言葉を遮るように今度は髭の男にガシリと肩を組まれて引き寄せられる。
(えええ!?何でそういう事になるの!?つうか、なんなんだよ、この人たち!?)
周りを複数の冒険者たちに囲まれ、対応に焦る和哉だが、そもそも自分はギルランス意外とパーティーを組む気はないし、それ以上に(なぜか?)ギルランスが他の誰かと組むなんてもっと嫌だったのだ。
ここはキッパリと断ろうと、和哉が口を開きかけた時だった――。
「――おい!てめぇら何してる!!」
突然の怒声にその場にいた全員の動きが止まる。
振り返ると、そこには依頼書を手に握り締めながら、鬼のような形相を浮かべたギルランスが立っていた。
(うわっ!ギル、めっちゃ怒ってる!?)
ギョッとし、一瞬身構える和哉だったが、すぐにギルランスの怒りは自分ではなく周りの冒険者たちに向けられたものだと気づく。
和哉が困っているのを見かねてなのか、それとも他に何か理由があるのかは分からないが、ギルランスからは尋常じゃない怒りのオーラが感じ取れた。
周りにいる冒険者たちもギルランスの剣幕に圧倒されているのか、全員が驚愕したような表情を浮かべたまま身動きもできず固まっていた。
ギルランスはズカズカと大股で歩みよるとを進めると、和哉の肩に回されていた髭男の腕を掴み力任せに引き剥がす。
「――いってぇ!?」
髭男は思わず痛みに呻き声を漏らすが、ギルランスは気にする様子もなくそのままの勢いで後ろに吹っ飛ばした。
髭男は派手に転倒し尻餅をつく。
ギルランスはそんな彼を一瞥すると、今度は和哉の腕にしがみついていた赤髪の女性に向き直る。
「ひっ!」
ギルランスの射るような冷たい視線を浴びた赤髪は短い悲鳴を上げて顔を真っ青にさせ、慌てて和哉から手を離すと後退りながら距離を取った。
「や、やだ……ちょ、ちょっとした冗談よ……」
引きつった笑みを浮かべながら必死で弁明をする赤髪の言葉に乗っかったのか、髭男も立ち上がりながら慌てて口を開く。
「そ、そうだよ!ちょっと新米の兄ちゃんと親睦を深めようとしただけだって」
「そんなに怒んなって……な?」
「そ、そう、冗談よ?……本気ににないでね?」
口々に弁解する冒険者たちにギルランスは無言のままぐるりと見回し睥睨すると、フンッと鼻を鳴らしてからゆっくりと口をひらく。
「……こいつは俺の相棒だ、手出ししないでもらおうか?」
静かにではあるが、有無を言わせぬ迫力に満ちた声にビクリと身体を震わせて冒険者たちは、顔面蒼白となりながらコクコクと何度も頷いた。
(う、うわ……めちゃくちゃ怖ッ……)
冒険者たちの反応と、本気で怒っているギルランスを目の当たりにした和哉は、改めて彼がどんな存在で、どんな立ち位置の人間なのかを実感する。
(ギルって本気で怒るとこんなに怖いんだ……)
普段から仏頂面のうえに、和哉も出会った当初はけっこう怒鳴られたりしていたが、あんなものは全然怒っていたうちにも入っていなかったようだ。
「わ、わかった……すまなかったな」
「ご、ごめんなさいね」
「いや……わるかった」
調子に乗ってしまった自分たちが悪かったことを認識したのか、今度は素直に謝罪をする冒険者たちの様子を見てようやく満足したのか、ギルランスはいつもの表情に戻り和哉へ向き直る。
そして呆然としている和哉の腕を掴み「行くぞ」とそのまま出口へと歩き出した。
途中、ふと思い出したようにギルランスは背中越しに振り返ると、未だ突っ立ったままの冒険者たちに声をかけた。
「――いいか、次はねぇからな?」
そう言いながらギルランスはニヤリと凶暴な笑みを見舞う。
それを見た冒険者たちは恐怖のあまり声にならない悲鳴を上げていた――。
朝食を済ませた後二人はギルドへ赴き、早速依頼を探すことにした。
昨日、無事に登録を完了することができた和哉は、これから本格的に冒険者として稼ぐのだ。
(よっしゃ!頑張るもんね!)
意気揚々と向かったギルド内は朝も早い時間だというのに既に多くの冒険者で賑わっていた。
掲示板の前ではパーティーを組んだ冒険者たちがそれぞれ仲間内で相談しながら依頼を選んでいる姿が見られる。
だがやはりというか、案の定と言うべきか、昨日よりも更に避けられてでもいるように、二人の周りだけポッカリと空間が出来上がっていた。
「う~ん、やっぱりこうなっちゃうよね~」
「まぁしょうがねぇだろ、昨日の今日だしな」
和哉とギルランスは苦笑いを交わしながら掲示板の前に立つと、所狭しと貼られた依頼を一つ一つチェックしていく。
緊張とワクワクの入り混じった気持ちで掲示板を見つめている和哉に、ギルランスが声をかける。
「今日はカズヤの初仕事だからな、お前がやりたいやつ選べ」
「え、いいの?」
「ああ」
ギルランスの言葉に和哉は顔を綻ばせながら、改めて掲示板を見つめる。
(よし!頑張るぞ~!)
和哉は様々な依頼に目を通し始める。
護衛や討伐といった危険なものから採集などのような比較的簡単なものまで依頼の種類は豊富だ。
(うーん……何がいいかな?)
目移りをしながら迷っていた和哉の目に、一枚の依頼書が留まった。
和哉はその紙に書かれている内容に一通り目を通してからそれを取ると、ギルランスに手渡した。
「ギル、この依頼やってみたい!」
「ん?どれ……」
ギルランスは受け取った紙に目を落とし、内容を確認するが……。
「……子猫の捜索……?」
(うっ……そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいじゃん……)
依頼書の内容は『いなくなった猫を捜してほしい』というものだった。
おそらくギルランス的には、”もう少し骨のある”というか、もっといかにも冒険者らしい依頼を和哉が選ぶと思っていたのだろう。
微妙な表情のギルランスにめげることなく和哉は説得を試みる。
「ギ、ギルには全然物足りないってのは分かってるけど、気になるんだ!子猫だよ!?可愛いよ!?ダメかな?」
上目遣いで見つめる和哉の懇願に、ギルランスは眉尻を下げながら「……いや」と視線を逸らした。
「――別に、ダメってわけじゃねぇけど……」
頭を掻きながら言葉を濁すギルランスに、和哉はぱあっと表情を明るくする。
「やった!ありがとうギル!」
満面の笑みを浮かべる和哉にギルランスはやれやれといった様子で肩を竦めると、フッと笑みを零した。
「ったく、お前ってやつは……受付してくるから、ちょっと待ってろ」
呆れたような口調ではあったが、その声にはどこか優しさが込められているようで、和哉の胸は温かくなる。
受付手続きをしに行ったギルランスを待つ間、和哉はもう一度掲示板に目を戻して今後どんな依頼を受けようか?などとワクワクしながら考えていた。
その時だった――和哉が一人になったせいなのか、昨日の冒険者たちに声を掛けられたのだ。
「よう、兄ちゃん昨日は悪かったな……」
突然声をかけられ驚く和哉に、三人組のリーダーとおぼしき口髭の男がバツが悪そうに苦笑いを浮かべながら詫びる。
他の二人も気まずそうな表情をして立っていた。
「いえ、気にしてませんので……」
別に事を荒立てる気もない和哉は愛想笑いを浮かべながら答えると、男たちはホッとしたように息を吐いた。
「……そうか、ならいいんだが……いやな、あのギルランスが笑って誰かと話してるなんて珍しいから、つい俺らも調子に乗って言いすぎちまった」
「そうそう、すまねぇな兄ちゃん」
「悪かった!」
謝罪の言葉を口にしながら頭を下げる男たちに、和哉は許しの意味の笑みを浮かべた。
「いえいえ、もう気にしないでください!僕も男です、あの時のことは水に流しましょう!」
ポンと自分の胸を叩きながら言う、少し軽口を交えた和哉の言葉に男たちは顔を見合わせると、気まずそうにしていた表情が一変して笑顔になり大きく頷いた。
「へへっ、兄ちゃんもなかなかおもしれぇやつだな。それに度胸もある!気に入ったぜ!」
「ありがとうございます!」
男たちと和解でき、ホッとした和哉が満面の笑みで返していると、髭の男の影から赤髪と青髪の二人組の女性がヒョイと顔を出した。
どうやら声をかけるタイミングを窺っていたようで、和哉が昨日の一件を怒っていないと確信できた様子の彼女らは和哉に向かって「こんにちは」と挨拶をしながらニコニコと笑顔を向ける。
「あ、はい、こんにちは」
笑顔で挨拶を返す和哉に気を良くしたのか、赤髪の女性は和哉の間近に歩み寄り意外な事を口にした。
「ねぇ、ねぇ、君……美形ねぇ……名前、なんていうの?よかったら私たちと組まない?」
などと言いながら、和哉の腕にギュッとしがみついてきたのだ。
これには和哉も驚き、思わずビクリと身体を硬直させる。
(うわっ!?え、ちょっ!?当たってるって!!)
突然の誘いと、腕に感じる女性の胸の感触に動揺して赤面する和哉の様子を見て、彼女は更に身体を密着させながら耳元で囁く。
「ね?いいでしょ…?」
(――っ!この人何気に胸押し付けてきてるよね!?ってか息っ!!)
和哉が顔を熱くさせたままドギマギしていると、もう一人の青髪の女性が話に割って入ってきた。
「え~、私はギルランスのほうが好みかなぁ~。でもあの人怖くて話掛けづらいのよね……」
そう言うと、青髪は和哉にニッコリと笑いかける。
「ねぇ、君、ちょっとギルランスとの間を取り持ってくれない?」
その言葉を聞いた和哉は瞬時に心の中で(冗談じゃない!)と叫ぶと同時に苦笑いで返した。
「え、えっと、それはちょっと無理かと……」
なるべく穏便に済ませようと、やんわりと断る和哉をよそに青髪の話は続く。
「だって私、彼のことずっと気になってたのよ~?なのに全然相手にしてくれないからさ~、彼のことは諦めてたんだけど……でもほら、なんだか彼の雰囲気が柔らかくなったじゃない?だから今なら――」
「だったら、兄ちゃんは俺たちと組もうぜ!!」
青髪の言葉を遮るように今度は髭の男にガシリと肩を組まれて引き寄せられる。
(えええ!?何でそういう事になるの!?つうか、なんなんだよ、この人たち!?)
周りを複数の冒険者たちに囲まれ、対応に焦る和哉だが、そもそも自分はギルランス意外とパーティーを組む気はないし、それ以上に(なぜか?)ギルランスが他の誰かと組むなんてもっと嫌だったのだ。
ここはキッパリと断ろうと、和哉が口を開きかけた時だった――。
「――おい!てめぇら何してる!!」
突然の怒声にその場にいた全員の動きが止まる。
振り返ると、そこには依頼書を手に握り締めながら、鬼のような形相を浮かべたギルランスが立っていた。
(うわっ!ギル、めっちゃ怒ってる!?)
ギョッとし、一瞬身構える和哉だったが、すぐにギルランスの怒りは自分ではなく周りの冒険者たちに向けられたものだと気づく。
和哉が困っているのを見かねてなのか、それとも他に何か理由があるのかは分からないが、ギルランスからは尋常じゃない怒りのオーラが感じ取れた。
周りにいる冒険者たちもギルランスの剣幕に圧倒されているのか、全員が驚愕したような表情を浮かべたまま身動きもできず固まっていた。
ギルランスはズカズカと大股で歩みよるとを進めると、和哉の肩に回されていた髭男の腕を掴み力任せに引き剥がす。
「――いってぇ!?」
髭男は思わず痛みに呻き声を漏らすが、ギルランスは気にする様子もなくそのままの勢いで後ろに吹っ飛ばした。
髭男は派手に転倒し尻餅をつく。
ギルランスはそんな彼を一瞥すると、今度は和哉の腕にしがみついていた赤髪の女性に向き直る。
「ひっ!」
ギルランスの射るような冷たい視線を浴びた赤髪は短い悲鳴を上げて顔を真っ青にさせ、慌てて和哉から手を離すと後退りながら距離を取った。
「や、やだ……ちょ、ちょっとした冗談よ……」
引きつった笑みを浮かべながら必死で弁明をする赤髪の言葉に乗っかったのか、髭男も立ち上がりながら慌てて口を開く。
「そ、そうだよ!ちょっと新米の兄ちゃんと親睦を深めようとしただけだって」
「そんなに怒んなって……な?」
「そ、そう、冗談よ?……本気ににないでね?」
口々に弁解する冒険者たちにギルランスは無言のままぐるりと見回し睥睨すると、フンッと鼻を鳴らしてからゆっくりと口をひらく。
「……こいつは俺の相棒だ、手出ししないでもらおうか?」
静かにではあるが、有無を言わせぬ迫力に満ちた声にビクリと身体を震わせて冒険者たちは、顔面蒼白となりながらコクコクと何度も頷いた。
(う、うわ……めちゃくちゃ怖ッ……)
冒険者たちの反応と、本気で怒っているギルランスを目の当たりにした和哉は、改めて彼がどんな存在で、どんな立ち位置の人間なのかを実感する。
(ギルって本気で怒るとこんなに怖いんだ……)
普段から仏頂面のうえに、和哉も出会った当初はけっこう怒鳴られたりしていたが、あんなものは全然怒っていたうちにも入っていなかったようだ。
「わ、わかった……すまなかったな」
「ご、ごめんなさいね」
「いや……わるかった」
調子に乗ってしまった自分たちが悪かったことを認識したのか、今度は素直に謝罪をする冒険者たちの様子を見てようやく満足したのか、ギルランスはいつもの表情に戻り和哉へ向き直る。
そして呆然としている和哉の腕を掴み「行くぞ」とそのまま出口へと歩き出した。
途中、ふと思い出したようにギルランスは背中越しに振り返ると、未だ突っ立ったままの冒険者たちに声をかけた。
「――いいか、次はねぇからな?」
そう言いながらギルランスはニヤリと凶暴な笑みを見舞う。
それを見た冒険者たちは恐怖のあまり声にならない悲鳴を上げていた――。
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